06/26 電子版発売

俺たちの関係を親友だけが知らない【大学編】

著者: 一般決闘者

電子版配信日:2026/06/26

電子版定価:880円(税込)

大学生になり、幼馴染兼セフレの彩名と同棲を始めた俺。
だが、親友の彼女・雛やエリナとの関係も断てずにいた。
誘惑だらけの日々を過ごしていると、親友の雄也から連絡が。
『雛と、もう一度だけ寝て欲しい』
親友の奇妙な「寝取らせ」のお願いを叶えるべく、
雛と二人きりでラブホへ行き、ハメ撮りをすることに。
幼馴染4人グループ、あやまちの果てに新たな愛の形が!
背徳の青春ノベル最終巻! 書き下ろし番外編を2話収録!

目次

プロローグ

一章 おかしな悩み

二章 それぞれの想い

三章 暴かれる罪

四章 信じてるから

エピローグ

書き下ろしSS 本番①

書き下ろしSS 本番②

本編の一部を立読み

プロローグ



 意識が覚醒するその瞬間は、無気力のまま水中に沈んでいく感覚に似ている。
 何もかも忘れてそのまま水底に沈んでしまえば楽だろうに、その日の予定とか、義務とか、やりたいこととか、色々な記憶がふつふつと蘇ってくると、そこに居てはいけないという気がしてくる。そうなってようやく、俺はその水中から抜け出す気力を得ることができた。
 その時、ふと下を見てみると――、昏い水底から、誰かの手が俺に縋るように伸ばされた気がした。
「ん……」
 ぱちっと目を開ける。最近になってようやく見慣れてきた白い天井が目に入った。
 藍色の遮光カーテンの隙間から夏らしくギラギラとした日光が差し込んでいる。空調から冷たい空気がガーガーと吹いており、テーブルの上の箱ティッシュを揺らしていた。
 壁掛け時計は一一時半を指している。
 寝すぎた。
 反射的に慌てて身体を起こそうとするが、直前で、俺の身体の上に乗っている存在を思い出す。
 ……暑いし、熱い。
 薄い掛布団を捲る。そこには、少女――天理彩名が俺の胸にぷにぷにの頬っぺたを押し付けて寝ていた。
 彩名は幼稚園からの幼馴染で親友だ。男女の友情なんて成立しないという一般論はあるけれど、こと俺たちに限っては、そんな常識当てはまらない。俺たちは、去年の夏から一〇〇回どころか二〇〇回以上は性行為を繰り返してきたのにお互いに恋愛感情を抱いていないからだ。
 俺たちの間にあるのは親愛を伴う友情だけだ。
 より具体的に言うのであれば、親愛行動という名のセックスをする友達。それが俺と彩名の関係性だった。
 まあ、それはそれとして――彩名の寝顔がめちゃんこ可愛い。
 普段はそっけない猫が寝る時にそっとすり寄ってくるような愛嬌を感じる。同棲を始めてから何度も思うけれど、こんな無防備な姿を晒してくれる程に信頼されているのだと分かって、友達として、ニヤけてしまうくらいに嬉しい。
 いつまでも見ていたいが、いい加減起きないと健全な生活に戻れなくなる。
 ……いや、もう手遅れか?
「彩名、起きろー」
「ふがっ」
 俺が肩を揺すってようやく起きた彩名は、寝ぼけ顔を俺に向けた。
「おはよぉ……」
「おはよ」
 眠気覚まし代わりに彩名の頬っぺたをむにむにとつまんで遊んでいく。すると彼女は寝ぼけた様子で俺の親指を咥えてちゅぱちゅぱとしゃぶりだした。
「ちゅぷ……聡?」
 させたいようにさせてやること二〇秒ほど。彩名はやっとその瞳に理性を灯す。
「おはよ」
 二度目の挨拶をした彩名は、まだ少し寝ぼけているのか、俺に軽くキスをして柔和に微笑んだ。
 ――最近の彩名は可愛さに拍車がかかっている。
 メイクや服装もだが、パッと見て分かる変化はそのヘアスタイルだろう。前髪を上げるのはやめており、外出時は三つ編みハーフアップが基本スタイルになっている。
 その結果、以前はただ生意気そうな可愛くて小さな女子だった彩名は、つい視線を奪われてしまうような美少女へと様変わりした。この俺ですら今のこいつに不意に満面の笑みを向けられたら、ついドキッとしてしまうだろう。
「んっ……」
