05/09 電子版発売

明らかに両想いなのに長いことつかず離れずだった幼馴染と、ついに一線を越える話

著者: ういろう

電子版配信日:2025/05/09

電子版定価:880円(税込)

「俺は、ずっとミオと幼馴染でいたい」──だから恋人になってほしい。
急に泣き出しそうになった君を前にして、伝えそびれてしまった愛の告白。
「……うん、これからも私たち、友達のままだね」──高校三年のクリスマスの苦い記憶。
大学生になっても疎遠にならず、俺の家に泊まりに来る十年来の幼馴染・澪。
今の居心地のいい関係は壊したくはないけど、彼女と深い仲になりたくて、意を決して二人きりの温泉旅行に誘い……
片想いですれ違った過去と両想いな今が交差する、エロラブコメ最高峰の幼馴染純愛ノベル!

目次

第一話 あの日々のおかげで、幼馴染との今この瞬間がある

第二話 あの夏の日、目に焼きついた姿をもう一度

第三話 あの秋の日、口にした欲望にかたどりを

第四話 あの冬の日、すれ違ってしまった想い出の続きを

本編の一部を立読み

第一話 あの日々のおかげで、幼馴染との今この瞬間がある



 大学生の夏休みは長い。俺の大学では約二か月もある。この膨大な時間の過ごし方は、非常に様々でありうるだろう。友人と遊びに出かけ、酒を飲み、サークル活動に参加したり、一人あるいは複数人で旅行をしたり、バイトや、研究や、趣味に精を出したり、恋人を作ってデートやセックスを楽しんだり、全く新しいことに挑戦してみたり……。
 俺についていえば、今のところは何もしないことを楽しんでいる。ベッドに仰向けに寝転がって、一日中天井を眺めていても、誰からも文句を言われない。一人暮らしの特権である。首都圏に実家があるのに、わざわざ東京での一人暮らしを選択したのは、きっと正解だったと思う。
 しかし、この特権はしばしば侵害される。先ほど幼馴染からSNSで連絡があった。「今日と明日の夜泊めて~☆」と。いやいや、午後四時だぞ今。もっと早くに連絡できなかったのか!?

