09/18 紙版発売 10/02 電子版発売

僭越ながら代理妻をさせていただきます 妻の母は42歳

著者: 朝倉ゆうき

本販売日:2026/09/18

電子版配信日:2026/10/02

本定価:935円(税込)

電子版定価:935円(税込)

ISBN:978-4-8296-4898-8

「僭越ながら身の回りのお世話をさせていただきます」
妻に家出された新居に現れたのは、42歳の美しい義母。
好みのエプロンを纏い、極上の手料理でおもてなし。
買い物帰りに夫婦に間違われ、湯船で密着する夜。
食事も、お風呂も、夜の欲望も全てを満たしてくれる
癒やしの「代理妻」との、とろける蜜月生活!

目次

第一章 妻の家出 ~エプロン姿で始まる新婚ごっこ~

第二章 夫婦に間違われて ~買い物と淫らなお世話~

第三章 急接近する義妹 ~制服姿の甘いおねだり~

第四章 白熱するご奉仕合戦 ~手料理勝負と女体盛り~

第五章 母娘で和解の3P ~秘密の地下室で愛されて~

第六章 妻の帰宅 ~雨降って地固まる夫婦の絆~

エピローグ 新しい我が家に乾杯!

本編の一部を立読み

第一章 妻の家出 ~エプロン姿で始まる新婚ごっこ~

 落成式も終わったばかりの新居で青年は浮かない顔でため息をつく。ローンの審査に通り喜んだのがついこの間のよう。
「やっぱり、僕に、いたらないところがあったのかな……」
 結婚生活から一年。まだ新婚といって差し支えないような時期でありながら、妻は唐突に家を出てしまった。答えるのは、彼女の母。
「そんなことはありません、秀斗さん。あの子がわがままを言い出しただけですよ。子供の頃から、どうしても言うことを聞かないときがたまにあるから……」
 妻の母である千歳はまぶたを半分下ろす。瞳に影がかかるような長い睫毛が女の感情を静かに示す。
「いえ、面白みのない男というのは事実ですから。仕事も安定を求めて公務員になったくらいですし」
 自虐気味にこぼす。仕事からもどったばかりの青年は、スーツがシワになるのも構わずソファーに腰を落とした。
「基盤のある生活は大切です。秀斗さんはなにも間違っていませんよ」
 女はテーブルに乗せられているコーヒーメーカーで静かにコーヒーを作り始める。ささやかな気遣いが染みる。
「あの子は法律家の家庭に育ったからか、仕事に縛られるのは嫌なのでしょうね。多忙な姿を見せすぎました」
 コーヒーの芳ばしい香りが漂いだすと、女は立ち上がり、棚からカップを取り出す。そそぐ所作はしなやかだった。
「とはいえ、わたしも甘やかしすぎたかもしれませんね。仕事に明け暮れて、親としては不出来だったと今では反省です」
 カップを差し出される。洗練されたメイドのような立ち居振る舞い。結婚の挨拶で初めて会ったとき、凜とした姿に目を奪われたことは忘れない。
(美月のお母さんだから、似てるから、だよね)
 妻となった美月、その母千歳。顔立ちこそ血筋を感じさせるものはあるが、性格は随分と対極的だ。
「この一年、美月にはなにもしてあげられなかったんだと思います」
「自分を責める必要はないですよ。むしろ、献身的だったくらいです。わたしがあの子に与えた以上に、秀斗さんは愛をそそいでいたと思いますよ」
 女は向かいに腰を下ろす。青年は視線から逃げるように黒い液体を呑み込む。口に染みる熱い苦みは、今の心境に似ていた。
「美月は先進的ですし、縛られるタチではないのはよくわかっています」
 生成AIクリエイターとして収入を得ている妻。学生時代から最先端の分野を学んでいたのは青年も尊敬していた。
「もう少し、男性を立てることを教育しておいた方がよかったでしょうか……。秀斗さんに恥をかかせる結果になって、恥ずかしく思います」
 伏し目がちに頭を下げられる。真剣な女の表情の下方で、丸みを帯びたふくらみが天板でひしゃげているのが目に入ってしまう。
(真面目な話をしてるのに、こんなこと気にしちゃうなんて、最低だ……)
