敵のエイリアン軍に改造され、異形の怪物・屠殺鬼になった元人間の特殊部隊員。
制御装置を付けられ、命令のままに破壊と死を振り撒き、牢獄で種付けする日々の中、
地下牢から脱獄するために、女スパイ・アビゲイルと意思疎通を図ることに成功した。
生体兵器に課せられた新命令は、エイリアンの女子校の狐っ子お嬢様・フェリスの護衛。
犯し殺し喰らう巨漢が禁断の花園に足を踏み入れ、阿鼻叫喚の学園パニックホラーに!
さらに戦場に駆り出された先では、ついに制御装置を解除する手がかりを見つけ……
小説投稿サイトで1400万PV達成のSFダークファンタジー、復讐鬼胎動の第二巻!
第十一章 珍しい任務
第十二章 鉄の連帯感
第十三章 蜘蛛
第十四章 僕だけの女神さま
第十五章 フェリスとジボダン
第十六章 戦争前夜
第十七章 燃え盛る森の中で
第十八章 美女と野獣
特別書き下ろし らぶらぶハンティングなピクニックで大パニック
特別書き下ろし 人助け
本編の一部を立読み
第十一章 珍しい任務
僕は今、青空の下で困惑している。
周囲もザワザワと迷走している。
僕は今、とある家の庭で、ぼけーっと突っ立っている。
周囲のエイリアンたちが、そんな僕を遠巻きにうろたえている。
事態が混沌としているのは、目の前にいる悪魔将校が原因だ。
彼がにこやかに話しかけているのが、先日の変態|狐《きつね》女。鏡の向こうでエルフ娘が辱められているのを見て、興奮していた女だ。彼女の後ろには、いつぞやの失禁狐っ子の姿もあった。
どうやら、この家は狐っ子の自宅であるらしい。とても大きくて立派な屋敷だ。コロニアル建築様式なのは、人間が建てた建物をそのまま使っているからだろう。彼女たちのそばに、執事っぽい服装の男が|侍《はべ》っているけれど、やっぱり同じような狐耳だった。見渡すと、関係者はみんな狐耳。なるほど。この家、狐一族が住まう屋敷なのかも。
そんな狐屋敷の玄関前で、僕の身柄が今まさに悪魔将校の手によって彼女たちに引き渡されようとしている。そういった状況だと思われる。でも理由は分からない。なぜ?
そんな僕の疑問に答えるかのようにして、一本の指令が頭に流れ込んできた。
――この二人を護衛しろ。
正気か、悪魔将校?
どんな事情を抱えているのかは知らないけど、そのボディガードが一番危険なんだぞ?
前にも似たようなことがあった。それは別の街へと向かう要人を、護衛兵らと一緒に守るという指令だった。あのミッションには、ラッシャーと呼ばれる、ブッチャーを専門に使役する係が同行し、さらには他にもエイリアンの兵士たちがたくさんいた。しかし、今日は違う。この屋敷にもシークレットサービス的なエイリアンが配置されているようだけど、とてもブッチャーが暴走したときに抑えられるような戦力には見えない。
しかも本気で護衛させるつもりらしく、僕はフル武装させられていた。裸の上にブッチャーエプロンをつけ、ブッチャーバッグをかぶり、ブッチャーナイフも持参。見るからに変質者。お天道様の下で衆人環視の場に引きずり出されると、気が滅入ってしまいそうになる。はぁー、お洋服が着たい。
僕がそうして|鬱《うつ》|然《ぜん》と肩を落としている間にも、悪魔将校と変態狐女の談笑は進み、やがて変態狐女が嘆息をついたところで会話はいったん終わりを迎えた。まさか、ブッチャーを護衛に受け入れたということなのか。いや、まさかね。まさかまさか……――そのまさかだった。
彼女の合図に従って、背後に控えていた男が制御装置を受け取ったんだ。僕が狐屋敷の護衛に就任した瞬間だった。まさしく狐につままれたような気分だった。
最後に、悪魔将校は唖然とする僕の肩をポンポンと叩き、笑顔で去っていった。頑張れよ、みたいな?
ぜんっぜん、意味が分からない。なにこれ?
