学園祭準備中の夏、突然の豪雨により帰宅困難になった俺。
疎遠気味な幼馴染・神原月夜と、部屋に閉じ込められてしまった。
髪から水を滴らせブラが透ける姿を見て、初めて感じる女の色気。
濡れた服を脱ぎ捨て、半裸で抱き合ううちに淫靡な雰囲気に。
「だめ、彼氏がいるんだよ……キスだけは先輩のだから」
ショーツを外し、蜜を溢れさせている処女地へと肉棒を沈めていく。
一晩中まぐわい続けた後、片想い中の結衣崎琴乃とも不測の事態が……
WEB発の大ヒット企画、完全書き下ろしの第二弾は文化祭寝泊まり編!
第一章 10年に一度の大雨で学校に寝泊まりすることになった結果、彼氏持ちの幼馴染をセフレにしてしまった。
第二章 続・10年に一度の大雨で学校に寝泊まりすることになった結果、彼氏持ちの幼馴染をセフレにしてしまった。
第三章 10年に一度の大雨で雨宿りした結果、片想いのクラスメイトを婚約者にしてしまった。
第四章 10年に一度の大雨で閉じ込められて彼女ができた結果、嫉妬した幼馴染と激しく交わってしまった。
第五章 幼馴染と恋人、どっちを選ぶか?
第六章 10年に一度の大雨で学校に泊まり込んだ結果、幼馴染も恋人もまとめて抱いてしまった。
本編の一部を立読み
第一章 10年に一度の大雨で学校に寝泊まりすることになった結果、彼氏持ちの幼馴染をセフレにしてしまった。
叩きつけるような雨音がひっきりなしに響き、天気は最悪だった。
予報によれば、10年に一度の大雨らしい。バスも電車も遅延から運休に変わり、夕方にもかかわらず真夜中のような暗さになっている。
季節は夏。八月の真っ只中。悪天候の夏休みにもかかわらず俺たちは学園にいた……そして、帰れなくなった。
失敗した。
来月の中旬に行われる学園祭。準備は大詰め……というほどではないが授業やテスト期間を考えると夏休みは作業に最適な時期だった。
学園祭実行委員という役職もあり、休みのかなりの時間を学園で過ごすはめになっていた。なにしろ俺の担当は校門に設置するゲートの大道具。仕事は多かった。
今日は急な大雨に対処すべく校門付近に出しっぱなしだった道具や作りかけのゲートを屋内に運び込む作業を行った。それを担ったのは俺ともう一人の女子だった。
神原月夜《かんばらつくよ》。
俺のクラスメイトで……一応、幼馴染。
最近は疎遠で挨拶程度は交わすが、遊びに行ったりはしない。
所属するグループも違う。学園祭実行委員長である彼女は、カースト上位の陽キャグループだ。
端整な顔立ちと大きな目の美少女で、化粧っ気がないにもかかわらずファッションセンス抜群の女子たちに引けを取らないオーラがある。個人的には、いつも前向きな光を宿す目がとても印象的で、魅入られる。
女優にでもなればいいのにと思うほどの正統派美少女だ。
俺と彼女の二人が遅くまで作業をしていたのは、単に俺たちの家が学園から近かったから。
急激に変わりゆく天候に他の委員たちは早々に帰宅させられ、自転車圏内の俺たちは最後まで残っていた。
もっと早くに帰ればよかった……、後悔が湧いてくるがどうにもならない。
「ごめんね、ゆーくんにまで付き合わせちゃって」
可愛らしい声が申し訳なさそうな音になる。そんなことを言われると俺が気まずくなる。おそらくは学園祭実行委員長の責任感なのだろうが……真面目だなぁという感想しかない。
ゆーくん、俺の幼い頃の呼称だ。久々に聞いたな。
「こないだ俺が傘忘れた時、帰りに傘入れてってくれただろ? その借りを返さなきゃな」
「それ、小学生の時の話? 懐かしいね……あと全然こないだじゃないし」
俺の軽口に月夜が笑う。たしか小5だったかな? あぁ、そういえばその時の相合い傘を当時のクラスメイトにだいぶからかわれたっけ?
