訳あって弟と二人暮らし中の、独り身高卒社会人・伊勢崎徹。
ある日、弟に自慢げに紹介された彼女は、あまりに眩しかった。
艶めく黒髪に、にこりとした笑顔の似合う清楚美人・天童寺茜。
だけど当然、隣の部屋からは二人の絡み合う音が聞こえてくる。
みじめな気持ちになるも、弟のシャワー中にふと部屋を覗くと、
──事後、汁まみれの尻を突き上げて、余韻に打ち震える彼女がいた。
あまりの色香に惑わされ、「彼氏」として背後から剛直を突き込んだ。
その晩以降も、ダメなのに弟に内緒でハメるのがやめられず……
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弟の彼女とのインモラルラブコメ、開幕!
第一話「初めまして、お兄さん」
第二話「お兄さん、ひどい!」
第三話「千夏とは会えましたか?」
第四話「あなたに聞こえるといいな」
第五話「な、内緒です!」
第六話「お兄さんの声、安心します」
第七話「本当に最低ですね」
第八話「秘密にしましょう」
第九話「買いものに付きあってくれませんか」
番外編「すぐイくから待ってて」
本編の一部を立読み
第一話「初めまして、お兄さん」
初めましてと彼女は言い、そして頭を下げてきた。
すっきりとした夏用の学生服を着た子に、なぜか俺はまぶしさを覚えてしまう。社会人として働いているせいで、あまり見かけることのできない若々しさのせいだろうか。
いや、背筋まで伸ばした黒髪の美しさといい、モデルのように小さな顔といい、どのような場所であろうとも見かけることはきっと難しい。にこりと浮かべられる笑顔と相まって、彼女のまぶしさに拍車がかかった。
「うわ、可愛いな」
気づいたらそうつぶやいていた。しまったな、声に出すつもりはなかったのに。やはり彼女も驚いたらしく綺麗な瞳を丸くさせていた。
「だろ! 天童寺《てんどうじ》茜《あかね》ちゃん、俺の彼女ね」
誇らしげにそう言い、笑いかけてきたのは俺の弟だ。
馴れ馴れしく彼女の肩を抱いている姿は腹立たしいし、許されるなら思いきり殴ってやりたい。しかし、嬉しそうに頬をかあっと赤く染める彼女のほうが、俺にとってはもっと辛かった。
ああ、こっちは毎日頑張って働いているのに、なぜかずっと独り身だ。それなのにお前ときたら学生生活を悠々と楽しみ、こんなにも可愛い子と交際しているだなんて信じられない。許せないし、不公平だ。などと心のなかで不平不満を訴えた。
はて、どうして俺に紹介してきたのだろうか。今日は休みだし、彼女とゆっくり過ごしたいのなら俺は邪魔だろう。まさか自慢でもしたかったのだろうか。そう考えていたときに、ふと気づく。
「ん? 今日は休みなのに、どうして二人とも制服なんだ?」
「あ、試合のあとなのです。私、サッカー部でマネージャーをしていますから」
ああ、そういうことか。弟は日焼けしており、髪も派手に染めている。子供のころからスポーツ万能であり、サッカー部に入るなり女性たちの人気が急上昇したのだとか。嬉しそうな弟の表情を見れば、試合の結果など聞くまでもない。
今日はせっかくの休みだし、のんびりしようと思っていた。しかし、せっかくのお客様をもてなさないわけにはいかないし、くつろぎの場所として考えていたソファーは、たったいま弟たちに陣取られてしまったところだ。心のなかで深々と溜め息を吐きつつ、そんな二人に俺は話しかけることにした。
「茜ちゃん、克樹《かつき》、なにか飲む?」
「アイスティー、ダブルで」
なにがダブルやねんと言って呆れる俺に、茜ちゃんは弟の隣に腰掛けながらクスクスと笑う。その慎ましい笑いかたには好感が持てるし、やっぱりすごく羨ましい。
