ヤリチンの平民は、貴族の学園に通っている

著者: 一般決闘者

電子版配信日:2024/09/27

電子版定価:880円(税込)

孤児院育ちの平民シロは、貴族の学園に通っている。
勉学に励みながらも、身の程をわきまえ平凡な日々を過ごしていたが、
同級生の貴族令嬢・ローラの秘密を目撃し、口封じに体を弄ばれてしまう。
抵抗虚しく童貞を奪われるシロ。だがその瞬間、ヤリチンの本能が覚醒した!
ローラで女体の快楽を知ったシロは、侯爵家の一人娘・ミアに狙いを定めるが──。
貴族令嬢を抱き潰すヤリチン平民、誕生! 書き下ろしSS収録で電子書籍化!

目次

◆◆◆序章 とある日のヤリチン風景


◆◆◆1章 ヤリチンの生まれる日


◆◆◆2章 ミア様の勉強会


◆◆◆3章 もう一つの勉強会


◆◆◆終章 そして少女は不徳に堕ちる


◆◆◆後日談


◆◆◆書き下ろしSS パーティーの裏側

本編の一部を立読み

◆◆◆序章 とある日のヤリチン風景





 放課後、黄昏時。学園の五階に位置する裁縫部の部室には、いやらしい水音を背景に、女の子の喘ぎ声が響き渡っていた。
「お゙っ♡ お゙っ♡ お゙っ♡ お゙っ♡」
 窓の反射越しに見える彼女は、その端正な顔を悩ましげに歪めている。絹のような金髪は振り乱れ、膨らみかけの胸は仄かに揺れる。きめ細やかな肌に浮かぶ汗粒からは、雄を誘惑する甘ったるい芳香が漂っていた。
 僕は今、三つ年下の後輩―――ミア様の背中を見下ろしながら、膣壁にち×ぽを擦り付けている。
 ミア様は侯爵家の一人娘、つまりは貴族のお嬢様だ。
 平民は触れることすら許されないような、高貴な血筋。そんな女の子が、平民の、それも孤児院育ちの僕にお尻の穴まで晒しながら、濁音混じりの喘ぎ声をあげている。
「ミア様の中、すごく気持ちいいよ」
「あっ♡ う、嬉しいです♡ もっと使ってください♡ 先輩専用のおま×こで気持ちよくなってください♡」
 僕が腰を動かすのに合わせて、ミア様もその小ぶりな柔尻を前後に振ってくれている。熱くすら感じられるその膣壁は、求愛でもするように、きゅうきゅうとち×ぽを締め付けてくる。腰を引くと、縋り付くように締まりが強まった。
「先輩♡ シロ先輩♡」
 何かを言いたそうに、ミア様がこちらに視線を送ってくる。
 女の子に慣れていなかった僕だけれど、最近は、女心を多少は理解できるようになった。ミア様はもちろん、他の貴族の女の子とセックスした中で身に着けたものだ。昔、孤児院にやってきた商人のおじさんから聞いた話だと、言外の求めに応じられない男は女の子にモテないらしい。
「ミア様。一回抜くから、こっち向いてくれる?」
「っ! はい♡」
 当時はおじさんの言葉の意味が全く分からなかったけれど、今ならはっきりと分かる。今、僕はミア様に試されている。いや、本人はそのつもりはないかもしれないけれど、僕にとっては、テストのようなものだ。しかしそれも、今となっては、間違えようのないものでしかない。
「先輩、来てください♡」
 僕がち×ぽを抜くと、ミア様は震える足でこちらに振り返る。彼女は少しだけ恥ずかしそうに顔を赤らめながら、爪先立ちでガニ股気味に足を開くと、濡れそぼった恥部を晒した。
 僕は少し腰を落とし、そのワレ目に亀頭を擦り付ける。少し角度を変えてあげれば、血管の浮き出た肉棒は、幼い淫穴へと包まれていった。
 所謂、対面立位だった。
「あっ♡ シロ先輩♡ おかえりなさい♡ んっ♡ ちゅっ♡ ちゅるっ♡」
 ミア様はキスが好きだ。後ろから突いたほうが締め付けはキツくなるから、多分、ミア様にとって一番気持ちのいい体勢は後背位だと思う。でも、こうして正面から抱き合い、とんっとんっと子宮を突かれながらキスするのがお好みらしい。
 僕はそんな彼女の好みに応えようと、舌を絡ませ、歯茎や唇を舐め取っていく。すると彼女も僕に合わせて舌を動かしてくれた。
 甘い、甘い幼蜜が口内へと送り込まれては、お返しとばかりに僕も唾液を送り込む。彼女はそれを、んくっ、んくっと飲み込み、貪るように僕の舌を食んできた。
「んちゅ、ぢゅぅぅっ♡♡」
 ミア様は下品な音を立て、貪るように舌に吸い付いてくる。そんな彼女の顔をもっと歪めたくなった僕は、そのシミひとつない脚を抱き抱えた。
 自然と、彼女の右足は地面から離れていった。
「きゃっ♡ んっ♡ あっ、あんっ♡♡♡」
 体勢が崩れそうになった彼女は、それでもなお、僕を気持ち良くさせようと腰を左右に揺すってくれていた。
 ――――ハートフィーリア王立学校では、僕以外の全員が貴族の生まれだ。
 そんな場所で同年代の男女と半年も生活すれば、平民であることがコンプレックスにもなってくる。でも、ミア様のような高貴な女の子とこうしていると、平民であることなんて些末なことだと思えてくるんだ。