 結局、それから一時間も経たずに幼馴染は来訪した。
 奴はいつもインターホンのチャイムを三回連打する。それを聞いて、やれやれと思いながら玄関のドアを開けると……そこには、よく手入れされた瑞々しいロングヘアの少女がひとり、携帯を弄りながら立っていた。俺の幼馴染の三春澪《みはるみお》だ。その微妙に幼さの残っている整った顔立ちは、幼馴染の俺から見ても絶賛に値する。調子に乗るから、こんなこと本人には絶対に言わないが。
「やっほーリュウ君。来ちゃった」
 鎖骨よりも下、胸上くらいまである髪の束を揺らめかせながら、ミオは一歩で俺との距離を一気に詰め、不自然なほど澄み渡った瞳でこちらを見つめてくる。外国人の血が入っているわけでもないのに、煌めく海のように青っぽい瞳。ミオは地毛の色素も薄めで、茶色っぽくて明るい黒髪である。
 そんな彼女が俺のことを「リュウ君」と呼ぶのは、俺の名前が「竜胆隆《りんどうりゅう》」だからだ。ほかには、「リュウリュウ」とか「リュウタン」などと呼んでくる奴もいる。さすがにバカみたいだからやめて欲しい。
「迷惑だった?」
「……別に迷惑とかじゃないけど、せめて前日には連絡してくれよ」
「んー、でも、大学夏休みなんだし、暇でしょ」
「なんか日に日に遠慮がなくなってないか」
「昔はそんなめんどくさいこと言わなかったじゃん」
 学生靴みたいなローファーを無造作に脱ぎ捨て、ミオはまるで実家にでも帰ってきたかのような調子だ。
「昔っていつのことだよ」
「さあ? まだランドセルしょってた頃?」
「おいおい……」
「うわっ、ベッドの上、服脱ぎっぱなしじゃん。ダメだよー客が来るんだからちょっとは片づけておかないと」
「俺のほうも日に日に遠慮がなくなってきてるってことだな」
「言うねえリュウ君のくせに。…………はー、つっかれたぁ……んうぅっっっ……」
 ミオは散らかったベッドの上に腰を下ろし、無防備にも両手を上げてぐーっと伸びをしている。セクシーな体のラインが際立ち、毎度のことながら目のやり場に困ってしまう。そう、この幼馴染、腹立たしいほどスタイルが良い。
 薄手のベージュのサマーカーディガンを着たままなのが、せめてもの救いか。だがそれでも、上のほうのボタンしか留めていないので、中に着ているキャミソールがチラチラと見え隠れしている。胸のあたりなんか、インナーが透けて見えてしまっている。
 俺は黙って冷房の温度を一度下げた。
「……あー……最近大学はどうだ……?」
「なんか聞き方が子供と微妙に疎遠になったお父さんみたい……」
 ミオは関西の大学に通っており、今日俺のアパートに泊まるのは、こっちで昔からの友人と遊ぶかららしい。自分の実家や、それこそ明日遊ぶ友達の家に泊まればいいのに、なんでわざわざここに来るのだろうか。そのことは、あまり深く考えないようにしている。
「それで大学はねえ……楽しいんだけど、人間関係がちょっとめんどくさいっていうか……」
「というと……?」
「あれだよ。やたらと連絡先聞かれたり、ご飯に誘われたり……」
「贅沢な悩みだな」
「モテすぎて困っちゃう」
 得意気なドヤ顔がイラッとくる。
「しかしまさかあのミオがねえ……」
「それってどういう意味かな~?」
 一歩引いて冷静に観察してみると、実はミオのスペックは相当に高い。顔良し、スタイル良し、性格……もまあ、色々難点はあるが良しとしておこう。対人コミュニケーションだってかなり上手いほうだ。テストの成績は確か中の上くらいだったが、あまり勉強はせずに地頭の良さだけで試験を乗り切るタイプだった。あと、正直言って、運動神経は俺よりもミオのほうが良い。
 とはいえ、幼馴染の俺はコイツの暗黒面をよく知っている。猥褻な言葉を叫びながら廊下を走り回り、男子たちに交ざって先生の説教を食らっていたなどというのは序の口で、かまきりの卵を教室に放置して大惨事を引き起こしたり、授業中にもかかわらず他クラスの俺のところに来て宿題ノートを略奪しようとしたり……とまあ、とにかくやりたい放題だった。今でもたまに問題児だった頃の片鱗を見せることがあるが、最盛期と比べると別人のように大人しくなったと思う。
「てか、何が不満なんだ? 連絡先くらい教えてやればいいのに。飯だってどうせ向こうの奢りなんだろ」
「そういうのと変に仲良くしたら、肉体関係とか迫られそうで怖いじゃない」
「…………」
「だってヤりたいだけのチャラ男にちやほやされたり、奢ってもらったりして、その代価に体を差し出す……みたいなのって、絶対違うじゃん?」
 ほとんど冗談で言ったつもりだったが、そう答えるミオは心の底から嫌そうな表情をしていた。
「えげつない言い方するなお前……」
「えー、君もそう思わない?」
「……ミオがもしそういう人間関係を受け入れていたら、すごく、イヤだな……とは、思う」
「安心したまえ、リュウ君。私はまだ処女だぞ」
「聞いてない聞いてない」
 ヤりたいだけとか処女とか、そういう言葉がミオの口から出てくると、今の彼女のどちらかといえば清楚系のビジュアルとのギャップに思わず吹き出してしまいそうになる。
 本人にとっては、猥褻な言葉を意味もなく連呼して喜んでいたあの頃と同じような感覚なのかもしれない。
「ま、無理ってわかったら、みんな私のご機嫌なんて取らなくなるんだけど」
「一人くらいこれっていう相手とか、いなかったのか」
「運命の相手みたいな?」
「そんな感じ」
「運命っていうのはさ、瞬間的な出会いから感じ取れるものじゃなくて、もっとこう、積み重ねた時間や出来事のことだと思うんだよね」
 ミオは時々変なことを言う。いや、変ではない。彼女の言っていることはこの上ないほどよく理解できる。だが、その言葉の意味するところを極限まで突き詰めることはしない。俺も、ミオも。それが二人の間での不文律、暗黙のルールなのだ。余計なことをして、この今の関係にヒビを入れるべきではない。
「リュウ君はさ。相手つくって脱・童貞する気とかはないの?」
「無理無理」
「なんで?」
「俺のコミュニケーション能力が壊滅的なのお前知ってるだろ」
「ぷっ……リュウ君って中途半端に外見だけ良いせいで、同族からは避けられるし、陽キャグループには溶け込めないしで、ほんとかわいそうだよね」
「ちくちく言葉は良くないって学校で習わなかったか?」
「私そんな真面目な学生じゃなかったしなぁ……」
「それは知ってる」
「君は窮屈なくらい真面目だったよね。そんなんじゃ、ずっと童貞のままだぞー?」
「ま、悲しいけど俺は一生童貞なんだろうな」
「ふーん。でも、それは私もかな」
「いやそっちは童貞じゃおかしいだろ」
「だってリュウ君にとっては私だって男友達みたいなモノでしょ」
「男友達って……。それに友達っつーか……幼馴染、そう、幼馴染だろ」
「あー……幼馴染かぁ……うん、そうなのかもね……」
 ミオはそうでもないようだが、俺にはこの幼馴染という言葉に強いこだわりがある。ただの友人同士ではない強固な関係性。腐れ縁というのとも違う自発的に維持される繋がり。積み重ねてきた長い時間と膨大な出来事。等身大の自分でいることができるという安心感。できることならいつまでも一緒にいたい居心地の良さ。互いのことは何でも知っているという信頼感。それでいて、わかったと思った次の瞬間にはわからなくなる底知れなさ。
 最後のは、幼馴染一般というよりはミオに特有のものかもしれないが、俺にとって「幼馴染」の名に値する相手は彼女しかいないのだから、特に問題はない。
 とにかく、ミオとはずっと幼馴染でいたい。
 だが、他方では、どうしようもなくミオを異性として見てしまう自分がいることにも、彼女を独占したいと思う自分がいることにも気づいている。そして、この欲望が、今のこの居心地の良い関係を壊してしまうかもしれないことにも。
 俺とミオの間の不文律が破られ、一度一線を越えてしまったならば、二人の関係は坂道を走る機関車のように先へ先へと登りつめてその頂点に達するか、底へ底へと落ち込んで破局を迎えるか。そのどちらかしかないように思える。
 夜、ミオは全く無警戒にベッドの脇に敷いた布団で熟睡している。今もし彼女に手を出したらどうなってしまうのだろうか。よくない妄想が脳内を駆け巡り、全く寝つけない。大学生になってから、こんな夜を何度も過ごしてきた……。