どうやらあれが青春というものらしい。俺には一度も訪れることがなかったし、会社員になると出会いの場はさらに減る。やっぱり不公平だなと思いつつ食器棚からグラスを取り出してゆくのだが、そんな様子を見かねてか茜ちゃんは立ち上がる。俺から見れば子供のような相手だというのに、スカートから露わになった太腿がまぶしくて、どうにも目のやり場に困らされた。
「お兄さん、私もお手伝いします」
「ん、ありがとう。克樹はそういうところが雑だから、付きあっていて大変だろう」
「おーい、俺の悪口を目の前で言わないでくれます?」
「なんだ、目の前じゃなければいいのか。じゃあ茜ちゃん、克樹の悪口はあとのお楽しみだ。あいつのネタなら山ほどあるぞ」
「やめてくれよ、俺のポイントを確実に下げようとするのはさ!」
少しの間を置き、俺たち兄弟はケラケラと笑う。グラスをお盆にのせていた彼女は、そんな俺たちのやりとりに、ほっと安心するような笑みを浮かべた。
「兄弟で仲が良いのですね」
「うーん、普通じゃないかな。茜ちゃんの家ではどうなの?」
「妹がいて、すんごく生意気で可愛いです」
にまーっと頬を緩めて自慢げに言う様子から、心底可愛がっているのだろうと分かる。そんな表情の変化が新鮮だと感じるのは、満員電車に押し込められるつまらない日々を過ごしているせいだ。やっぱりまぶしいなと思うし、俺にもこんな彼女がいたら良かったなと思いもする。社会人らしからぬやっかみだ。
ジャーッとトイレを流して廊下に出る。
すると、普段とは違って二人の話し声が聞こえてきた。
きっとゲームでもしているのだろう。ちょっとした悲鳴や笑い声が聞こえてきて、なぜか分からないが少しだけ息苦しい。いや、本当は分かっている。二人の遊んでいる姿は、俺にとってはまるで別世界であるかのように光り輝いて見えるのだ。単純に羨ましいし、弟の彼女自慢はきっと大成功なのだろう。
精神的にキツいし、さっさと退散するか。駅前の本屋なら時間も潰せそうだ。そう思い、外出しようと歩き始めたときにタイミング悪く声をかけられてしまった。
「兄貴、コンビニに行くならアイスもお願い。他の三倍くらいするお高いやつ」
くっ、こいつ抜け抜けと言いやがって。可愛い彼女だけでは飽きたらず、高級アイスまで欲しいだと? 本気でぶん殴ってやろうか。
そう思って肩をわななかせていると、ぱっと唐突に茜ちゃんの愛らしい姿が目の前に現れた。
「克樹君、私は死んじゃったから、お兄さんのお買いものを手伝ってくるね」
「おっけー。茜はゲーム弱すぎ。早く帰ってこいよ」
ごめんねと返事しつつ制服姿の彼女がすぐ隣を通り過ぎてゆく。しばらく呆気にとられる俺だったが、彼女が靴を履き始める様子に気づき、ようやく我に返った。
「いいの? せっかく二人きりにしようと気を遣ったのに」
「え、てっきり逃げ出そうとしているのかと思いました」
くっ、しっかりバレていたか。見た目通り、だいぶ利発な子かもしれない。
しかし弟の彼女と並んで歩くなんて、ある意味で先ほど以上の拷問だ。下手なことなど言えないし、もしものろけ話を聞かされたら精神的なダメージは計り知れない。とはいえ拒否できる状況でもないので、溜め息をひとつ吐き、ゆっくりと玄関の戸を押し開けた。
「仕方ない。諦めて高級アイスでも買うか」
「やった! 私、ストロベリーが大好きです」
ぺろりと赤い舌を覗かせて、年の差のある彼女がついてきた。可愛いし、たくさん仲良くなりたいけれど、まかり間違っても手を出したらいけない相手だ。なんてひどい拷問だよと心のなかでブツクサと文句を言った。
外は暑くて、気の早い蝉が鳴き始めている。弟たちにとっては、夏休みがだんだんと近づいてくる時期でもある。昔は俺もこの季節を楽しみにしていたのに。
可愛い女性と並んで歩くというのは、俺に限らず健全な男子であれば誰もが羨むことだろう。しかし思わぬ形で、そして望まぬ形で叶ってしまった。弟の彼女という存在によって。
