禁忌島【母さんとふたりきり】

著者: 桜庭春一郎

本販売日:2024/07/23

電子版配信日:2024/08/02

本定価:825円(税込)

電子版定価:880円(税込)

ISBN:978-4-8296-4744-8

「あんっ、淳太郎のお母さんの奥に当たってる……」
両手でシーツを掴み、媚肉を収縮させる母・律。
クルーズ旅行中に遭難し、無人島に流れ着いた母子。
湧き水を飲むたびに発情し、禁忌の一線を越えてしまう。
欲情効果が切れると母子は罪悪感に苛まれるが、
身体が覚えている悦楽に誘われ、再び肉交を……

目次

第一章 遭難して流れ着いた謎の島で

     無性に母さんとシたくなって

第二章 悪魔の湧き水に抗えず

     青空の下で近親口淫を

第三章 獣性に支配される夜

     ついに母子は一線を越えて

第四章 男女を狂わせる呪われた島で

     母から誘惑されて月灯りの下で

第五章 妊娠だけは避けるために

     お尻の穴を性器の代わりに

第六章 白ふんどしの母さんと

     海で泳ぎながら交わって

第七章 母さんとチャペルで結婚式

     そして子作りラブラブセックス

エピローグ 新たな遭難者

本編の一部を立読み

第一章 遭難して流れ着いた謎の島で
    無性に母さんとシたくなって

 まぶしい太陽。潮風の香り。拡がる水平線。そう言えば聞こえはいいが、南野律、淳太郎母子に楽しむ余裕などありはしなかった。
 なぜなら、ふたりは大海原を漂流している真っ最中。船旅の途中海難事故にあい、ゴムボートでみなもを漂っているのだから。周りは完全に海、海、海。陸などまるで見えはしない。
「もう三日目ね……。シャワー浴びたいわあ……」
 疲れ切った様子の母がぼやく。いつもは美しい長い黒髪は、三日洗っていないためにバサバサ。潮風に吹かれ続けて白い肌も荒れ気味だ。
「この発信器壊れてるのかな……? 説明書通りに作動させてるのに、ぜんぜん救助がこないじゃないか……」
 ゴムボートに備え付けられた救難用の発信器を、淳太郎は苛立ち気味に眺める。バッテリーはまだあるし、正常に作動しているはずだ。なのに、助けがくる気配は皆目ない。
 ゴムボートに備え付けられた水と非常食も無限ではない。ついでに、今のところ天気は快晴だが、いつ崩れないとも限らない。少しばかり大きなしけがこようものなら、差し渡し七メートルのビニールの船などたちまち転覆だ。
(僕と母さんをこんな目に遭わせたやつを絶対許さないぞ。あの忌々しい潜水艦……。ふざけやがって……!)
 少年は乗っていたクルーズ船が沈んだときのことを思い出し、腹を立てる。ちょうど夕方ではっきりとは見えなかった。が、水面下に浮き上がる巨大な黒い影は間違いない。クジラにしても大きすぎる。間違いなく潜水艦だった。
 潜水艦と民間船の衝突事故は歴史上枚挙に暇がない。が、自分がその被害者になるとは思いもよらなかった。
 必ず告発し、どこの所属の潜水艦か暴いてやる。そう怒っていないと正気を保つ自信がなかった。ともあれ、それも生きて陸に帰れればの話だ。このままでは、自分も母も命が危うい。
 そんなことを思った時だった。
「ねえ淳太郎……。見て……あれ、島じゃない……?」
 律が太陽の方向を指さす。三百六十度拡がる水平線に、ぽつんと影が見える。母の言う通りだ。紛れもなく島影だった。
「ほんとだ……島……島だよ……! 母さん手を貸して……漕ぐんだ!」
 ふたりでゴムボート側面にくくりつけられたオールを握る。都合のいいことに、潮は島影に向けて流れていく。豆粒のようだった島影は、やがて菓子パンほどの大きさになり、乗用車ほどになる。そして、視界いっぱいに拡がった。
「と……取りあえず助かった……」
「海上を漂っているよりはマシよね……」
 海岸にゴムボートを乗り上げさせた母子は、胸をなで下ろす。必死で漕いだ疲労で、白い砂浜に座り込んでしまう。
(さて……問題はこの後だな……。食料になるものと……できれば水源があればありがたいけど……)
 島をざっと眺めながら、淳太郎は思う。捕鯨船を描いた小説、そしてそれを原作とした映画を思い出す。
 巨大なマッコウクジラの反撃を食らった捕鯨船は沈没。乗員たちはボートで漂流するはめになる。やっとたどり着いた島は完全な無人島。食べられるものと言えば渡り鳥の卵くらい。結局は死を待つだけだ。
 自分と母がそうなるところなど、想像したくもなかった。
「母さん……取りあえず島を散策しようよ。食べ物とか……寝床になるところを探さないと……」
「そうね……ここに居てもしょうがないもの……。行きましょうか……」
 淳太郎と律は、ゴムボートに備えられたバックパックをそれぞれ担ぐ。水も食料も限られている。生き残るためには、この島でなんとか調達する他にないのだ。重い足をなんとか動かし、母子は歩き出した。

