テレビのアイドルも、電車内のOLも、みんな全裸!?
衣服を溶かすウイルスが突如蔓延し全人類が裸になった世界。
片想いしている大学の女友達・柊木静音のおっぱいが丸見えで、
勝ち気な与野莉々子は勃起した俺のチ×ポを睨みつけてくる。
二人とのお泊まりをきっかけに、エッチに興味津々な柊木さんと
意外とシャイな与野さんとハーレム開幕!? 限定書き下ろし短編収録!
【第一章 全裸生活、始まりました】
【第二章 柊木さんと与野を自宅へ誘おう】
【第三章 ふたりとの思い出】
【第四章 暴かれた夜這い】
【書き下ろしSS 自然公園で遊ぼう!】
本編の一部を立読み
【第一章 全裸生活、始まりました】
その日、世界から衣類が消えた。
事の起こりは、世界に喧嘩を売りまくっていた某国が、大国という大国から政治的にも軍事的にも追い詰められて、自暴自棄になったところから始まった。追い詰められた結果、かの国はなんと、全世界にとんでもないウイルスをばら撒きやがったのだ。
ニュース番組のテロップには、そのウイルスの厳めしい正式名称が浮かんでいる。
しかし俺たち一般市民の間では、そのウイルスはこのような名前で呼ばれていた。
服を食うウイルス。
通称、服食ウイルス。
名前の通り、そのウイルスは、「服を食う」ウイルスだった。
身につけるものであれば、下着やシャツ、スカート、ズボン、なんだって食い荒らす。いや、実際にはウイルスが食っているわけではなく、より正確な表現としては組織を分解している……ということらしいのだが、細かいことは素人にはよく分からない。
ただ、一般人である俺たちにも、分かること。それは、ウイルスに食われた衣類は、瞬く間に分解されて、やがてその全てを消滅させてしまうということだけ。
ウイルス自体に知性があるのではと感じさせるほどに、ヤツは人が身につける衣類だけを狙って破壊していった。
それはたとえば鞄や雑誌のような本来衣類でないものでも、標的となる。鞄などは普通に置いてあったり持ち歩く分には問題ないが、身体を隠そうという明確な意思のもと身につけた瞬間に、全てがウイルスに食い破られてしまう。服を食う、という通称に恥じぬ、恐るべき衣類への執念が、そのウイルスには感じられた。
ある科学者は、テレビで叫んでいた。
──こんなものはウイルスではない。
──宇宙から舞い降りた、未知の知的生命体の攻撃を食らっていると言われた方が、まだ信じられる。
と。
この国で服食ウイルスが流行り始めたのは、一週間ほど前のことだっただろうか。とにかく気がついたら全裸にされていて、クローゼットを開けてみても、あらゆる衣服が消え去っていた。
当然そんな状態で日常生活が送れるわけもなく、誰も彼もが部屋に引きこもってしまった。
しかしそれでは経済が立ち行かない。服食ウイルスへの対策も後手後手に回っており、未だ服を守る術は見出されていない。
そこで公然わいせつ罪の即時改正が求められ、この国のトップがそれを受諾したのが、つい昨日の話。今のこの国では、全裸で外を出歩いていても、それだけで罪に問われることはなくなっていた。
ニュース番組は場面が切り替わり、国会議事堂の様子が映し出された。そこには服を一切着ていない、全裸の総理大臣が映っている。ついでにいうなら、それを見守る官房長官も、取り囲むマスコミの背中も、もれなく全員が全裸だった。
総理大臣は演台に手をついて、辛うじて局部の映し出されない画角でカメラに向かって喋っている。
『えー、国民の皆様。例のウイルスの蔓延により、この国の衣類という衣類は壊滅状態にあります。また、これらウイルスへの有効な対応策なども、研究機関総出で、えー、解析を進めております。ですが、ウイルスを原因とする経済の停滞を引き起こしては、二次被害的に国内情勢が危ぶまれる危機であります。そういったわけでありまして、えー……誠に遺憾ではございますが、』
次の瞬間、彼は全国中継を通じて、自らの治める国中に向かって宣言したのである。
