03/13 電子版発売

エロゲーのライバルポジに転生したけど、俺はメインヒロインを避けてモブキャラ女子たちを攻略していこうと思う。

著者: たぴてい

電子版配信日:2026/03/13

電子版定価:880円(税込)

気が付いたら前世でやり込んだエロゲーの中に転生していた。
しかも主人公ではなくライバルポジの超イケメンキャラとして!
俺は恵まれた容姿を武器に、メインキャラの真理奈を攻略、
……するわけではなく『生徒A』としか表記されていなかったあの子たちを狙う。
なぜなら俺はモブキャラを愛す――モブキャラハンターだからだ!
まずは主人公の右斜め前の席だった、おかっぱボブのななめちゃん(長谷川さん)から!
eブックス賞受賞の大人気WEB小説、書き下ろし短編収録で堂々開幕!

目次

プロローグは廊下で貼紙少女を犯しながら

第一章 モブキャラハンター、エロゲー世界ニ転生ス。

第二章 童貞卒業は初恋のモブヒロインで

第三章 クラスメイトのモブキャラと保健室で睡眠姦

第四章 クラスメイトのモブキャラと映画デート

第五章 クラスメイトのモブキャラとイチャラブ中出しセックス

第六章 仲良しなモブキャラ姉妹を竿姉妹にしてあげる

巻末SS 素面の愛菜ちゃんとリベンジラブホ

本編の一部を立読み


プロローグは廊下で貼紙少女を犯しながら



 パンパンと肉同士のぶつかり合う軽快な音が、お昼休みの廊下に鳴り響く。
「あんっ♡ すごいっ、きもちいいぃっ♡ 処女だったのにぃ、なんでぇっ♡♡」
 廊下に設置された掲示板へ両手を突き、後ろから肉棒で突かれて喘ぐ少女。
 もちろん彼女を後ろから貫いているのは、俺の腰に生えているモノだ。
「わたしっ、地味、なのにぃっ♡ 安西くんみたいな、かっこいい男の子と♡ えっち、しちゃってるうぅ♡」
 彼女が言っている「かっこいい安西くん」とやらは俺のことらしい。
 三十五年付き合った前世のノッペラ顔を考えると、白人とのハーフで日本人離れしたこの美形には現実感がまるでなかった。身長だって185センチのモデル体型であり、今も小柄な彼女の高さに腰を調整して、必死にバックで犯しているところだ。
 対して突かれている彼女は、自分で言っている通り非常に地味な見た目をしていた。150センチぐらいの小柄な体型に、よく見たらかわいいなと思うほどの平凡な容姿。胸は小さくも大きくもないBカップで、学校指定の制服を着崩すことなく身に着けている。今は解かれて乱れている黒髪も、いつもは二つのおさげに結んで前に垂らしており、百人が見たら百人が「真面目でちょっと地味な女子学生」と評するだろう。
 そんな普通の少女が、昼休みの廊下という日常の場で、初対面の男子に犯されているという非日常な光景。
 俺はその状況に堪らなく興奮していた。
「んあああああぁっ♡♡」
「くくっ、すごい気持ちよさそうな声が出てるよ」
「いやぁ♡ 誰か、きちゃうかもしれない、のにぃ♡ こんなの、だめなのにぃ♡」
 全身が揺れるほどの激しい抽挿に、息も絶え絶えになりながら少女が呟いた。
 ここは部活棟のため、昼休みはあまり人が来ないはずだが、部室で昼ご飯を食べようなんて生徒もいるかもしれない。確かにいつバレてもおかしくはない状況だ。
 しかし、俺はバレることはないし、バレたとしても問題にならないだろうと高を括り、ひたすら快楽を求めて腰を振り続けた。
 校舎に響き渡っている大きな喘ぎ声はきっと誰にも聞こえていないし、さっきから奇跡的にこの階を避けて階段を上っていく生徒にもセックスしていることはバレていないはず。
 俺はむしろバレてしまえとばかりに、わざとパンパン大きな音を立てながら、一心不乱に少女の臀部へと腰を打ち付けていく。
「あ~、そろそろイキそう。貼子ちゃん、中に出していい?」
「えっ、あの、はるこちゃんって? わ、私は、ひい――」
「|射精《で》るっ!」
「ああああっっ♡ さっき初めて喋った男の子にぃ、中にいっぱいだされてるぅ♡♡」
 ダメと言われなかったため、勝手にオーケーだと判断する。
 俺は貼子ちゃんの奥深くまで肉棒を突き入れると、腰を掴んで逃げられないようにしてから、子宮口に先端をピッタリと合わせて射精を開始した。
 貼子ちゃんは抵抗することもなく、さっき掲示板に貼ったばかりの貼紙をぐしゃっと握り締めながら、びちゃびちゃと子宮にかけられている精液をじっくり味わうように目を瞑っている。
 俺もゆっくりと目を瞑り、貼子ちゃんの子宮を犯していく白濁を幻視しつつ、無限とも思えるような長い射精を続けた。
 しばらく無言のまま、二人一つで繋がったままの時間を過ごす。
 そうして意識が溶け合っていくような心地の良い微睡みを感じていると、ぶるりと肉棒が大きく跳ねた。
 きっちり最後の一滴まで出し切ったことを感じ、俺は気持ちのいい泥濘に名残惜しさを覚えつつも、ゆっくりと貼子ちゃんの中から肉棒を引き抜いていく。
「あぁ、んっ……♡」
 肉棒という栓がなくなったことにより、貼子ちゃんの子宮に入りきらなかった精液が溢れ出し、ポタポタとリノリウムの床を汚した。
 貼子ちゃんは自分の力では立っていられないのか、ぷるぷると生まれたての小鹿のように足を震わせながら、掲示板に上半身を預けてなんとか立っているようだった。
「すごく気持ちよかったよ、貼子ちゃん」
「あっ、うん……私もだよ。だけど、私の名前はひいらぎ――」
 初体験から処女とは思えないほど喘いで乱れていたけど、これもまた不思議な力が働いたりしてるのかな。まともに愛撫していないのにパンツを絞ったら水が出てきそうなほど濡れていたし、目の前でパクパク呼吸している秘部を見ても、零れる白濁に破瓜の血は混ざっていない。
 まあ処女というのは真っ赤な嘘で、貼子ちゃんみたいに地味な女の子が裏垢を作ってオフパコしてる隠れビッチだったとしても、それはそれでエッチだから美味しいんだけどね。
 とにかく大事なことは、貼子ちゃんの穴はとても気持ちよかった。その事実だけだ。
「それじゃあ、俺は行くよ。貼子ちゃんも貼紙、頑張ってね」
「あ、ありがとう、安西くん……♡」
 俺はブツをズボンへとしまい、貼子ちゃんにお礼を言ってからその場を離れた。
 そして俺が離れてすぐ、パラパラと人通りが出てきた廊下を歩きながら心の中で深く噛みしめる。
 ついに、俺は夢にまで見た女の子とセックスをしたんだ。
 俺がずっと好きだった女の子の一人。