「……あとは家から近い学園選んだ自分のせい?」
「もう、なにそれ……」
近場の人間に押し付けて申し訳ない、と気の良いやつらが言っていたのが救いだ。ただ帰宅難民にさせるわけにもいかず、諸々を大雨の中で放置するわけにもいかなかった。
俺と月夜は二人で人員不足な片付け作業を行い、結果、天候は最悪になっていた。
ようやく最後の道具を運び込んでいる真っ最中。
他のみんなはだいぶ前に帰宅しているし、先生でさえも帰宅している……問題じゃね? とも思ったが事実、誰も残っていなかった。
「マジで帰れないな」
二階にある準備室に向かう階段踊り場の窓から外の様子が見えた。大雨はいつの間にか激しさを増し、校門前の道路は川のように冠水していた。
俺の家は自転車で二十分。月夜もその近所だ。普段であれば歩いてでも帰れる。ただ今日は厳しいなぁ、危険だ。
「ごめんね……」
「いや、そういうつもりで言ってないし」
軽口を叩きながら資材を運ぶ。ゲートの柱部分の木材で長いし重い。二人で運ぶのは難儀だった。
「一階の廊下に置いておけばよくなかったか?」
「ダメ、ちゃんと準備室に入れてよ」
相変わらずしっかりした女の子である。
人当たりがよくなり、美人になった今でこそ人望ある委員長だが、小さい頃は生真面目すぎる性格で軋轢もあった……そんな時は決まって今のように俺に指示してたなぁ。
「相変わらず俺に厳しくない?」
「ゆーくんだから、いいんです」
さっきの「ごめんね」は何だったんだと思うが、久しぶりに気安く話されて悪い気はしない。
準備室は学園祭の資材を収納している部屋で、広いが学園祭に必要な諸々のせいでごった返している。窓は奥に一つあるだけで、空気がこもりやすいのかどこか湿気臭い。上階にあるのが最大の欠点で、資材を出したり戻したりが煩わしい。
学園祭実行委員長のお言葉に従い準備室に収めるが、長物の資材は狭い準備室の扉を通るのには難易度が高い。
ガツン、ゴン、とぶつかる音が聞こえる。
「ごめん!」
月夜が謝る声。
ほら、だから廊下に放置しようと言ったのに……、とは思ったが声には出さず「どんまい」と告げる。別に機械でもないのだ、多少ぶつけて壊れるものでもない。
ちゃんとした場所(月夜基準)に片付け終わった俺たちは二人揃って大きな息を吐いていた。うん、疲れた。
「お疲れ様」
「ごめんね、最後まで残ってもらっちゃって」
「問題ない。近所メンバーの宿命だよな」
「ほんとそれよね」
さっきから謝ってばかりだな、月夜。自分が最後まで残るのはやむなしとして、俺まで付き合わせたことに負い目を感じているのだろうか。
俺も実行委員だし、仕方ないとは思っているのだが……気に病まれすぎても困る。
「どうにかして帰れないかな……」
「たしか予報だと夜には止むみたいだけど」
この規模の大雨は滅多に遭遇するものでもない。正直、どうすればよいか判断がつかない。
学園は避難場所に指定されるようなところだ。下手に帰るよりよほど安全だ。ゆっくり天候が回復するのを待つのがよいのかもしれない。
ただ別の問題があった。
服だ。
夏休みとはいえ、学園に来る以上制服の着用は義務付けられていた。片付けの最中、大雨に降られた俺たちはずぶ濡れで酷い格好である。
終わるまでの間は集中していたので気に留めるゆとりもなかったが、気づけば水を吸った服の重みと冷気が身体を侵食してきた。
月夜はどうなのだろうか。
「うっ……」
準備室の照明は古臭く微妙な光量だった。外の暗さも相まって、はっきりとは見えない。
月夜は少しでも水気を取ろうとブラウスの裾を懸命に絞っていた。
そして、月夜の白地のブラウスが肌に張り付き、向こう側の肌色を透かしている。おまけに胸元を包むライトブルーの色が彼女の下着の存在を主張していた。
張り付いてよく分かる……月夜は変わってしまった。女性らしい丸みに、たわわな双丘。『女』がそこにはいた。子どもの頃一緒にお風呂に入った女児はそこにはいなかった。
