本販売日:2025/03/24
電子版配信日:2025/04/04
本定価:825円(税込)
電子版定価:880円(税込)
ISBN:978-4-8296-4789-9
少子高齢化対策で政府が推進する【セクシャル休暇】。
他部署のピュアな後輩・瀬戸内珊瑚がなぜか俺を指名!?
リゾートホテルで、生で、中で、性悦に溺れる二人の前に、
金髪ハーフの先輩、風見・オリビエ・涼香が現れ……
さらに仕事に厳格なシンママ上司・南原律子を巻き込んで
淫らな計画が勃発し……最高の南国ハーレム、開幕!
プロローグ
第一章 後輩営業部員 瀬戸内珊瑚
──「初めて」ですけど、指名していいですか?
第二章 セクシー先輩 風見・オリビエ・涼香
──そのセックスに、私も混ぜて?
第三章 シンママ上司 南原律子
──嘘よ、私がお尻で感じるなんて……
エピローグ
本編の一部を立読み
プロローグ
「──アナタはどうしてこんな仕事もさっさとできないわけ!?」
一瞬にして蘇る女上司の叱責が、僕の身体を硬直させた。
鬼気迫る形相、そして高い声。ヒステリックな糾弾は刺々しい凶器に似ていて、まさに針の土砂降りを全身で浴びるような体験。
人魚姫のようにウェーブをかけた黒髪。泣き黒子が誘う瞳。そんな麗しい美貌を備えたチームリーダー、南原律子さんの発した声がオフィス内に響き渡る。
眠っている本能が揺さぶられて逃げたいと訴えた。
しかし、ここから逃げられないことは理性が承知している。僕は社会人で、今ミスを犯し、上司から必要な指摘を頂戴しているからだ。後退は許されない。
それでも自分だけが世界から取り残されたような惨めさを味わう。周囲は室内灯で照らされているのに暗く、ジメジメとした洞窟の中にいるよう。
陰鬱で、湿気が立ち込めており、誰しもがここに居たくないと思うような塞ぎ込み──それが刹那に脳裏を過り、そして去った。
「……はぁっ。……あぁ、また思い出しちゃったよ……。退勤したっていうのに」
誰かに相談したい気分だけど、姉御肌のサブリーダーは既に予定があるとのこと。
百七十センチを超える背丈に西欧人譲りの抜群なスタイルを宿すハーフ金髪美女は、今夜も彼氏との付き合いで忙しいらしい。だから喫茶店には僕一人だけ。
孤独に反省会を開いた僕を慰めてくれるのは、一杯のコーヒーとお菓子。
口に運ぼうとした苦水を、喉に通さずソーサーへ戻す。
カチャリ、と硬い音がした。
(……転職、したほうがいいのかなぁ)
置いた衝撃で揺れる純黒の水面、そこに映る自分の影へ呟きを投げかける。
二十六歳。まだ第二新卒として雇ってくれる企業はたくさんあるのだろう。
「イヤなら即辞める」。「次を当たれ」。そんな風潮は僕の周りに溢れている。
でも、それでいいのか。その場に居続けることが必要な時もあるのではないか。
踏ん切りがつかず、延々と悩んでしまう。僕の悪いクセが出ている。
(……優柔不断、だなぁ)
だからこそ、南原リーダーにも判断が遅いと怒られてしまうわけで──。
「……ん。通知音……? そうだ、スマホの電源切るの忘れてた」
不意に、カバンの中から着信音が鳴った。
社用携帯を通勤リュックの中から探す。いつもなら退勤後は電源を落としているけれど、今日は落ち込んだこともあって忘れていた。
(携帯、見るのもイヤだけど……)
怒られた時のイヤな気持ちがフラッシュバックして心臓を締め付ける。
けれどそのままにしておくのも気持ち悪くて、携帯を手に取り、画面に表示されたメールのポップアップも碌に見ないまま電源ボタンを長押し。
(どうせ仕事関連の連絡だろう。明日見ればいいや)
そう思っていた。
虚ろな眼差しでチラリと液晶画面を見る。
電源をオフにしています、というメッセージが画面中央に表示される。
しかし、その上には──「セクシャル休暇の相手に指名されています」の文字。
「えっ」
目を疑った。僕のメールアドレス宛に来た連絡は仕事についての用件じゃない。
「セクシャル休暇」。
その言葉の存在は知っているけれど、僕には関係の無いことだと思っていた。
それが表示されている。横長の枠内の中、デカデカと。鮮明に。
「あっ。ウソっ。……あっ」
その詳細を確認しようと指を這わせたところで。
社用携帯の電源は、切れた。