「頭を上げてください。千歳さんはなにも悪くありませんからっ」
 煩悩をごまかすように告げる。千歳は困り顔のまま、上体を起こした。瞳は目尻を下げ、眉毛もハの字に歪んでいた。
「けれど、秀斗さんは夫婦生活のためにこのお家を買ったのでしょう。それを台無しにしてしまった責任は果たさなければなりません」
「責任だなんて大げさすぎますよ。僕は、皆さんが居心地よくすごしてくれるなら充分です。僕も、一人の時間を満喫すればいいだけですし」
 方便ではない。千歳と、妻の妹である藍里に新たな居場所と思ってもらえれば、家主として本懐だ。
「……それは、秀斗さんが育ってきた環境の反動なのですよね」
 女はさらに悲しげに目を細めた。しん、とリビングが無音になってしまう。
(気を遣わせるつもりじゃなかったのに)
「まあ、親からは勉強ばかりさせられてきましたけど、おかげで美月と知り合えました。それに千歳さんのおかげで初めて落ち着ける暮らしを実感してます」
 住宅ローンを組むにあたり、千歳も協力してくれたことを忘れない。
「ご実家で息苦しい思いをしてきて、大人になってようやく自分の居場所を作れたというのに、秀斗さんがあまりに可哀想です」
 白い指が手の甲に乗せられ、労るように撫でてくれる。コーヒーカップとはまた違う、人のぬくもり。
「こんなやさしい言葉をかけてもらえるだけでも、僕は果報者です」
 それが本心だということに、美貌はいっそう影を帯びていく。
「……秀斗さんがわたしの子だったら、こんな悲しい言葉、言わせなかったのに」
 家庭としての機能が果たされていない環境。親の見栄だったのか、勉強ばかり強要された。あるのは叱責だけ。
(僕の代わりに、こんなに怒ってくれるなんて)
 女の声は、静かでありながら強い感情が込められていた。唇の隙間から漏れるため息が青年の頬にまで届いた。
「秀斗さんのような人は、もっとしあわせになってほしいのです」
 大きな瞳は潤みをもって青年を見つめていた。テーブルの上では、女の指が青年の手を包み込む。
「これ以上のしあわせ、と言っても、僕にはなかなかピンときませんよ」
「……たとえば、もっと新婚生活を堪能していただく、などどうでしょう」
 女の指が、青年の指の股に入り来る。恋人繋ぎのように手首が組み合わさり、爪の先が肌の薄皮一枚をこそいでくる。
(それって、千歳さんと……)
 瞬いた青年は眼前をただ見やる。甘く細められた瞳、わずかに傾げた首。心配と献身を内包したそれは、母性と女性が入り交じった貌だった。
「あの子とは、あまり一緒にいる時間もなかったのでしょう……?」
 心臓を軸に、身体が震えた。内心思っていた、小さなささくれ。
(千歳さんのこと、こっそり憧れてたけど……まさか、夢とかじゃないよね)
 妻とよく似た顔立ちで、やさしさも兼ね備えた女性。夜には、ほのかに彼女を夢想したことだってある。
(干してある下着や、お風呂上がりの姿とか、目のやり場に困ってはいたけど)
「だいぶ年上ですし……やっぱりわたしでは、代わりにはならないですか」
 沈黙を否定と捉えたのか、怯えとも取れる寂しげな声音。
「そんなことありませんっ。むしろ、そんなことしていただいていいのか、驚いてるくらいですからっ」
 細い手首を両手で握り締める。先ほどより熱くなった体温は女の心境を表していた。触れていた動脈の拍動に感じ入る。
(千歳さん……本気なんだ)
 経験浅い青年だが、ここで無下にするほど無礼ではない。目を合わせ、指を何度か動かす。
「新妻、などとはおこがましいですけれど、なにかさせてほしいのです」
 女は立ち上がり、名残惜しげに手を離す。ラベンダーカラーのワンピースが視界に広がり、リビングに花が咲いたようだった。
(新婚生活……どんなことがあるだろう)
 妻とは生活時間も違うため、これといって特別なことはしたことがなかった。妻自身も、尽くすようなタチではない。
「……じゃあ、エプロン姿を見てみたいです」
 素朴な要求に女はにこやかに頷く。すぐに台所でエプロンをつけ、腰の後ろで大きな結び目を作った。