「ゆーくんのえっち」
俺が視線を向けたことに気づいたのだろう、悪戯っぽく月夜が告げた。視線を逸らした俺は彼女の様子を窺えない。どんな感情なのか声で判断するしかないが、怒ってはいないだろう。
恋人でもない女子と密室状態で二人きり。親しげな呼称。
おまけに月夜には彼氏がいた。今は三年生で去年の学園祭実行委員長だった人だ。二人は去年の学園祭で付き合い始めたらしい。
受験で忙しいシーズンなので先輩彼氏はあまり顔を出さないが、去年の実行委員長が訪れる用事もあるだろう。会ったら気まずさMAXだ。
「ゆーくんはえっちだからなぁ、昔一緒にお風呂入った時もさ……私の胸すっごく見てたもんね」
「と、とりあえず濡れた服どうにかしよう……準備室に何かないか?」
誤魔化すように俺は言った。
変に黒歴史を掘り返されたり、この空気感はまずい。
準備室には俺たちが運び込んだ資材や、諸々準備のためのもので雑然としていた。置きっぱなしの私物も多い。濡れた服の着替えくらい、探せばありそうだ。しかし……。
「ないね……タオルの一枚もないよ」
「整理整頓されてるのを喜ぶべきか、悲しむべきか」
月夜が夏休み中にもかかわらず律儀に使っている通学バッグの中を探している。女子のカバンは何が入っているのやら……あまり覗き込むものでもないだろう。
俺は濡れた体の不快感を押し殺しながら準備室を探すも、ちょうどいいものは何もなかった。ちらちらと視界の端に映る濡れた月夜が理性によろしくない。幼馴染だけに恋愛感情とかはない相手ではあるが、肌の透ける格好で見えていれば変な感情は湧いてしまう。
「あっ」
「ん? なんかあった?」
月夜の声に振り向いてしまう。張り付いた肌色とライトブルー。すぐに目を逸らすも心臓がバクバクと音を立ててしまう。
「わわっ、ごめん……えっと、見つけたわけじゃなくて……そういえば教室に行けば体操服の替えが置いてあるな、って思い出して」
「あー、なるほど、そういえば俺もあるな」
紳士的に顔を逸らした俺を褒めて欲しい。そっぽを向きながら、俺は月夜の言葉に頷く。俺は使用後に置きっぱなしだが、きっと月夜は純粋に予備だろう。……俺の臭いとか大丈夫かな? ジャージだし大丈夫かな。
「うん。じゃあ教室に取りに行こうよ」
クラスメイトが朗らかな声を上げる。やはり彼女のほうに視線は向けられない。
「あ、ちょっと待った……俺が先に出る、月夜のその格好が視界に入るのはさすがに、ね」
「え……う、うん、お気遣いありがとうございます?」
なぜか疑問系で返ってくるが、俺としては当然なんだけどなぁ。
ただ少しだけ、嘘をついた。
月夜を視界に収めないように先を歩く。そこに嘘はない。ただそれだけではないし、正確なことを言わなかった。だから嘘。
勃っていた。
股間にある男性のシンボルが明らかに分かるほど勃ち上がっている。
理由は当然だろう。クラスでも可愛らしい女の子の下着が透けているのだ、健全な学生なら当然だ。彼氏持ちの幼馴染にそんな劣情は抱かないと思っていたが、本能はそうではなかったらしい。困った。
「あれ?」
準備室から出ようとして気づく。ドアノブが……。
「壊れてる……」
「え?」
月夜が横から覗き込み驚いた声を出す。あまり寄らないで欲しかった……気のせいか女性の柔らかい匂いがする気がした。
努めて学園祭実行委員長から意識を逸らし、ドアノブを指差す。ドアノブは外れかけて、かろうじてぶら下がっているだけのような状態。回るわけがなかった。
「え、え……ひょっとしてさっき私がぶつけちゃった時?」
「あー」
否定する言葉は思いつかなかった。たしかにさっき資材をぶつけてた気がする。ただ二人で待っていたものだし、月夜だけがぶつけたというわけでもあるまい。
「いや、俺たちがぶつけた時だろ」
「で、でも……」
「とにかく、どうにかしないとな」
言葉を続けようとする月夜を制し、俺は提案した。
