電子版配信日:2025/09/12
電子版定価:880円(税込)
修学旅行中、古都を襲った大雪によりみんなとはぐれた俺。
陽キャギャル・金城えみると二人で避難した先は、ラブホテル。
経験豊富らしい彼女は、無防備なタオル姿で童貞の俺を挑発するが、
そそり立つ巨根を前に動揺し、流れで筆下ろしをしてくれることに。
「初めてなのにっ。おま×こも乳首もどっちも気持ちいいよぉ」
余裕げな態度を一変させて抱きついてくる処女の身体に溺れていく。
泊まり込みでセフレになった後、俺の女友達・白峰雪姫に関係がバレ……
大人気企画「10年に一度」シリーズ第三弾、修学旅行相部屋編!
第一章 十年に一度の大雪で修学旅行中にラブホに避難した結果、オタクなギャルの処女を貰ってしまった。
第二章 十年に一度の大雪の翌日、オタクなギャルをセフレにしてしまった。
第三章 十年に一度の大雪で修学旅行中に遭難した結果、クラスの地味っ子もセフレにしてしまった。
第四章 修学旅行で女子部屋に誘われた結果、ギャルなセフレをこっそり抱いてしまった。
第五章 修学旅行中に女子部屋から帰る途中、セフレな地味っ子に抱かれてしまった。
第六章 オタクなギャルを彼女にした結果、カノジョとセフレと3Pしてしまった。
本編の一部を立読み
第一章 十年に一度の大雪で修学旅行中にラブホに避難した結果、オタクなギャルの処女を貰ってしまった。
鳥居にうっすらと積もり始めた雪はあっという間に厚さを増していく。無数に続く鳥居のせいでいまいち分かりにくいが天候はかなり悪い。
修学旅行一日目。
京都の有名な神社でのことだった。
十一月。季節的に随分と早めの雪だろう。修学旅行で訪れた古都……普段の気候を知らないが雪の少ない土地だったはずだ。修学旅行の日に運がなかった。
積もり始めた雪は千本鳥居を白く塗りつぶしていく。当然、地面は最悪だ……石造りの床は濡れるか雪が積もるかという有り様で、気持ちは急いでいるにもかかわらず歩みが遅くなる。
「うわ、すごい雪! アタシたちのとこじゃ降らないもんね」
「凄いよな、これ」
すごい、と同じような感想が漏れているが前者は純粋な感嘆に対して、俺は少々疲労の滲んだ声だった。元気だなー、と素直に思う。同い年なのだがギャルの活力は半端ない。
謎の状況だった。
クラスでもカースト上位に存在する陽キャギャルである、金城《かねしろ》えみる。
毛先をウェーブさせた長い金髪に、きっちりとキメたメイクにつけまつげ。着崩した制服のスカートは短く艶めかしい太ももが露わだった。胸元が少し開いているのは明らかに胸のサイズが大きいせいで服がキツイのだろう。
一方の俺……黒部鋼太郎《くろべこうたろう》はクラスに一グループはいるだろうオタク。
決して交わらないような二人が並んで京都の観光地を足早に抜けていく。
俺たちは修学旅行で同じ班だった。これもまた不思議な現象(?)だが、これにはまだ『とある理由』があった。だから同じ班になることは納得できたが、今二人きりになるのは不可解極まりなかった。
だから俺は、申し訳なさを込めた声でえみるに告げた。
「すまない、こんな状況になって」
「えぇ?」
えみるは俺の言葉に不思議そうに首を傾げた。
「いや、俺のせいで遅刻しそうになってるだろ?」
そう、俺たちは今、バスの集合時間に遅れそうになっていた。貸切の観光バスはここを夕方四時半に出てホテルに向かう。今は四時二十五分、あと五分しかない。
全力疾走をしたいところだが、雪で足元がおぼつかない中、それも難しい。おまけにおおよその道は分かるが初めて来る場所だ、時間も距離もはっきりしない。
「鋼太郎くんのせいじゃなくない?」
気遣いとかではなく自然体でそう思っているような様子だった。巻き込んだというか首を突っ込んできたというか、いずれにせよ俺の発端であるトラブルに付き合わせてしまったのだ、俺はやましさを感じていた。
それを感じさせない陽キャギャルの声にほっとする。
「俺が迷子に懐かれてなければなぁ……」
思い出すのはほんの三十分ほど前のこと。あまり観光客も寄りつかないような神社の端にある末社で幼女に会った。迷子だった。
なんでこんなところに幼女が? と思う間もなく縋るように泣きつかれた。有名観光地でありながら人気のないエリア。俺だってマイナーアニメの聖地でなければ訪れなかっただろう。……迷子だということはすぐに悟った。
そこから先は大変だった。泣く幼女への対応なんて知る由もない。親御さんを探すため社務所に向かおうと連れ立つ……変質者に思われないか心配でたまらなかった。制服を着ていて本当に良かった、見るからに修学旅行生だろうから変質者には見られなかっただろう。
「あはっ、鋼太郎くんマジ困ってたもんねー。めっちゃウケるし」
えみると出会ったのは、まだ人気の少ないエリアでのことだった。
どうしてここに? という疑問はもちろんあったが、俺がよほど困った顔をしていたのだろう、えみるの方から話しかけてきた。今のように普通に名前呼びだった。陽キャ特有の距離感に俺があたふたしている間に迷子はえみるにも懐いていた。
結果、彼女も巻き込むこととなり、迷子の親を探して奔走することになったのだ。天候さえマシなら走れば間に合っただろう。しかし、迷子に遭遇した直後から空模様は急変し、雪が降り始めた。もちろん、迷子を見捨てるわけにもいかず雪の中大変だった。
「あぁ、ほんと助かった……けど、どうしてあんなところに?」
クラスメイトで修学旅行は同じ班。けれどもオタクとギャルに普段会話をする接点なんてあるわけがない。人となりはほぼ知らなかった。
パワースポット巡りとかだろうか? 一人で? 同じ班のギャルは?