 南野淳太郎は十代後半の学生。百七十四センチとそこそこの長身。身体は細いが、これから成長するところ。幼いころは母に似た愛嬌のある丸顔だった。が、成長するにつれて、父に似たキリッとしたイケメンになりつつある。
 父と母と少年と三人。夏休みを利用して楽しい船旅のはずだった。おしゃれなクルーズ船で、潮風と青い空、瑪瑙色の海を楽しむ。ビュッフェ形式の豪華なディナーに舌鼓を打つ予定だったのだ。
 それやこれやが、事故で全て暗転した。海面に降ろされたゴムボートに母と一緒に乗るので精一杯。父とははぐれてしまった。生きて船から脱出できただろうか? 無事でいてくれればいいが。
(ま……人より自分の心配をするのが先か……)
 母を伴って島を歩きながら、そんなことを思う。島には田舎道があり、人が通った形跡が散見される。全くの無人島というわけでもなさそうだ。が、自分たちが生きるために必要なものがあるとは限らない。
 が、少年のそんな心配は取り越し苦労に終わる。
「あ……。家がある……誰か生活してるのかな……?」
 林が途切れたところで、急に視界が開ける。それにとどまらず、おしゃれなロッジが眼に入る。丸太作りの二階建てで、四十坪というところだろうか。
 周囲はきれいに整備され雑草も少ない。花壇には花が咲き誇っている。明らかに人が居住している証左だ。
「すみません。どなたかいらっしゃいませんか?」
「ごめんください。ちょっと助けて頂きたいんですが」
 少年と母は、ロッジのドアをノックして声をかける。が、応答はない。どうやら無人のようだ。
「しょうがない……。勝手に入らせてもらおう……場合が場合だ……」
「そうね……。後で家主さんに謝ってお礼をしましょう……」
 母子は住居侵入を犯すことを決める。せっかく見つけたねぐらだ。ここで諦めるわけにはいかない。なにより、なんとか外部に連絡を取らなければならない。衛星電話くらいあるかも知れない。
 窓を破って入ろうかと思ったが、その必要はなかった。すり減って読めない、壁掛け式の木の表札。その裏に、鍵が釘で吊されていたのだ。
「失礼します……」「ごめんなさい……入りますね……」
 淳太郎と律は、遠慮がちに玄関をくぐる。丸太作りのロッジの中は、意外なほどきれいだった。多少ほこりが積もっているが、よく手入れがされている。明らかに、誰かが最近まで居住していたのだ。
 取りあえずは中と周辺を調べる。プロパンガスは充分にあったし、水は井戸がある。なにより……。
「母さん見てよ……。この冷蔵庫……動いてる……」
「ほんとだ……。すごい……野菜だけじゃなくて……お肉もお魚もある……。でも……電気どこからきてるのかしら……?」
 なんと、ロッジには電気がきていた。
 業務用の巨大な冷蔵庫の中に、食料がしこたま貯蔵されていたのだ。これで母子ふたり、しばらく食いっぱぐれることはない。
(どういうことだろう……? ガスも水もあるだけじゃない……電気がきてて……。しかも食料まであるなんて……?)
 少年はふと疑問に思う。いくらなんでもできすぎている。こんな孤島におしゃれで大きなロッジが建っている。しかも、生活するのに充分な物資とインフラもそろっている。
 まるで、自分と母が遭難してここを訪れるのを見越していたよう。なにかがおかしい。いやな予感がする。

「うまい。三日ぶりのあったかい飯だ」
「ふふふ……いい食べっぷりだけど、よく噛んで食べるのよ」
 ロッジにあった食材でカレーを作り、ふたりで頂く。二十畳はありそうなダイニングにふたりきりというのも、いささか寂しく思える。自分たちが遭難している事実を思い出してしまうのだ。
「しかし……この湧き水ほんとに美味しいね」
「あ、それお母さんも思った。こんな美味しい水初めてかも」
 庭にある井戸から汲み上げられる水は、驚くほど美味だった。飲料水としていけるだけではない。ご飯も驚くほどうまく炊けたし、お茶を煎れても素晴らしい。もしウォーターサーバーにして販売すれば、さぞ売れるだろう。
 母子はまだ知らない。そしてすぐに知ることになる。湧き水が自分たちになにをもたらすかを。

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