デリヘル呼んだら一年前に振られた元カノが来た。

著者: 幻真

電子版配信日:2023/11/24

電子版定価:770円(税込)

初めてのデリヘルで、元彼女のかなでと再会するなんて!
ボディ洗い、極上素股──交際時にはありえない超絶テクに、
性欲、未練、葛藤……様々な感情が渦巻くなか、俺は何度も絶頂を……
かなでの口から語られる他の客との性遍歴になぜか昂ぶる俺。
指名を重ね繰り返される身体の関係、それとは裏腹にすれ違う心。
待ち受ける二人の未来は……eブックスでしか読めない歪愛NTR!

登場人物

かなで 水商売・風俗嬢

本編の一部を立読み

序章



 広い庭に囲まれた真新しい一軒家。
 夕焼けに照らされた外壁のタイルが、滑らかに光を反射している。
 丸い飛び石を踏みしめて玄関まで進み、可愛らしい装飾の施されたチャイムを鳴らす。
 ほどなくして扉が開き、愛する新妻の美しい笑顔が俺を迎えてくれた。
『おかえりなさい。あなた』
『ただいま』
 左右で長さの違う栗色のサイドへアを揺らして、薄紅色の瞳を輝かせながら微笑む俺の最愛の妻。
 ニットセーターを押し上げる豊かな双丘を弾ませながら、手に持ったままのお玉に気が付いて恥ずかしそうに後ろ手に隠す。そんな仕草すらも愛おしい。
『いい匂いだね。シチューかな?』
『あなたが好きな、きのこたっぷりのクリームシチューよ』
『ああ、それは楽しみだ。もう食べられるのかい?』
 そう尋ねると、彼女は悪戯っぽく口許を綻ばせて答える。
『仕上げをしているからもう少し……かしらね。お風呂なら出来てるわ。シチューはすぐ温められるし、先にお風呂にする? それとも──』
『……それとも?』
『私を食べちゃいたい? ふふっ、ベッドの準備もできてるから……ね♡』
『悩む……必要もない選択だな。可愛らしい新妻を──頂きます』
 手を伸ばして彼女の肩を抱き、顔を近づけていく。彼女のぷるぷると瑞々しさに溢れる桃色の唇へと──。

──触れたと思った瞬間、けたたましいスマホのアラームが鳴り響き、俺は目を覚ました。

「ん……なんでベッドに……って夢か。くそったれ」
 のろのろと身体を起こして室内を見渡す。見慣れた狭いアパートの散らかった部屋。いかにも男やもめの部屋と言わんばかりに散らかった猥雑な部屋だ。
 夢から現実へと引き戻された俺は、頭を抱えて呻いた。確か昨日の夜は、部下の桂木と居酒屋でしこたま呑んで……酔っぱらって家に帰ってきてすぐ寝たんだったか。
 しかしさっきまでの夢……目覚めた直後であるからか、かなり細部まで思い出せる。あんな夢を見るなんて、俺は自分が思ってたよりもよほど未練がましかったらしい。
 一年前に振られた女の事を未だに夢に見るとはな。しかもなんだあのアツアツ新婚生活は。恥ずかしすぎて悶死してしまいそうだ。あーでも……。
「いい女だったんだよなぁ……」
 おっぱいがデカくてケツもエロくて、なのに腰はキュッとしててよ。普段はクールぶってんのにベッドでは初心な少女みたいに声を押し殺して喘いでてさ。クソっ。逃した魚はデカかったよなぁ。
 溜息を吐いて会社に行く支度を始める。あいつに振られてからはどんな女も、ダイコンかカブにしか見えなくなっちまった。きっともう一生あんな女には縁が無いんだろうなぁ……。なんて思っていた。あの時までは──。



一章 デリヘル呼んだら元カノが来た



「なんか落ち着かないな。調度品も高そうだし、身分不相応ってのはこういう事を指すんだろうな……」
 普段目にする事のないしゃれた洋室で、その雰囲気を楽しむ事もできずにぶつぶつと独り言を零しながら落ち着きなく過ごす。
 ここは一泊で諭吉が何枚も飛ぶようなシティホテルだ。俺はそこで、人生で初めての経験を積もうとしていた。それは派遣型風俗とよばれる物。そう、つまりデリバリーヘルスだ。
 通称デリヘル。自宅や宿泊先に風俗嬢を呼び、性的サービスや疑似的な本番行為まで愉しめる大人の遊びである。勿論初心者の俺が自宅に嬢を呼ぶ度胸などある筈もなく。デリヘル代に加えて高いホテル代を支払っての行為である。
 社会人になってはや十年。本来なら度胸の無い俺が風俗なんて利用できるわけもなく、だというのにデリヘルを呼ぶなんてハイレベルな行為に挑戦した事にはそれなりの理由がある。
 俺にはかつて、結婚を約束した六つ年下の恋人がいた。二十九歳の時に知り合い、二年間の交際を経て、そして振られた恋人が。
 理由も告げずに別れを切り出され、数日後には借りていたアパートも引き払って消えてしまった恋人。最後に見た、涙に濡れた彼女の顔を今でも鮮明に思い出せる。あそこまで追い詰めたのだ。自分ではまったく心当たりがなかったけれど、きっと知らぬ間に傷つけていたのかもしれない。そんな事もわからない俺だからこそ振られたのだろう。
 まぁ過ぎた事を愚痴っても仕方ない。つまり俺はデリカシーの無い最低野郎って事だ。振られた元カノがエロくて可愛かったせいで、そこらの女と今更付き合うなんて考えられなくなっちまったから、プロのテクニックで忘れさせて貰おうなんて考える、割とクズな男ってだけだ。
 顔はまぁそんな期待してない。それなりの金は払ったし、極端な不細工やデブは来ないと思うが、ぶっちゃけプロのテクが味わえるならまぁ多少は妥協するつもりだ。つーか初めてなのにチェンジとか言う度胸なんて俺には無い。
 ネットの掲示板やブログ記事では、やっぱり素人とは比べ物にならないような気持ち良さらしい。見た目がアレでがっかりしてたら凄まじいバキュームフェラであっという間にイカされて複雑な気持ちになったなんて奴もいたな。手で扱かれるのも自分でするのより全然気持ち良いとかなんとか。正直かなり楽しみだ。
 と、そんな益体も無い事を考えているとスマホから通知音が聞こえてきた。間もなく到着するのでチャイムが鳴ったら開けてほしいという連絡だ。ヤバい。落ち着かない。女性の容姿を選べる立場ではないとわかっているが、どうせなら好みのタイプに近い方が良い。無意識に脳裏に元カノの姿を思い浮かべた瞬間、チャイムが鳴った。
「うおっ。はい、今あけます!」
 ガチャリとノブを捻って扉を開けた瞬間──俺と彼女は同時に硬直した。
「士郎……さん?」
「かな……で?」
 部屋を訪ねてきたデリヘル嬢は、一年前に俺を振った元カノだった。

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