俺が思い浮かんだ疑問を口にする前にえみるは意外な言葉を口にした。
「鋼太郎くんと一緒だよ、聖地巡礼!」
「は?」
思わず歩みを止めそうになるが集合時間が頭をよぎり、えみるを見るに留まる。
「え? アタシも結構オタクだよ。鋼太郎くんがバスで男子と『装竜伝記』の話してて気になったの。ここが聖地だったんだね」
えぇー。
えみるのあげたタイトルのアニメについて、たしかにバスの中で話していた。オタク仲間も詳しくは知らない地味寄りのアニメだ、おまけにバリバリのロボットもの。同世代の女の子が見ていたとは思いも寄らなかった。ましてやギャル。
オタクなギャルなんて都市伝説だと思っていた。何か裏があるのではと疑うレベルにはレアだ。
「…………」
そんな俺の内心に気づいたのだろう、悪戯を披露する子どものような笑みを浮かべながら手を差し出してきた。
…………?
手?
考えることしばし、彼女の言いたいことに気づいて俺は目を見開いた。えみるの爪……たぶんつけ爪だろうが、ネイルに描かれたデザインが『マジ』だった。割と有名なアニメであるが、少なくともギャルが当たり前に見るアニメではない。そんなアニメのマスコットキャラがデザインされたネイルをえみるは身につけていた。
「まじか……」
「うん、マジマジ」
「ちょっと見せて」
「いーよ♪」
思わず足を止め、えみるの爪に見入ってしまう。ギャルのネイルなんて……と思っていたが、アニメデザインだと気になってしまうのはオタクの性だろう。
えみるの手を取り、ネイルを凝視する。はぁー、と感心してしまう。細部までちゃんと原作に忠実だ……。
「すげぇ」
初めて女の子の手を取る、という事実にも気づかず俺はえみるの爪を見ていた。えみるもネイルを褒められ悪い気がしないのか嬉々としているのが伝わってくる。俺たちは他の通行人の邪魔にならないようにさりげなく端により、ネイルを眺め……。
「って、こんなことしてる場合じゃない」
「そーじゃん!」
叫んでいた。
結論から言おう。
遅刻した……。
バスの集合場所に着いたのは、十分ほど遅刻した頃だった。俺たちの学生を乗せた観光バスは一台も見当たらない。場所は間違っていないはずだが……。
「うそ、置いていかれちゃった?」
えみるが呆然と呟いていた。
遅れて説教される、などは覚悟していたし当然だとは思っていたが……容赦なく置いていかれるのはまさかの想定外だった。いや、遅刻するのが悪いんだけどね。
「すまない……」
「ううん、何度も言うけど鋼太郎くんのせいじゃないよ……あのクソ担任、人数確認もしないの?」
……たしかに。セクハラ中年オヤジである担任教師は色々問題のあるヤツだ。あいつなら遅れる奴が悪いとばかりに生徒を数えず出発するかもしれない。えみるの口ぶりからも担任の不人気は窺える。俺も嫌いだし、昭和っぽい体育会系だから。
「雪、酷いな」
俺は呻くように空を見上げた。真っ黒になりつつある空模様。雪の粒は大きくいかにも積もります、と言っているようだった。
「アタシ、傘ないー」
嘆くように言っているえみるに折りたたみ傘を差し出す。多少の雪では歩いてきた俺たちだが、さすがに傘無しでは辛くなってきた。えみるの金髪には雪が乗り始めているし、きっと俺も同じ状況だろう。
「え? 鋼太郎くん今どこから傘出した? というか、渡したら鋼太郎くんの分ないじゃん!」
ポケットに入れていた折りたたみ傘は小ぶりでどこから出した? と疑問に思われる程度には小さい。当然、傘としての役割は小雨の時用で、大雪相手では気休め程度だ。
「仕方ないだろ?」
「……うーん、まぁ鋼太郎くんなら良いけどさぁ」
「???」
若干話が噛み合わない気がする。
それが気のせいではなく、完全に噛み合ってないと分かったのはすぐだった。
えみるは傘を開くとそのまま俺に近づき寄り添った。傘を翳し、二人で小さな空間を分け合う。
「まさか鋼太郎くんと相合い傘するとはなぁ」
「いや、キミ一人で使うために渡したんだけど」
抱きつくレベルで近寄られ、とても良い匂いがした。香水だと思う。女子の匂いとか知らないし。女の子にかつてないほど近寄られ、思考が乱れる。距離感が色んな意味で近すぎる。
「それじゃアタシが気に病むよ」
……まぁ、正論である。けれども俺としては可愛いギャルに近寄られたら狼狽《うろた》えるのも事実である。困った俺は話を逸らすように。
「……とりあえずこれからどうするか、だな」
