動画配信サイトで寝取られる僕のカノジョ

著者: 懺悔

電子版配信日:2023/11/24

電子版定価:770円(税込)

軽音学部の柳井凛に声をかけられ、ボッチの僕は恋に落ちた。
ある日見た投稿動画サイトに、凛によく似た美少女が、
サークルの先輩に酷似した男にバージンを奪われている姿が……
生で挿入されて、アナルを貫かれて絶頂しているこの子が、
クールなのに優しくて、すごく寂しがり屋な僕の彼女のわけがない。
でもどうして、僕の瞳からは涙が流れているんだろう。
NTRエース・懺悔が贈るビタースウィートな書き下ろし青春短編。

登場人物

りん 女子大生

本編の一部を立読み

前編



 冴えない高校生活だったと我ながら思う。同級生にとって自分はさぞ空気のような存在だっただろう。
 このままではいけない。卒業式の日に強くそう願った。
 大学に進学すると共に一念発起すると、身なりを整えて第二の人生を歩むつもりで自分を変えた。
 いわゆる大学デビューである。
 といっても人はそんなに急には変われない。外面だけ小奇麗になったとしても中身は根暗なままだ。
 今日も友達が出来なかったと陽が暮れ始めた大学のキャンパスをトボトボと歩いて家路につこうとする。
 そんな僕の背中に声が掛かった。
「ねぇそこの君。良かったら軽音学部に入らないかい?」
 振り返るとそこにはショートカットの女の子が居た。可憐、というよりかはどこか中性的な凛々しさを感じる顔立ち。Tシャツにジーンズというラフな格好は、彼女のスタイルの良さを際立たせている。
「え、僕?」
「そう君」
 こういったやり取りはそこまで珍しい事ではない。各サークルが新入生を取り合うのは春の名物だ。
「楽器弾けないけど」
「大丈夫。練習すればすぐに上達するよ。何ならボーカル専門でも良い。あ、私の名前は柳井。柳井凛」
 名は体を表すとは本当だった。
「……どうして僕に声を掛けたの?」
「寂しそうだったから」
 図星を突かれて黙ってしまうと彼女は言葉を続ける。
「私も寂しがり屋だからさ。同士は分かっちゃうんだよね。だから良かったら、私のギターで歌を歌ってくれないかい? 軽音学部はロックが好きな人が多くて、私のやりたい音楽のパートナーが中々見つからなくてさ」
 そう言いながら手を差し出してくれた。
「いや、あの、歌には自信が無いんだけれど」
「練習すれば大丈夫だよ。それに君の柔らかくて淡い声は私のギターに凄く合いそうだ。一か八かで声を掛けてみて良かったよ」
 そう言うと彼女は再びぐいっと手を差し出して来た。
 僕は勇気を振り絞る。この機会を逃してはならない。僕はその手を握った。
「あの、僕は徹。士道徹」
 彼女はやはりボーイッシュな顔立ちで優しく微笑んだ。夕日を背後にしたその笑顔はどこか神秘的にすら感じる。
「格好いい名前だね。侍だ」
「えっと……先輩、ですよね?」
 彼女は小首を傾げる。
「いや、私は一年だよ」
「そうなんだ。やけに風格があると思って……」
「あはは。ただの世間知らずな新入生だよ。改めてよろしく。徹」
 そして僕は大学生で初めての友人を得て、そしてその友人に殆ど一目惚れのように恋に落ちた。
 といってもそれまで僕はろくに恋愛経験が無かったので、暫くは凛に対して恋愛感情を抱いている事を自覚出来なかった。ただ刷り込みされた子ガモのように凛の背中を追って行ったのだ。
 彼女はアコースティックギターを弾き、そして僕はそれに合わせて歌った。彼女の選ぶ曲は少しマイナーな音楽で、しかしどれもポップなものだった。物悲しい歌詞の曲が多くて妙にそれが僕に心に沁み込む。未経験者ながらも彼女の楽器の腕前は相当高い事が僕にも分かった。彼女の奏でる音色はその外見と同様に透明感で人を魅了する。そして僕の歌は人並みだったと思うが、どういうわけか凛は僕の歌声を気に入ってくれた。
「どこか影があって、でもとても優しい。徹の声を聞くと安心するんだ」