別に彼女のせいにしても扉が開くわけではない。打開策を考えなければならなかった。早々に解決しないと……勃っているのがバレる……恥ずかしいし、気まずい。彼氏持ちの幼馴染相手に勃起したとか。
「う、うん……そうだね」
「大雨じゃなきゃ窓から出るんだけどなぁ」
「あ、危ないよ! ダメ! めっ!」
不意に懐かしさを感じる言葉だった。たしか小さい頃も悪戯しそうな俺をこうやって諌めていた。悪ガキと委員長気質なのに幼い頃よく仲良くできたものだ。
「やらないよ、さすがに」
「ほんとかなぁ」
ほんとだよ、いや、俺を何歳だと思ってる? 子どもの時みたいに意地悪するぞ。こら。
月夜と状況を打開するためのアイデアを出し合ったが、状況は割と絶望的だった。
ひとつ、俺たちのスマホは別の場所にある。
ふたつ、外は大雨で窓から出られない。
みっつ、扉は頑丈で蹴破れない(月夜に止められた)。
スマホが手元にないのは特に辛かった。雨で濡れると困るので作業前に一階の適当な場所に置いたのだ。あれば救助は呼べるし、救助までの時間も潰せる。
雨が止めば、二階だし窓から出られなくはない。明日になれば作業を進めるだろう実行委員たちが来る。
不安は募るがなんとかなる。俺は楽観視さえしていた。一晩くらいどうにでもなる。
濡れて透けた格好の幼馴染と密室にいるほうが問題だった。
ただ、女の子である月夜は不安を隠せないようで、視線をさまよわせている。幼馴染とはいえ、一応は異性だ。俺が近くにいるせいで落ち着かないのだろうか?
俺は気を遣ったつもりで少し離れたところに腰を下ろしたが、むしろそれは月夜の望むところではなかったようで、逆に縋られるように彼女もすぐそばに腰を下ろした。
肩が触れ合いかねないほどの距離。その近さに彼女が感じている不安感を察することができた。しかし、彼女の濡れた衣装が俺の気まずさを加速させる。気にして欲しい。まさか脱がせるわけにもいかないし……。
「せめて雨が止むといいね」
「だよな」
月夜の言葉に同意する。しかし、すぐそばにいる彼女の気配に俺の心臓が乱される。こちらは健全な男子なのだ。もちろん気づかれるわけにもいかないので、努めて平静を装うしかない。
「くしゅん!」
くしゃみの音が可愛らしく響く。
濡れているのだ、当然身体は冷えるだろう。
そのタイミングだった。彼女の手が俺に触れてしまう。それもあまりよろしくない位置。触れた場所を反射的に見た月夜は俺の『息子さん』と目が合った。ズボンの上からでもはっきり分かるくらいに主張していた。
「っ!」
息を呑む音が聞こえた……気がする。『息子さん』と邂逅した幼馴染について俺は何もなかったかのように振る舞う。ただ『息子さん』は気づかれた状況にむしろ元気を得てしまっていた。とてもヤンチャなヤツだった。
「ゆ、ゆーくん……」
続く言葉はなかった。
恥ずかしい……俺の顔は今ごろ真っ赤になっているだろう。幼馴染相手に勃っているのがバレるとか羞恥プレイすぎる。しかもまるで月夜に興奮しているみたいに見えてしまう。
月夜はすでに先輩と『体験済』なのだろうか。
それならば男性の生理現象についても多少なりともご理解いただけることだろう……思わずそんなことを思ってしまう。
やばい……。
すぐそばにある『女の子』の気配。うっすらと濡れて透けるブラジャーと、水気で張り付きくっきりと見える肌のラインが俺の隆起を収めさせない。それどころかさらに勃ち上がりそうだ。
ちょっと離れて欲しい。あいにく自分から離れられるほど理性は強くなかった。
「ご、ごめん、私がこんなにくっついたからだよね、男の子ならそうだよね」
いつもの月夜からは考えられない早口。そりゃ異性として認識してないような幼馴染が自分相手に勃起していたら、狼狽えもする。
「…………」
「…………」
互いの息遣いだけが微かに響いた。俺の呼吸が特に荒くなっているのが分かる。
「え、えっと、その、あの……ごめんね……」
謝罪する理由なんてないだろ?