 ――学校の昼休みの廊下という|背《・》|景《・》で、いつも貼紙を貼っていた『女子生徒Eちゃん』と!

第一章 モブキャラハンター、エロゲー世界ニ転生ス。



 俺の今の名前は、|安西《あんざい》|陽介《ようすけ》。
 わざわざ「今の名前」なんて言ったのは、この世界に転生する前の名前があるからなんだが……冴えない中年のおっさんだった頃なんて覚えていても仕方ないし、この世界で生きていく上では必要にならないだろうから忘れることにした。
 転生したのは、前世の俺がドハマりしていたアダルトゲーム『ラブハメコミュニケーション~理想の学園性活の送り方~』――略して『ラブコミ』の世界であり、その中でも安西陽介は主人公の親友ポジションで登場していた。
 チュートリアル的な説明をしたり、ヒロインの情報を教えてくれたり、果てには親友エンドなんてものがあったり……エロゲーには必ずいるだろう、何かと主人公を助けてくれるお助けキャラ的なアイツだ。
 しかし、この安西陽介、ただの親友ポジションではない。
 185センチのモデル体型に日本人離れした超絶イケメンで、成績優秀・頭脳明晰・スポーツ万能。更には家が超絶金持ちという超超超ハイスペックキャラクターであり、そんなスペックを存分に生かしてヒロインたちを片っ端から虜にしていくライバルポジションでもあったのだ。むしろヒロインの攻略が成功した時も、「どうして主人公を選んだんだ? 妥協か?」と疑心暗鬼になるプレイヤーが続出するほど。
 あまりにもライバルキャラクターのスペックが高すぎるラブコミは、レビューサイトに集うエロゲー評論家の中でも賛否が分かれ、名作に届かない良作といった感じだった。
 じゃあ、どうして前世の俺がこのゲームにドハマリしていたのかというと、ある一点においては他ゲーの追随を許さないこだわりを見せていたからである。

