勇者パーティの魔法使いに命を狙われる小物盗賊・クロック。
クールなメイド長・シュゼットの強制転移魔法で窮地を脱する。
魔力切れを起こして変身が解けた彼女は、魔人族のスパイだった!
負傷したシュゼットを庇うかわりに、その豊満な身体を自由に抱く。
性欲で結ばれた盗賊と魔人、奇妙な共存関係が始まった!
軽蔑の目を向ける彼女も、乱暴に抱くうちに従順になり……
女たらしのカスの盗賊、毒舌スパイ籠絡の第3巻! 書き下ろし番外編つき!
第一話 魔人シュゼット
第二話 男盗賊と女スパイ
第三話 帝都侵入
第四話 隠蔽結界
第五話 負傷して動けない女に種付けプレス
第六話 とりあえずセックスしてから考えよう
第七話 勘違い
第八話 記録
第九話 シンシアの思惑
第十話 逃げ回ること鼠の如く
第十一話 追撃戦! VS見習い魔法使いエルナ
第十二話 催淫毒
第十三話 発情地獄
第十四話 ただいまは押し倒してから
第十五話 続ただいまは押し倒してから
第十六話 今後の関係
第十七話 言えない本音
第十八話 帝都脱出
第十九話 ティートの決意
第二十話 揺れるシュゼットの立ち位置
第二十一話 人類種の頂点に立つ者
第二十二話 従順なアデリーナ
第二十三話 船上の暇潰し
第二十四話 迫る脅威
書き下ろし番外編
本編の一部を立読み
第一話 魔人シュゼット
魔人族。
魔大陸に住まう種族は総称で魔族と呼ばれるが、その中で最も数が多くよく知られているのが魔人族と言われる。
側頭部に、前に向かって伸びる角があるのが特徴だ。
うーわ、めんどくせぇぇぇっ。
この女、絶対人族じゃねぇ。メチャクチャ面倒なタイプのわけアリじゃねぇか。関わりたくねぇタイプの。
どうすんだよコレ。思いっきり角が見えちゃってんじゃねぇか。
魔人族は人大陸での滞在が基本的に許可されていないという。
不法滞在でもなければ魔人族が人大陸にいるはずがないということだ。
遭遇したという時点で面倒事が確約されたも同然だ。
さっきまで角はなかったはずだ。
今あるってことは隠してたってことだろ。
気付いたってバレたら口封じされたりしねぇだろうな。
え? これヤバくね?
魔人族がどうヤバかったり凄かったりするのかは知らない。
角があるという特徴は誰でも知っているが、魔族が滞在しないこの大陸では見ること自体がないため理解もない。
魔人族についての知識はあまりないが、わざわざ正体を隠してまでここにいる時点で絶対きな臭い話なのは間違いない。
今すぐ抱えているシュゼットを放り投げ、走って逃げ出したい。
前門の魔人族、後門の魔法使いといったところか。
フェラとゴーレムの時とは危険度が桁違いだ。
普通に考えればスパイとかそういう系、だよな。
彼女は子爵家に雇われている。
この時点で子爵家に入り込んだスパイか、子爵家自体が黒かのどちらかだと考えていいだろう。
ともすれば彼女は何の目的でいるのか。破壊工作か、情報収集か。下手したら暗殺者なんてこともありうるのか。
……このまま無視はできねぇぞ。
もし誰かに見られたら、場合によってはシュゼットから口封じの対象になる上に他人からは魔族の仲間だなんて思われちまう。
どっかで上手いこと別れて逃げるか? それか、正直に言うか……。
「どうかしましたか? 私の顔に何かついていますか?」
「え? いや、こう間近で見ると美人だなって思ってよ」
「そうですか。こんな時に随分とお上手ですね」
物凄く皮肉られた。
そういえば子爵の別荘の廊下でアデリーナにフェラさせていたのを見られた時からどこか冷たい対応をされている気がする。
まぁ当たり前ではある。頭のイカれた奴だと思われていることだろう。
お嬢さん。角、見えてますよ、とかふざけながら伝えるか? 気にしないアピール全開でいけば口封じは免れるかもしれねぇし。
どうせ放っておいても自分で気付くかもしれねぇんだし、早いうちに手を打つべきだよな。
ダメだった時のために、逃げやすい場所で決行すべきか。
しかし今は抱っこしている真っ只中なので難しい。
歩けるまで回復した後、距離を取ってから言えばいいだろうか。
時間を空けるほど迷いを悟られてしまうかもしれない。
気にしてないアピールでいくのなら早いうちに指摘するべきだ。
「ところでよ。もう魔力は完全に空っぽなのか?」