『たった今より、我が国は日常生活の一切を、全裸で行うことを決定いたします』
ざわざわ……、とマスコミがわざとらしく騒つくのが、妙に腹が立った。
総理大臣はやにわに騒がしくなってきた会見場で、やけに大きな声で次のように主張する。
『えー、ご覧の通り、皆様。国民の規範といたしまして、私はこのように局部を隠してはおりません。ペニスも、ヴァギナも、皆様の体に必ずあるものでございますから。それらが見えていること自体を悪として扱うこと、それ自体が、この新しい時代ではナンセンスなわけでして。国民の皆様におかれましても、どうか本日より経済活動、社会活動を再開させて、この国の未来を停滞させることのないように……』
言い訳がましいことをまくし立てているこの国のトップを見ているのがしんどくなり、俺はリモコンを手に取る。チャンネルを回すが、どこの局も似たような場面を映していた。真面目くさった顔した政治家たちが、全裸のまま公共の電波に乗り、新生活様式を国民に訴えかけている。
ザッピングを続けると、ある局では国民的アイドルグループが歌っていた。年齢層の高い政治家たちの裸ではなく、まだ年若い彼女らの裸はあまりにもセンセーショナルだった。
顔を真っ赤にした女の子たちが、昨年流行したヒット曲を披露している。歌も踊りも、前に見たときよりもずっとぎこちない。けれど彼女たちは体を隠すことなく、いやむしろ裸を積極的に見せつけるようにダンスを踊っていた。
一種のプロパガンダのようなものなのだろう。国民的アイドルグループの彼女たちが、裸でも臆することなく活動をしている。だから国民の皆さん、特に女性の皆さんも、外に出かけて日常生活を送りましょう……と。
このプロパガンダに、どれだけの効果があるのかは分からない。だが男の俺にできることといえば、即座にビデオレコーダーを起動して、全裸で歌い踊るアイドルグループの勇姿を記録に残しておくことだけであった。
アイドルグループの曲披露が終わり、画面は再び政治家の全裸に戻った。
テレビを消す。途端に、真っ暗になった画面には、ワンルームマンションに暮らす俺の部屋が映る。
窓際のシングルベッドと、その横のローテーブル。しまっていない漫画雑誌、片付けていないゲーム機、出しっぱなしの大学ノートが、あちこちに積まれた雑多な大学生男子の一人暮らしの部屋。
そしてその部屋の主人である俺の姿は、中肉中背のどこにでもいる男……で、もちろん全裸姿だ。
窓を開け、外を見やる。目の前の道路には、股間を隠しながら出勤するサラリーマンの姿がある。
肩がけ鞄を身につけながら、必死に腕だけで胸元と局部を隠そうとする女子高生。
もはや完全に全てを諦めたのか、どこを隠すこともなくフルチンで颯爽と歩く壮年の男性。
事の重大さを何も分かっていないのか、天真爛漫な笑顔で全裸で走り回る女児と、顔を赤くして追いかける全裸のお母さん。
季節柄、暑くもなく寒くもない季節で、まだ助かったといったところだろうか。暑さはともかくとして、冬になり寒くなってきたら、服もなしにどうなるのか……と一抹の不安がよぎる。その頃には、ウイルスへの有効な対策が打ち出されていることを、期待するしかあるまい。
月曜日だった。俺もゼミの集まりがある日だ。大学に行かないといけない。
ふと窓の外を見下ろしながら、自分の下腹部がむくむくと膨らんでいることに気がつく。
……どうやら、全裸を恥ずかしがる女子高生やお母さんの姿を見て、興奮してしまったらしい。女児は……いや、ノーコメントで。そんなの、はい。興奮するわけないじゃないですが、あんな小さな、ねえ?
ともかく俺は下腹部の興奮を抑えてからでないと、とても部屋を出られそうにない。
俺はこんなんで、新しい生活様式……全裸生活を無事に乗り越えることができるのだろうか……。
いや、それでも俺は乗り越えてみせる。
この新時代を乗り越えてこその若者だってところを、見せてやるぜ!