――家に入れ。
はぁ……そこまで言うのなら……。
僕は胸中で嘆息。変態狐女に連れられるがままに、屋敷の中へと足を踏み入れた。
変態狐女に隠れ、心の底から恐ろしそうにチラチラと僕を盗み見る狐っ子。
そうそう。この反応が正しい。
実際、遠巻きにしていた悪魔将校の護衛らも「大丈夫かよ……」みたいな顔になってたし。狐耳執事も、周囲に配置された護衛も、みーんな、おしなべて不安そうだ。
実は僕も不安だ。
だってこの変態狐女、どう見ても身分が上。へたな粗相をすると処分されかねない。ビクビク。昔から礼儀作法には頼りない僕なのである。
そんな中、変態狐女だけが僕をジロジロと至近距離から眺めたり、ペチペチと肩を叩いたりと遠慮がない――あ、お尻はやめて。白昼堂々と触られると、さすがに恥ずかしいです。
この変態狐女も、あの悪魔将校に並ぶ実力者なんだ。きっと。ブッチャーが怖くないくらいの戦闘力がある。僕を前にして平然とした態度がそれを物語っている。でもたぶんそれ、過信だよ。ブッチャーって君が考えてるほど甘くない怪物だ。
あとどれくらい、こういった実力者が控えているのだろう。この街のエイリアンはいずれ余さず殺すけど、その障害となりうる潜在的な敵は、事前にすべて把握しておきたい。
変態狐女に連れられて、狐屋敷を案内された。
玄関、ホール、リビング、キッチン、トイレ。ブッチャーにそんな難しいこと説明しても意味ないのに。
――これはひょっとして、試されているのか……?
悪魔将校と変態狐女が、僕をテストしているのか?
たしかに、あの二人には、たまたま、僕がちょっと賢いところを見せている。
悪魔将校の前では、アースピントの変装を暴くという機敏を。
狐女の前では、工夫を凝らしてエルフ娘を辱めるという知恵を。
あれで僕は使えるブッチャー判定を受けつつあるということなのか?
であれば、俄然やる気が湧いてくる。
僕の精神はまだ正常な人間のままだから、幼稚な承認欲求が心の隅にまだ残っている。これで彼らの期待を上回る活躍を見せれば、待遇が改善されるかも? 毎日お肉を食べられるかも? 自由に散歩させてもらえるかも? ミノタウロス店長からバイト料、もらえるかも? プライバシーのある部屋に住まわせてもらえるかも?? 夢が広がりまくりんぐ!!
ま、無理だろうけど。
ブッチャーは生体兵器だ。そもそも彼らの仲間と見なされていない。仲間を、あんな扱いにするわけがない。僕は家畜以上、奴隷未満の|使い捨て《エクスペンダブルズ》ってところだ。
ふと、お気に入り嬢のことが頭に浮かんだ。彼女も僕と同じような境遇なのだろうか。あの子、いったい何者なんだろう? ただの性奴隷とは思えないような品の良さに、知性を感じる指づかい。舌づかい。あの色っぽい吐息……セックスそのものと言って過言でないスタイル……彼女の汗の香り……。
ヤバい。ストップ、ストップ。
嬢のことを考え出したら勃起しそうになった。こんなにたくさんの人がいる前でエプロンにテントが張ったら恥ずかしすぎる。即日解雇を言い渡されてもおかしくない。
――ん、待てよ……?
解雇されたとして、僕にデメリットなくない? 元通りじゃん。
いやしかし、この任務がどこへと向かうのか純粋に知りたくもある。なにせ、こんな展開は初めてのことだ。でも、脳裏に嬢のエロい姿が無数に浮かんできて妄想が止まらないよ!
そんな葛藤を内心で続けていると、いつしか僕は三階の部屋にたどり着いていた。すごい。途中の記憶がほとんどない。だがしかし、僕はさも説明はすべて聞いたとでも言わんばかりの堂々たる態度で、ドアノブに手をかけるのだった。お邪魔します。
ビクゥッ!
――と、中にいた狐っ子が肩を跳ねさせる姿が目に飛び込んできた。手に持っていた本がバサリと落ち、尻尾が一瞬で膨らむほど驚いている。
変態狐女はそんな彼女と少し言葉を交わしてから、僕を残して一人でツカツカと部屋の外へと出て行くのであった。
取り残される僕と狐っ子。
えっ……?
えええぇ……!?
あの女、狐っ子がどうなってもいいの? 豪胆すぎない?
普通、女の子とブッチャーを二人っきりにするか? それとも狐っ子は親類じゃないの? 実は狐っ子は僕への供物なの? この部屋でセックスしていいの? どういうこと?
ほら、見てよ。あの狐っ子の様子。
かわいそうに。今にも泣き出しそう。部屋の隅でウサギみたいに丸くなって、ぷるぷる震えちゃって。すごく嗜虐心がそそられる。背中から覆いかぶさって、頭をなでなでしながら無理やり中出ししたい……。
――はっ!?