 おもむろに彩名は俺の腰に跨るように上体を起こす。すると朝勃ちチ×ポを通してぷにっとした肉の感触が伝わってきた。
「そういえばヤリ終わった後疲れてすぐ寝ちゃったんだっけ」
 彩名は布団を捲り上げる。上はともかく下半身はお互い何も穿いておらず、俺のムスコは肉土手の下敷きになっていた。
 大学生になって彩名と同棲を始めるにあたり、念のため防音がしっかりしているところを選んでよかったなとしみじみ思う。そうでなければ、今頃は近隣住民から苦情の嵐だろう。
「夏休みに入ったからってだらけすぎだな、俺ら」
「だねぇ……で、朝チ×ポ処理しとく?」
 彩名はにひひっとからかうように笑い、寝間着をナイトブラジャーごと上にずらす。慎ましやかな白いふくらみ、そして小さな桜色のぽっちについ目を奪われた。
「……朝から贅沢な提案だな」
 だらけすぎだと言った側から煩悩がふつふつと湧き上がってくる。昨夜は三発も出したのに、ちょっと誘われたくらいでコレだ。彩名とは数え切れないくらいセックスしてきたのに、この身体に飽きる気がしない。
 なにせ小さくて温かいから抱き心地最高だし、胸も敏感で弄るとすぐ喘ぐし、なによりマ×コの締まりが抜群に良い。セックスに慣れてない男だと、こいつの穴に挿れたら三擦りで射精してしまいそうだ。
「あ。今、持つべきは軽くヤレる女友達だなぁ、とか思ったでしょ」
「親友舐めんな」
 ちょっと悪質な冗談だったのでデコピンしてわざとらしく怒ってみせる。彩名は額を押さえて少し嬉しそうにしながら「ごめん、冗談」と謝ってくれた。
「朝メシ先にするか?」
「……実は今、寝起きでチ×ポ押し当てられたせいで、おま×こやばいことになっちゃってるんだよね」
 そう言われてよく見ると、彩名のワレメから漏れた愛液がムスコをべちゃべちゃに濡らしていた。
「んじゃゴムつけるから」
「はーい……てか、お互い下半身ベタベタだね」
「終わったらシャワー浴びるか」
「一緒にね」
 彩名は俺の上から降りる。そのまま枕を腰の下に敷いてうつ伏せになった。
 俺は俺でゴムを装着し、彼女の背中に体を重ねて膣口に亀頭をあてがう。そのまま腰をゆっくりと前に進めていく。
「あー、寝起きマ×コめっちゃ温《ぬく》いわ……」
 亀頭の先からぽかぽかぬるぬるとした蜜壺に包まれていく。この体位では結合部は見えないが、こいつの穴は小さいから、亀頭が入っただけでも膣口は目一杯に拡がってしまっているだろう。しかし幾度となく肌を重ねて俺のカタチを覚えたこのキツマンは、ムスコを根元まで受け入れてくれた。
 俺は体重がかかりすぎないように気をつけながらゆったりと腰を振り始める。
「んっんっんっ……朝は体温低いんだよねぇ、うち。元が高いからちょうどいいのかな」
「もう昼だけどな」
「ぁんっ、あっ、ふっ……昼といえば、んっ……もうエリナの配信、始まってるんじゃない?」
「あ……ヤリながら見るか」
「んっ」
 彩名はヘッドボードのスマホに手を伸ばす。そのままブイチューブを開くと、エリナのチャンネル――『星又エリンch』のロゴに、『ライブ中』と赤い枠に白文字で書かれていた。登録者数は三二万人だった。
 星又エリンの、いわゆる『中の人』は俺の彼女――野迫川エリナだ。二つ年下の妹のような幼馴染で女子校生。紆余曲折を経たものの、彩名との関係や同棲を認めてくれた、俺にはもったいないくらいの器の大きい恋人だ。
 エリナは実家で暮らしているが、隔週で遠路はるばる俺に会いに来てくれる。俺からもたまに会いに行くが、大学の勉強が忙しくて月に一度が限界だった。
 夏休みはもうちょっと会いに行きたいところだ。
「んっ、あっ。雑談枠っぽいね、んっ」
 彩名はスマホをぽちっと押して配信を開く。視聴者数は約三〇〇〇人だった。
 金髪碧眼の、どこかエリナに似た女の子のアバターがコロコロと笑いながら話していた。
 ――みなさんお昼ご飯食べてますかー? 私はこの後お蕎麦を食べに行く予定なんですよー。
