本販売日:2023/09/22
電子版配信日:2023/10/06
本定価:946円(税込)
電子版定価:990円(税込)
ISBN:978-4-8296-4685-4
俺が手にしたのは好きな幼馴染を寝取る力。
彼氏持ちの南鳥アヤをなんとしても俺のものに……
神の声(?)に導かれ、アヤに快感を刻み、処女を奪い、
種付けし、彼氏の元へ帰れない身体に塗り替える!
中に出されちゃった、もう私、何も考えられない……
eブックスでナンバー1の話題作、全面改稿で登場!
第一話 幼馴染を寝取る力を手に入れた(一日目)
第二話 幼馴染の体に快楽を刻み込んだ(二日目)
第三話 幼馴染の家で何度も種付けした(三日目)
第四話 幼馴染に初めて欲情した日(三日目・深夜)
第五話 大好きな幼馴染に会いたくなった(三日目・深夜)
本編の一部を立読み
観光バスの車窓から、ぼーっと外を眺める。
うだるような暑さで、歴史的な街並みが揺らめいて見えた。
今日は、高校の修学旅行の初日。
クラスメイトたちは、バスガイドさんの案内をすっかり無視して、ぎゃあぎゃあと騒いでいる。どうせ恋バナか、恋バナに近い話で盛り上がっているのだろう。恋愛とは縁遠い俺には、関係のない話だ。
ふと、隣の空席に誰かが座った。
「やっほー、ぼーやん何してんの?」
「アヤか。あー……外、見てた」
「外?」
俺の視界に、茶色いショートヘアがずいっと現れた。こちらに身を乗り出して、窓の外を見ている。白い半袖ブラウスがまぶしい。汗ばんだ綺麗なうなじについ目を奪われる。
「何もないじゃん」
そう言ってアヤがこちらを向いた。
「うっ……」
至近距離で見る彼女の可愛さに、つい変な声が出てしまう。
南鳥アヤ。
茶髪のショートヘアが特徴的な、同じクラスの女子。そして、俺の小学校時代からの幼馴染だ。
ボーイッシュな外見通り、明るくサッパリした性格で男子からも女子からも人気がある。そのくせ、顔が整っている。
小柄で比較的童顔だし、今はすっぴんなのも相まって「愛嬌のある可愛さ」にとどまっているが、化粧をしたら一気に「美人」に様変わりしてしまうだろう。少し勝ち気そうな口元は、いつも誰かの話し相手になっているせいかしっとりと艶めいている。その唇が真一文字に引き結ばれた。
「ちょっとぼーやん、『うっ』て何よ、『うっ』て……」
眉間にシワを寄せてむっとする表情も、これまた可愛い。馴れ馴れしく俺の肩をポテっと叩いてくるが、そこに力は込められていない。
この誰にでも人懐っこい感じが、アヤの数多ある魅力の一つだ。
まあ、ここまでスキンシップが多い相手は、男では幼馴染である俺ともう一人くらいなのだが。
「ああ、いやごめん……うわっと」
「わきゃっ」
観光バスが急ブレーキで止まり、その拍子でアヤが俺にもたれかかってきた。
むにゅうと、信じられないほど柔らかい感触が広がる。いつかクラスの男子が「Dか、いやEはあるぞ」とささやき合っていたバストが、俺の体との間で押し潰されていた。
一瞬、思考がフリーズする。反射的に彼女を受け止めようとしたせいで、抱きしめるような格好になってしまった。ふわりと、甘くて落ち着く匂いが鼻腔をくすぐる。高い体温が伝わってきて、密着する胸と腹がぐんぐんと熱くなっていく。
「んぅ……」
胸元に埋まる小さい頭がもぞと動き、二の腕にしがみついている細い指がピクリと震えた。独特のこそばゆさに全身が痺れそうになる。
観光名物の鹿が道路に出てきたのだと、運転手さんがアナウンスしている。
俺は急いで我に返った。
「アヤ、大丈夫?」
「うーん、ぼーやんゴメンね」