指令は「二人を護衛しろ」だった。
彼女は護衛対象だ。ここでうっかりレイプしてしまうと任務失敗になる。あぶない、あぶない。
――しかし、だ。
別にそれでもいいかな、って思えるくらい目の前の餌はうまそうだ。一方で、この任務を達成したあかつきに、僕の扱いがどう変化するのかという点にも興味がある。
これは試練だ。
こんな簡単な試練を突破できずに復讐なんてできやしないぞ。我慢しろ、ジェヴォーダン。プロだろう。根性を見せろ。
気を紛らわせるために、窓に歩み寄って外を見た。
ここは三階で、他の建物よりも頭ひとつ高い分、街の様子がよく見渡せた。
堅固な壁に覆われた街だ。ここは、もともとフォート89という人間の要塞都市だった。それをエイリアンたちが占領し、流用しているおかげで、そういった要塞由来の防衛設備がまるまる残っていたりもする。
フォート89は、僕が所属していたフォート88という超高密度都市とは違って若い都市だったせいもあり、コンクリートの建築群は全体的に背丈が低く、建物と建物の間にも余裕があった。あの壁だけでなく、コンクリートの眺めは僕にとって馴染みの深い光景である一方で、エイリアンが新築したとみられる建築物は牧歌的でもあり、現代と中世が渾然一体となったような街並みが見せる意外な調和に、素朴な関心を抱いてしまうのだった。僕の牢獄がある施設もここから見えるぞ。街の中心に建っている、比較的大きめの建造物がそれだ。
空に黒い影が舞っていた。なんだろう。|鳶《とび》かな。あるいはチョウゲンボウかも。このあたりは森に囲まれているから野生動物が豊富だ。
空は高く、太陽が燦々と。白い雲がもこもこと膨らみ、冷たい風が野山の香りを運んできた。遠くでは鳥の声と鹿の声が喧嘩していて、それを木々のざわめきが仲裁する。よく知った自然の小景。僕はすっかり変わってしまって、この街も新しい文化に塗り替えられたにもかかわらず、空は僕が知っているままだ。空だけ見ていれば、人間もエイリアンも関係なく、ここは青い地球だった。
――僕も翼があればなぁ……。
もう、いっそ何もかも放り出して遠くへ飛んでいきたいよ。なんでこんなことしてるんだろう、僕。はぁ……。
脳に染み込んできた酸素に、心の老廃物を溶かして吐き出した。そんな安堵に身を委ねていると、ふと、視界の端に映った人影に違和感を覚え、現実に引き戻される。
たまたま屋敷の近くを通りがかった一般エイリアン風味だけど、動きというか、視線の配り方というか、醸す空気感が僕の知っているそれとよく似ていた。
この屋敷が狙われているっていう話。それ自体は、本当なんだ。
しかも、狙っているのは人間か。
――そうか、あの悪魔将校……。
先日、僕が人間の変装を見抜いたから、この護衛任務に抜擢したな。
正解さ。
僕は人間だった頃、フォックスチームというフォートの斥候部隊に所属していて、長年最前線に|出張《でば》っていた|古参《ベテラン》兵だった。
だから動きを見ればすぐに分かった。さっきのあれ、人間の兵士の動きだ。しかも暗殺系の。〈タンゴチーム〉かな? まさか古巣のフォックスの連中じゃないだろうな。
フォートの軍にはいくつもの専門チームが組織されていた。フォックスチームは前線の奥に食い込む偵察、斥候、遊撃を主な任務とするチームだ。タンゴは少数部隊で特定ターゲットを抹殺するチーム。
他にも、フォートには主要防衛を担う〈アルファチーム〉。周辺防御の〈ベータチーム〉。重砲、火砲を扱う〈チャーリーチーム〉があって、さらにそこにカウンターでエイリアンに打撃を与える〈デルタチーム〉、工兵部隊の〈エコーチーム〉、横断的に支援火力を提供する〈ノーベンバーチーム〉などが並ぶ。
専門性で区別されて活動しているんだ。教育なんて悠長なことをしている余裕がないから、実地訓練で新兵を専門的なプロフェッショナルに鍛え上げるためにそうなっていた。
もちろん、それだと運用に支障が出ることもある。だから、時に混合編成で大規模な|作戦隊《カンパニー》が組織されたり、あるいは、各チームから選抜で特殊部隊が組まれたりする。タンゴは特殊部隊扱いだ。
ひょっとして、先日の大規模な人間の侵攻って、タンゴの潜入を助けるための目くらましだったとか?
だとすると納得する。僕が外回りした日の人間側の戦闘って、ものすごく無駄が多かった。目的が見えないというか、自殺行為というか。肉屋の裏で殺したアースピントも、その作戦の一環で活動していたのかも?
なるほどなるほど?
ということは、この狐一族、相当な地位にあるぞ。
そこまで犠牲を払ってでも始末できれば、戦局をひっくり返せるほどの戦略的な価値があるってことだ。
でも、どうして人間はエイリアンの内情を知っているんだろう?
――アビゲイルかな……?
彼女は先行潜入組で、ずっとこの街で諜報活動をしていたのかも知れない。
ならば彼女。アビゲイル。エイリアンの文字か言葉を知っていてもおかしくないぞ。そうじゃないとエイリアンの内情なんて分からないはずだ。
アビゲイルって、ひょっとして、通訳ができたりする?