「寝不足?」
「いつものことだよ」
「そっか。あんまり無理するんじゃないぞっ」
「お前も二十歳になったからって、調子乗って酒飲みすぎんなよ」
「気をつけるけど……ヤバかったら迎えにきてね?」
「甘えんな」
「ケチ」
「あ、ちょっと待て」
「なに?」
「……誕生日、おめでとさん」
「ありがと!」
 翌朝早く、ミオは友人の藤宮由紀《ふじみやゆき》との待ち合わせ場所に出かけていった。日中は渋谷でショッピングを楽しむらしい。それで夜はもっと人を集めて飲み会、と。しかも、飲み会の後は俺の家でもう一泊して、それから関西に帰るらしい。便利な宿にされてしまって、腹立たしいことこの上ない。さらには、宿代と称して少しずつ自分の私物を置いていきやがる。コイツ、もしかしてここに住む気なのか。
 何はともあれ、俺も身支度をして、夏休みだというのに大学に向かう。大あくびをしながら、大学附属図書館で一日過ごす。進振りが終わったので、そろそろ卒論のことでも考えようかと思ったが、大して興味の湧くテーマがあるわけでもない。図書館を徘徊していれば何かしら出会いがあるかもしれないと思ったが、まあなかなかそうもいかない。
「運命、ねえ……なんでああいうこと言うかねえ……」
「勉強だけできても、しょうがないってことですかねえ……」
「でも、俺のこと、絶対好きだと思うんだよなぁ……」
 ……って、キモすぎだろ俺。とんでもなく気持ち悪いことを呟いてしまった。首をぶんぶんと振り、適当に分厚い文庫本を書架から取って、閲覧席に腰かける。これはまた随分と睡眠導入効果が高そうな……。昨晩はよく眠れなかったということもあり、俺はすぐに船を漕ぎ始める。