置いていかれたのは確定。雪が積もるのも確定。
担任教師には恨み言の一つでも言いたいが、そのためにもまずは合流しなければならない。
一、タクシーでホテルに向かう。
二、徒歩でホテルに向かう。
選択肢としてはこんなところだろう。ホテルはここからほど近く、公共交通機関からは不便な場所だったと記憶している。
観光バス用の駐車場に近いところにタクシー乗り場があった。けれども雪で電車を諦めたのか、いつものことなのか、乗り場には長い列が出来ていた。あれの最後尾に並ぶのは……心が折れそうだ。それにタクシーとなると虎の子の一万円札が崩れていくだろう。修学旅行の初日にそれは辛い。
けれど……。
「タクシー、乗るかぁ……」
すぐそばにいるえみるを見て諦める。
ギャルの体力は俺よりは高いだろうが、女の子である。どこにある? から調べなければいけない宿泊先のホテルに向かうのに『歩き』という選択肢はなかった。
「えー、もったいないよ。お土産買えなくなるじゃん」
「俺が出すから。まぁ、親から貰った小遣いだから偉そうには言えないけど」
至近距離から俺を探るように見上げるえみる。さして交流があるわけではないギャルの感情は読めない。けれども俺の表情から何を感じ取ったのか、やや強引に傘を引き歩き出した。二人で入っている小さな傘。俺は当然ついて行かざるをえない。
「歩こ!」
えみるが断言した。
雪だし、道も分からない。なかなかハードな選択肢だ。俺一人だったり男子生徒だけだったら選ぶだろうが女の子と一緒だとなぁ。あまり選びにくい選択肢だ。
そんな俺の心の内を察したのか、えみるはにこっ、と笑いながら続ける。
「気遣いは不要だし、こうなったら一蓮托生だよ」
ギャルの笑顔はある意味、男前だった。
「実際どういけばいいんだ?」
俺たちはスマホで宿泊先のホテルを調べる。何となくは把握していたが道順になると分からない。
今日の行程表をポケットに入れていたのが幸いした。えみるは「鋼太郎くん、アイテムボックスのスキル持ち?」などと訳の分からないことを呟いていた。いや、傘と紙しか出してないし。ほんとにオタクだったんだね、このギャル。
「んー、三十分くらいは歩きそうだねー」
ナビに従えばどうにか辿り着けそうだった。たぶん……。
俺たちは狭い傘を分け合いながら雪の中を進んでいく。道順を調べている間にも雪は激しくなっていく。嫌な予感しかしない。
触れ合いそう……どころか確実に触れている肩に腕。えみるの胸が大きいせいで柔らかな膨らみにも触れてしまいそうだった。女の子とここまで密着することなんてなかったし、心臓がやばい。えみるは平気なのかと様子を窺うと……明らかに俺を見て笑っていた……どうせ俺は女の子に免疫ないですよ。
そして、案の定というか、予想通りというか、十分もしないうちに雪は視界を覆い尽くすほど降りしきり、気温もどんどんと下がっていく。俺たちはいつしか暖を求めるように身体を寄せていた。
街中で遭難するなんて想像だにしなかったが、あまり洒落《しゃれ》にならない。このままでは凍えてしまいそうだった。
いつの間にか雪もくるぶしまで積もっているし、まだまだ弱まる様子もない。
「これは、やばいな……」
いっそ引き返してタクシーを使おう。そう提案したかったが、どうやら俺たちは共に方向感覚が弱みであったらしい。正直、来た道が分からなくなっていた。
「ごめん、こんなことならタクシーにしとけば良かったね。アタシが歩こうなんて言ったから……」
えみるの後悔が伝わってくる。肩を落としたクラスメイトを見ていると使命感にも似た感情が湧き上がってきた。さして親しいとは言えない仲だが、付き合わせてしまったのは俺が原因だ。
ない知恵を絞り打開案を探るが結局はどこかに避難するしかないな、とありきたりなものしか浮かばなかった。
「ひとまず雨宿り……じゃないか、雪を凌げる場所に避難しよう」
問題があった。土地勘のない場所に加え、見渡す限りの雪模様。事務所とかシャッターの降りた商店の影が見えるが、避難先として適するものがない。
「……あ、」
「ん、何かあった?」
俺と同じく周りを見回していたえみるが何かに気づいたように声を上げる。彼女の視線が向かう先は高い。ネイルの綺麗な指先が一つの建物を差していた。
大雪の中でも微かに見えるライト。夜であれば煌びやかに輝いていただろう。オタクには無縁な未開の地。
ラブホテルだった。