今日の僕は冴えてる。実現には課題が山積みだけど、彼女を介してエイリアンとも会話ができる可能性も見えてきた。次に会ったら、そのあたりをつついてみよう。僕のブッチャーランスを使って、トントンと。
――だんだんと、思考回路がスケベおやじっぽくなってきたなぁ……やだなぁ……。
だって仕方ないじゃん。朝から晩までそんなことばっかり、やらされているんだもの。僕は悪くない。境遇が悪い。社会が悪い。仕事なんだ。あ、職業病だこれ。労災を要求する。それでカウンセリングに行って、美人カウンセラーとイケナイ関係になるんだ。
窓から空を眺めつつ、久しぶりにそんなくだらないことにまで思考を巡らせていると、不意に背後でコトリと音がした。
バッと音を立てて振り返った僕と、身をかがめた狐っ子。
あっ……みたいな顔になって、彼女はピタリと停止していた。僕の目を盗んで部屋の出口に向かおうとしていたようだ。
まぁ、分かるよ。裸エプロンの上に紙袋をかぶって、どデカい包丁を引きずってる、やべー奴が同じ部屋にいたら逃げたくもなるよね。
でもどうしよう。
変態狐女の意図としては、僕をこの狐っ子の護衛につけた、といったところだろうから、このまま狐っ子を見逃して、部屋の窓際で突っ立ったままでいると、ただの|木偶《でく》の|坊《ぼう》判定を食らって仕事をクビになる可能性もある。
僕は自分の有用性をアピールしなければならない。その先に何が待っているのかは、まだ分からないけれど、有象無象のブッチャーでいるよりは行動の幅が広がるはずだ。
目立つのはリスクだ。とはいえ、大人しく指示に従ってさえいれば、多少の変わり者でも、いきなり処分されることはあるまい。僕はこの任務をやり遂げる。そう決めた。
とはいえ、彼女を部屋に閉じ込め続けるのも、なんか違うな。うーん……。
――それならば。
まるで、だるまさんが転んだゲームで遊んでいるかのように硬直し、息を止める狐っ子。
僕はそんな彼女に率先してドアの前に立ち、やおらノブに手をかけて、それをひねった。
ガチャリ。ドアが開く。
身を引いて通路を開けた。どうぞ。手を送る。なんて紳士的なブッチャー。
狐っ子は眉をひそめ、怪訝な顔つきで僕の行動を見守っていたけれど、やがて、そろそろと忍び足。僕の前を通って部屋の外に出た。
僕も彼女について出る。
はっと驚愕の表情で振り返った狐っ子。
彼女は僕から逃げるように廊下を歩いた。僕もついて歩いた。
狐っ子が足を速める。僕も足を速める。
彼女が下り階段の前で立ち止まり、僕も止まった。
彼女は涙目になって、どうしよう……みたいな顔でオロオロ。
――護衛だからね……。
そこから、僕の甲斐甲斐しいシークレットサービスが始まった。
彼女の行くところ、どこまででもブッチャーがついて回った。
三階。二階。一階。玄関ホール。リビング。
彼女がソファーに座れば背後霊のようにしてその後ろに立ち、キッチンでお茶を淹れようとすればその隣に立つ。ついでに狐っ子が手を伸ばしてぴょんぴょん跳ねていれば、かわりに高い棚にある茶葉の入れ物を取ってあげる。ヒア・ユー・アー。
彼女が部屋に戻ってからは、僕が窓際に立って外に睨みを利かせる。すると通りすがりのエイリアンたちが、僕の姿を指差して何かを叫ぶんだ。おかげでエイリアンの言語におけるブッチャーという単語だけは覚えてしまった。
ドアがノックされれば、狐っ子のかわりに僕がドアを開けて出る。そしてほとんどの来訪者は、ドアの向こうから現れる超ド級の変質者を前に腰を抜かす。
時に彼女がトイレに入れば、僕がその外でじっと立って待つ。おかげで狐っ子がトイレにいることも、入っている時間も外から丸わかり。さすがにこれは嫌だったみたいで、頬を膨らませた狐っ子にエプロンをぽかぽかと叩かれて追い返された。
いい加減に嫌気が差したのか、彼女が廊下を走って僕から逃げようとしたこともあったけれど、僕も駆け足。ピタリと背後につけて追走した。見た目によらず、ブッチャーの走力はかなり高い。逃げ切れっこない……はずだったのに、彼女もなかなかすばしっこかった。
まさに狐のごとき身軽さ。
廊下をシタタタタ……。
狭い場所をするりするり。
僕もつかず離れずの距離を保ち、細かい障害物を委細構わず、ぶち破って食らいついた。