「こんなことで、よいのですか」
 くるりと女は全身を披露してくれる。長いスカートの裾がふわりと持ち上がり、やわらかな円錐から脚線美が覗く。
「こういうのが家庭の女性っぽい感じがしますから。新鮮です」
 シンプルなエプロンのフリルを眺めながら、青年の表情がゆるむ。今まで、この光景を見たことがないという証しだった。
「あの子は料理をしませんし、ね」
「それよりも自分の作業時間に使いたい、っていつも言ってましたから」
 己を高めるために時間を費やす妻のことは尊敬している。だから結婚に到ったのだ。だが寂しくないかと言われれば、それは別の問題だ。
「わがままばかりな娘を、どうか許してあげてください」
「許すもなにも、僕は怒っていませんから」
 青年は台所でエプロンのヒラヒラを手慰み。自然に男女の間合いを計る。
「……それで、この格好でなにかしたかったことがあるのでは?」
 問われ、青年は一歩踏み込む。心も、身体も。
「あの、恥ずかしいんですけど、ご飯とか、あーん、って、してもらえたら」
 先ほどまでとは違う、近距離での会話。女はしっとりと片目を瞑った。
「ええ、構いませんよ。ではリビングで待っていてくださいな」
 告げて、女は食事の用意へ。キッチンから聴こえるリズミカルな包丁の音、揺れるエプロンの後ろ姿。漂う夕餉の香り。
(家の雰囲気って感じがしていいな)
 ほどなく、女は皿を持ってテーブルへ。急ぎでお願いしたので、簡単なハンバーグと野菜の盛り付けだが、女の手作りだと思うとご馳走だった。
「それでは僭越ですが、お口を開けていただけますか……?」
 エプロンをまとった女は、スプーンで一口大に掬ったハンバーグを青年の前へ。恥ずかしそうにふたり、笑みを浮かべる。
(ここまで来たら、堂々としないと)
 ぱくりと肉を頬張る。スプーンの鉄の味と肉汁が混ざり、女が呼吸を読んでスプーンを引き抜く。
(千歳さん、こういうの、慣れてるのかな)
 人妻だった名残が垣間見える。若き日、亡き夫との仲睦まじい時間があったのだろう。最初の一口だけでも、親密な時間が流れる。
「それでは、わたしもいただきますね」
 女も上品にスプーンを使い、紅唇に肉が呑み込まれていく。女の厚みのある唇が動くだけで、エロティックなものに思えてくる。
(昨日まで、こんなこと考えもしなかった)
 妻の母を神聖なものとして捉えていた。だが新妻の役割を想像しただけで見える世界はまるで変わってくる。
(美月が出て行ったばかりなのに)
 節操のなさに嫌気がさす。けれど建前に縋り付く。
(恥をかかせるわけには、いかないから)
「秀斗さん、最後の一口、どうぞ」
 対面からもう一度スプーンが差し出される。残っていたひとかけらを器用に掬い、青年の唇寸前の位置へ。
(最初と最後をあーんしてもらえるだけでも、すごい満足感)
 食事のペースを妨げることなく、甘い雰囲気を導いてくれる包容力。ベタベタとくっつくだけではないやさしさ。
「ごちそうさまでした。おかげで、新婚気分になってきました」
「お粗末様です。……こうした新婚生活、よいものでしょう?」
 女は食器を片付けテーブルを布巾で拭う。豊かな胸を飾り立てるフリルは小鳥の羽ばたきのように揺れ続ける。
(新婚っていうことは、やっぱり、そういうことだよね)
 女の顔をまじまじと見てしまう。やわらかな笑顔と、透き通った瞳はすべてを受け入れる覚悟に違いない。
「……眠るまで、添い寝をしてもらっていいですか」
 精一杯、言葉を選んだ青年。赤い唇はすぐに開かれた。
「ええ、新婚夫婦なら、普通のことですもの」
 まばたきをするように女は奥の扉へと視線を向ける。そこは女の寝室。家族の様子を感じられるようにと、女が選んだ部屋。
「わたしも、久しぶりに、夫と眠りたいですから」
 就寝時間にはまだ早い夕食後の時間帯。男女は手を握りながら、扉を開いた。

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