 またクソみたいな一日を過ごしてしまった。結局、図書館の閲覧席を長時間陣取って、量こそ多いが質の悪い睡眠を取っただけであった。そうして、夜、予想通りミオからのSOSが届き、俺は早足で最寄り駅に向かう。とりあえず電車には乗れたらしいが、ちゃんと俺のアパートの最寄り駅で降りてくれるかは怪しいので、駅の入場券を買ってホームで電車が来るのを待つ。やがて教科書的な酔っ払いと化した幼馴染が到着する。
「お、リュウ君だ~。なんでいるの~? 偶然?」
「そっちが来てくれって……」
「あっはは、そうだった、そうだったねえ……!」
「テンションたっか」
「そんな嫌そうな顔するなよ~。こーんなに可愛い女の子の介抱ができるんだぞ~?? ひゃ~っ、お持ち帰りされちゃうーっ!」
「う、うぜえ……」
 確かにコイツは抜群に可愛い。だからこそ余計にウザい。
 しかし、ウザいと思った次の瞬間には、千鳥足でこちらに寄りかかってきた幼馴染にドキッとさせられてしまう。ほのかに赤く染まった頬と、トロンとした眠そうな目。酔っ払っているだけだとわかっているのに、致命的な勘違いをしてしまいそうになる。
「…………!」
「……? 変な顔……だいじょーぶ?」
「……そ……そっちこそ、足だいぶフラフラしてるけど、大丈夫なのか?」
「うーん、なんか足が痛くて……筋肉痛みたいな」
「ったく、コンビニで水買うぞ」
「んー、わかった」
 足が痛いのは急性アルコール筋症ってやつか。それとも単にむくんでいるだけか。どちらにしても、酔っ払いには水を飲ませたほうがいいと聞くので、それに従う。
「……おい酔っ払い、コンビニの中なんだぞ。あんまり引っつくな」
「えええ、そんな酒臭いかな私」
 そういうことじゃないんだが……。
「おっ、水あった。じゃあ買ってくるから……」
「んーっ? 私のなんだし水くらい自分で買うよ~」
 そう言ってミオは俺の手から冷たいペットボトルをひったくる。
「おいおい、大丈夫か……?」
 ミオはふらふらとレジに向かい、そして案の定、財布の中身を盛大にぶちまけた。言わんこっちゃない。俺はさっと駆け寄り、散らばったお札とカード類をかき集める。
「えへへ~、やっちゃった~。ごめんごめん」
「あーもういいから、早く拾うぞ……。…………ん? なんだこれ」
 散乱物の中に交じった一枚のカードが、強烈に俺の注意を引いた。印字されている文字の半分くらいは見えなくなってしまっていたが、そのボロボロのプラスチックカードには確かに見覚えがあった。
「あっ、それ。遊園地の年パスだね」
「おー、懐かしいな」
「二人でよく一緒に行ったなぁ……もーそれこそ夏休みには毎日のように」
「年パス持ってるの俺らだけだったからなのに、『アイツら毎日遊園地デートしてる!』っていう、ガキの頃特有のノリ。あれは、くっそウザかった」
「リュウ君顔赤くしながら、コイツが勝手についてくるんだ! とかなんとか言い張ってたよね~」
「うっせぇよ」
「あっ、また赤くなった」
 散らばってしまった財布の中身を拾うのも忘れて、想い出話に花を咲かせる。コンビニ店員は、そんな俺たちに呆れ顔でお札とカード類を手渡す。これでは俺も酔っ払いと変わらない。すみませんと頭を下げ、外に出て近くのベンチに腰かける。
「うっ……なんか気持ち悪くなってきたかも……」
「ほら、水飲め」
「はーい……」
 街灯に照らされて濡れ光っている唇が妙に艶めかしい。口の端からこぼれた水が胸元に垂れて、そこに点々と染みを作っていき、思わず目を逸らす。
「…………?」
「……こぼれてる。下、下見ろ」
「……にぇ? ……おっぱいでガードしてるから大丈夫でしょ」
「それこそ真っ先に守らなきゃならんものでしょうに……」
 今のミオは普段以上に無防備で、危機感を欠いている。やはり、わざわざ駅まで迎えに来てよかった。
「なんかぽわぽわして気持ちいい……リュウ君ちょっと肩貸して」
「……っ……!」
「ちょっと硬いけど、悪くないかも……。ん~っ、いいにおいするぅ」
 突然、ミオが肩にもたれかかってくる。心拍数が急上昇し、二の句が継げなくなる。幼馴染とはいえ、酔っているとはいえ、この距離感の近さは、不健全でセクシュアルな妄想を掻き立てる。息を吐く音がよく聞こえる。人よりも平熱が少し高めな彼女の体温を直に感じる。ところどころ濡れ透けている豊かな膨らみが押しつけられて、俺の二の腕は半ば性感帯と化している。