ドドドドド……と、僕が屋敷を揺らして狐っ子を猛追する姿を見かけ、小さな悲鳴を上げて道を空ける使用人たち。そうやってブッチャーが狐っ子を追い回す絵面は、廃館の中に閉じ込められた少女がモンスターから逃げ惑う系パニック映画そのもの。
雷雨の日があったんだけど、その日は特に大変な騒ぎになった。
雷鳴と共に突如として現れる僕を見て、気を失う使用人が続出したんだ。途中から、|ブ《・》|ッ《・》|チ《・》|ャ《・》|ー《・》|の《・》|秘《・》|密《・》|の《・》|力《・》を解放し、気配を消して狐っ子を追跡していたから、そういった悲劇が起こった。
シャワールームで狐っ子が出てくるのを待っていたら、シャッという音ともに向こうから現れたのは知らない女で、突然のブッチャー出現に、彼女が卒倒してしまうという事件もあった。慌てて腕で受け止めたその女がまた、なんとも言えないナイスバディだったこともあり、うっかり挿入しそうになって危なかった。
どういうトリックなのか、すり替わっていたみたい。まったく気がつかなかった。頭に葉っぱを乗せた狐っ子が、にひひ……と、勝ち誇った笑みを浮かべて遠くから僕をのぞき見していた。その時だけは、悔しさで舌打ちが出た。一杯食わされた。くそう。
ここ数日は、狐屋敷がそんなホラー映画だった。
狐っ子はそれでも家の外へは出ようとしなかった。狙われていること自体は理解しているみたい。賢明だね。
そんな生活が、なんと三日も続いた。
実は僕、一日の睡眠時間が極端に少なく、はっきり言って何日でも起きていられる。たまーに、突っ立ったまま一時間もぼーっとしていればそれで大丈夫。目を閉じる必要もない……っていうか、まぶた無いし。その間、目からは映像が入ってくるけれども、頭は働いていない。そういった不思議な感覚だった。
だから狐っ子が寝るときも、僕はベッドの隣で突っ立ったまま不寝番をした。アマゾンの奥地で見つかった呪われた置物――と紹介されてもおかしくないくらい、微動だにせず枕元に立って赤い眼球を光らせていた。
彼女は、比喩ではなく、三日三晩うなされていた。
かわいそう。さすがに同情を禁じ得ない。
そして四日目の夜。リビングにて。
目に隈を作った狐っ子が、眉尻を釣り上げて変態狐女に猛抗議。内容は聞かなくても分かる。頑張れ狐っ子。僕も早く牢獄に帰って|仕事《レイプ》に戻りたいのに、この任務はお互いに不幸だよ。君が説得に成功してくれれば、僕も晴れてお役御免だ。応援してる。がんば。
そろそろ、僕の性欲も我慢ギリギリのラインにまで来ている。
あの女、やっぱりブッチャーにあまり詳しくないと見える。いったん施設に戻してもらうか、あるいは誰かをあてがってくれないと、このままだと僕、君も、狐っ子も、この家の狐の耳をつけた人、全員もれなく犯し、殺し、食らっちゃうよ?
変態狐女が指を立てて何かを得意げに語り、それを見た狐っ子が、ガーンと唖然となって項垂れたのが見えた。駄目だったみたい。僕も小さく|頭《こうべ》を垂れた。がっくし。
その頭を上げた。
血の匂いを嗅ぎつけたからだ。
ブッチャーの鼻は、やけに血の匂いに敏感。
匂いの元を探して視線を巡らせる僕。
やや遅れて、変態狐女も何かを感じ取った様子で、目つきも鋭く立ち上がった。彼女が狐っ子を背中に庇うのが見える。
僕は外の様子をうかがおうとして、一階リビングの窓際に立った。
低い位置に浮かぶ夜空の星がキラッと強く光ったのと、僕の視界が勢いよく流れたのは、ほとんど同時だった。
後頭部と鼻の奥に、強い衝撃を受けた。頭を振られて、仰向けに倒れたんだ。
原因は分かってる。
頭部を狙撃された。おでこがジンジンする。
そこでようやく、タァーーーーン……という発砲音が届いた。
ブッチャーをヘッドショット一発で倒すのはとても難しい。僕も昔、狙撃をしていたからよく分かる。あいつら、頭が尋常でなく硬いとされ、狙撃兵はみんなブッチャーを怖れていた。
でもそれは半分誤解なんだ。主な原因はこの紙袋。ブッチャーバッグが、えらく硬い。僕は戦場で、それを偶然にも見抜いたことがある。
狙いを外した弾がブッチャーの紙袋を弾き飛ばし、至近距離まで詰められた僕が、慌てて次弾を|ど《・》|た《・》|ま《・》にぶち込んだらブッチャーはあっさり|斃《たお》れた。
紙袋はブッチャーの制式ヘルメットだったことを、その時になって初めて理解した。だから、まず紙袋を飛ばしてから、可能なかぎり至近距離までおびき寄せ、徹甲弾で頭を狙う。これが僕の開発した対ブッチャー狙撃法。紙袋を飛ばすのがおそろしく難しい上に、正面ギリギリまで引きつけないといけない地獄の一発勝負だけど、狙撃兵がブッチャーを仕留める唯一の方法だった。