 ――いやいや! 私、イギリス人じゃないですから! 日本人です、にーほーんーじーん! よく勘違いされる――あ、これ言っちゃダメだったかな?
 ――え、彼氏の話ですか? えへへ、えへへへへへへへっ! 聞いてくださいよぉ! 私の配信、全部見てくれてるらしいんですよ! この前のお料理の手元配信も見ててくれたみたいで、この前会った時に、真っ先に手を切ってないか心配してくれて……。
「相変わらず愛されてるねぇ……んっ、ふぅ」
「恥ずかしいから俺のことは言うなっていっつも言ってるんだけどな」
「あっあっ……ソレが星又エリンの、ウリなんでしょ? んっ……視聴層も、ほとんど女性みたいじゃん」
「それでも、俺たちのこと口滑らせないかってハラハラするんだよな」
「それは確かに……んっ、あっ、はぁ……ごめん、なんかもうイキそう」
「早いな。まあ俺もだけど」
「朝って、なんかやたらと敏感だよねぇ……」
「それな……ん、出るわ」
「あんっ! あっあっ、激しっ……あんっあっあっあっ?」
 ピストンを速めると、彩名も俺の動きに合わせて軽く腰を揺すってくれる。お互いにお互いを高め合い、絶頂に向けて昇りつめていく。
「イクッ?」
 彩名は短く告げてベッドシーツをぎゅっと握る。それと同時に、膣壁はきゅうぅぅっと肉棒に抱きつくように収縮した。
「っ……」
 急激に高まる射精欲。その瞬間、俺は彩名の小ぶりな尻にぱちゅんっと腰を押し付けた。
 びゅう、びゅう、びゅう……。
 先っぽからどろどろの熱液が吐き出される。肉棒の脈動に合わせて軽く腰を振ると、幾度となく肌を重ねてきた彩名の膣壁は、蛇のように縦横無尽に蠕動《ぜんどう》して精液を絞りとってくれる。
「お前のマ×コほんと良すぎ」
「んっ……あんたのチ×コもね……んあっ?」
 彼女であるエリナとも数十回は肌を重ねたが――、彩名とは文字通り桁違いだ。お互いの身体について、もはや本人以上に知っていると言ってもいいだろう。
 ただ、やはり。
 肉棒を纏う薄皮が、少しだけもどかしかった。
「ふー」
 射精が終わって肉棒を引き抜く。ゴムを外して口を縛り、ゴミ箱に捨てた。その間に彩名が起き上がり、肉棒を口で掃除してくれる。
「ちゅぷ、ちゅぷっ……ちゅうう……」
 精液で汚れていた肉棒が清められ、代わりに彩名の唾液が塗布されていく。彼女は最後に尿道の残滓を吸い取り、口を離した。そのまま萎れた肉棒をじっと見つめる。
「……彩名?」
「前も言ったけど……うち、もうピル飲んでるよ?」
「ん……また今度な。朝メシの下準備してくる」
「シャワーは?」
「すぐ終わるから先浴びといて」
 そう言って俺は逃げるように立ち上がり、身だしなみを整えてキッチンに向かう。そして朝……いや、昼飯の準備を始めた。
 ――寂しそうにこちらを見る彩名から目を背けながら。
 彩名が言いたいことは分かる。去年の夏休みの約束を果たそうとしてくれているのだろう。『大学に入ったらピルを服用して最後まで生で繋がろう』という、友達としての親愛を確かめ合う儀式のような約束を。
 だが俺は、大学生になって四ヶ月も経とうというのに、未だその約束を果たせずにいる。
 深い理由はない。単に俺がビビっているだけだ。
 去年の一一月、エリナに「普段からピルを飲んでいる」と言われた俺は、それを信用して何度も中出ししてしまった。その先にある性的快感の誘惑に負けたのだ。
 だがその後、エリナは『ピルを飲み始めて一週間も経っていない』ことをぽろっと溢した。
 アフターピルが功を奏したのか、幸いにもエリナは妊娠しなかったが、下手をしたら彼女の人生が壊れていたかもしれない。
 エリナが意図的に隠していたのが悪いと言えばそうなのだが、よく確認しなかった俺だって悪かったし、そもそも問題の本質はそこではない。
 ――精液がほんの数滴子宮に入り込んだだけで、大事な女友達の、そして大事な恋人の人生を壊しうる。当時、その恐怖が現実味を帯びて俺の肩に重く圧しかかったのだ。
 それから俺は性行為――正確には、ゴムを使用しない性行為が怖くなり、避けるようになった。
一章 おかしな悩み



