社会人童貞の俺を筆下ろししてくれたのは優しい美人巨乳人妻のお隣さんでした

著者: 椎名有栖

本販売日:2025/09/22

電子版配信日:2025/10/03

本定価:935円(税込)

電子版定価:935円(税込)

ISBN:978-4-8296-4825-4

「よろしければ、私が初めてのお相手になります……よ」
赤く火照った頬でつぶやく隣家の人妻・まどかさん。
ゴミ出しの時の気軽な挨拶や、日常のふとした交流でも、
豊満すぎるバストから目が離せない30歳のGカップ妻。
旦那さんのいない夜、俺はこんな美人で童貞喪失を……
第32回官能大賞新人賞&eブックス賞、ダブル受賞作!

目次

第一章   童貞喪失 美人で巨乳で優しい隣人妻と

第二章   懊悩   気持ち良さが忘れられなくて

第三章   初デート 時にはエッチな恋人のように

第四章   再会   あの日に見た夢の続きを

エピローグ 未来   激変した世界

本編の一部を立読み

第一章 童貞喪失 美人で巨乳で優しい隣人妻と

「んでさぁ~、俺の彼女がね──」
 七輪から立ち上る炭火の煙と、先ほどから永遠と続く友人のクソどうでもいい惚気話が鬱陶しくて、まだ泡の残ったビールジョッキを煽った。
 大学の男友達グループによる定例三人飲み会。学生時代は和気藹々と楽しく盛り上がったけど、社会人となった最近では退屈なことこの上なかった。理由は明確だ。俺以外の友人二人に彼女ができたのである。
 昔はモテない寂しい男同士で連み、将来の彼女についてだったり、好みのアイドルやAV女優についてだったり、ロクでもない与太話に花を咲かせるのがくだらなくて無益だったけど心底面白かった。
 ところが、今や顔を合わせて一頻り近況報告し合った後、次に出るのは自分たちの彼女の話と相場が決まっていた。
 今日も相変わらず向かいに座る二人で、自分たちの彼女についての話で盛り上がっている。お互いにやっとできた彼女を自慢したいのか、話し出したら止まらない。彼女とのエピソードやデートの話題はまだ良いとしても、夜の営みまで話し始めたらもう最悪だ。
 パイズリは意外と気持ち良くない~とか、一番挿れやすい体勢は後背位だ~とか、いくら個室の焼肉店とは言え、聞いてるだけでも気恥ずかしくなる。こうしていつも俺だけ蚊帳の外に置いてけぼりを食らって、一人ヤケ酒を決め込むしかないのだ。
「お~い、佑樹ってば。ちゃんと話聞いてたかぁ~?」
「え、ああ……聞いてたよ」
「ぜってー嘘だろ! さっきからずっと肉焼いて酒飲んでるだけじゃん~!」
 飯原が肩を小突いてきて赤ら顔でガハハ、と豪快に笑い出した。すっかり酒が回ってハイテンションなのだろう。俺が冷め切っていることに微塵も気付いていない。というか、こんなデリカシーのないちんちくりん男のどこに好意を抱いて付き合う手筈になったのだろう。飯原の彼女には悪いけど、理解不能を通り越して無性に腹が立ってくる。
「佑樹もさ、そろそろ彼女作れよ。あ、そうだ。俺がイイ女紹介してやろうか?」
 原田が眼鏡をズリ上げながらスマホを取り出し、忙しく操作する。
「ほら。この子とかどうよ? 佑樹にお似合いだと思うぜ?」
 画面には笑顔でピースサインを決める長い茶髪の女の子が映っていた。取り立てて美人なわけでも不細工でもなく、どこにでもいるような至って平均的で特徴がない。というか、こんなモブ子が俺にお似合いって、俺がつまらない男だって言ってるようなもんだよな、おい。
「おおっ、結構可愛いじゃん!」
 俺よりも飯原の方が前のめりになってスマホ画面に食いつく。おいおい。お前、彼女いるだろ。
「同じ職場の後輩なんだけどさ、昼ご飯はいつも自分で作った弁当とか持ってきてんの。具材も栄養バランスに気をつけて、彩りとかも結構凝ってんのよ」
「へぇ~。いいじゃん、いいじゃん。料理できる女の子は点数高いよな~」
「……良いって、別に」
「またまた~、遠慮すんなって。俺たち友達だろ~? アレだよアレ。困ったときはお互い様ってやつ!」
「そうそう。こういうのはノリと勢いってのが大事なんだからさ、スカさずに乗っかっとけよ」
 プチン、と頭の中で何かが弾ける音がした。気がつけば、俺はビールジョッキを机に叩きつけていた。
「……いいから、俺のことはほっといてくれって」
 煮えたぎる怒りを口から吐き出すすんでのところで抑えて、努めて冷静な声を振り絞る。まだ勝手にお互いの彼女の話で盛り上がっているのは百歩譲って許せるとしても、無関係の俺まで巻き添えにするのはさすがに筋が違うだろ。こいつらにとっては親切のつもりなのかもしれないが、俺にとっては余計なお世話でしかない。
 一瞬にして楽しい飲み会の場が凍りつき、まるで時間が止まっているかのように感じた。
「は、ははは……な、なにマジになってんだよ佑樹~。冗談に決まってんじゃん~。な、なぁ玲司?」
 顔を引き攣らせた飯原が隣の原田に助け船を求める。しかし、原田の方は妙に落ち着き払っていて、溜息をつきながら憐れんだ目で俺を一瞥した。
「佑樹。お前それ、童貞拗らせてるって」
「は?」
「誰でもいいからサクっと彼女作った方が絶対良いって。俺も佑樹みたいに受け身だったけどさ、いつまで経っても彼女なんてできなかったよ。それで気付いたんだ。この歳まで彼女できない男は、そもそも女を選り好みできる身分じゃないんだってことに。おまけに社会人になったらあっという間に時間が過ぎていくだろ? ぼーっとしていたら、あっという間に三十超えて〝魔法使い〟になっちまうって。そうなったら一生彼女できないどころか、一生童貞のままだぞお前」
「う、うるせぇな! 俺だってわかってんだよそれくらい!」
 正論を突きつけられて、それ以上返す言葉もなく肩をすくめるしかなかった。
 そういえば、原田は出会い系アプリで今の彼女を見つけたとか言ってたっけな。そういう泥臭い努力をしないと前に進まないんだろうけど、出会い系ってサクラとか詐欺とかに遭いそうで面倒臭そうだし、イマイチ気が乗らないんだよなぁ。
 ああ、全くもって理不尽な世の中だ。モテるやつはとことんモテるし、モテないやつはとことんモテない。この世は平等にチャンスを与えられていないのだ。
 俺だって別に彼女が欲しくないわけじゃない。むしろ、こいつらみたいに彼女を作ってリア充な生活を送りたいって本当は心の底から望んでいる。でも、ゲームみたいに都合良く女の子と出会えないんだからしょうがないだろ。自分から告白とかできないし、デートの誘い方もわからないし……。ていうか、そもそも気になるような女の子なんて身近にはいないし。
(畜生! 俺とこいつらの一体何が違うって言うんだよ! 別にルックスも学歴も年収も大して変わんないだろ! なのに、なんで! なんで俺だけ彼女ができないんだよ!)
 そう叫びたい気持ちを押し殺すようにジョッキの残りを飲み干した。

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