 そのこだわりというのが――全スチルで細部まで描かれた、〝背景のキャラクターたち〟だった。

 名前がないのにヒロインに劣らないほどかわいい教室背景のクラスメイト、名前がないのにブルマに包まれた身体を見せつけてくる体育館背景のクラスメイト、名前がないのに健康的な生足でチャリを漕いでいる登校背景の留学生っぽい女子などなど……語り始めたらキリがないくらい、このゲームの背景に描かれている女の子たちは魅力的だったのだ。
 もちろんメインヒロインも他のゲームに劣らず魅力的なのだが、その背景女子たちからしか得られない特別なエロさが、モブキャラで抜くことを|生業《なりわい》とするモブキャラハンターたちの肉棒を大きく刺激したのである。
 そんなモブキャラハンター御用達の世界に、生粋のモブキャラハンターである俺が安西陽介として転生した。
 ゲームでもそうだったが、イケメンは犯罪以外であれば基本的に何をしても許される。犯罪であっても刑務所に入るような犯罪じゃなければ大抵はなんとかなる。性犯罪ならむしろ女の子があへあへと鳴いて|悦《よろこ》ぶ。だってエロゲーだもの。
 そうなったら、俺がやることは一つだけだ。
「ゲームの中では攻略できなかった、背景の女の子たちを攻略してやるぞ!」
「ゲーム? 攻略? お兄様、何かゲームに熱中されているのですか?」
 この世界での目標を掲げ、ガッツポーズで気合を入れ直していると、いつの間にか部屋に入ってきていた女の子が不思議そうに首を傾げた。
「おおう、これは小夜た……小夜! なんでもないよ、気にしないで」
「???」
 危うく前世の記憶に引っ張られ、エロゲーユーザー界の愛称である「小夜たん」と呼びそうになったところをなんとか軌道修正して誤魔化す。頭の上にクエスチョンマークが見えそうなくらい混乱しているが、この子はちょっと天然なところもあるし大丈夫だろう。
 目の前の少女は、|安西《あんざい》|小夜《さよ》。
 同じ苗字ということで分かっていただけると思うが、この世界での俺の妹であり、ラブコミでは二年目から攻略対象となる後輩系メインヒロインでもある。
 後輩キャラらしく145センチの小柄な身体で、更には公式|AAA《トリプルエー》カップの完全合法ロリキャラクターだ。俺と同じハーフのため、身に着けている真っ白なブラウスよりも白いのではないかと思うほど透き通った肌をしており、服の上で踊るように跳ねる金色の長い髪がとても美しい。
 今は俺が進学する直前という時期だし、ゲームに登場するまでは一年の猶予があるはずだが、全くゲーム中の印象と変わっていない。このロリキャラは一年であまり成長できなかったらしい。なんてかわいいんだ。
「小夜は今日も天使だなぁ~」
「お、お兄様? どうして撫でるのですか?」
「お前がかわいいからだよ~」
「そ、それは嬉しいのですが……恥ずかしいですぅ……」
 誤魔化すように褒めちぎって頭を撫でると、小夜が恥ずかしそうに顔を赤く染めてこちらを見上げてきた。
 二人の身長差は約40センチ。自然と小夜は上目遣いとなり、なぜか瞳がうるうると潤んでいる。なんとも庇護欲を掻き立てられる構図だ。
 どうだい、俺の妹はかわいいだろう?
 そのまま頭の上に輪っかをのせたら、神様が天使と勘違いして天界に連れていっちゃうんじゃないかと心配で堪らないぜ。
 俺は神様に連れて行かれてはなるものかと天井越しに空を睨みつけながら、これは俺のものだと示すようにかわいい妹の頭を撫で続けた。
 ただ、勘違いしないで欲しいが、俺はこの世界で小夜を攻略するつもりはない。だってメインヒロインだし。兄妹だし。
 兄の身体に生まれ変わってしまったからか、小夜に抱く感情は子犬とか子猫に感じるような可愛らしさしか持ち合わせていないのだ。このままではセックスしようとしても勃たないだろう。
 う~ん、こんなにかわいいし、ゲームではこの小さな体躯で献身的にご奉仕してくれる最高のロリキャラだったのに……。
「あ、あの、お兄様? 今日はお約束があったのでは?」
「おっと、そうだった」
 どうにか性的な目で見られないものかと考え、ついつい深刻な顔で見つめていると、小首を傾げた小夜が俺のシャツの袖を指で引っ張りながら声をかけてきた。
 明日から始まる学校生活に向けて、これから幼馴染の二人と買い物をする予定だったのだ。約束の時間まで余裕はあるが、俺は安西陽介。真のイケメンは遅刻しないもの。
「教えてくれてありがとう、小夜。それじゃあ、いってくるね」
「は、はい! お気をつけていってらっしゃいませ!」
 ふわふわと柔らかい小夜の頭を最後にサラリと撫でてから、背景にバラが咲き誇るイケメンスマイルで笑いかけ、颯爽と部屋をあとにする。
 小夜はくすぐったそうに俺の手を受け入れてから、こちらも後光が差すエンジェルスマイルで見送ってくれた。
 俺は練習通りのイケメンスマイルができたことに小さくガッツポーズしながら、外に待たせている送迎の自家用車へと乗り込み、待ち合わせ場所である駅前の広場へと向かうのであった。