☆ ☆ ☆
「乗り越えられるわけがなかったね」
満員電車に揺られながら、俺はぽつりと呟いた。
俺の名前は波多江秀一。今年で晴れて成人も迎えた、大学生だ。
今の俺は一人暮らしのマンションから、電車で数駅の場所にある大学キャンパスに向かうため、満員電車に揺られている。
だが、この満員電車はいつもの満員電車とはまったく異なる。なにせ、乗り込んでいる人の全員が、服を着ていない全裸姿だ。
スーツもネクタイもシャツもズボンもスカートも、誰も彼も何も着ていない。辛うじて皆、鞄だけは持っているようだが、それも身体を隠すことに使おうとすればウイルスの毒牙にかかる。
全裸での日常生活が始まったばかりということもあり、まだ部屋を出ることに抵抗を覚える女性が多いのだろう。電車の中には、常よりも男性が多いように思えた。だが、アイドルグループの文字通り体を張ったプロパガンダのおかげか、女性の姿も少なくない数見受けられる。
ぎゅうぎゅう詰めで走る車内で、俺はOLさんと思われる女性と向かい合うようにして密着していた。
黒髪を頭の後ろでバレッタでアップにまとめている、やや童顔の女性だった。Cカップほどのおっぱいは俺の胸板につぶされて、むにゅっと形を変えている。そして俺の硬く勃起してしまったチ×ポは、ずっと彼女の下腹部に押し当てられてしまっている格好だ。背中からは別の乗客が押してくるため、離れようにも離れられない。
頭一つ分小さなところにあるOLさんの顔は、俺と目を合わせないようにしつつも、密着する俺を意識しているのがはっきりと分かる。その真っ赤に染まった顔には、「女性専用車両に乗ればよかった」という心情が極太の黒ペンでデカデカと書かれているようだった。
今朝方『この新時代を乗り越えてこその若者だってところを、見せてやるぜ!』みたいなことを、キメ顔でモノローグしてたのは忘れてほしい。
いや、むりだって。全裸の女の人が、街中を普通に歩いているんだよ。しかもそのほとんどの人たちが、突然全裸での生活を強要されたせいで、裸をさらすのを恥ずかしがってるんだよ。そんなもん見せられたら、勃起するなって方が難しいよ。
ただでさえ駅構内にいた時ですら、勃起したチ×ポを辛うじて手で隠していたような状態だったんだよ。
それが電車に乗ったら、けっこうかわいいOLさんと全裸で触れ合っちゃってんだよ。まだまだ若いOLさんは肌もすべすべで、恥ずかしがっているのかドキドキしてる心音も伝わってきて。勃起したチ×ポの先から、先走り液が漏れ出て、俺たちの下腹部をわずかに濡らしているのすら分かるもの。しかも車両が揺れるたびにチ×ポがこすれて、いつ暴発してしまってもおかしくない状態だ。
これはもう、公衆の面前で大恥をかくことになるか……と覚悟をしたところで、ようやく俺の降りる駅に到着した。
『秦嘉山〜、秦嘉山〜』
車掌さんがいつも通りの調子で駅名を読み上げるのに、今はひどくホッとする。
「おります! すみません、おりまーす!」
右を見ても左を見ても裸ばかりの人垣をかき分けて、ホームへと降り立つ。
ふと隣を見ると、先ほど俺がチ×ポを擦りつけていたOLさんも降りていた。
まさか、痴漢として駅員に突き出される!?……と思ったら、彼女は肩にかけていた鞄から、定期入れを取り出した。どうやら彼女も、俺と同じ駅で降りるだけのようだ。
「あ、えーと。その、すみませんでした。車内では……」
申し訳なさからそう声をかけると、OLさんはビクッと肩を震わせた。
「あ、ううん……だいじょぶ、よ」
そう返してくれたOLさんのおへその下あたりは、俺のチ×ポが塗りつけたのだろう先走り液でてらてらと輝いている。
しばらく俺たちは、ホームでお互いに黙り込んでいた。だが、俺たちを降ろした電車が発車したところで、彼女は沈黙に耐えられなくなったらしい。