「ん、なんですか?」
視線に気づかれてしまい、そう問いかけられた俺はわずかに動揺する。とはいえ無言で歩き続けるほうがずっと嫌だし、なんでもいいから話題を振るとしよう。
「いや、どっちから告白したのかと思ってさ」
えぇーっ、とものすごく嫌そうな表情を浮かべられた。そりゃそうだ。相手は男性だし、さらに俺は交際相手の兄だ。嫌がって当然だろう。振る話題を間違えたかなと思っていると、少しだけ頬を赤く染めながら彼女は見上げてきた。
「ど、どちらだと思います?」
「うーん、やっぱり弟かな。あいつはグイグイ押してくる感じだし」
見た目の通り、目立ちたがり屋の弟はいつも積極的だ。サッカーでは点取り屋だし、運動会などでも大活躍している。だからそう答えたのだが、なぜか彼女は楽しそうに笑みを浮かべ、そして「ぶぶーっ」と言う。驚いたよ、俺と茜ちゃんの二人ともが。
「あ、ごめんなさい、私ったら気安くて! お兄さんが克樹くんと似ていて、つい」
「それはそれで傷つくなぁ。あいつと似ているなんて」
弟は夕食のあいだ、戦隊物のヒーローについて熱く語り続けるようなやつだぞ。それも小学生から現在までずっとだ。そう口にすると、茜ちゃんはなぜか恥ずかしそうにうつむいた。
「……学校でもそんな感じなのですよ、お兄さん」
「マジか、どうなっているんだよ、あいつの頭の中身は」
兄である俺も恥ずかしいよ。付きあわせて本当にごめんね、茜ちゃん。
まあ、そういうやつなので、似ていると言われてもまったく喜べない。むしろ名誉毀損で訴えたいくらいだと肩をすくめながら言うと、面白いくらい彼女の笑いを誘えた。
苦しそうにお腹を抱えてくつくつと笑い、ごめんなさいと口にしつつも茜ちゃんの唇にはまだ笑みが浮かんだままだ。その愛らしさについ見惚れてしまうのは、男であれば仕方ないのかもしれない。背後に花が咲き乱れそうなほど彼女は美しいのだ。
「でもそこまでは似ていませんよ。克樹くんが大人になった感じですかね。ただ、声が本当にそっくりで、最初はすごく驚きました」
ようやく笑い終えた彼女の言葉に、そういえば挨拶のときに驚かれていたなと先ほどのことを思い返す。とはいえ喜ぶべきか、そうじゃないかは微妙なところだ。あいつと声が似ていたところで、役立つことなど絶対にないのだし。
目当てにしていたコンビニはもう目の前だ。声がどれくらい似ているかの評価は彼女に任せて、豪華でお高いアイスでも買うとするか。などと兄らしいことを思っていたとき、彼女はそっと近づいてきた。髪の匂いが漂うほどの近さであることに驚く間もなく、彼女は耳元にぽそっと囁《ささや》きかけてきた。
「だからお兄さんとは距離感を間違えやすいみたいです。もしも失礼なことがあったら、ちゃんと注意してくださいね」
そんなことを言われた俺は「おう」と、返事とも呻き声ともつかない声を出してしまう。
なにこの女。清純そうなのに、そこはかとなくエロいとか、あまりのドストライクさに悶絶しそうなんだけど。そう身悶えている俺を気にもせず、機嫌良さそうな足取りでアイス売り場に向かっていく。どこか危機感が乏しく見える夏の制服姿で。
社会人になると出会いが少なくなる。
よく聞くそのフレーズは半分くらい事実であり、あとの半分は嘘だろう。
社会を知ると結婚にどれくらいのお金がかかるか分かるようになり「まだ無理だな」と怖じ気づいてしまう。だから学生のときより一歩も踏み出せない。結果として社会人の多くが出会いを己から遠ざけているというわけだ。
はあ、と溜め息を吐いて、リクライニング機能つきの椅子にもたれかかる。
そんな俺も恋愛に奥手だし、いざチャンスがあっても踏み出せない。機会がまったくなかったわけじゃないんだ。酔った上司を家に送り届けたとき、それっぽい空気は確かに流れた。やわらかい胸がこちらの腕に当たり、あの瞬間はお互いに意識していた。