「ゼロではありませんが、正直頼れるレベルではありません。いざという時はなるべくご自身で身を守って頂ければ助かります」
「そうか。まぁ隠蔽魔法が解除されるくらいだしな。応戦は諦めて、相手せずに逃げるのが無難か」
できるだけ自然にツッコミを入れるつもりで言葉を選ぶ。
シュゼットは一瞬怪訝な顔をしながらクロックを見た。
逡巡する僅かな間。すぐに彼女は自らの側頭部に手を当てた。
手で覆うように角を隠すと、目を細めて再度クロックに視線を向ける。
「……いつから気付いていたのですか」
「ん? たった今だ。多分魔力切れで魔法が消えたんだろうな。あぁ、心配しなくても俺は気にしねぇぜ」
一言一言、慎重に言葉を選ぶ。
自分では物凄く白々しく感じるが、彼女からはどうだろうか。
「この角が何を意味するのか分からないのですか? 気にしないはずがないでしょう」
「あ? なんだそりゃ。んなこと言われても興味ねぇからなぁ。俺はアンタのこたぁ、いいケツしてんなくらいにしか思ってねぇ」
酷いセクハラだ。
しかし今はこれでいい。角より尻の方が興味あるとアピールする。
「……私の弱みを握っても金銭なんてありませんよ」
「女の弱みなんて握っても揉みしだくくらいしかしねぇから心配すんな。ハッハッハッ!!」
豪快さと大雑把を意識して笑ってみせる。
少し大袈裟だろうか。ひとしきり笑うと、して反応はと彼女をチラ見。
その瞬間、頬に衝撃が走った。
「いてぇっ?!」
叩かれた衝撃でよろめく。
その隙にシュゼットはクロックを押し退けて地面に逃れ、よろよろと自力で立ち上がった。
「以前から悍《おぞ》ましい人だと思っていましたが、どうやら予想以上に汚らわしい方のようですね」
かなり厳しい言葉を向けられる。少し言いすぎただろうか。
地面に手をつきながら思いっきりひっぱたいた彼女を見ると、シュゼットは汚物を見るような目で見下ろしていた。
非常に冷たい。それは周りが白いから、空気が冷たいからだけではない。彼女自身から向けられる突き刺さるような視線が、とても冷えた心を感じさせてくる。
「いや、冗談じゃねえか。そんな怒るなよ」
「怒っておりません。嫌悪感を感じているだけです。もしかして私に触ることが目的で抱きかかえられたんですか? とても気持ち悪いですね。一瞬でも男らしいと感じた私が愚かでした」
滅茶苦茶に悪口が飛んでくる。
そこまで言うか、と思ったが、彼女は反転してそのまま下山を始めた。
置いていかれても困る。仕方ないのでそのまま追従する。
彼女に下品な話は良くなかったか。しかし罵倒こそされたものの、魔法やら刃物やらが飛んできたりはしなかった。
これはつまり、口封じの阻止に成功したのではないだろうか。
少々関係がギクシャクしてしまったかもしれないが、その程度なら時間やらが解決してくれるだろう。つまり、作戦は成功だ。
単に嫌われただけかもしれないが。
「クロック様」
「おう、どうした?」
「どうして私の真後ろを歩くんでしょうか。触れるのを禁止にされたからって臭いを嗅ぎに来るとか気持ち悪いにもほどがありますよ」
一瞬、前のめりにズッコケそうになる。
「してねぇわっ!! さすがにそんな──」
「唾を飛ばさないでください。マーキングのつもりですか? さすが人族。まるで動物みたいですね。獣人より獣です」
突如罵倒が飛んできて、抗議しようとしてもさらに罵倒が飛んできた。
酷い扱われようだ。そんなに怒っているのか。
いや、どんだけ嫌われてんだよ。
ってかもう嫌いかどうかってレベルじゃねぇ。
ああ言えばこう言う、なんてレベルじゃない罵詈雑言だ。
いくら何でもちょっとおかしい。滅茶苦茶嫌われただけ、と言えばありうるが、そういうことじゃない。
彼女の言葉は、普段から言い慣れてないと出てこなさそうな発想と言葉に思えるのだ。
「何だ。魔人ってこんなに口が悪いとは知らなかったぜ」
「違いますよ。人族があまりにも下賤でクズでゴミなだけです。その中でも貴方は突出して気持ちが悪いです。何ですか、口を開けば女の身体のことばかり。きっと脳が金玉の中にあるんでしょうね」
「いや、お前の口が悪いだけだと思う」
理解できた。
多分これが彼女の素なんだろう。魔人だとバレて吹っ切れたのだ。
普段から人族を超がつくほど見下しているのだろうか。
面と向かってここまで罵倒できるのはもはや彼女の才能だ。
ちょっとフラついてるけど、肩を貸しにいったら刺されそうだな。