アヤが俺から体を離す。それなのに胸元の膨らみだけがなかなか離れていかないのも、その大きさを物語っている。アヤの数多ある魅力の一つだ。
ブラウスの第一ボタンが外されていて、そこから白い谷間が見えた気がした。
俺は慌てて視線を逸らす。
「そろそろ席戻ったら? 時田も心配するんじゃない?」
「あー……今日は、一緒に座ってないんだ」
アヤは目をそらし、どこか気まずそうな顔をする。
「へぇ、そうなんだ」
恋愛に疎い俺に、その表情の意味は分からない。だから、なんでもない返事をすることしかできない。
「うん……。じゃーね、ぼーやん」
なんとなく物悲しい顔をして、アヤは自分の席に戻っていった。クラスの男子たちが、そんな彼女の後ろ姿を視線で追う。
南鳥アヤは、クラスで二番目に可愛い女の子だ。
中学に上がり、男女の関係がよそよそしくなる年頃になっても、アヤは男子とも分け隔てなく接していた。
彼女は、男子女子構わず自分の考えたあだ名を付けて呼ぶ。一歩間違えば痛いヤツなのだが、そこにまったく嫌らしさや計算を感じないため、逆に好まれるという稀有な存在だ。
ちなみに俺の「ぼーやん」というあだ名も、アヤに「いつもぼーっとしてるから」という理由で名付けられた。
それが次第に「身長高くてぬぼーっとしてるから」「お坊さんみたいに悟って見えるから」といった属性が追加されて、今ではクラス中が俺をぼーやんと呼んでいる。
とまあそんな訳で、誰彼構わずフレンドリーに接するアヤにクラスのほとんどの男子が惹かれていた。じゃあなんで、そんな彼女がクラスで二番目なのかというと……。
「よお、ぼーやん……今さ、アヤと何話してたん?」
隣の空席に、スポーツ刈りの陽気そうな男が座ってきた。
アヤの彼氏の、時田だ。彼女が唯一あだ名で呼ばない男であり、アヤがクラスで二番目と言われる理由。
「別に……何してんのって聞かれただけだよ」
「んで、ぼーやんはなんて答えたん?」
「外、見てたよって」
「ぶはっ、なんだよそれ。相変わらずぼーやんだよなぁ、うくく……」
何が面白いのか、時田は馬鹿にするように笑っている。
「アヤのとこに行かないの?」
「あー……ちっとな、ぼーやんだから話すけど、ここんとこさ、ちょっと俺ら上手くいってないんだ」
「へぇー……」
「いや、もっと興味持ってくれよっ!」
時田は笑いながらツッコミを入れてきた。
「あー……うん」
「まあいいや、んじゃな!」
悪く言えば軽くて、良く言えば裏表のないさっぱりとした性格の男。つまりはアヤにお似合いの彼氏だと皆に思われている。俺もまあ、そう思う。
中学に上がってしばらくして、同じクラスだった時田はアヤに告白した。
振られても振られてもめげずにトライし、その勢いに負けたのか三回目の告白で彼女は首を縦に振った。
このとき俺もアヤからいろいろ相談を受けていたが、色恋に疎いせいで適当な返事しかできなかった。
アヤと時田は、今も喧嘩と仲直りを繰り返しながら付き合い続け、学校の名物カップルとして名を馳せている。
だから二番目。
彼氏がいるアヤを、皆おおっぴらに好きだなんて言えない。「確かにアヤは可愛いけど別の子のほうが好みだわ」などと予防線を張るのだ。
色恋に無頓着な俺にもその気持ちは分かる。人の彼女のことを可愛いとか好きだとか言うのは無用な波風が立つ気がするし、口に出したところで付き合える可能性なんてゼロなのだから、彼氏に対する敗北感を無意味に味わうだけだ。
だったら、他の子を自分の一番にしたほうがいいのだろう。
そんなことを考えていたらチクリと胸に痛みが走った。なぜだか心がモヤモヤする。