「でも無理だったな。だって上司だし」
はあ、と先ほどよりも大きな溜め息が漏れる。柄にもなく、そんな風に落ち込んでしまうのは、あう、おう、という呻き声が漏れ聞こえてくるからだ。俺のすぐ隣の部屋で、可愛いあの子が身悶えている。それを思うとガッカリするし、また悲しいことに興奮してしまう。
ふと、愛らしいあの子がいまどんな表情を浮かべているのか気になった。すっかりと性にのめりこみ、涎《よだれ》を垂らすだらしない表情だろうか。それとも理性を残そうと抗っているのだろうか。声だけでは分からないけど、一度でも魅了された女の子だ。どうしても茜ちゃんの声を聞こうとしてしまう。
彼女の喘ぎ声はさらに大きくなり、時計が秒を刻むくらいの間隔に変わってゆく。あ、あ、あ、という声はしばらく響き続けて、隣の部屋はシンと静まり返った。
――死にたい。
なぜか知らんけど唐突にそう思った。
生きている価値のない男で、弟にさえ負ける兄、それが俺なのだ。朝から晩まで会社で働いて、金を稼ぐことしか能がない。しかもいばれるほどの給料じゃないときた。
ああ、高めの椅子を買っておいて本当に良かった。ぐったりして起き上がれないし、いま俺を支えてくれるのはこいつしかいない。愛しているとは言えないが。
気のあるような素振りをされて、もちろんそれは勘違いで、泣きたいのに決して泣けない切なさで胸を締めつけられる。苦しいし、吐きそうだし、でもやっぱり涙は出なくって、胸のずっと奥のところがカサカサに乾いてしまう。俺にこんな暗い感情があるなんて知りたくなかったし「あの女、許さん」などとこじれた童貞らしいことを思いもした。
静かになってから三十分ほど経ち、ようやく俺は起き上がる。腹がぐうと鳴ったのだ。トラウマ級の傷を負ったというのに、立ち直るのは案外と早かった。
それもそのはず彼女とはちょっとだけ会話した程度の仲だし、むしろ早めに悟れて良かったのかもしれない。いくら可愛くても人間だし、エッチもする。たぶんおならもするし、弟みたいな勢いだけの男なんかに騙されるのだ。
そんな鬱憤をぶつけるかのように、キッチンに辿りついた俺はすぐさま包丁を振り回す。切り刻むのは豚肉であり、青ネギであり、そして唐辛子なんかは木《こ》っ端微塵《ぱみじん》にされて原形さえ留めない。
「俺がこじらせているのは、女性に夢を見るからだろうな」
ジャッと熱したフライパンを返しながら、そうつぶやく。
女性というのは、可愛くて、魅力的で、天使のようなものだと思っている。俺と同じ人間なんかじゃなくって、小鳥と会話できるくらい幻想的な存在なのではと、ありえないことまで考えている。でもそれは、決して手が届かないからこそ想いだけがつのった結果なのだ。こうして見事なまでにこじれた童貞はできあがってしまう。
いくら憤ってもやるせなくても炒飯の美味しそうな匂いは本物だ。子供のころから磨いたテクニックも本物で、米は一粒ごとに光沢が生じており、またパラっとしている。そこに前もって火を通していた卵を入れてやり、カッカッとおたまですくう。
そうして振り返ると、テーブルに弟が座っていたものだから俺はビクッとする。見つめあうことしばし。唐突に、弟はにこりと笑った。
「兄貴、いまなら毒見と味見を手伝うぞ」
「誰が食わせるか。これは俺が俺のためだけに作った飯だぞ!」
「お兄さん、わ、私もひと口お手伝いします!」
「お前もかよ! くそっ、たらふく食ってそのまま幸せになりやがれ!」
だんっと大皿によそった炒飯をテーブルにのせると、二人は目を見開いて驚き、なにがおかしいのか「いいキャラ!」と言いながら笑う。まったく信じられないし、これがセックスしたばかりの態度かよ。若さっていいですね! はい、レンゲ!