しかし彼女の正体を暴くタイミングは少し間違えていたかもしれない。
できれば下山して彼女がしっかり歩けるようになってから言うべきだったか。
これでは手助けできないから移動が遅くなっただけな気がする。
斜め後ろから彼女のふらついた足取りを見守り、白い息を吐いて手の冷えを抑えようと試みる。
ていうか何でこんな雪山に転移したんだよ。
内心でツッコミつつ、見知らぬ土地と安心できない同行者に若干の不安を覚えながら山を下りていった。
長期想定のイレギュラーミッションのため、報告書作成用に記録を記録用媒体に作成しておくことにする。
記録。
緊急任務、指定された対象の救出及び逃亡幇助の指令を受理。
バッセロウの地方管理官、アルベルト・フェネック子爵の監視を中断して命令を更新する。
特定対象者:Cとする。
任務:獣大陸、または国外への逃亡幇助。
警戒対象:勇者及び勇者パーティ。
偶然にも歓待中の子爵家客人の中に対象者が居たため、捜索を要さずに接触。
首都の屋敷で歓待する予定が組まれたため、その後に何らかの理由で対象者に同行または追跡することで任務に就く方針を立てる。
子爵家には緊急と称して長期休暇を申し出て、彼らには子爵の命令で案内と護衛についたと申し出れば断られずに同行できるだろう。
予定通り首都へ向かうことになった。しかしここで問題が発生。馬車での移動中に警戒対象からの襲撃が発生した。
襲撃者は警戒対象者、勇者パーティの魔法使い、皇女ヘルミーネ。
彼女は帝国が保有する最強の兵とも言われる、要塞ゴーレムを持ち出してCに襲撃を敢行した。
予定外の観測だったが、ここで確認できたのは僥倖だ。これは同胞にとって間違いなく脅威となりうるものだ。
しかし彼女はCへの攻撃を行うことはなく、ゴーレムの性能を披露することもなくCの仲間二人を連れてどこかへ転移してしまった。
何か特別な事情があるらしいが、不明。会話からして元々仲間ということだろうか。
しかし彼女と衝突すればこちらが敗北していたのは間違いない。
そう思えるほど圧倒的戦力だったので、結果的に助かったと言える。
危機は去った。そう思えたが、彼女は置き土産として二人の弟子を置いていってしまった。
名はエルナとローナ。聞いたことがある。以前帝国を担当していた仲間の情報にあった名前だ。
獣国と帝国は互いに娘と息子を交換留学させているが、百獣大帝の娘は双子のエルナ姫とローナ姫だったはずだ。
つまり、危機は去っていないと見ていい。
彼女たちの魔力はそこまで強いようには感じなかった。
獣人は生来より魔法の扱いを苦手な者が多いそうだが、彼女たちはどちらだろうか。
どちらであっても飛翔すら可能とするほどならば、苦戦を強いられることは間違いない。
Cを守りながら戦える状況でもないため、離脱するためにジャンプスクロールを使用した。
彼女たちの隙を作って転移に成功する。
魔力の大部分を消費してしまったためにもはや戦える状態ですらなくなったが、すぐに追いつかれることはないだろう。最低でも一日は猶予があると思われる。
危険な状況からの脱出に成功した。そう思った矢先に、大きな問題が発生する。
魔力切れによって隠蔽魔法が切れ、我ら魔人族が誇る角が現れてしまった。
Cに、私が魔人であることが露見してしまった。
原則として、正体を知った者は速やかに口を封じなければならない。
任務失敗として始末するか、続行するかの判断が問われる状況になった。
件のCに関しては、角を見ても特段驚いている様子は見えなかった。角が出てしまったことも彼からの指摘であり、あまり気にしていないように思える。
獣人と勘違いしているのかと思えたが、そういうわけでもないようだ。彼は魔族を相手に危機感を持たず、むしろ性的対象として見ているように感じられる。
Cは任務の前から子爵家の別荘にて滞在中、人目を憚らずに少女に性行為をさせていたことがあった。
諸々のことから考えて、Cは種族より女であることを重視する人物であることが窺える。
その後もCは幾度もこちらに性的衝動をぶつけるような発言を繰り返している。
どうやら相手が危険な存在であることも認識できず、本能のままに生きているらしい。汚らわしい。
結論として、Cは劣等種族である人族らしい愚かな知性の持ち主であると判断した。
支障はないものとして、任務の継続を決定する。