熱気に揺れる街並みが、さっきよりも歪んで見えた。
観光名所だという大仏様の穏やかな顔を、ぼーっと眺める。本当は班行動の時間なのだが、どうにも一人になりたくてこっそり抜けてきたのだ。
「はぁ……」
なんなのかよく分からない感情が、ため息となって出ていく。さっきから思い起こすのは、バスの中での柔らかい感触と甘い匂い。
幼馴染とはいえ彼女とあんなに密着したのは初めてだ。一瞬の抱擁だったが、もし数秒長く抱きしめたら、また違った感触を味わえたのだろうか。
「いかんいかん」
俺は両頬をパシンとはたいて煩悩を退散させる。別に実家はお寺ではないのだが、ぼーやんぼーやんと呼ばれ続けたおかげで、なんとなくお坊さんのようなメンタリティになりつつある。
「ぼーやん?」
耳をくすぐる猫のような声。振り返ると、アヤが立っていた。
なんとなく所在なさげにこちらを見つめている。
「アヤ、どうした? 珍しく一人で」
「ああうん……ちょっとねー」
人の輪を乱すようなことをしないアヤが班行動を抜け出すなんて珍しい。
「なんかあったの?」
「あの、さ……ぼーやん、ちょっと相談乗ってくれないかな?」
都合よく俺がいたからか、それとも俺を探してくれたのか。
後者だったらいいなと思いながら頷いて、二人で大仏様の裏手にあるベンチに並んで腰かける。
「で、どうした? 時田となんかあった?」
「え……? よ、よくわかったね」
事前に時田から「うまくいっていない」と聞いていなければ、鈍感な俺は絶対に気づいていなかっただろう。それはアヤの驚いた顔が十分に物語っている。
やがて、その長いまつ毛がそっと伏せられた。
「あのね……最近、時田が……なんていうか、強引なんだ」
「強引とは?」
「あー……なんていうか、え、エッチなこと、求めてくるといいますか」
「…………」
思わず沈黙してしまった。なぜだか分からないが、脳みそが上手く働かない。感情がまとまらず、頭がクラクラする。
アヤは俺の沈黙に妙な安心感を覚えたのか、「ぼーやんだから話すんだけどさ」と言って、赤裸々なカップル事情を話し始めた。
曰く、中学時代は恥ずかしくて、デートでもアヤは手をつなぐのが精いっぱいだったらしい。うん、これはアヤから聞いたことがある。
曰く、高校に入ってからは、時田のお願いに根負けして軽いキスと軽いハグはするようになったらしい。これは、初めて聞いた。
曰く、最近はハグをしていると強く抱きしめてきて、キスをするともっと激しいキスを催促してくるらしい。
…………。
情報量が多すぎて、過激すぎて、俺の脳みそが追い付かない。なぜか胸のあたりがギリギリと痛む。
さきほどの軽い抱擁の感触がまた蘇り、どうしてか無性に腹が立つ。
「……アヤはその、イヤだと、感じてるのか?」
かろうじて、そう聞けた。
「わかん、ない。時田のことはもちろん嫌いじゃないんだけど、そういうことしてくる時田はちょっと、こわい」
「そっか」
アヤは、意外にもウブな性格をしている。
男とも平気でフレンドリーに接するが、いざ恋愛対象として見られたり、女として扱われたりすると、途端に茹でダコのようになってしまう。
最初に時田に告白されたときも、顔を真っ赤にして両手でアワアワした挙げ句、その場から逃走した。
二度目に告白されたときなんて「む、むり、むりむり、むりむりむり」と壊れたラジオのようになっていた。
だから三度目のとき、何も言わずにコクリと頷いたのを見て、俺は心底目を疑ったものだ。
「ごめんっ! ぼーやん、いきなりこんな話されても困るよね」
俺が二の句を継げずに固まってしまったのを見て、アヤは急に謝りだした。
