本販売日:2003/12/23
電子版配信日:2007/08/01
本定価:576円(税込)
電子版定価:660円(税込)
ISBN:978-4-8296-1243-9
「女が男の胸で啼くのは哀しいときだけじゃないの」
32歳の人妻は、男にシャワーを浴びる暇すら与えず、
牡の証しを口に含み、熟女ならではの性技を駆使する。
女教師であることも、夫がいる身であることも忘れ、
激しい恋に身を焦がす――だって私はまだ女だから……。
現職の女教師作家(静岡在住)が描く、熟女の真実!
きょうこ(32歳)人妻
本編の一部を立読み
夫の不在。それは運命だったかもしれない。
夫に申しわけない気持ちが響子になかったわけではない。なのにそれを乗り越えてしまったのは、響子のなかに漠然としたセックスに対する不満が積まれていたからではないか。そしてすべての条件が重なって、二人の男女を結びつけたともいえよう。
運命――そう、運命のなかで二人は漂っていた。
ふっくらと盛りあがった陰阜を、文人の額から垂れた髪が撫でるように掃いた。それさえも響子には快感となった。文人の触れるもののすべてが、女体に潜む性的意識を掘り起こしていた。
「うううっ……」
強く結んだ唇の端から、耐え抜いた嗚咽がもれはじめた。それを機に、女陰の亀裂を行きつ戻りつしていた舌が、いきなり指先で剥きだしにされた肉の芽を撫でた。
「あうっ……ふううう」
電気を流された物体が跳ねるように、快感で赤く染まった響子の裸身がひきつった。
響子は裸身をよじらせた。逃げるつもりはなかった。刺すような快感にいたたまれず、反射的にそうなったのだ。
しかし、舌は再び遠のいてしまった。強烈な一撃を受けたあとの曖昧な動きに、響子はもの足りなさを味わった。
もっとして欲しかった……。
ベッドで望んだのは、この時が初めてだった。それなのに舌は、大道芸人を遠巻きにする群衆のように、秘唇の周辺を焦れったく這っている。
ああ、もっとして欲しい、もっと舐めて、もっと近くに寄って……。
苛立ちがつのるにつれ、いやらしい下半身の動きとなって表われた。それを響子も意識してやっていた。そうせずにはいられなかったのだ。文人が女の気持ちを理解できないのなら、いやらしい動きで自分の切なさを知らせたかった。
女だって、もっと強い刺激が欲しいものなの……。
それを伝えたい意識が、両手の思いがけない動きとなった。気づいた時には下半身に張りつく文人の後頭部を抱えこみ、同時に股間をせりあげていた。
髪を掴まれて驚いたのか、文人の舌が一時的に停止した。それだけで快感が途絶える。その虚しさに響子は、自分がいかに性的なものに飢えていたかを悟った。
「もっと」
思わず口をついて出た言葉。それは嘘偽りのない本音だった。
再び舌が活発に動きはじめた。濡れた秘唇を割って、舌が膣のまわりを舐めていく。
「はああああっ」
その安堵感が大きな溜め息となった。
クンニリングス。こんなにも激しい情熱の行為があったのはいつ以来だろうか。結婚して五年しかたっていないのに、はるか遠い昔のことのように思えた。一時的にせよ情熱的な夜もあった久信とのめくるめく行為は、驚いたことに女体が覚えていた。
気持ちよかった。響子は大声で、いかに気持ちいいかを叫びたかった。自分を興奮させ、文人を奮いたたせる真実の声を思いきり口走りたかった。