 ……なんだか眠そうにしているし、少しくらい胸を触ったり、つついたりしてもバレないのではないか。
 …………もっとも、良くも悪くも俺にそんなことをする度胸がないからこそ、この幼馴染とのつかず離れずの関係が今日に至るまで維持されているのだが。
「おーいリュウ君、心ここにあらずって顔してるぞーっ」
「……ミオのあまりの警戒心の薄さに呆れてたんだよ」
「警戒心、ねえ? 何度も一夜を共にしたのに、今更そんなこと言うのかい? ねえねえ?」
「…………はぁ」
 コイツはこういう奴なのだ。何があっても、絶対にやらしい雰囲気にはならない。酒が入っても、そこのところは変わらないらしい。
「とにかく、ちょっと休んだら行くからな。お前に引っつかれてるせいで、あっついんだよ……ただでさえ真夏の夜だってのに」
「私は気持ちいいけどな~。あーもう、寝ちゃう寝ちゃう、寝ちゃうぞ~」
「嘘だろ、勘弁してくれー」
「じゃあ私が起きてられるように、なにか話してよ」
「話って突然言われてもなぁ……うーん、あー、お前今日、藤宮たちに会ったんだろ。確かあいつらと海行ったことがあったじゃん、三年生か四年生くらいのとき」
「おーっ、ちょうどその話、今日の飲み会でも出たんだよ!」
「ってことは俺の話も……?」
「もちろん。リュウ君が私たちの拾ってきた『なまこ』にビビって、ビーチの端から端まで逃げ回った話とかね」
「いやだって怖いだろ、見た目も不気味だし、なによりアイツら内臓吐くんだぞ……」
「ぷっ……全く同じこと、あのときも言ってた気がするんだけど」
 ミオは楽しそうにケラケラと笑っている。その童心に帰ったような純粋無垢な笑顔を見て、あの無邪気さで満たされた日々が心の中に回帰してくる。あの頃は、大人というのはもっと自由で、何でもできる存在だと思っていた。けれども、大きくなって覚えたのは、自分自身の偽り方とか、失うことへの恐怖とか、そんなことばっかりだ。
「なんか海の話してたら、久しぶりに二人で行きたくなってきたなぁ」
「…………じゃあ、行くか」
「えっ、ほんとに? 行きたい! どこ行く? どうやって行く?」
「もう少しで運転免許が取れそうだから、レンタカーでも借りるよ。場所は、あんまり遠くないほうがいいかもな」
「いいねいいねえ、そしたら水着買わなきゃなぁ……車あるなら色々持ってけそうだねぇ……んふふっ」
 幼馴染として、こうやってたまに二人で遊びに行ければ、それで十分だろう。それ以上の関係になるのを俺もミオも望んではいない、と。今までずっと、そう自分に言い聞かせてきた。
 一目惚れとか、突如現れた運命の相手とか、そういうのだったらどんなに楽だったろう。過去の積み重ねなど無いに等しいのだから、気後れせずに気持ちもどんどん伝えていけばいい。だが、この幼馴染の場合は? 万一互いの気持ちに食い違いがあったなら、それは十数年にわたる過去の蓄積の破却を意味するのではないか。
 ……だが、それでも。
「……そのまま帰るんじゃなくてさ、どこかで一泊してかないか。えーと……お前今日、誕生日だろ? だから……誕生日プレゼント、的な……?」
「…………! 誕生日プレゼント……お泊まり……私に…………?」
「な……なんでそんなカタコトみたいになってるんだよ」
「ついビックリしちゃって……。でもそっかぁ、リュウ君と外でお泊まりかぁ、いつ以来かな、ていうかもしかして初めてかなぁ……」
 それから、ミオは突然ハッとした顔になり、俺から少し距離を取る。指をもじもじさせながら、何か言いたそうにしている。
「どうしたんだよ……?」
「ち……ちなみに、それってもちろん、私とリュウ君で、二人きりでってこと……ですよね……?」
「そりゃあ……そんな大勢の宿泊費は俺も出せないし」
「……わかった。楽しみにしてる」
 そう言うと、ミオはさっきまであんなに酔っ払っていたのが嘘のように、さっと立ち上がる。
「酔い、覚めたのか?」
「…………覚めちゃったよ。誰かさんのせいで」
 アパートに戻ってからのミオは、なんだかいつもよりも静かで、旅行の日程を決めたらさっさと寝てしまった。彼女はもしかしたら気づいているのかもしれない。
 ……俺が、この旅行で何をしようとしているのかを。