むしろ謝るのは俺のほうだ。
渇いた喉からかろうじてそんなことを言った気がするが正直緊張で上手く話せていなかったかもしれない。
俺の言葉にならない呟きに、月夜は驚きの言葉を口にした。
「……その……手、手で……服の上からでよかったら触るから……それで我慢して、ね」
「あー、うん、いいの……か?」
「さすがに直とかそれ以上は浮気になるから、なしだからね!」
おそらく疎遠になったとはいえ幼馴染ゆえの信頼なのだろう。月夜の提案に俺は一も二もなく頷いていた。
「じゃ、じゃあ触るね……ほんと少しだけだから」
幼馴染の手が俺の陰部を撫でる。当たり前だが長年の付き合いで初めてだった。幼い頃お風呂に入っても互いのそこは触らない。
勃ち上がった俺のものを優しく握り、擦るでもなく上下させる。たどたどしい感覚に幼馴染がやはり行為に慣れていない……もしくは未経験であることが分かってしまう。
その予感が俺の逸物をさらに奮い立たせる。ともすれば無様に吐精してしまいそうだった。
「?」
俺が快感に顔を歪めていると上目遣いをする月夜と目が合った。可愛い顔の幼馴染がそこにはいた。なぜか不思議そうな顔で俺を見上げ、やがて言葉を口にした。
「え、えっと、男性って触ればよくなって出る、んじゃないの?」
「え、いや、さすがにこのくらいの刺激だと難しいかな?」
見栄を張った。シチュエーションが後押ししてすぐに果てることはできそうだが、早漏と思われてもなけなしのプライドが傷つく。答えがこうなるのは当然だった。
「そうなんだ」
知らなかった……月夜の声はたしかにそう続いていた。やっぱり先輩彼氏は未経験……処女、なのか。そう思うと……なんだ、うん、思考が性欲に支配されそうで困る。
「ありがとう……す、少し放っておけば落ち着くからさ」
「う、うん、そうだね」
月夜が離れていくのに名残惜しさを感じる。
放っておけば落ち着くなんてわけがない。すっかり女になった幼馴染がそばにいるだけでいきり立つのは収まらず、逆に猛り続けていた。ふとしたきっかけで暴走してしまいそうなほどに。
危うい空気は月夜も感じているのだろう、俺たちの間に敷き詰められるのはどこか緊張した空気だった。
沈黙に支配され、互いの息遣いさえ聞こえてしまいそうだ。
俺は充分に耐えていたとは思う。
魅力的な女の子を前に密室でケダモノになっていないのだから。沈黙を破ったのは月夜の何気ない言葉だった。
「ゆ、ゆーくんは好きな子とかいないの?」
密室で濡れた二人でなければ学園祭の準備中に交わす雑談に相応しい。微妙な空気を誤魔化そうと月夜が考えた結果だろう。ただ今の俺たちには張り詰めた雰囲気を壊しかねない悪手だった。
「あー、琴乃《ことの》ちゃんこないだ彼氏できた、って言ってたよな」
俺の片想いだったクラスメイトの名前を告げる。
親しい人なら何となく察しているか、知っている……俺の片想い。
「え、あ、琴乃ちゃん……なるほど」
俺の恋慕について思い当たる節があったのか月夜は頷く。そして気まずくなってしまう。ある意味失恋暴露なんだ、会話の広がりなんて無理だろう。
再び降りた沈黙。緊張感だけが増していた。月夜はどうにかしようと空回りし、さらなる悪手を生み出していた。
「ゆーくん、あそこ、収まった?」
それは聞いちゃいけないだろ?