◇◇◇

 地元では有名な待ち合わせスポットである、駅前の広場に立つ巨大なペンギンの銅像。
 その銅像の傍に設置されたベンチに腰掛け、道行く人をボーっと眺めていること約十五分。
「相変わらず早いわね、陽介」
 女の子がドカッと隣に腰掛け、こちらに話しかけてきた。
「真理奈だって。まだ十五分前じゃないか」
 そう言いながら視線を移すと、隣には待ち合わせしているうちの一人――|朝日《あさひ》|真理奈《まりな》がぶすっとした顔で座っていた。
「ふん……どうせあんた、また三十分前からいるんでしょ?」
 こちらに顔を向けることもなく、ツンとした態度で話を続ける真理奈。
「女の子より遅れてくるわけにはいかないからね」
「はあ。よくもまあ、幼馴染にそんな寒い台詞が言えるわね」
「癖みたいなものだよ。それに幼馴染でも他人でも、女の子は女の子じゃないか」
「バッカじゃないの」
 頭の中に存在する陽介の記憶を引っ張り出しつつ、何万回とプレイしたラブコミの陽介に成り切って言葉を返すと、隣に座っている真理奈は鼻をフンと鳴らして黙ってしまった。
 前世でコミュ障だった俺は思わずゴチャゴチャと話しかけそうになるが、頭の中のリトル陽介は「黙っていても成立する空間だからヨシ!」と言ってサムズアップしている。俺はリトル陽介の言葉に従って話しかけることはせず、通行人を眺めるフリをして真理奈を横目でチラリと盗み見た。
 この朝日真理奈はラブコミで攻略可能なヒロインであり、更にはパッケージヒロインを務める……正真正銘のメインヒロインというヤツだ。
 燃えるような赤い髪を高い位置でツインテールにして、勝ち気そうな吊り目を少し細め、気だるげに頬杖を突きながらぶすっと道行く人を眺める姿はまさにツンデレヒロインの鑑。
 学校が舞台となるゲームでは制服姿ばかり見ていたものの、今日は黒のワンピースを着た私服バージョンだった。装飾も付いていないシンプルなワンピースだが、真理奈が不機嫌そうに頭を揺らす度に、真っ赤な長い髪が黒地の上でゆらゆらと炎のように揺れて、なんとなく目が離せない幻想的な美しさを感じさせる。そんな暗闇に灯る炎のような美しさに惹かれてか、駅前を行き交う男たちの視線を独り占めにしていた。
 顔がこれだけいい真理奈は昔からモテモテで、ゲーム中でもそんな描写がたくさんあった。もっとも本人は一途なツンデレキャラなので、告白はすべて断っているらしい。そこらへんは真理奈ルートでイベントがあるわけだが、俺は主人公じゃないし、攻略するつもりもないから関係ないだろう。
 ちなみに、ちゃんと付き合ってからデレてくるタイプの〝王道をゆくツンデレ〟であり、この世のすべてを突き放すようなツンツンしたこの態度が一転、人が変わったようにデレてくるそのギャップにやられたプレイヤーも多い。ちょっとエッチなお願いをしても、真っ赤な顔で「今回だけよ」とか言いながら、結局はなんでも言うことを聞いてくれる最高のツンデレキャラが真理奈だ。
 もちろん俺も前世で好きだったヒロインの一人だが、今のところは幼馴染止まりでお互いに恋愛感情はなさそう。まあセックスしようと言われたら喜んでヤるけど。こいつ胸デカいし。確かFカップはあったはず。
「……何よ」
「いや、その服は初めてみたなと思って。似合ってるね」
「あんたに褒められても嬉しくない」
 ワンピースをドカンと持ち上げる豊満な胸を凝視しそうになったが、慌てて服を褒める方向へとシフトして誤魔化す。
 真理奈も|俺《陽介》に褒められ慣れているのか、特に嬉しそうにする様子もなかった。これがオチてないツンデレ、まるで取り付く島もない。まあ本気で取り付こうとしていないのを感じ取っているのかもしれないけど。
 そもそもこういう距離感で長年付き合ってきているわけだし、俺たちにとってはいつも通りの会話……らしい。最近になって転生してきた俺は、まだ数回目の会話なんだけどね。
 そうして特に話すこともなくなった俺たちがボーっと通行人を眺めていると、遠くから全力で走ってくる男が視界に入った。
 かなり急いでいるのか、前髪はすべて風に掬われてグチャグチャだし、汗を吸ったシャツの首元は遠目からでも色が変わっているのが分かるほど。まさに全力疾走というやつである。
