金運&女運、転がり込んできた

著者: 朝倉ゆうき

本販売日:2025/02/21

電子版配信日:2025/03/07

本定価:825円(税込)

電子版定価:880円(税込)

ISBN:978-4-8296-4783-7

投資セミナーに参加した日から和哉の人生は一変!?
会場で知り合ったシンママの自宅で甘い情事。
小遣い稼ぎをしたい兄嫁から淫らな相談を受け、
叔母からはベッドで「特別な融資」を受ける。
バツイチの美熟女セミナー講師が夜の講義まで……
金運と女運が押し寄せてくる、最高の楽園人生!

目次

第一章 投資セミナーに行ったらシンママとヤレた

結花エピローグ

第二章 未亡人事務員からホテルに誘われた

愛香エピローグ

第三章 不感症の人妻上司をイかせた

瑞希エピローグ

第四章 資産運用の相談のついでに兄嫁を抱いた

第五章 叔母からベッドで「特別な融資」を受けた

夏美エピローグ

第六章 美熟女バツイチ講師から夜の講義をされた

洋子エピローグ

第七章 幸運と女運が押し寄せてきた

エピローグ 投資もセックスも全力で

本編の一部を立読み

第一章 投資セミナーに行ったらシンママとヤレた

 株式投資の講義で砂川和哉は真剣にメモを取る。壇上の講師が美人であるなどどうでもよいとばかりに、内容だけに集中していた。
(どうにか、生活を取り戻さないと)
 大学時代の付き合いで強要されたマルチは借金しか残らなかった。社会人一年目で受ける手痛い失態。
「現行の制度では、運用益が非課税です。もちろん、元本割れのリスクは──」 
 スクリーンのグラフを見やりながら、自分の収支をイメージする。学生の頃に買っておいた株が伸びていることだけが救いだった。
(いざとなれば、この株を売ればどうにかなるかな……)
 経済の知識不足で失敗。これからは自ら知識を得るしかない。ペンを走らせ一区切りつけると、ふと隣に目が向いた。
(今気づいたけど、こんなきれいな人が隣にいたんだ)
 涼やかな容貌の女性だった。三十代だろうか。薄めの化粧と相まって、どこか儚げな印象を受ける。
「積み立て式なら、無理のない範囲で投資をしていくことが──」
 解説を片耳に、視線は外せなかった。外見のイメージ通りの細く美しい文字。横から見ると際立つ胸のふくらみ。
(あんなに大きかったら、自分の机の上が見えないんじゃ……)
 案の定というか、二つの山の下にある付箋の束を見失っていた。資料に印をつけたいのだろうが、講義はどんどん進んでいく。
(教えてあげたいけど、おっぱいの陰になってますなんて、言えないし)
 美貌が焦りに染まり始める。青年も自分事のように動揺してしまう。
「あの、よければこれ、使ってください」
 自分の付箋を差し出す。隣の女は、切れ長の瞳を一度大きく開いてから、笑みによって細めた。
「ええ、すみません、使わせてもらいますね」
 カラフルな付箋が女の細い指によって一枚剥がされる。指先に摘ままれた付箋が、つけ爪のように映える。
「束ごといいですよ。まだ講義は続きますし、必要でしょうから」
(完全におっぱいの下にいっちゃったし。最後に見つかるだろうからいいよね)
 真横からだとはっきりわかるが、男の身では伝えづらい。女が恐縮しながら頭を下げると、黒髪が耳を隠すように揺れる。
「ありがとうございます。後でお礼をさせていただきますから」
 女の言葉を青年は制して前を向く。講師の女性が資料の次ページを指し示す。
(おっぱいをジロジロ見て、お礼されるなんて、居心地悪すぎるよ)
 頬を掻きながら、青年はスクリーンに集中するのだった。
     ◇
「さっきはありがとうございました。自分の付箋も見つかりまして」
 講義後、参加者が片づけをして帰っていくなか、女は深々と礼をする。黒髪のソバージュがふわりと舞った。
「いえ、たいしたことじゃありませんから。安い物ですし」
「これがなかったら、困るところでしたから。値段の問題ではないもの。お礼をさせてください。少し早いけど、夕食とかいかがでしょうか」
 土曜の夕方。二十三歳の和哉は帰宅しても一人暮らしの部屋でカップ麺を啜るだけだ。断わる理由はない。
(でも、あんまり手持ちが……けどこんな美人の誘いを)
「もちろん、お礼ですから、私にご馳走させてください。それに、若い男の子に出してもらうのも気恥ずかしいですから」
 月々の支払いに追われている青年には正直ありがたい。恥を忍んでうなずく。
(ほんとは、投資って余裕のある人がするものだけど)
 それでも勉強は必要だ。金融教育を学校で教わる世代をうらやましく思いながら苦い過去を呑み下す。
「それではお言葉に甘えて……ええと」
 整った顔を見やると、彼女は律儀に姿勢を正し、目線が向けられる。
「ごめんなさい、まだ名乗っていませんでしたね。滝上結花と申します。できれば、名前でよんでください」
「え、いきなり、いいんですか」
 初対面の女性に馴れ馴れしくできるタチではない。困惑気味にしていると、女は半分まぶたを下ろす。一秒ほどの空白。
「ええ、今の名字はあまり好きではないので……」
 長い睫毛で瞳が一瞬隠れた。
(なにか理由があるなら、その通りにするだけ)
「なら、結花、さん。でいいですか。僕は砂川和哉です。緊張しますね」
「和哉くんね。私だって、若い男の子と話すのは慣れてないわ。でも、せっかく同じ興味を持ってるんだし、色々聞いてみたいわ」