 轟《とどろ》く蝉時雨《せみしぐれ》。
 車の運転はまだまだ慣れないが、カーナビやら何やらの力を借りて、ようやくミオが前泊している藤宮の家に到着した。いつもみたいに俺のアパートに泊まればいいのに、どうして今回に限って……と訝しむ気持ちを抑えて、マンションのエントランスを出たところで待っているミオに合図を送る。隣には藤宮もいるが、なんだか不機嫌そうだ。
 つばの広い真っ白な帽子を押さえながら、元気よく駆け寄ってくるミオの姿が、小学生の頃の悪ガキの姿と重なって、思わずぷっと笑ってしまう。
「……リュウ君?」
「や、なんでもない」
 ミオは、彼女の体には少し大きめに見えるパーカーを着ていた。それでも胸部は窮屈そうだったが。
「荷物は後部座席に。手伝うか?」
「そんなにないから大丈夫だよ」
「水着は……中に着てきたのか」
「見たい?」
「あー……さすがにないだろうけど、スクール水着じゃないかどうかだけチェックしておきたい」
「は? は? は~っ!? リュウ君私のことバカにしすぎじゃない?」
「……現にスク水で海に来たことあったじゃんか」
「いつの話してんの!? あ~っ、もういい! もういい! ちょっと待ってろよ、目にもの見せてやるから……!」
 ミオは怒気を露わにしながらパーカーのファスナーを開けようとするが、すんでのところで藤宮に止められる。
「おさえて! おさえてミオ! この童貞勃起不全野郎に一矢報いるって言ってたじゃない!」
「えっ俺ひどい悪口言われてない……!?」
「おい、竜胆。アンタ、またミオのこと泣かしたりしたら絶対に許さないから」
「泣かすってお前なぁ、ガキじゃあるまいし……」
 どうも俺は昔から、藤宮に蛇蝎《だかつ》のごとく嫌われている。ミオに対して過保護な親みたいに世話を焼いている藤宮のことだから、その理由は何となく見当がつく。まあ、中指まで立てられるとさすがに傷つくが。
 何はともあれ、藤宮に見送られながら、俺とミオは海へと出立《しゅったつ》した。