僕が開発したそんな狙撃法は、所属したフォックスチームに受け継がれているはずだから、この狙撃はフォックスじゃない。この襲撃は少数浸透作戦専門のタンゴチーム。
あんな遠距離からブッチャーバッグに撃ち込むなんて、ど素人め。激戦区に出たことがない証拠だ。僕なら、肩を撃って少しでもブッチャーの戦闘力を削ぐけどね。
そんな分析を続けつつ、床に寝そべったまま死んだフリ。
狐っ子が僕を指差して何かをわめく姿が目に入った。一方の狐女は、大声を出して狐っ子に指示を飛ばしている。
直後、部屋の窓が一斉に爆ぜた。
黒い影が、そこからいくつも躍り込んでくる。
ぜんぶで四つ。狐女を囲む配置。教科書どおりだ。
床に着地した襲撃犯が銃を構える。
だがしかし、狐女の方が早かった。
狐女の縦に割れた瞳孔が妖しく光った。その腕が左から右へと空気を撫でると、たちどころに襲撃犯四名の身体がズタズタに切り裂かれて血しぶきが壁に散った。無数の|白刃《はくじん》が何もない空間に現れ、彼らに襲いかかるのが瞬間的に見えた。
ふむふむ。これが変態狐女の力か。たしかに強い。素手に見えるけど、魔法触媒をどこかに隠しているのだろう。鮮やかなお手並みだった。僕だって、あれだけのカマイタチで一度に切り裂かれたらかなり痛いだろう。
思いつきで、ブッチャーを怖れないエイリアンの実力者とは、どれほどのものなのか測ってみようと、死んだフリをしてみたけど、いい収穫だった。ああいう感じなのか。タイマンなら僕が圧倒するな。
――さて、と……。
ここからの流れも分かる。後詰めの小隊が突入してくるはずだ。
案の定、ふた方向から挟み込む形で部屋に侵入してくる兵士たちの姿が見えた。奥のドアを派手に破ってきた二名と、逆に僕の近くで物陰に息を潜める二名。計四名。
奥側で大げさな登場を見せた二人が、先んじて狐女に殺到した。
当然、狐女の注意はそちらへと向く。先ほどの力は連続では使えないのか、彼女は格闘で襲撃者の相手をし始めた。
――すごいな。カンフー映画みたい。そして強い。近接格闘術を叩き込まれた特殊部隊二名を相手に、素手で立ち向かえるなんて。
でも、ものの見事に、部屋の逆側で隠れている別の二人から意識を引き剥がされてしまっているよ。ここはタンゴチームが、してやったりか。僕の近くで隠れている二人が、時間差で飛び込んで狐女の背後を取るか、あるいは狐っ子を仕留める作戦だろう。
でも残念ながら、死んだフリをしている僕からは丸見えだよ。
遊んでないで、そろそろ仕事するか。
舌をシュビッと伸ばし、隠れている襲撃者の足首に巻きつけた。彼の意識は狐女に集中しているせいで、まだ自分の身に何が起こっているのか気づけていない。僕はその隙に、襲撃者の足をグイッと引いて寄せてしまう。
「!?」
目抜き帽で顔を隠していて、表情は見えないけれど、その下から強い動揺の気配が伝わってきた。死んだと思っていた死体の頭部から、触手めいたベロが伸びてきたらびっくりするよね。
紙袋の目抜き穴と、目抜き帽の穴が見つめ合う一瞬があった。ドキッ。僕たち、目抜き仲間だね。つき合っちゃう? なんて……いてて、撃つなよ……。
転ばされ、床の上を滑りながらも、見事な反応でサブマシンガンの引き金を引いた襲撃者だったけれど、その弾丸はあえなく僕の皮膚にはじかれて床に転がるだけに終わった。
小口径ごときじゃあね。むず痒いくらいさ。それじゃあ、次は僕の番ね。
足を引っ張って寄せたから、僕から一番近い君の急所はというと――残念ながらここだ。
侵入者の股ぐらを、ブッチャーの大きな手で掴んだ。
「ひっ」
サブマシンガンの乱射が止まった。目抜き帽の下に、竦み上がる気配。
手の中で、ちくわと玉こんにゃくがふたつ、コリコリとすり合わされる心地よい感触があった。容赦なく握り潰す。
「――――――――ッッッ!!」
海老反りになって硬直した男。
僕はそれを確認して立ち上がった。
直後、彼が握り締めていたサブマシンガンが最後っ屁をくれて、僕の舌を撃ち抜いた。
痛いよ。ベロがちぎれちゃったじゃないか。さすがに舌に皮膚ほどの耐久力はない。