OLさんはぺこりと俺に一礼をすると、足早にその場を後にする。ぷりっとしたお尻が遠ざかっていくのを見つめながら、俺は未だにチ×ポがジンジンと熱を持っているのを感じていた。
その場に残された俺は、まだ人の多い駅のホームで、ぽつりと呟く。
「すげーシコりてえ……」
☆ ☆ ☆
ただでさえ遅刻しそうだった俺は、シコる暇もなく目的地の大学キャンパスへと足を踏み入れていた。
見慣れたキャンパス内も、目を疑うようなとんでもない光景が広がっている。
これまでの町並みで見かける全裸姿は、おっさんやおばさん、おじいちゃんおばあちゃんといった年齢層の方々も多くいた。ところが大学キャンパス内は学校であるという特性上、まだまだ若い二十歳前後の全裸が集まっている。
大きなおっぱいをゆさゆさと揺らしながら、恥ずかしそうに胸元を隠して歩く女子大生。
やだー、と大きな声で悲鳴をあげながら、手で局部を隠しているギャルグループ。
長い黒髪を垂らした文学少女然とした女性もまた、真っ白な肌を赤く染めて体の前面を手で隠そうと四苦八苦している。
そしてそんな女性陣に混じって、勃起したチ×ポを隠すように前かがみになっている男性もいくらか見受けられた。
俺の通う大学は、男女比で見ると女性の学生の方が多い。その理由としては、もともと女子大だった学校が、近年になって共学になったという背景がある。
街中を歩いていた時よりも、この大学キャンパス内の方が女性の人数が多いように感じられた。大学まで辿り着けば同性の方が多い、という女性たちの心理的なものも手伝ってだろうか。
「ちょっと男子! 勃起してんじゃねーよ!」
見ず知らずのギャル女子大生から文句をつけられて、俺も慌てて勃起したチ×ポを隠す。
いや、でも無理があるだろ。あのギャル女子大生だって、逆の立場だったら絶対に勃起しているはずなのに。
というかそのギャル女子大生も、よくよく下腹部を見やれば、内股にツーッとキラキラ輝くテカリのようなものが見えた。
あれって愛液だよな……。くそ、女子だって同じくらい興奮しているんじゃねえか。
勃起という分かりやすい興奮の証がある男子は、こういう時に辛い。周りを歩く女子の姿を、あまり視界に入れないようにしよう。
俺は軽く俯いた姿勢のまま、キャンパス内を小走りで駆け抜ける。よく見るとキャンパス内の連中は、どいつもこいつも小走りだ。考えることは皆同じらしい。
キャンパス内に林立する学舎のひとつに、ようやくのことで足を踏み入れる。いつもならば、まずエントランスに向かって、学生向け掲示板に重要なお知らせが貼り出されていないか確認するところだ。だが全裸生活初日の今日ばかりは、そんな気にもなれず、すぐに階段を登る。
今日の俺が大学に訪れた理由は、ゼミの集まりがあるからだった。ゼミの集まりは講義のひとコマに数えられており、いくらこんな状況とはいえ出席しておかないとまずい。
集合場所は俺が師事している先生の研究室ではなく、一般の教室のひとつを使用している。俺は人影のまばらな廊下を突き進み、慣れ親しんだ教室の扉の前に立った。
……緊張するな。
この扉を開ければ、その向こうに俺の見知ったゼミ仲間が待っている可能性が高い。
果たして、いつもの通りに振る舞えるだろうか。この全裸の姿で。
胸に一抹の不安を抱えながらも、ここで引き返すわけにはいかない。俺はゆっくりと教室の引き戸を開けた。
「あ……波多江くん」
「お、おお、柊木さん」
教室には先客がいた。
柊木静音。俺と同じゼミ生の女の子だ。
清楚な黒髪ロングに、日焼けという機能自体が備わっていないとしか思えない、白磁器のような肌が美しい。細いフレームの眼鏡越しに覗く慈愛に満ちた垂れ目は、小動物のように庇護欲を誘う愛らしさだった。