「ミア様、そろそろ出すよ」
 ちなみに。
 チ×ポにはミア様の愛液が絡みついているだけで、他には何も着けていない。
 僕たちの性器を隔てるものは、一切存在していない。
 このまま射精すれば、僕の精子はミア様の子宮に侵入する。運が悪ければ――――いや、運が良ければ、彼女は僕の子を孕むだろう。
 でも、彼女は。
「ああっ♡ 奥ごりごりきてる……ッ♡ びゅるびゅるって子宮にマーキングされちゃうっっ♡」
 ミア様は受け身のようなセリフを口にしながらも、浮いた右脚を僕の腰の裏に回して、逃がさないとでも言うようにぐっと抱き寄せた。
「ちゅっ♡ 出して♡ 私ずっとイッてますから♡ ナカでイって♡ ミアのおま×こに、ぴゅっ、ぴゅってしてくださいっ♡♡」
 事前に子供ができにくい日だと聞いていたけれど、可能性はゼロではない。それでも、普段は御令嬢たちとお花の話をしているその口で、平民である僕の子種を強請っている。
 その期待に応えようと、僕はより一層激しくピストンを繰り返す。
「お゙っ♡ い、お゙ぅっ♡ イクッ♡ イキますっ♡ せんぱい、シロせんぱいっ♡♡♡」
「あー、射精(で)る、射精(で)るッ!」
「~~~~~~っ♡♡♡」
 ミア様は声にならない声を上げ、絶頂した。膣壁がち×ぽがぎゅっと締め付けてくる。限界ぎりぎりだった僕に、抗うことなどできるはずもなく――――
 ドビュッルルウゥウゥルゥッ!!!!
 ミア様の高貴な子宮に亀頭の先を押し付けながら、無責任にも平民ザーメンを注ぎ込んだ。
「くっはっ………………!」
 目の裏にチカチカと電気が走るような、天国にも上る心地だった。それを後押しするように、ミア様は柔らかく小さな肢体をぎゅっと押し付けてくる。腰の裏を優しく摩ってくれるその右手からは、僕を気持ちよくさせたい想いが伝わってくる。
 後輩の、貴族の令嬢に種付けしている。
 本来は出会うこともなかったであろう高嶺の花。そんな少女のおま×こを生ち×ぽで貫き、涎を垂らしながら子種を撒き散らかしているのだ。
「はぁっ……んあッ♡ 先輩……ん♡ 気持ちよさそう……♡」
「ぐ……っ! ミア様のおま×こ、最高だよ……!」
「はあ、はあ………よ、よかったです♡ 先輩のこってりせーし、あっ♡ 私の中にぜーんぶ、コキ捨ててくださいね♡ ちゅっ♡」
 ミア様は僕の首筋に吸い付き、肌に張り付いた汗を舐めとるように、舌を這わせ始める。
「はぁ、はぁ……ふぅー」
 長い射精が収まると、僕は一息ついた。その間もペッティングしてくれていたミア様の頭を撫でると、彼女は嬉しそうに目を細めて微笑んだ。
「お疲れ様です、先輩♡」
「ありがとう、ミア様。すごく気持ちよかったよ」
 下半身に集まっていた血が体に戻ってくると、僕はミア様に感謝を示すように、その小さく柔らかな唇に軽いキスを何度か落とす。そうして気も落ち着いてきたところで、僕はいつものように口を開いた。
「ミア様、好きだよ」
「あっ♡ 私も好きです♡ 大好きっ♡ んちゅっ♡」
 ミア様は恍惚とした牝の顔を浮かべながら、僕の背中に腕を回して、力強くキスをしてきた。無意識なのかもしれないけれど、ミア様の膣さえも、キュンキュンと嬉しそうに、僕の少し縮んだち×ぽを締め付けてきた。
 そんなことをされれば、当然ながら。
「あっ……先輩の、まだ元気そうですね♡」
「……ごめん。もう一回いい?」
「もちろんです♡ 私の穴でおち×ぽシコシコして、気持ちよくなってください♡ んっ……」
 ミア様は短く艶声(つやこえ)を上げると、自らの淫穴から肉棒をゆっくりと引き抜いた。そのまま部屋の隅に置かれたソファの上に、ぽふっと体を預ける。
「どうぞ、シロ先輩………。私の後輩おま×こ、おちん×んで可愛がってくださいっ………♡」
 ミア様は僕の興奮を煽るように股を開き、くちぃっと卑猥な音を立てるおま×こを見せつけてくる。出したてほやほやのザーメンがとろりと垂れて、ソファを汚した。
 ミア様の言動は淫乱そのものだ。しかしそれは、僕を喜ばせるためなのだろう。その証拠に、彼女は期待の籠った瞳を浮かべる一方で、ひどく恥ずかしそうに顔を赤く染めている。
「本当、僕は良い後輩を持ったなぁ」
 僕はそう溢すと、ソファへと向かい、ミア様に覆い被さるのだった。
 ―――事ここに至るまで。貴族のお嬢様達と関係を持つようになってから、一か月くらい経っただろうか。
 僕のような冴えない平民がこんな幸せな日々を送れるようになるなんて、夢にも思っていなかった。
 この幸運を噛み締めるように、ミア様のおま×この熱を生ち×ぽで味わいながら、この一か月間のことを思い出すのだった。