などと不機嫌さを隠しもせずに俺はどっかと座り、対照的にこいつらは炒飯しか見ていない。山盛りにレンゲですくって、あーんと頬張ってゆくのを、俺は内心で苛立ちながら見つめる。悲しいかな炒飯には自信がありすぎて困るのだ。
「んわあっ、めっちゃ美味しいーっ!」
なんて瞳を輝かせる美少女に言われたらさ、頬が緩むからやめろって。へへっ、褒めてもなにも出ないぜ。
「言っただろう、兄貴の炒飯はマジ美味いって」
「うんうん! お兄さん、あとでこっそりと私だけにレシピを教えてくださいね!」
そんな反応が面白くて、腹ペコなのに思わず笑ってしまった。
勝手に幻想を抱き、勝手にトラウマ級の傷を負い、そして心のなかで罵倒した相手だというのに、やっぱり茜ちゃんは可愛いなと考えてしまうどうしようもない男だ。我ながら面倒くさい性格だなと思ったし、だからこそ女にモテないのだろう。冷やした麦茶に口をつけながら、そんなことを俺は思った。
暗い廊下に出て、ふと感じる。いつもとなにかが違うということに。
まるで間違い探しの絵を最初に眺めたときのような気分だ。正体が分からないのに、なにかが違うことだけがはっきりと分かるあの感覚に近い。
そろそろ寝ようと考えていた時刻だ。辺りは暗く、外からはなんの音もしない。気のせいだったのかなと思いつつ、きょろりと周囲を見回す。そして不思議なものに気づいた。
あれっ、隣の部屋の明かりが漏れている?
そっと近づいて様子をうかがうと、俺は驚きのあまり目を見開いた。ベッドの上に彼女がいたのだ。信じがたいほど肉づきの良いお尻をこちらに向けながら。
うつ伏せになったままピクピクと震え続けている彼女の肌は、まぶしさを覚えるほど白い。それでいて全身は汗で濡れており、ぬらぬらとした光沢を放っているものだから、俺はまばたきすることさえ忘れてしまった。
薄暗い部屋のなかから漂ってくる体臭はすごく濃くて、よくよく見ればお尻のあたりにべったりと白い精液がかけられていると気づく。つい先ほど、どうやら性行為を終えたばかりらしい。
はっ、はっ、はっ、という息づかいも聞こえる。強い快楽によって意識が朦朧《もうろう》としてしまい、脇からはみ出す乳房を隠すことさえできない。その光景は、つい先ほど明るく笑っていた女性と同じ人物だとはまるで思えず、俺は逃げることもできずに突っ立っていた。
彼女はすごかった。先ほどは子供っぽいと思っていたのに、大人である俺を呆然とさせるほどの強い色気が隠されていた。股のあたりは暗がりになっていて見えないけれど、そこから太腿にかけてぬるぬるの液体で濡れそぼったいやらしい光景だ。思わずごくりと喉が鳴ってしまう。
戸口に手をかけたまま俺は離れられない。強い色気にあてられて、勝手に隆起してゆく己の股間にも気づいていたが、立ち込める子作りの匂いにすっかりやられてしまい、どくどくと心臓が高鳴ってしまう。
息苦しくて、いまにも駆け出したくなる。あのやわらかそうな尻をつかみ、彼女の暗がりの一番奥まで硬くそそり勃ったものを埋めてやりたい。きっと人生で一度も味わったことがないほどの気持ち良さに包まれることだろう。
一歩、足を踏み入れた。ただのそれだけで彼女の匂いが一層強くなる。甘酸っぱくて、色気が濃くて、頭がくらくらしてしまうほどのいい匂いだ。激しく鳴り続ける心臓の音を聞きながら、さらに一歩だけ俺は前に進む。
引き返さないとまずい。もちろんだ。そんなことは分かりきっている。相手は弟の彼女だし、こうして裸体を眺めることさえも絶対に許されない。いつも通りの仏頂面で、なんだかんだと言いながらも我がままを聞くような兄に戻らないといけない。
でも、桃のように整ったお尻はもう目の前で、それがぬらぬらと粘液にまみれていたらどうだ。色素の薄い肌から感じ取れる清純さは相変わらずなのに、雄を誘うような暗がりからどうしても目を離せない。
震える指先を伸ばして、わずかに触れる。ああ、触れてしまった。
