本販売日:2026/03/23
電子版配信日:2026/04/03
本定価:935円(税込)
電子版定価:935円(税込)
ISBN:978-4-8296-4861-2
疲れ切った青年を迎えたのは温泉旅館の女将だった。
肩揉み、泡まみれの洗体、Kカップの豊乳パイズリ。
深夜の拝殿、豊穣の女神に見守られて童貞を捧げ、
神域の地脈に奮い立たされ、幾度も射精を繰り返す。
さみしさを埋め合う二人は、やがて惹かれ合い……
あなたも「風逢楼」の優艶な熟女に癒やされてみませんか?
プロローグ
第一章 帳場の佳人と、按摩から始まる奉仕
第二章 露天の湯に浮かぶ双丘、星天に放つ白濁
第三章 擬膣の手淫は秋夜の風と共に
第四章 愛撫の残滓を胸に留めて
第五章 青空の下、豊穣の女神へ精の奉納
第六章 抱擁で知る女将の体躯、残り香は強く
第七章 花魁崩しの手戯(てたわぶれ)
第八章 夜伽――拝殿の褥で
エピローグ
本編の一部を立読み
プロローグ
青年は疲れていた。
すべてを投げ出したかった。
何を考える余裕もなく、ただ、休みたかった。
バス停で突っ立っている青年が一人。
彼はげっそりとした顔で目の前に広がる山を見上げていた。口は半開きのまま、いかにも疲れているといった様子だ。
生い茂る木々が眼前に広がる。遠くからは緑色に見えた森は、部分的に紅色が差している。四季など楽しむ余裕もない青年にも、今が秋だということを思い出させてくれた。
ここに立っていてもじわじわと疲れるだけなので、重い足で歩き始めた。
目的地は山の頂上にある旅館。いわゆる、知る人ぞ知る隠れ宿といったところだ。
周辺は森に囲まれ、お世辞にもアクセスがいいとは言えない立地だ。今、青年が歩いているような凸凹の踏み分け道が、辛うじて人間の侵入を許している。
旅館の入口までは峠道がある。タクシーを使えば楽に旅館の前まで行くことはできただろう。実際、駅を出た直後はそう考えて、一度はタクシーに乗り込んだ。
しかし、目的地を初老の男性の運転手に伝えたところ、なぜか乗車拒否された。理由を聞いても「あそこには行きたくねえ」の一点張りだった。麓までなら運んでやると言われたが、だとするとバスとそう変わらない場所に到着することになる。旅行とはいえ無駄な出費は避けるべきだろうと、青年はタクシーを使うことを諦め、そのとき近くで停車していたバスに乗った。
峠道を使わないのなら、青年が降りたバス停の前にある踏み分け道から登るのが最短ルートだ。険しい道だが、何キロにもわたる長距離を歩き続けるよりはましだと考えてこの道を選んだ。実際にその勾配を見ると引き返したくなったが。
それでも青年が足を止めなかったのは、ひとえに目的地に対する期待感のおかげと言えよう。
今から行く風逢楼という旅館は、かつての同僚に教わった。
彼からは「とにかく癒やされる」ということしか聞けなかった。どうして癒やされることになるのか、何を訊いても恍惚な表情で同じことを繰り返すばかりだったので少し怖かった。
しかし、彼の幸せそうな顔を思い出すと、この二泊三日の旅行に期待できた。
そんな同僚は先月会社を辞め、青年も昨日が最終出社日だった。
疲れているのは山道を歩いているからだけではない。青年が勤めていた会社での過重労働により、疲労が蓄積していたからだ。パワーハラスメント紛いが横行し、青年はそれに耐えようとしてしまった。
もっと早くに辞めるべきだったと今なら思う。若さを使って無理をすればなんとか成果は出せたため、つかの間の達成感が青年に辞めるタイミングを見失わせたのだ。それでも体調が完全に悪くなったため先月やむなく退職を申し出たところ、上司からは罵詈雑言を浴びせられた。
思い出す価値のない記憶を振り払い、坂をひたすら歩く。
今は十一月。街では皆が長袖を着ているほどの涼しさにもかかわらず、青年は全身にびっしょりと汗をかいた。
しかし、不思議と足取りは軽い。山を登るにつれて体力が増しているように感じる。仕事でひどく疲れている状態で登坂を歩いているのに、だ。身体の奥が疼くように熱くなる。疲れすぎて身体がおかしくなってしまったのだろうと、青年は半ばやけになって、体調についてはもう考えないようにした。