「え、いや、うん……」
「うん、ごめんごめん、でもなんかぼーやんに話したらスッキリしてきたよー、ありがとね!」
絶対そんなことないだろうに、アヤは笑ってそう言った。
遠慮なく人の懐に入ってくるように見えて、実は人の心に敏感で気にしいな性格。これは俺だけが知っている彼女の魅力の一つだ。
俺が再び黙ってしまったので、アヤは焦った様子で話を変えてきた。
「と、ところでさ、ぼーやんはその、気になる人とかいないの?」
気になる人、とは何だろう。アヤを抜いて気になる人は……特にいないな。
「いや、俺そういうの、よく分かんないんだよね。というか、俺が人と付き合うとか、想像できないっていうか──」
「もったいない!」
「へ?」
アヤが急に大きな声を出すものだから、俺も変な声を漏らしてしまった。
戸惑う俺に彼女がずいっと距離を詰めてくる。大きな二重の目にじっと見つめられ、顔が火照っていく。
「もったいないよ、ぼーやん!」
「えっと、何が?」
困惑していると、アヤが拳を握って断言した。
「ぼーやんは、もっとガツガツしたら絶対モテる!」
……モテる? 俺が?
お坊さんとか、女子と二人きりになっても絶対に変なことにならなそうだからアンパイマンとか呼ばれている俺が?
「みんな、ぼーやんの良さを分かってないだけ!」
アヤは、なぜか目に涙を浮かべていた。
俺の良さ……を、アヤは分かってるってことか?
そう思ったとき心臓がドクンと跳ねた。徐々に喜びに似た感情が体を満たしていく。俺は何かにすがるように、アヤを見つめ返した。
「そう、なのかな」
自分でも驚くほど頬が紅潮しているのを感じる。
なんだこれ。なんでこんなに嬉しいんだ、俺。
「そうだよ。だから私、ぼーやんに好きな人できたら、めちゃくちゃサポートするから!」
「……あぁ」
ガツンと、頭をハンマーで打たれたのかと思った。
浮かれた気持ちが吹き飛び、一気に奈落の底に落とされたような感覚に襲われる。
その後、アヤとは一言、二言会話をした気がする。「班に戻るね」と去っていく後ろ姿を見送った気もする。
気づけば、俺は大仏様を見上げながらぼーっとしていた。
俺は、悟った。
自分の気持ちに気づくのが遅かったことに。
アヤを好きな気持ちに、ずっとフタをしていたことに。
気づいてしまえば、俺は昔からびっくりするほど彼女に惚れていたことに。
そして今さらそれに気づいても、完全に手遅れだということに。
それなのに。
俺は今、恋い焦がれていた。アヤのことが欲しくて欲しくて、欲しくて欲しくてたまらない。
気づけば一心不乱に大仏様に祈っていた。
「もう……どうなってもいいから、俺にアヤをください」
『──叶えます』
「え?」
誰かの声が聞こえたかと思ったら、頭の中に大量のイメージが流れ込んできた。
泣いたり笑ったりしているアヤの映像が走馬灯のように流れる。でも不思議なことに、そこに映る彼女の表情はどれも俺が見たことのないものだった。
また声が響く。
『──叶えました』
ふいに視界が戻る。目の前には、温厚そうな大仏様が座っている。
幻聴、幻覚?
……いや、違う。
なぜか、そう確信できる。
きっと神様的な何か。
その何かは「叶えた」と言った。
でも別に、世界は何も変わってない。アヤが急に俺に惚れた、なんてこともないだろう。それもなぜか分かる。
「俺が、変わった」
活力のようなものが体の奥からあふれてくる。
どんなことでも、今の俺ならできる気がする。
どんなことをしても、誰も俺の邪魔をすることができない。
絶対に、アヤを手に入れることができる。
そんな確信がみなぎっていた。