それで僕が怯むと見なしたのか。隠れていた最後の一人が、身をかがめて駆け出すのが見えた。僕の脇を走り抜けて、捨て身で狐っ子の首を取ろうという動きだ。でもそれは許さない。僕は必ず仕事をやり遂げる。プロだから。
身体を一回転させるようにして、背中からブッチャーナイフを抜きざまに水平に薙《な》いだ。
ブァンッ! という空気のうなりと共に、水袋を切ったような手応えがあった。
すり抜けようとしていた襲撃者は、腕ごと輪切りになって床に沈んだ。
去勢され、ピクピクと足元で動かなくなっていた男からサブマシンガンを取り上げた。変態狐女と格闘していた二人の内、一人を撃ち殺す。
二対一で拮抗していた戦況だ。もう襲撃者に勝ち目はない。
狐女は残った一人の足をあっさりと切り飛ばし、かかと落としでとどめを刺した。
――わぉ! あの女、かかと落として人間を真っ二つにしたぞ! 頑丈なケブラースーツごとだ。狐女の評価をひとつ上方修正しておく。ついでにショーツは白の透けソング、と。心のメモに書き足しておいた。
スカートにソングで格闘するなんて、見せる気まんまんじゃない。しかも白だなんて、すごく分かってる。あの女スケベだぞ。
静寂がやって来た。
変態狐女が狐っ子に声をかけた。ソファーの裏に隠れていた狐っ子が、その声にうんうんとうなずき返す。二人とも無事そうだ。
彼女は狐っ子を背中に庇ったまま、しばらく周囲を油断なく警戒し続けていたけれど、もう追撃はないだろう。タンゴは少数編成だから、何重にも波状攻撃はできないはずなんだ。僕は部屋にまき散らされた、タンゴチームだった血肉を眺めながら、ぼんやりした過去の記憶を辿っている。
タンゴチームはフォックスチーム同様、危険な任務で捨て駒的に使われていた。でも同情心はない。タンゴはその分、お給金がいいんだ。残される家族への手当ても厚い。まがりなりにもエリートコースだからね。
彼らは必要なときだけ出撃する一撃必殺の部隊。常に激戦区に投入され、碌な報酬ももらえず冷や飯を食わされているフォックスとは違う。タンゴへの仲間意識なんて皆無だ。
それにしてもハラガヘッタ。
部屋に充満した鉄臭い匂いが、僕のリビドーを否応なく高めた。
ムラムラくる。だって部屋中がおいしそうなご飯だらけ。まるでホテルの立食パーティー会場のよう。どこに行ってもバラエティ豊かな新鮮な幸ばかり。手を伸ばせば、すぐに飲み物のおかわりが。ここはまさに食のエンターテイメント。ブッチャーの目にはそう映る。
「○§〆※▽▼★●#●……」
つまみ食いの欲求と闘う僕に、変態狐女が声をかけながら近づいてきた。彼女の視線は僕――の息子に注がれている。
それは血と肉の匂いですっかりエレクチオンしてしまっており、勢いよく身体を回転させたりもしたものだから、エプロンがずれて丸見えになっていた。背筋を伸ばした息子の敬礼姿は立派なものだった。
ガン見。ちょっと気恥ずかしい。でも漲る。もっと見て。ビクビク。
狐女は僕の前まで来ると、ようやく視線を上げて僕の身体をペタペタと検分。ちぎれた舌も確認。血がダラダラと止まらないので口に収納できません。床を汚してごめんなさい。
彼女、近くで見ると美人さんだ。色っぽいって言えばいいのかな。切れ目が素敵。格闘で汗ばんだうなじから立ちのぼる熱気と、香水に隠れた独特な獣じみた体臭も相まって、余計に僕の暴れん棒が盛り上がってしまう。ビキビキ。
変態狐女の視線の先には、怒りすぎてカウパー液を漏らす銃口が。
ゴクリ、生唾を飲む狐女。
彼女はササッと立ち位置を変え、狐っ子の視線から僕の息子を隠した。その仕草には教育的配慮のようなものがにじんでいる。やっぱり彼女は狐っ子の保護者的な立場なのだろうか。親って歳には見えないけど、エイリアンの年齢なんて、皆目見当がつかない。
でもね、それ意味ないよ。だって、その子は以前、僕とソバージュの子の合体シーンを大スクリーン最前列で鑑賞済みなんだから。潮しぶきまで顔にかかっちゃって。ああいうのって、4Dシアターっていうのかな。僕のブッチャーランスも、血管の浮き出し具合まで含めて鮮明に記憶に焼きついてると思う。瞬きもせずガン見だったしね。怒った男根から目が離せなくなるなんて、変態の血筋で間違いない。変態が嫌いって言ってるわけじゃないんだよ? なぜなら僕も変態だから。むしろ仲間意識が芽生えちゃう。
うーん……。
それにしても。その位置に立つのは危ない。
君たちの命の危機は、まだ去っていないんだよ?