普段であれば彼女は、ピンクやベージュのかわいらしいフェミニンな服装に身をつつんでいることが多い。しかし今の彼女は、その身に一切の衣類を身につけていない、すっぽんぽんだった。
ちなみに眼鏡に関しては服食ウイルスの毒牙にかかることはないらしく、今も彼女は普通にかけている。おそらくレンズ部分が透明であるため、体を隠す用途ではないという判断にあたるのだろう。ウイルスが判断するというのも、不思議な話ではあるのだが。
柊木さんは、そのなだらかなカーブを描くなで肩も。服の上からでも随分と大きいなと思っていたおっぱいも。ぷりぷりとしたお尻や太ももも。ふさふさとやわらかそうな陰毛も。それら全てが、LED照明によって明るく照らされてしまっている。
柊木さんは定員二十名の小さな教室の中、生真面目にいちばん教卓に近い席に座っていた。姿勢正しいものだから、ただでさえ大きなおっぱいが、さらに強調されて大きく見える。
柊木さんはその女の子らしい性格が気に入っていて、俺が密かに片想いをしていた相手だった。そんな彼女が目の前で全裸になっているという事実に、下腹部のチ×ポは喜びが隠しきれない。
柊木さんは顔を真っ赤にして、困ったように笑っていた。
「もー。波多江くん、大きくなっちゃってるよ?」
「あ、わ、悪い……っ!」
「う、ううん。男の子だもん、仕方ないよね。あたしも、気にしないようにするから」
「隠すから、あんまり見ないでくれ……」
慌てて手でチ×ポを隠すが、大きく膨らんだそれはもはや手のひらでは隠しようがない。
今まで見てきた全裸は行きずりの女の子たちのものだったが、今目の前にいる全裸は、見知った女の子のものだ。しかもそれが密かに想いを寄せている子のものだとなれば、興奮も段違いだ。
あー、つーか……俺、片想いの女の子に、めちゃくちゃ勃起してるところ見られてんのか……。
一体どう思われてんだろ。
女の子の裸を見るだけで勃起しまくる、盛りのついた犬を見るような目で見られてんのか。それとも、私の裸を見て興奮してくれてるのね……きゃっ嬉しい♡的な……そんなことはないな。むしろそんな痴女みたいな考えしてるんだったら、片想いの熱も冷めるというものだ。
俺は、柊木さんとひとつ席を挟んだ隣に腰を落ち着ける。ふとチ×ポを見下ろすと、亀頭からぬるっとした先走り液が雫のように浮かんでいるのに気がついた。
「なんだか、すごいことになっちゃったね」
と、隣から柊木さんが俺に話しかけてくる。全裸になったとしても、日常会話をすることで、普段のペースを取り戻したいということだろうか。
「これまではあんまり現実味がなかったけど、波多江くんが裸なの見たら、急に実感が湧いてきちゃった」
「ああ。やっぱり知り合いの裸って、インパクトがすごいよな」
「ね。波多江くんの体って、そんなだったんだって……あ、ごめん。見ないようにって話だったのに」
「いや、構わないよ。どうせこれからずっと裸で向き合ってかなきゃいけないんだから。ずっと見ないようにするのも、お互い難しいだろ」
「そう、だね……。これからずっと、なのかな……」
柊木さんはそう言って、ふう、と溜め息をついた。
今全世界を包み込んでいる全裸の状況は、某国がばら撒いた「服食ウイルス」が原因だった。効果は服を食うのみで、人体に影響は一切無い。ウイルスの猛威は凄まじく、外套や靴を含む衣類の一切合切を食い荒らしていった。
現時点でそれらウイルスへの、有効な対策は打ち出されてはいない。
もしかしたら案外すぐにウイルスに対抗するワクチン的なものが生み出されるかもしれないし、逆にずっと全裸の生活が続くのかもしれない。
しばらくして柊木さんは、「あたしのことも、気にせずに見てくれていいからね」と、強がるような笑みを浮かべて言った。
では失礼して……と、その豊満なおっぱいを注視するほどの図々しさを、今の俺は持ち合わせてはいなかった。