 都内から二時間ほど車を走らせると、有名な某海水浴場に到着した。高低差のある街並みとヤシの木をバックにした海岸に、波が穏やかに打ち寄せている。天気も良く、日本晴れだ。夏休みということもあって、混雑はかなりのものだが、どうにか車を停めることに成功する。
 レジャーシートを砂浜に広げ、大きめのビーチパラソルを立てる。持ってきたものはそれほど多くない。アイスなどを詰め込んだクーラーボックスと、タオル数枚、日焼け止めなど。一通りセッティングが終わると、二人並んでレジャーシートの上に座って、とりあえず海を眺める。ミオはまだパーカーを着たままだ。
「それ……まだ着たままなのか?」
「脱げってこと? うわ、リュウ君のエッチ」
 ミオは朝のことを微妙に引きずっているようだった。
「そんなに拗ねるなって。……中に、着てるんだろ」
「……見たい?」
「見たい」
「スク水かもよ?」
「それはそれで見たい」
「え、キモっ」
 ややあって、ミオはパーカーのファスナーを焦らすようにゆっくりと下ろし始める。美しい谷間がちらりと見え、パーカー越しにも巨大な存在感を放っていた乳房の形がはっきりとわかるようになる。
「でっか……」
「……心の声、漏れてるよ」
「……ごめん」
「いいよ、別に。実際、私のって、けっこう大きいみたいだし……」
 上に着ていたパーカーを脱ぎ終えると、ミオはおもむろに立ち上がり、澄み渡る大海原と燦々《さんさん》と輝く太陽を背景に軽くポーズを取る。首の後ろと腰のあたりで紐を結ぶ、水色のビキニタイプの水着が、ミオの瑞々しい肢体に最高の彩りを与えている。
「あ、あのさ……どーお……? ……ちょっと攻めすぎ……かなぁ……?」
 手を後ろで組み、上半身を少し傾け、胸が強調されるようなポーズ。本人が照れまくっているせいで絶妙に決まっていない。しかし、その初々しさがかえってイケない妄想を掻き立てる。
「…………黙ってないで、何か言ってよ、リュウ君」
「……その、あの頃とは全然違うな、と、思わず感慨に耽ってた」
 主に何がとは言わないが、本当に大きくなった。
「なんか今、不自然に目、逸らしてなかった?」
「そんなことない」
「……ふーん。それで、リュウ君的には、どうなの? 似合ってる……?」
「…………大人の水着を着こなしてて、似合ってる、と思う。すごく。可愛いし……」
「…………」
「…………」
「……ありがと」
 普段ならもっと調子に乗りそうなもんだが、今日のミオは随分と大人しい。もしかして褒め足りなかったのだろうか。確かにわざわざ今日のために水着を買いに行ったと言っていたし……だが、あまりに言葉を尽くしすぎると、それはそれで余計なことを口走ってしまうかもしれない。
「そうだ。背中に日焼け止め、塗ってよ」
「いいのか」
「いいって、何が?」
「……何がって……まあ、お前がいいならいいけどさ」
 変に意識していると思われるのも癪なので、ミオの無防備さの極みみたいな頼みを聞いてやる。
 レジャーシートの上にうつ伏せになっているミオの健康的な白い肌に手のひらを押しつけ、白いクリームを塗り広げていく。普段は見ることのできない彼女のうなじを、すらっとした背中を、肉付きの良い臀部を、一抹の背徳感に苛まれながらも、ここぞとばかりに凝視する。そしてなにより、ミオのきめ細やかな肌。とても柔らかくて、スベスベしていて、ずっと触れていたくなってしまう……。
「……ずいぶん丁寧に塗ってくれるんだね?」
 そのミオの言葉で、はっとして我に返る。
「塗り残しのせいで妙なところが焼けちまうよりはマシだろうが」
「確かに。じゃあ、前も塗ってもらおっかな」
「は……? 前……? いや、それは、さすがに……」
「……バーカ」
「痛っ」
 ミオの長い中指が俺の額を弾いた。
「冗談に決まってるじゃん」
「そういうのやめたほうがいいぞ……本気にする馬鹿がいるかもしれないから」
「現にリュウ君も本気にしかかってたしねえ」
 ニヤニヤしながらミオはこちらの顔を覗き込んでくる。
「顔近いんだが……」
「リュウ君が童貞だからそう感じるだけでは?」
「お前いちいちムカつくな。てかなんなんだよ、その小悪魔ムーブ」
「いいじゃない。男女二人の海水浴って感じがして」
「男女二人って……ただの幼馴染同士だろ」
「…………バーカ」
「またデコピン!? 地味に痛いんだからなそれ……!」
 ミオは再度の、しかもより強烈なデコピンに文句を言っている俺のことは完全に無視して、クーラーボックスの中から棒アイスを取り出している。
「ほら、食べるでしょ」
「じゃ、一本」
「ほい」
 海風に吹かれながら、どこか懐かしい見た目の長方形の棒アイスを食す。ミオとは味の好みが近かったから、よくお菓子の取り合いになったのを覚えている。ちなみに今、俺たちが食べているのはリンゴ味だ。
 聞こえてくるのは、子供たちのはしゃぎ声、海鳥の高らかな鳴き声、それに波が打ち寄せる音だ。ミオは無言だが、しかしどうも変な視線を向けられている気がする。
「……なんだよ?」
「んー? 何って。君の横顔を見てるだけですがー?」
「恥ずかしいんすけど……」
「そっちも、見たいところ、あるんじゃないの?」
「……ない。断じてない」
「リュウ君」
「…………」
「いくら私でも、さっきから、どこに熱い視線が注がれてるのかくらいわかるよ。ふいって、目逸らしても、バレバレだからね?」
「……本能という怪物が制御できない」
「我慢は体に毒だぞっ」
「つってもなぁ……ミオはイヤじゃないのか」
「イヤ……かどうかは……まあ……相手による、かな」
「じゃあ、俺はセーフってこと?」
「…………んっ……」
 小さくうなずくミオの横顔には、うっすらと朱が差していた。
「……ほら、……こうしたら、見えやすいでしょ……?」
 二の腕に挟まれ、寄せられ、より深みを増した谷間は魅惑的な魔力を放ち、俺の視線をそこに釘付けにする。
 改めて見ると、ビキニタイプの水着はこっちが不安になるほど布面積が少ない。それでも、今にもこぼれ出しそうな一対の南国の果実を、必死に支えているのだ。その上辺には控えめなフリルがあしらわれているが、なんだか下着みたいでかえっていやらしい。
「ガン見してるね……変な顔してるね……童貞丸出しだね」
「そこまで言わんでも……」
「…………」
「…………」
「……リュウ君なら……いいよ」
「……? いい……ってのは……?」
「……私に……しても……ちょっと……くらい…………ッチなこと……」
 どんどん先細りになっていくミオの声を必死に聞き取ろうとするが、彼女の最後の言葉は何か重いものが地面に落ちた音にかき消されてしまった。
 ミオの胸から視線を転じると、そこには純真そうな少年が一人、両目を覆いながら立っていた。その足元では、正体不明の黒い塊と海水の入ったビニール袋がどくどくと水を吐き出している。
「あ、……す、すみませんでしたっ…………!」
「…………」
「…………」
 少年は逃げるように袋を持って立ち去っていった。
 一方には、悩殺的な乳房をこれ見よがしに強調する美少女。他方には、それを食い入るように見つめている童貞丸出しの冴えない男性。健全な青少年にとっては、あまりよろしくない光景だ。ここが特に家族連れの多いビーチだということを失念していた。
「……ええっと……わ、私たちも遊ぼっか! ほら、行こ?」
 ミオを追って、俺も波打ち際に向かって駆け出す。だが、人混みの中で彼女を見失ってしまった。
「どこいったんだよ……」
 無数の肌色の中から一番綺麗な肌色を探すという簡単な仕事もこなすことができず、仕方ないので引き返すことにする。
「リュウ君? 何戻ろうとしてるのかな?」
 声のした方を向くと、そこには、さっきビニール袋越しに見た正体不明の黒い物体を両手で持ってこちらに向けているミオがいた。
「ひっ……!? おま……それ、よく見たらナマコじゃん……」
 情けない声を出しながら、俺は二、三歩後ずさりしてしまう。グロテスクな、エイリアンみたいな見た目のそれが、力なくもぞもぞと蠢《うごめ》いている。
「さっきの子から借りてきたんだ」
「お前の精神図太すぎだろ……」
 ミオの後ろには、なるほど先ほどの少年がいた。女子大学生の巨乳に完全に気圧されてしまって、もじもじと恥ずかしそうにしている。
「ほら見て見て。白いネバネバ、ぴゅーっ、ぴゅーって出してる……!」
「おいっ……! それ、付くと取れないんだって……! あと言い方! 健全な青少年の性癖を歪める気か……!」