彼女の臀部は風呂上がりのような熱を帯びており、そんなわずかな刺激によって茜ちゃんは「ふうう」と熱い吐息を漏らす。うつ伏せのまま肩をぴくんと震わせて、しかし意識はまだ乏しいらしく緩慢な動きだった。
「克樹、君? お風呂、入ったんじゃ……」
そんな朦朧とした声を聞き、俺はもう引き返せないのだと知った。
ズボンから出した俺のものは自慰しているときよりもずっと大きく怒張しており、どこか動物的な気配さえ漂わせていることに気づく。雄々しくそそり勃ったものに驚きつつ、ゆっくりと彼女の臀部を左右に開く。もあ、と立ち昇ってくる雌の臭いに、俺はすっかりやられてしまった。
やんっ、と言いながらも彼女は逃げない。いや、逃げられないのか。のろのろとした動きで離れようとするそれをつかみ、グイと力ずくで引き寄せる。滴る愛液が内股を流れてゆき、そこに小さなほくろがあると気づいた。
ふぅー、ふぅー、ふぅー、と湿度の高い息を吐く。俺と茜ちゃんの二人ともが。もうすぐ始まるセックスに性的な興奮をし始めており、彼女の真っ白な肌にも細かな汗が浮き出てきた。
ぎしっとベッドをきしませて、華奢《きゃしゃ》な彼女に覆いかぶさってゆく。そして憧れてやまない腰のくびれに手をかけると、その上からほっそりとした彼女の手が重ねられた。
「あン、もう、仕方ないなぁ……」
そう言いながらも、ぐねっと彼女は腰をくねらせる。どうぞ、という意味だろうか。へとへとに疲れていても性的な興奮が高まってしまい、つい応じてしまうという風にも見えた。
望まれるまま、じっくりと暗がりに先端を押し当ててゆく。すると、まず彼女の背筋がビククッと震える。あ、う、う、とだんだん埋めていくたびに彼女は声を漏らす。臀部のあたりが特に大きな反応で、小刻みな上下の震えを起こしていた。
「ちょっと、待って、これすごい、かも……!」
ぶつぶつとうわごとのようにそう言いながら、ぎゅっとこちらの腕を握ってきた。
待てを命じられた俺は、しばし辺りの様子を眺める。たらたらと玉のような汗を流してゆく背中の向こうに見えるのは、わななく彼女の唇であり、湯気立ちそうなほど熱い呼吸を幾度となく繰り返している。ふと気づいたのはベッド脇に置かれたくしゃくしゃの制服だ。それは彼女が女学生であることの唯一の証として俺の目に映った。
などと思っていたら、ぬ゙る゙ぅっと先端を食《は》まれる感触が起こる。たまらず「うっ!」と俺は呻き、やや遅れてぞくんぞくんと背筋に快楽の波がやってきた。
見下ろすと、左右に腰をくねらせながら近づいてくる茜ちゃんのお尻がある。己から亀頭まで呑み込み、そこで休憩を挟むようにしばし止まった。
はああ、と互いに息を吐く。かなり良いかもしれない。そう互いにまったく同じことを思ったような気がしたし、まだ先端だけという状況にやきもきとする。
もっと奥に。もっと奥までちゃんと挿れたい。そんな気持ちが通じたのか彼女はやや腰を浮かし、そして俺は滑り落ちてゆく汗を追うように前のめりになってゆく。ぬるっ、ぬるっ、というあそこからの刺激だけがすごくって、熱々の舌にねぶられているようないやらしい感触だ。その生々しさと艶めかしさに眩暈《めまい》を起こしかけてしまう。彼女もたまらなかったのだろうか。おううッ、と少女らしからぬ声で喘ぎ、ぎゅっと思いきり握りしめたせいでシーツは皺《しわ》くちゃになった。
おお、挿《はい》ったぞ。グッと押し上げるまで桃尻と密着しており、もうわずかな隙間もない。それと同時に「これがセックスか」と俺は呻く。知らなかったのだ。ひくひく蠢《うごめ》くような感触が絶えず伝わってくるし、彼女もまた唇を大きく開いたまま湯気立ちそうなほど熱い呼吸を繰り返している。気を抜けばすぐにでも精を放ってしまいそうですごかった。
こちらからは真っ赤に染まった耳しか見えない。当然ながらどんな表情を浮かべているかはまったく分からないのだが、ものすごく動いて欲しそうに腰をぐねぐねと左右に揺らし始めている。その仕草を見て、なぜか分からないが嬉しくなった。