おもむろに、手に持っていたブッチャーナイフを振り上げた。
それを見た狐女が、ギョッと目を見張って構えを取った。
バギャァンッ! という衝撃音が部屋に響いたのは、その直後だった。
狙撃だ。勘だったけど、間一髪。ブッチャーナイフで防げた。
狙撃兵が、ターゲットが一直線に並ぶ千載一遇の瞬間を見逃すはずがない。
先ほど僕が撃たれたときに見えた光の角度に鑑みて、今の狐女が立っている場所は狐っ子と射線がそろっている。そういう位置関係だった。
僕はすかさず足元に転がっていた襲撃者の頭を掴み、その胸に足をかけた。彼はまだ生きていたけれど、生殖器を潰されて息もたえだえ。何か口走ったけれども無視。大根か何かを引っこ抜くイメージで、足を踏ん張り、背筋に力を込める。
バリボリと湿った音を立てて、男の頭は抜けた。ついでに背骨も引き抜けた。大根っていうか、白いゴボウだね。
間髪を容れず、背骨を手早くブッチャーナイフにぶつけて落とし、大きく振りかぶった一球を投じる。
ボッ! と音を上げ、男の頭部は夜の空気を押しのけてすっ飛んでいった。
これ、僕がよく使う遠距離攻撃手段なんだ。効果はてきめん。二、三人ならまとめて殺せる威力が出るし、狙いを外しても敵の戦意を著しく削ぐという意味で効果がある。
さすがに、これが狙撃兵に当たるとは思えないけれど、もう撃ってはこないだろう。まさか狙撃が防がれるとは予期していなかっただろうし、まさかまさかカウンターで仲間の頭が飛んでくるとも思っていなかったはずだ。動揺すれば正確な狙撃はできない。とりあえず、これで退けたと考えていいだろう。お仕事完了。
――見たか、これがプロの仕事だ!
僕はいそいそとエプロンの位置を正し、窓の外をうかがい、屋敷周辺の安全を確認してから、視線を部屋に戻した。
僕と目が合った変態狐女が、腕を組んでふーんと不敵な笑みを浮かべた。
なにその表情? どういう意味なの?
そんな彼女の後ろから、狐っ子がおずおずと歩み出してくる。こっちも怪我はなさそうだ。よかったね。
いい仕事だったと思うんだけど、ボーナスないのかな。そんなことを考えていると、狐っ子が僕のちぎれたベロに恐る恐る手を伸ばしてきた。
何をする気なのかと見守っていると、すぐに彼女の手が白く輝き、僕のベロがボリュームのある真っ白い光に飲み込まれた。
なんだか温かい。
光は徐々に収まっていった。
その下から現れたベロは、なんと元通り。出血はおろか、じくじくする痛みも、つゆと消えていた。驚くべきは、失ったベロの先端まで補われていたことだ。
――なんと……。
この狐っ子は回復魔法が使えるのか。しかも僕が今まで見たことのある、どの回復魔法よりも再生が早かった。っていうか、無くなった部位まで補ってしまえる魔法は初めて見たぞ。大抵は、ちぎれた部位をくっつけるだけで、無くなってしまったものが元に戻ったりした記憶はない。
ブッチャーの頑丈さは呆れるほどだけど、怪我をすれば痛い。特にベロは敏感で、怪我をすると痛みが長引く。そして痛みはブッチャーの凶暴性を呼び起こす。だから僕はこれから、回復魔法係が駆けつけるまでの時間、ベロ切断の痛みを堪え、ブッチャーの本能と格闘し続けなければいけないところだったんだ。それは、舟を漕いで眠気と格闘するのと似ていて、かなり危ういし、うっかりが起こりうる。治してもらえたのはとっても嬉しい。
「★◎〓▲□?」
見上げてくる狐っ子が何かを言っている。でもごめんね。何言ってるのか分からないんだ。だからお礼に舐めてあげよう。ペロリ。
僕が伸ばした|黝《あおぐろ》い舌に、あご、唇、鼻、まぶた、おでこと、まとめて舐め上げられた狐っ子は、たたらを踏んで後じさり。目をパチパチと瞬かせた。びっくり顔に、たらーりと垂れるブッチャーの唾液。
しまった。ついうっかり。あとで狐女に怒られそ。
結局、僕が施設に戻れたのは翌日の昼ごろだった。いろいろと調査などがあったからだ。僕の仕事ぶりにも調査が入ったみたいだったけど、お咎めは無かった。
報酬も、特に無かったけれど。
分かってた。ただ働きには慣れてる。ちくしょう。
牢獄に戻ったら女がいた。
最近ローテーションに入った、黒髪長髪の女だ。
この子、見た目は大人しいけど、好きものなんだよね。挿入すると|射精《だ》す前から必死に僕に抱きついて腰を振り始めるんだ。だから僕も好き。長い禁欲期間に加え、血肉の匂いと戦闘でMAX昂っているから、彼女の今のおずおずした感じと、その先に隠された秘密がすごく魅力的に見える――。
このあと、めちゃくちゃ|凌辱《セックス》した。
【フォート】
戦争の最前線を支える要塞都市。周囲を高い壁で囲まれ、内部にはひとつの街が収まっている。
建設順に通し番号が振られており、ジェヴォーダンがかつて所属したフォートはフォート88と呼ばれる。