 翌日の八月一日。彩名はベッドの縁に腰かけながら、電子ピアノを練習する聡をぼーっと眺めていた。
 保育士になるにはピアノが必修らしい。去年、聡との雑談の中で聞いて彩名も驚いた。しかし言われてみれば納得できる話で、彩名が幼児の頃、保育士の先生はみんなピアノを弾けていた。「なるほど、こういうところで練習していたのか」とパズルのピースがハマったような気持ちになった。
 でも。
「……何してんだか」
 彩名が呆れてぼやくと、すぐ隣で目を輝かせながら聡を眺めるエリナが拝むように両手を組んで言う。
「真面目な聡さん、素敵……っ」
「エリナ、あんたは怒っていいんだよ? 『せっかく遠路はるばる来たんだから、もっと私に構えー』って」
「いえいえ、私はナマ聡さんを見られるだけで満足ですから!」
「ここはアイドルのライブ会場じゃないんだけどなぁ」
 呆れるものの、人をそれだけ好きになれることは素直に尊敬できる。
 エリナは純粋だ。本気で聡に好意を寄せている。聡と同棲していて変な話だが、彩名もエリナには幸せになって欲しいと願っている。
 だが……聡はエリナが来ているにもかかわらず何故かピアノの練習をしている。「もうちょっと切りが良いところまでやらせてくれ」などと言っていたが、せっかくエリナが片道二時間弱もかけて会いにきてくれているのに、ほんの数分でもほったらかしにするなど彼女が少し可哀そうだ。
 そんな軽い憤りが伝わったのかどうかは分からないが、聡はヘッドホンを下ろし、電子ピアノの電源を切って振り返った。
 エリナはすぐさま聡に飛びつき、嬉しさを全身で表すように抱きつく。
「聡さん、すごいじゃないですか! もしかしてピアノの天才ですか!? 音は聞こえませんでしたけど!」
「それでよくすごいとか言えたな? しかも弾いてたのなんて初心者向けの練習曲だし。……悪いな、放っておいて」
「まだ練習してても大丈夫ですよ? 私は見てるだけでも嬉しいですから」
 そう言って聡の胸にぐりぐりと頭を押し付けるエリナ。まるでマーキングだ。ついには頬っぺたにチューまでしていた。
「うち、お邪魔なら出ていくけどー?」
 彩名が冗談気味に言うが、何故か少し不貞腐れたような態度になってしまった。自分でも不思議に思っていると。
「彩名さんが邪魔だなんて、そんなことないですよ!」
 エリナが聡から離れて飛びついてきた。体格で負けている彩名はベッドの上にぼふんっと押し倒されてしまう。
 エリナは彩名の胸に顔を埋めてすーはーと呼吸を繰り返す。そのまま彩名の顔の前まで移動し、こちらにも頬に軽いキスを落としてくる。
 同じ女から見てもエリナは可愛い。見た目もそうだが、中身もすごくいい子なのだ。
 そんな子に懐かれて悪い気はしない。
 とはいえ。
「エリナ、ちょっ、くすぐったいっ……!」
「ああもう、ホントに彩名さん小さくて可愛い……私、こんな妹が欲しかったです……」
「うち、あんたより二歳も年上なんだけどっ!?」
「二歳年下の間違いだろ、チビ彩名」
「黙れガキ聡」
「口が汚ねーぞロリっ子」
「だからロリっ子ちゃうわ!!」
 彩名は聡に噛みつこうとするがエリナのせいで身動きが取れない。聡は馬鹿にしたように指を差してきた。
 彼はそのままキッチンに向かう。麦茶をそれぞれ用意してくれた。
「んで、どうする? 今日どっかいくか?」
 聡がテーブルに着くと、エリナは彩名を解放して聡の隣に腰かける。彩名は乱れた服装を直してベッドの縁に座り直した。
「でも、外は暑いですよ?」
「エリナは何かしたいこととかないの? せっかく来たんだからさ」
「私は聡さんと一緒に居られればそれで……もっと触れ合いたいなぁ、とは思いますけど」
「じゃあとりあえずヤっとけば?」
「前もその流れだったじゃん。遠くから来てもらって毎回それって、俺的にちょっとアレなんだけど……」
「アレって何?」
「なんかこう、身体が目的みたいじゃん」
「違うの?」
「ちげえよ。お前は俺をなんだと思ってんだロリっ子」
「ヤリチン」
「…………」
「打たれ弱っ」