 ……結局、大人になってもミオがやることは昔とあまり変わっていないようだった。一日海で遊んで、改めてそう感じた。とはいえ、一連の性知識を身につけてしまったせいで、ミオが俺に対して妙な態度を取ることは増えたかもしれない。
 そういえば、あのときミオは何と言おうとしていたのだろうか。ミオの思わせぶりな態度は、やはりそういうことなのだろうか……。
 予約しておいた温泉旅館に向かう道中、車の助手席で無防備にも熟睡しているミオの唇が妙に艶めかしく見えた。
「勝手にキスしたら、怒るか……?」
 もちろん、俺の呟きへの返事はない。あったら困る。
「ミオ……好きだぞ。………………なんてな」
 寝ているミオに対してさえ、恥ずかしくなってそう誤魔化してしまう自分がとてもみじめに思えた。

「ふふふ、二人で温泉旅館か~。なんかお忍び不倫旅行みたいでいいね」
「いやお前の温泉旅館のイメージどうなってんだよ」
 到着するや否や、ミオは跳ね起き、子供みたいにはしゃぎまわっていた。
「素泊まりだから、もう布団敷いてあるのか」
 二人で泊まるには大きめの畳の部屋の中に、何の配慮かぴったりとくっついて配置されている布団。一緒に二人分の浴衣も置いてある。素泊まりなので、夕飯は海水浴場近くで食べてきた。飯付きのプランは高くて予約できなかったというのは内緒である。
「すごい! 露天風呂が付いてる!」
 もっとも、その分、他のところで奮発したわけだ。
「先、入っていいぞ」
「……せっかくだし、一緒に入る?」
「……え? ……は……?」
 聞き間違えじゃないよな。
「あっ……もちろん、そう、互いに水着を着て、だってば! やらしい顔しちゃってぇ、裸でなわけないじゃない……!」
「ああ……お、おう。じゃあ、先に水着ちゃんと洗っておかないとな」
 わざわざ露天風呂付きの客室を選んだのだから、下心が全くなかったわけじゃない。しかし、まさかミオの方から一緒に入浴することを提案してくるとは……。
 露天風呂といっても、一般的な家庭の浴槽より一回り大きいくらいのサイズしかない。二人で入ったりしたら、確実に互いの体が触れ合ってしまう。それで、もしナニが勃ち上がっているのを至近距離で見られてしまったら……。
 ヤバい……。

 …………旅館の上層階の、四季を感じさせる山々と涼しげな渓流に面した小さな温泉に、長い髪をヘアゴムで結んだ美少女が浸かっている。情緒溢れるその光景と、丸見えのうなじに魅惑されて、思わず背後で立ち尽くしてしまう。
「何してるの、ほら」
 ミオは脇に寄って、俺が入るための場所を空ける。それでも、腕、肩、膝など、色々なところが触れ合ってしまう。そのうえ、主張の強い二つの膨らみが、ぷかぷかと湯船に浮かんで場所を取っている。故意でなくとも、うっかりしていると触ってしまいそうだ。
「夜だね」
「夜だな」
「…………」
 しっとりした何とも形容し難い雰囲気。見上げればそこには、東京よりずっと澄み渡っている満天の星空。一日の疲れが熱い湯の中に溶けていく感覚。隣には最愛の幼馴染。
 互いに無言だが、不思議と居心地は悪くない。
「……あ、ありがと……ね?」
「ありがとうって……何が……?」
「だから、誕生日プレゼントのこと……」
「あー、や……お前と二人で旅行とか、してみたかったし……迷惑じゃなかったなら、よかった」
「今日、本当に楽しかった」
「……ミオも物好きだよな、俺といて楽しいとか」
「そっちこそ、私、いつも君のこと振り回しちゃってるし、イヤになったりしないの……?」
「振り回してくるのは事実だけど……そういうの全部ひっくるめて、俺は、お前といる時間が一番楽しい」
 だからこそ、この関係を失うのが怖いから、今でも告白を尻込みしているのだが。
「君、たまにそういうこと言うよね……はぁぁ……ずるいなぁ……」
 突然、ミオがこちらにもたれかかってくる。
「……!? おい……!?」
「私の方が湯口近いから熱いの」
「つってもなあ……」
「いいじゃない。幼馴染なんだから」
 見慣れた髪型と違うせいで余計に色っぽく感じるミオの髪から、いやミオの全身から、たまらないほどいい匂いがする。ずるいのはお前だと言いたくなる。
「……ねえ、私たちって、ずっとただの『幼馴染』なの……?」
「……ミオ……?」
「……あのさ、リュウ君。これから言うことは、あんまり深く考えないで欲しいんだけど……」
「…………」
「…………私、今日、色々と準備……主に心の準備かな……してきてるから」
「…………」
「だから…………待ってる」
 それから、ミオは「あはは……逆上《のぼ》せちゃったかも」と言って、湯船から出て行こうとする。
 だが。
「……ちょっと、そのままでいてね」
「…………?」
「ちゅっ……」
 滑らかなものが頬に一瞬だけ触れ、無音となった世界に啄むような音が響く。
「…………すき。………………なんてね」

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