 凛の言葉はどうやら嘘ではなく、本当に僕の歌を気に入ってくれているようだった。その証拠に凛はその端麗な容姿に加え優れた技術を持ち、軽音楽部でも引く手数多だったがどういうわけか僕以外とはバンドを組まないでいた。
 その理由を問われると、「徹とのユニットで満足している」と語ったのを先輩伝手で聞くことになる。
 僕はそんな彼女の気持ちに少しでも応える為にギターを始めた。僕も楽器を弾ければライブで演奏できる曲に幅が広がると考えたのだ。
 不器用で適正があったとも思えない僕のギター練習に対して、凛は見守りつつも優しく助言をくれる。僕が音楽に前向きなのが彼女も嬉しかったようで、僕の部屋まで訪れて夜が更けるまでつきっきりで練習に付き合ってくれたりもした。
 そんな二人三脚で活動を続けて半年以上が経った頃に、とある先輩に尋ねられる。
「お前らって付き合ってないの?」
 不躾にそう聞いてきたのは、一つ上の学年の東田先輩だ。ウェーブの掛かった金髪をなびかせて、激しいパンクギターをかき鳴らす姿は女性のファンが多く、また彼も好色で女遊びが激しいとの噂が途切れなかった。
「いや、そういう関係じゃないですね」
 東田先輩はタバコの煙をふかしながら、攻撃的な目つきを細める。
「あれだけ仲良いのに勿体ないな」
「……一緒に音楽やってるだけですから」
「二人でよく出かけてるだろ?」
「機材とか買いに行ってるだけですよ」
「マジかよ。ついでにデートとかしてこいよ。折角二人きりなんだから勿体ない。凛ちゃん可愛いから狙ってる奴多いぞ。気をつけろよ」
 そう言うとタバコを灰皿に押し付けて火を消して、僕を激励するように背中を何度か叩いて去って行った。強面だが気さくに話し掛けてくれる先輩だ。
 俺が凛と付き合う。
 あまり想像が出来ない。
 このままの関係性で満足している自分が居る。しかしそれ以上に親密になりたいという気持ちもある。しかし僕が凛に恋愛感情を打ち明けたら、おそらくは今までのような関係は破綻してしまうかもしれない。ユニットだって解散する可能性がある。それを僕は恐れている。
「どうしたの?」
 学校帰り、凛と二人でギターの弦を買いに行ったついでに寄った量販店のカフェで向かい合った僕に凛が怪訝そうに尋ねた。
「考え事」
「私で良かったら相談してよ」
 彼女の声はいつ聞いても澄んでいる。そしてその周囲にはマイナスイオンを漂わせているかのような存在感だ。
 僕は多少の緊張を携えながらも悩みを問いかけてみる。
「今のままで幸せなんだけど、もっと幸せになれるかもしれない挑戦がある。でもその挑戦に失敗したら不幸になるんだ。凛ならどうする」
「私なら挑戦するよ」
「やけに即答だね」
「たとえ崖の下に落下しても、徹が引き上げてくれるだろう?」
 涼し気な微笑みで彼女はそう言う。
 その言葉で僕は覚悟を決めた。きっと僕が振られても、彼女は僕に手を差し伸ばしてくれるだろう。
 そう確信したのだ。
「実は、凛の事が好きなんだけど」
 混雑しているカフェの喧噪の中、僕は勢いに任せて告白した。周囲の騒音で愛の言葉が打ち消されないか心配だったが、凛にはきちんと届いていたようだ。
 彼女は軽く目を見開いて、右手の長細い指でストローを持ったまま数秒固まったまま僕を見つめる。
 そして何事も無かったかのように目を瞑ってストロベリーフラペチーノを一口飲んだ。
 再び瞼を開けると僕の目を真っすぐ見つめる。
 そして落ち着き払った様子で口を開いた。
「私も徹の事は好きだよ。一緒に居て安らぐし、何より優しく淡い歌声は本当に私が求めているものだった。でもこの感情がライクなのかラブなのかがまだ判断がつきかねるというのが正直なところだ」
 僕はその言葉を真摯に受け止める。少なくとも彼女が僕を一人の人間として、そして音楽のパートナーとして本気で気に入ってくれている事が伝わりそれが何より嬉しかった。それだけで告白して良かったと感じる程だった。
「そうか。そうだよね。急に言われてもね」
「そうだね。だから……うん。とりあえず付き合ってみようか」

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