俺がどう返事をしたものかと迷っていると、教室の引き戸が荒っぽく開けられる音が耳に飛び込んでくる。
俺と柊木さんが同時に入り口の方向を見ると、そこにはひとりの女性が立っていた。
うっすらとウェーブのかかった茶髪を、肩まで伸ばしている。はっきりとした目鼻立ちをしており、こちらを威圧するようなツリ目で教室内を睨んできた。その視線が俺の姿を捉えると、彼女は臆面もなく「げっ」と声を漏らす。
そんな彼女に向かって、俺は言った。
「なんだよ。目が合うなり『げっ』とは、ご挨拶だな与野」
彼女は与野莉々子。俺や柊木さんと同じ先生に師事している、ゼミ仲間である。
おしとやかな柊木さんとは、何もかもが対照的な女だ。肌の色は浅黒く日に焼けて、性格も男っぽいところがある。普段の彼女であれば、シャツにジーンズというボーイッシュな服装をしているところだろう。
そんな彼女であるが、唯一柊木さんと同じ特徴があるとすれば、それはあの豊満なおっぱいであろう。ぷるんぷるんと揺れ動く大きなおっぱいを、今更のように腕で隠しながら、与野は言った。
「そりゃあ『げっ』とも言うだろ。男の勃起したチ×コ見せられてんだからよ」
「うっ、反論できねえ……」
「静音、大丈夫か? 波多江からチ×コ無理やり見せられたりとか、してねえか?」
「そ、そんなことされてないよぉ、莉々子ちゃん」
与野から声をかけられて、柊木さんは慌てた様子で返事をする。
実はこのふたり、見た目も性格も真逆なくせに、けっこう仲がいいのだ。
「けっ。おい、波多江。静音は女の子なんだからよ、あんまりジロジロおっぱいとか見てやんなよ。どうしても見たいんなら、アタシのにしな」
「えっ、いいのか……?」
思わず彼女のおっぱいに目をやった。
が、その視界いっぱいに、与野の足が飛び込んでくる。
彼女の強烈なキックが、俺の顔面を蹴り飛ばした。
「げほぉ!?」
「バ、バカヤロー! ほんとに見てくるヤツがあるか!」
教室の床に仰向けにぶっ倒れる俺。そんな俺の脳裏には、直前の光景、つまり俺を蹴るために脚を上げたせいで、ちらりと見えた与野のおま×こがバッチリと焼きついていた。たった一瞬のことではあったが、初めて直視する同世代の子のおま×こに、興奮を禁じ得ない。
が、そんな煩悩まみれの俺の脳内を知る由もなく、柊木さんが心配そうに声をかけてくる。
「波多江くん、大丈夫? もう、いきなり蹴ったりしたらだめよ、莉々子ちゃん」
「おっぱい見てくるこいつが悪いだろ」
「それでも、あたしたちも全裸なんだから、少しは受け入れなきゃだめだよ。見てくる人全員を蹴っ飛ばすわけにもいかないでしょ?」
「静音……オメーはちょっといい子すぎるぜ」
珍しく意見が合ったな、与野。俺がおっぱいを見ても許してくれる柊木さんは、いい子すぎるよ……。それに比べて与野ときたら……ぐぇっ!?
「おい、与野! 俺を踏み越えて進もうとするんじゃねえ」
「うるせえな。邪魔なところで寝てる方が悪いだろ」
「誰のせいだと思ってるんだ!」
「喧嘩はよくないよぉ、ふたりとも」
そんなやり取りは、裸になっているせいで多少のぎこちなさはあるものの、いつもの俺たち三人と変わらないものだった。
彼女らと顔を合わせる前は、裸になったことで関係性が変わったらと、恐れている部分もあった。
なにせ、俺たちは友人同士ではあるものの、その間には男性と女性という性別の壁が存在している。全裸になれば、俺たちはお互いにお互いを、異性として強く意識せざるを得なくなる。だからお互いの全裸を見たことにより、ギクシャクしたり気まずくなる可能性は大いにあった。
なので俺は、いつものようなやり取りをふたりと交わすことができて、けっこう……いや、かなり嬉しかったのだ。この時の俺は態度にこそ出していなかったものの、内心ほっと胸をなでおろしていたのである。