 二人は会場を後にする。エアコンの効いた講義室の外は夏の熱気に満ちていた。
     ◇
 会場が街の中心部だったこともあり、夕食はそのまま繁華街でとなった。薄暮の空と、点灯したてのネオンが街を彩る。
「居酒屋でもいいかしら? 和哉くん、二十歳以上よね?」
「ええ、二十三です。たまに学生に間違われますけど。これでも、会社の飲み会でも上司に気配りするんですよ」
 他人にはわからないように、やや自虐を含んだ青年の言葉。
(借金で交際費も出せないから、社内の人付き合いなんてできないし)
「若手は大変よね。でも、だんだんそういうことを気にする世代は減っていくわ。今日は、軽い気持ちで付き合って欲しいわ」
 チェーン店のドアを潜る。浅い時間だからか個室に通され、居心地がよかった。
(セミナーで、こんな美人と知り合いになれるなんて)
 女はバッグを置いたら、椅子に尻を乗せてから揃えた脚を引き入れる。細かな所作一つとっても色気が漂った。
(大学時代の女の子とは全然違う。これが大人の女性なんだ)
「あの、結花さんは、ビールでよかったですか? 注文しておきますね」
「ふふ、気が利くのね。お願いするわ」
 背伸びした様子が楽しいのか、女は初めてやわらかな笑顔を見せた。程なく届く小麦色の液体。グラスのしずくが食欲をそそる。
「今日は、セミナーでお世話になったわ。ありがとう」
 カツン、とジョッキがぶつかり男女はビールに口をつける。女の細い喉が上下に動き、唇に小さな泡が残る。
(ちゃんとハンカチで口を拭くんだ)
 グラスに移った口紅も、流れるように指でかき消す。たった一口呑むだけで、女の育ちのよさに感じ入る。
「いえ、講義に集中できたならよかったです」
「おかげで内容もきちんと整理できたわ。──それで聞きたかったの。和哉くんは、どうしてこのセミナーに参加したのか」
 女は肘をつき、対面の青年へわずかに距離を詰める。ソバージュの髪の毛を耳に乗せる動きにドキリとさせられる。
「投資って、老後のため資産運用として始める年輩の人が多いから」
「僕より下の世代は学校で習いますけど、僕の場合自分で学ぶしかないもので。結果、積み立て系なら、若い内から始めるのがいいのかなって」
 ビールがふたりの喉を通る。本音はこれから。ほう、と女の息が散る。
「……そうね、若い人は未来がたくさんあるから、時間をかけてもいいのよね」
「あの、結花さんも十分お若いです」
「気を遣わないで。小さい子がいる母親だもの。まあ、シングルなのだけど」
 妙な空気にならぬよう、息をするような口調で女は告げる。
(だから、今の名字が好きじゃないって……)
 離婚か死別かはわからない。それには触れず青年は自らのいきさつに触れる。
「僕は、恥ずかしながら付き合いのマルチで少々ローンができてしまいまして。一度、金融知識をしっかり身につけたいなって。上司にも心配かけたくなくて」
「それで、仕事をしながらセミナーに通うことにしたのね。無職の私なんかより、よっぽど立派だわ」
「僕は、電器店のしがない販売員ですよ。たいして成績も出せていませんし」
「謙遜しちゃって。今の時代、定職があるだけでも尊敬に値するわ」
 目を伏せながら女がもう一口酒を含む。ほんのり頬に赤みが差し、唇の艶が増していく。
「夫が亡くなって、生命保険で暮らしているの。子供も小さいから、どうやって働いたらいいのかと。だから、生活の足しになるかなって。不純な動機よ」
「そんな、きちんとした理由だと思います。それに、最初から資金があるのなら、きっと上手くいきますよ」
(僕なんか、講師の先生が美人だからこのセミナーに決めたくらいなのに)
 ごまかすように青年もジョッキを呷る。カッと腹が熱くなり、アルコールが染みる。これならもう一歩踏み込めるかもしれない。
「そうだったらいいのだけど。今はお酒に頼って、気晴らしするダメな大人よ」
 強引に唇を持ち上げる女の哀愁。張りついたような笑顔は静止画に似ていた。
「気分転換は必要です。それは足踏みでも停滞でもなくて、次への予備動作なんです。そう、上司に教わりました」
「……和哉くんの上司は、やさしいのね。もちろん、和哉くんも」
 陶器のような白い手がテーブルをすべる。青年の甲に重なると、男女の体温が溶けて混ざり合う。
「私も勤めていたときには、部下にそう言って励ましたものね。まさか、自分が言われる側になるなんて、ね」
 懐かしむように天井を見上げる。世代交代を実感しているのか、目尻を下げた憂い顔。けれど納得したように顎を引く。
「なんだか、今日は甘えてしまいそうな気分だわ……私の方がずっと年上なのに」
 消え入りそうな女の声。なのに表情を変えない、いじましさ。
(大人の女性が、こんなか弱いなんて)
 周囲に強い女性が多かったため、萎れた花弁のようなうつむき顔に動揺する。
「気分転換なら、いくらでもお付き合いします。明日は休みですし」
 わずかな間ができる。図々しすぎたかと目線を下げると、女の指が青年の指に絡められた。軽く力をこめると、男女の視線が交叉する。
「私の家、ここから近いの。少し、愚痴でも聞いてもらえれば……」
 会計表を握った女は立ち上がり、小さく首を横に傾けた。

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