 しばらく待っていると、男は一直線でこちらへと走ってきて、つんのめりながらも俺と真理奈の目の前で急停止した。
「ふぅ、ギリギリセーフ!」
 そして男は一息吐いてから、野球の審判のように大きく手を広げて叫ぶ。
「遅いわよ!」
 そんな満身創痍な男の頭に向かって、真理奈が思い切りゲンコツをお見舞いした。一瞬の躊躇もない、最初から予定されていたような鮮やかな一撃。
 ゴツンという鈍い音が鳴り、男は叩きつけられるように地面へと顔から突っ込んだ。全力疾走で弱り切った足腰では真理奈の強烈なゲンコツに耐えきれなかったらしい。干からびたカエルのように地面に張り付き、呻き声を上げながらピクピクと痙攣している。
「痛い……約束の時間にはギリギリ間に合ったじゃないか!」
「あたしは十五分待ってたんだけど?」
「そんな理不尽な……」
 のろのろと起き上がって真理奈に文句を言うも、速攻で撃墜されて肩を落とす男。
 真理奈のいつも通りのゴリ押しに反抗できず、やれやれといった雰囲気で頭を掻く仕草はやけに様になっている。
 ちなみに、チラっとスマホで時間を確認してみたが、言う通り二分前でギリギリセーフだった。
「どんまい、拓真」
「ああ、ありがとう陽介」
 俺が服に付いた砂を手で払ってやると、男は申し訳なさそうな顔でこちらにお礼を言う。
「ちなみに、俺は三十分待った」
「ちょっと陽介まで!」
「あははは」
 そこで急に梯子を外して真理奈の天丼をしてやると、男は絶望した顔でこちらを見上げ、わざとらしく頭を抱えた。そのコミカルさがおかしくて、つい笑いが漏れてしまう。
 この男が待ち合わせをしていた二人目の幼馴染。そしてこの世界の元となっているラブコミの主人公、|支倉《はせくら》|拓真《たくま》だ。
 身長は確か168センチで、まさに平凡を絵に描いたような容姿。成績も並で運動神経も普通。ただしストーリーで大事な場面だと格段に能力が上昇する、|所謂《いわゆる》〝主人公補正〟というやつを持っている。
 こちらもラブコミのスチルでは制服姿ばかりだったが、今日はシンプルな半袖の白シャツとベージュの長ズボンという、これまた特徴のない服装をしていた。
 俺たちプレイヤーの分身だった存在が目の前にいるのは未だに違和感もあるが、身体的には小学校からの幼馴染で付き合いも長いし、かなり自然体で接することができている気がする。
 前世では親友なんて存在もいなかったし、こういうのも悪くないよな。
「それじゃ、買い物に行こうか」
「そうね」
「うん」
 俺が先導するように歩き出すと、二人は特に文句もなく付いてきた。
 拓真がギリギリで来て、それを真理奈が怒って、陽介は拓真を慰めながらたまに弄る。これがいつもの俺たちのスタイルだ。
 この三人でいると、より一層ラブコミの世界に入り込んでいる実感があって嬉しくなってしまう。
「陽介、なんかいいことでもあった?」
 表情に出てしまっていたのか、拓真が不思議な顔をして聞いてきた。
「また二人と一緒の学校に通えるのが嬉しいんだ」
「何よそれ。そんなの今更じゃない」
 俺が陽介の記憶を辿ってそれっぽい台詞で返すと、呆れた声で真理奈が会話に入ってきた。
 ぶっきらぼうで言葉も強く聞こえるが、真理奈はこれが通常営業だ。
「そうだけど、拓真は入れるか怪しかったしなあ」
「ううっ、受かったんだからいいじゃないか!」
「あたしと陽介のおかげで、ね」
「その節は、本当にありがとうございました……」
 なんてことない会話をしながら三人並んで歩く。
 拓真は学力が合格ラインのギリギリだったため、受験前に三人で勉強会をして、なんとか同じ学校に入れたのだった。
 こんな話はゲームの中ではなかったから、ある意味では裏設定を聞いているようなもの。すべての会話が裏設定なんてゲーマー冥利に尽きるね。
 そうして三人でたまにふざけたりしながら、明日から始まる学校生活に向けての買い物をしていった。

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