本販売日:2025/08/08
電子版配信日:2025/08/15
本定価:1,199円(税込)
電子版定価:1,199円(税込)
ISBN:978-4-8296-7951-7
特殊組織「九課」構成員の性欲を解消するため、
「慰安係」に指名された有坂響と赤月沙里奈。
愛する者や己の尊厳を守るため、必死に快楽を堪えるが……
エース作家・懺悔にしか描けない「絶対NTR」!
eブックスの人気シリーズに書き下ろし短編×2収録!
『case1 機械仕掛けの響』
プロローグ 有坂響
第一話 慰安任務
第二話 膣内射精
第三話 運命の日
エピローグ 切り開いた未来
書き下ろし後日譚 二人の明日
『case2 閃烈なる赤月』
プロローグ 赤月沙里奈
第一話 指名
第二話 アフターピル
エピローグ 眠れない夜
書き下ろし後日譚 二人の日常
本編の一部を立読み
プロローグ 有坂響
日本がスパイ大国と評されるようになって長い時が経った。各国の諜報員が大手を振って我が国で活動をしているというのだ。
しかしそれを呆けて見届けているだけの楽観主義者だけではない。水際対策として結成された組織が存在する。
しかしそれは表に出ることは無かった。
テレビやインターネットのニュースになることは無く、ただひたすらに陰から日本を支える者達。
けして称えられることは無い。時にはテロを未然に防ぎ、殉職したとしても事故死として処理される。
彼らを動かすことができるのは官房長官からの勅命のみ。
いつしか彼らは『九課』と呼ばれるようになった。
警察や自衛隊の上層部でもその存在を知る者は一握りである。
何名から為る組織なのか。どういった活動を行っているのか。それらは全て厚いベールに包まれている。
噂では幼少の頃から特殊な訓練を受け、さながら現代の忍びのような英才教育の結晶であるとも言われていた。
岩城航(いわきわたる)はその一員である。
年齢は二十八歳。
ぱっと見は何の変哲もない男性であった。
現在は都内の大手総合商社に属している。企業スパイに対する防壁となることが彼に課せられた任務であった。社内では少し無愛想だがどこにでも居そうな青年を演じている。しかし裏では喜怒哀楽を全く表に出さない鉄面皮であり、そして何よりネットワークに精通するエキスパートであった。
岩城は九課の仕事が自分にとって天職であると自覚している。
何者にもならなくて良い。
ただ一つの影となり、与えられた仕事をこなす。
来る日も来る日も、己を擬態して海外の諜報員から情報を保護する。
それが彼にとっての平穏だった。
静かなること林の如く。動かざること山の如く。そんな言葉を体現したかのような精神は虚無ですらあったが、彼はそんな自分に満足していた。
しかしある日、彼は生まれて初めて心が波立つ感覚を覚える。
出会うべきではなかった。
九課の新人。有坂響(ありさかひびき)。
彼女との初顔合わせの時から嫌な予感はあった。心がざわついた。長い黒髪に切れ長の瞳。細い顎。色白で透き通るような肌。黒い細身のスーツが似合うすらりとした痩身。
彼女はどう見ても美しかった。
それ以上に岩城は彼女の内面に自分と似通ったものを感じて惹かれてしまう。まるで空洞のような心。
鏡写しのような存在。初めてこの星で、同種の生き物に邂逅したとすら感じた。それからというもの、岩城は夜な夜な彼女のことを考えるようになる。
時には響を想ってマスターベーションをすることがあった。性欲など幼い頃から皆無だったはずの彼は、目を瞑ってその顔を思い浮かべて手淫するだけで射精まで至ることができる。
そんな自分の変化に不安を抱きながらも、崩れ始める平穏を食い止めるすべを彼は持たない。