ぱちゅっと彼女のお尻を鳴らす。きめ細かくて、吸いつくような肌が俺の下腹部に触れてくるんだ。それだけでも気持ち良くて、腰使いをもう止めることができなくなった。そうして刺激を繰り返すうちに、彼女の内側はどろどろで熱々なものに変わりだす。
俺よりもずっと参っていることだろう。ああうッ、ああうッ、と奥まで挿入するたびに彼女は鳴き、そして歳にそぐわぬ豊満な乳房はゆさゆさと揺れ続けるのだ。すすり泣くような震える息づかいも、玉のような汗をたくさん流す裸体も、彼女の仕草すべてに俺は興奮してしまう。たまらず乳房ごと抱きすくめるや彼女の熱が直に伝わってきて、俺もまた大量の汗を流し始めることになった。
「あウッ! ゔッ! そっ、そこ、深い、ぃ、っ……!」
がくがくと震える痙攣まで伝わってくるのは、なんだかいい気分だ。すごく濃い汗の匂いにも興奮させられるし、もっと気持ち良くさせたいという気持ちがどんどん湧き上がってくる。彼女のお尻まで迎えるような動きをし始めると、ぱちゅっぱちゅっといういやらしい水音で部屋は満たされてゆく。
やがて、彼女は絞り出すような声を漏らすようになってきた。涎で濡れて、とろとろに溶けかけの唇はもう開きっぱなしだ。荒々しいセックスをするうちに優等生である茜ちゃんの理性は薄れてしまい、それにつれて彼女がひた隠しにしてきた雌としての顔を見せるようになってきた。
もっと、もっと声を聞きたい。明るくて元気な茜ちゃんを、俺のそそり勃つもののことしか考えられないようにしてやりたい。そう思い、濡れた肌を撫でるように彼女の下腹部まで手を伸ばしてゆく。
まず、しっとりと濡れた陰毛に辿りつく。乙女であれば顔を真っ赤にさせて恥じらうべきだが、彼女の意識は現在進行形でどちゅどちゅと貫かれている大事なところに向いている。だから完全に無反応だったのだが、そのわずか下にある突起まで辿りついた途端、ビグッと茜ちゃんは震えた。
「あ、あ、駄目、駄目、そこ触っちゃあ……!」
触ったらどうなるのだろう。その疑問はすぐに彼女自身が答えてくれる。
粘液まみれでぬるぬるのものを優しく撫でてゆく。指の腹で弾《はじ》くたびに彼女は痙攣してくれて、駄目という否定の言葉をぶつぶつと幾度も言いながら突っ伏してゆく。そうして体温が一層高まったとき、茜ちゃんはようやく雌と化した。
「~~……ッ! あ゙ッ! あ゙ンッ! あ゙ンン゙ッ! あ゙ンン゙ッ!」
ごくっと喉が鳴ったよ。生の女子校生とは思えない迫力ある喘ぎ声だったのだ。俺のぶっといもので貫くたびにお尻は弾み、その拍子で無数の汗が散る。それでいて彼女は己から巨大な桃尻を突き出しており、もっとお願いしますと訴えているかのようだった。
その尻が縦にビグンと跳ねる。ビグッ、ビグンッという痙攣は尚も続き、ぜぇぇーっという深々とした呼吸をすると、やがて彼女は全身を脱力させた。
内側でも細かな痙攣を直に伝えてくるし、ちゃんと達してくれたのだろうか。たぶんそうだと思うけど、はっきりとは分からない。
学生と思えないといえば、この乳房もそうだ。手にするとずしっと重く、はずみで玉のような汗が流れ落ちてゆく。その先に見える先端はというと驚くほど色鮮やかで、桜混じりの濃い桃色をしている。性行為によってかその乳頭は硬く尖り、指で摘むと内側から俺自身をピクンと締めつけてきた。
その彼女からの締めつけが徐々に速まる。ピクン、ピクンと震えだすのは、陰毛の奥にある突起をまた弄《いじ》りだしたせいだ。また一方で俺を包み込む膣は先ほどよりも熱を高めている。その熱をもっと味わいたくて最奥までじっくり埋めてゆくと、彼女のお尻は汗を散らすほど強くわななく。あウウッ、という甲高い悲鳴と共に。
ぱちゅっ、ぱちゅっ、ぱちゅっとたっぷりの愛液混じりだと分かる音が響きだす。再びのセックスは、生の女子校生が朦朧としているなか始まった。しかしそのぶん彼女は己の身体にとても正直で、大きな桃尻を揺らすたびに甲高く喘いでくれる。それでいて熱々の舌でねぶってくるような感触は健在なものだから、俺自身がさらに怒張してゆくのが分かった。