二十分くらい歩いて門が見えてくると、青年は安心して大きく溜め息をついた。
もうすぐ荷を降ろせる──。
目標が視野に入ると人は力を振り絞れるというものだ。
第一章 帳場の佳人と、按摩から始まる奉仕
門の前に到着した。
大きく深呼吸をする。山特有の綺麗な空気が肺を満たす。劣悪な環境で働き続けたことで腐った身体に、何かの栄養がぴりぴりと染み渡った。
息が整うと、門の中に足を踏み入れ、辺りを見渡した。
山の上にひっそりと佇むその建物は、深い森に包まれ、耳を澄ませば風が木々を撫でる音だけが響く。苔むした灯籠と竹垣が出迎え、小道の石畳が緩やかなカーブを描きながら母屋へ導いてくれる。
母屋の玄関の扉を開けると、内側は思いのほか洗練されていた。薄いピンク色のカーペットが足元を彩り、土足で進む広間のつくりは、山中の宿というイメージに反してどこか現代的だ。天井に吊るされたシャンデリアが、木の壁と柱をほのかに照らし、その光が内装全体に温もりをもたらしている。
山深くの静寂と新しい建築の融合が、旅館を特別な空間に仕立てていた。その静かで落ち着いた雰囲気は、青年の心を解す。
さて、チェックインをしようと帳場に目をやったその瞬間、青年の中で時が止まった。
思考は途切れ、鼓動が妙に大きく耳に響く。
カウンターの内側に立っていた女性は、一言で言えば、美人だった。
いや、美人という言葉では足りない。この世のものとは思えないほどの、完成された美がそこにあった。
まず目を奪われたのは、その整った顔立ちだった。切れ長の瞳は涼やかでありながら、どこか温かみを湛えている。長いまつ毛の際には、赤紫色のアイシャドーがほんのりと乗せられていた。瞬きをするたびに、その妖しげな色彩がちらりと覗く。上品な薄化粧の中にあって、その一点だけが密やかな色気を放ち、見る者の視線を捕らえて離さない。
唇はふっくらと柔らかな曲線を描いている。薄く引かれた紅が、その唇の艶やかさをいっそう際立たせていた。
薄化粧だからだろうか、肌の透明感が際立っている。陶器のように滑らかな白い肌は、照明の光を受けてほのかに輝いて見えた。頬にはうっすらと紅がさし、それが彼女の若々しさと健康的な美しさを証明している。
微笑みを浮かべると、目尻に小さな皺が寄る。彼女の人柄の良さを物語っているようだった。
毛先まで艶を纏った黒髪は、照明の光を弾いている。髪は後頭部の低い位置で一本にまとめられ、その束を折り返してヘアクリップで留められている。細かく編み込むのではなく、柔らかさを残したその纏め方が、彼女の親しみやすさを表しているようだった。顔の両側に残された後れ毛が頬にかかり、凜とした気品の中にどこか儚げな女性らしさを添えていた。
次に、視線は彼女の豊かな胸へと誘われた。
着物を着ているというのに、その存在感は隠しようがない。帯の上にそっと寄り添うように乗った胸は、布地越しにも穏やかな膨らみを描いている。動くたびに僅かに揺れるその動きは、決して意図的に誇張されたものではない。むしろ、自然体であるがゆえに、その豊かさがいっそう際立って見えた。
着物という控えめな衣装が、彼女の身体の曲線を上品に包み込んでいる。その布地の下に秘められた肉体の存在を、青年の本能は敏感に感じ取っていた。帯に乗った胸の膨らみ、その下へと続く緩やかな腰のくびれ、そして着物の裾が描く脚の輪郭。すべてが調和し、優雅な色気を醸し出している。
立ち居振る舞いの一つ一つが洗練されていた。カウンターの向こうで佇む姿は、背筋がすっと伸び、それでいて肩の力は抜けている。その自然な所作は、長年この仕事をしてきたであろうことを推察させる。
上品さと妖艶さを併せ持った女性に見えた。清楚でありながら、男を惑わす色香がある。母性を感じさせる温かさと、女としての艶やかさが絶妙に混ざり合っている。つい先ほどまで現実に絶望していた青年でも、一目見ただけで多幸感を覚えるほどの魅力があった。
この女性を一目拝めただけで、この旅館を選んで正解だったと、青年は心の底から思った。
「ようこそ、風逢楼へ。当館の女将でございます」