 静かに落ち込む聡に対し、エリナは「私はそんなふうに思ってませんよ!」と慰めるように寄り添った。その光景を見て、彩名はどこか置いていかれたような寂寥感に苛まれる。
(こうしてみると、本当に夫婦みたい)
 まだ付き合い始めて一年も経っていない二人だが、彩名から見てもお似合いに見える。意外とメンタルの弱い聡をエリナが温かく慰める……そんな未来の夫婦像が簡単に想像できる。
 ……こんなふうに二人を見ていると、時々、自分はこのままでいいのかと不安になることがある。
 最近の聡は彩名のことを親友だと言ってくれているし、エリナも受け入れてくれている。だがそれにばかり甘えて、その間に居座ることが果たして許されるのか、彩名には分からなかった。
(それに最近、なんか聡と距離置かれてるって感じるのは気のせいじゃないんだよね)
 パーソナルスペースという意味では、二人の間はほぼゼロと言っても過言ではない。だが、どこか心の距離が離れている気がする。それは偏に――、生セックスをしようと暗に持ちかけた時に、聡に逃げられてしまうからだ。
 理由は分からない。
 ただ、聡は彩名と直接繋がることを避けている。
 彩名にとって、生セックスは単に性的快感を得るためのものではなく、二人の絆を確かめるための儀式のようなものだ。聡も同じように考えていると思っていたのだが、最近はそうではないのかと疑いつつある。
 避けるにも理由があるはずだし、聡が何か思い詰めたような顔を見せる時があるのも確かだ。だが、それを彩名には話してくれない。
 それもまた、聡と距離を感じる一つの要因となっていた。
 そんなことを考えていると。
「聡さん。元気出してください」
 エリナが聡の股間をズボンの上からすりすりと撫でだした。
「いや、だからこの流れは……」
「私がしたいんです。二週間もこのおっきなおちん×んをお預けされるなんて、女の子にとっては拷問なんですからね?」
 そう言いながら、エリナは聡のズボンのチャックを下ろす。そのままそこに顔を埋めて、ぶらんっと下を向くペ×スをぺろぺろと舐めだした。
「…………」
 そこから目を背けるように、彩名はベッドに横たわって反対側を向く。
「彩名?」
「……ちょっと眠いから寝る。ベッド使うなら退くけど」
「いや、それは大丈夫だけど――うっ……」
 ――じゅぷっ、じゅる、ちゅっ……。
 いやらしい水音、聡の気持ちよさそうな喘ぎ声。それらから耳を塞ぐべく、彩名は耳にワイヤレスイヤホンを差し込んだ。
 しかし音楽を流したり、動画を流したりしても、どうしても二人の声や音は耳に入ってきてしまう。
「聡さん、そろそろ私……前から、いいですか?」
「……分かったよ。ゴム、そっちにあるから」
「あの、私、最近はちゃんと……飲んでますよ?」
「一応な、一応」
「むぅ」
 不満げに唸るエリナだが、すぐに小さな足音が聞こえた。視界の隅で、ベッド脇からエリナがゴムを回収していく。
(そういえばエリナとヤる時もゴム着けてるよね)
 エリナもピルを飲んでいるらしいから、何も生セックスを避けられているのは自分だけではない。そのことが少し嬉しくなると同時に、そんな自分の浅ましさに嫌気がさした。
 こうしてセンチメンタルになっているとついネガティブなことを考えてしまう。
 ――短大を卒業したら聡とは距離を置いた方がいいのだろうか、と。
 彩名と聡は二年制の短大に通っている。つまり卒業まで残り一年と半年程度だ。そして彩名たちが短大を卒業すると同時に、エリナも学校を卒業する。
 エリナが就職するのか大学進学するのかは分からないが、仮に就職して、そのまま聡と結婚したとして……その時、聡は「一緒に暮らそう」と言ってくれるのだろうか。
 エリナはそれを快く思ってくれるのだろうか。
 二人の邪魔に、ならないだろうか。
 もしも二人に拒まれたらと思うと……想像するだけで震えるほどに怖い。
 彩名は現実から逃げるように掛布団で頭を覆った。

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