ああ、すごい。この子はすごい。本とかで見たものとはまったく違うセックスだ。俺のなかにあった動物的な雄を目覚めさせられるほど強烈で、ものすごく気持ち良くさせてやりたいということしかもう考えられない。俺のものにしたい、という欲望さえもが湧き上がってしまうほどに。
先ほどよりもずっと荒々しい性行為になった。パンパンと鳴らすたびに彼女のお尻は波打ち、そして彼女はすすり泣くように喘ぐ。それでいて己から桃尻を突き出してくるという体勢はまるで変わらず、その結合部はというと溢れ出る大量の愛液によって、もあっといやらしい匂いを放っている。彼女も分かっているのだ。これは俺が射精しない限り決して終わらない行為だと。
ぼろっと涙を流して、彼女は唇をわななかせた。
「あ゙ッ! あああ゙ッ! イッ、イくっ、もうっ……っ!」
突っ伏すなりぶつぶつと、イク、イク、とうわごとのように繰り返し、そして、ビググッと汗だくの裸体は震えた。
びぐっ、びぐぐっと尚も震えて、その痙攣が俺を締めつける。歯を食いしばってこらえようとしたが、密着したやわらかなお尻の内側は驚くほど熱く、うねり、ぢゅっと吸われるような感触さえある。たまらず抜き出すや、こってりとした愛液で濡れそぼったそれを押し当てる。そして、生の女子校生のお尻に吐き出した。
ああ、すごい、と熱い息を吐きながら思わずつぶやく。静まり返った深夜に響く射精の音は、どぴっ、どぴっ、というひどく下品な音だというのに、思考が呆けてしまうほど気持ち良く、そして眩暈を起こすほどの量だ。汗と愛液で光沢を放つ彼女の尻は、だんだんと白い精液によって染められてゆき、どろりと内股にまで垂れていった。
突っ伏したまま動けない彼女は、はぁーっ、はぁーっ、と熱い息を吐いている。俺もそうだ。身体に溜まった熱があまりにも高くて、それをどうにか冷まそうと思い、頭をひとつ振る。すると、ようやくにして気づく。周囲の家具はどこか見慣れぬものであり、机や棚、そこに並んだ本などはすべて弟のものであることに。ざあっと頭から血の気が引いた。あまりにもどうしようもない状況だ。思考もまるで働かず、俺はフラつく足取りで己の衣服を拾い、そして部屋から出ていく。いや、気づいたら出ていた。
自室のドアを閉めるなり、衣服を着ることさえも忘れてずるずると崩れ落ちてゆき、そして冷たい床に座り込む。とんでもないことをしてしまったという自責の念にさいなまれながら。
さて、ちょうどそのころに、弟は風呂から上がったらしい。
濡れた髪をタオルでガシガシと乱暴に拭きつつ、彼は鼻歌交じりで廊下を歩いてゆくのだが、ふと気づいたように克樹の足取りは止まった。
「茜、まだその格好で寝てたのか?」
呆れたようなその声に、驚いた茜は「ひゃいっ!」という返事とも悲鳴ともつかない声を漏らしながら慌てて身を起こす。狐に頬をつままれたような表情で周囲をきょろきょろと見回して、ふと克樹の視線に気づいたらしく、気恥ずかしそうにシーツをたぐり寄せてゆく。
「う、ん、そう? みたい?」
などと己でもよく分かっていなさそうな返事を茜は漏らす。気絶でもしていたのか茜の記憶は途切れており、時間の感覚も狂ってしまった。だからつい先ほどの行為がいつのものか思い返そうとしていたのだが、その彼女の頭にバサッとタオルが投げかけられる。
「なら風呂に行ってこいよ。裸のままでもいいけど兄貴には見つからないようにな。童貞だからきっと死ぬまで忘れてくれないぜ」
隣室に親指を向けて、にやっと笑いながら彼はそう言う。
少しは腹立たしく感じたのか、茜は顔を赤くしたまま舌をべえっと出す。そして、さっきは本当にすごかったなと思い返すような表情を浮かべつつ、ゆっくりと転ばないようにベッドから立ち上がった。うわっ、垂れちゃうっ、などと悲鳴を上げながら。