と言いたかったが俺の股ぐらを見た目が開かれたので、理解したのだろう。男の子特有の現象についてもう少し学んで欲しかった。
「あ、あはは、す、すごいね……やっぱりもう少し……うん、してあげるね」
月夜が再び俺のあそこに触れる。もちろん服の上から。彼女からすれば最大限の譲歩で妥協なのだろう。嫌われている相手だったらこんなことは絶対にしないだろう。かつて親しかった幼馴染への気安さと彼女の警戒心のなさだろう。
丁寧な手つきで布越しに肉棒に触れる。ほんのわずかすぎる刺激が焦らされているように俺を苛んでいた。
二度目はなかった。
俺は月夜に放っておけば収まるなんて口にはできなかった。股間を撫でていた手を掴み、月夜を引き寄せる。少しだけ乱暴な手つきになっていたかもしれない。
「あ、ゆーくん、ダメ……」
空気が変わったことに気づいたのだろう。慌てた声が聞こえるがそれで止まる男はいないだろう。
背中から抱きしめる形になった月夜は俺の腕の中に収まった。濡れた身体を抱きしめると冷たさの向こう側に異性の体温があった。
「あ、んっ」
「月夜……」
「わ、私、こんなつもりじゃ……」
「こんな、ってどんなつもり?」
「え、そ、それは……あっ」
少しだけ意地悪く告げ、また月夜の細指を俺の股間に誘う。いつまでも収まらない男根に月夜は視線をさまよわせていた。
ただ指先は拙いながらも男性に快感を与えようと動いていた。ここで良くしなければ抱かれてしまう、という危機感があったのか。
もしくは月夜自身が行為を求め始めてしまっているか、だ。
「脱いで」
「え? だ、ダメだよ、先輩が……」
「このままだと風邪をひくからな。互いの体温で暖を取ったほうがよい」
先輩、と彼氏の話が出るあたり、うっすらと彼女も何が起きかねないかを理解しているようだ。俺は強引にいかず、風邪をひくなんて理屈をつけて脱衣を迫っていった。もちろん間違ってはいないことだ。
「で、でも……」
「上だけだよ、そっち見ないから」
俺は言うが早いかシャツを脱いでいく。濡れて張り付く服は脱ぎにくいが仕方ない。脱ぎ捨てると体温を奪われていたのがよく分かり、暖かささえ感じる。
「濡れた服ってまじ冷えるんだな」
半ば本気の感心したような声が出た。月夜も俺の声音に嘘はないと感じたのか、もぞもぞとリボンを解き、ブラウスを脱ぎ始める。やはり脱ぎにくいのかもたついていた月夜を手伝うように俺は彼女の服のボタンに手をかける。
一瞬、身体を硬直させた月夜だったが俺は構わず、ボタンを外し脱がした。ライトブルーのブラからは目線を逸らしたふりをしつつ言う。
「あくまで身体を冷やさないようにだから」
「う、うん」
戸惑うような月夜の声。俺は構わず彼女を腕の中に収めていく。触れ合う肌と肌。濡れた服を纏っていたため互いに湿ってはいたが触れ合うことで体温が伝わってきた。
「ん、あったかい……」
「思った以上にあったかいな」
そして俺たちの身体が存外冷え切ってしまっていたのが分かってしまう。服を脱いで触れ合うのは決して間違ってはいなかった。
互いの体温を交わらせ温もりを得る。建前が成立してしまい月夜の警戒心も薄れ、俺の腕の中で安堵の息を漏らしてしまう。
俺たちは失敗した。
温もりにかまけて触れ合い、拒絶するタイミングを失した。俺が焦って月夜に襲いかかっていれば……あるいは月夜が強固な拒絶をしていれば……展開は違っていただろう。
簡易的なペッティングとなっていた俺たちは触れ合うことへの抵抗感が徐々に薄れてしまっていた。
俺は月夜に迫るつもりはあったが、彼女はそうではなかっただろう。焦ってことを進めずじっくりと触れ合った結果、俺たちは相手を受け入れ始めてしまっていた。
「あっ♡」
後ろから力強く抱いた。聞こえた声は今までと違っていた。
ここはきっと転換点だったのだろう。俺が焦れば未来は変わっていたはずだ。まだ理性が勝っている月夜は俺の求めを完全には受け入れない。
俺はそれが本能的に分かっていたのか、じっくりと時間をかけていた。抱きしめた体はそのままにゆっくりと触れていく。触ったことのない双丘や見たこともない秘所には攻め入らなかった。
あくまで体を温め合う過程のような触れ方で月夜の身体をまさぐっていく。性を感じさせる部分は避け、マーキングするかのように俺の体温を擦り込んでいく。
「ん、んんっ♡」
微かな吐息だけで無言。月夜の手が俺の身体を這っていく。俺を真似するような撫で回すような手つき。
どのくらいそうしていただろうか。
俺が何度目か抱きしめた時、月夜が振り向き見上げてきた。幼馴染の顔は変わっていた。昔の知っている『女の子』ではなく『女』がいた。
見つめ合う目。月夜に顔を寄せ、彼女の瞳を覗き込む。くすっ、と幼馴染が微笑んだ。魅惑的な表情だった。ただその目の奥にはまだ流されきらない理性が見え隠れしていた。