◆◆◆1章 ヤリチンの生まれる日



―――時は一ヶ月前まで遡る。
 聖竜歴五一四年。長月の六日目の事だった。
「では、先週に予告していたように、今日は生命魔法の訓練を行ってもらってもらう。各自、六人のグループに分かれて始めなさい」
 一限目が始まると同時、教壇に立つ青みがかった長髪の女性がそう口にした。
「アリア伯爵夫人の授業、苦手なのよね」
 後ろの席の、薔薇のように赤い短髪が特徴の女の子……ローラ様が小さく呟く。
 すると突然、アリア先生はギロリと彼女を睨みつけた。
「ローラさん。私のことは先生、もしくはアリア男爵と呼びなさい」
「地獄耳すぎ……あ、いや…………すみません」
 ローラ様は尻すぼみに言った。
 アリア先生は若手有望株として知られる魔法研究家で、新しい魔法の発見により男爵位を賜った経歴を持つ。そのことを誇りに思っているのか、あるいは嫁ぎ先と折りが合わないのか、伯爵夫人と呼ばれることを嫌っているようだった。
 ちなみに、このクラスにいる生徒たちは貴族でこそあるものの、爵位は持っていない。一方で爵位を持っているアリア先生の立場は、そんな生徒たちよりも上ということになる―――まあ、王族はまた別なのだけれど。
「アリア教諭。魔法の使えない平民がいます。彼はどのグループにも属していません」
 僕の隣に座る子爵家子息、カイト様が言った。その後ろでは、二人の男子生徒が僕を見て嘲笑っている。
 彼らは同じ派閥の貴族らしく、カイト様を筆頭に、いつも行動を共にしているグループだった。
 慣れた嘲笑を受けた僕は、無意識に俯いて視線を逸らした。
「…………そうか、そうだったな」
「ご、ごめんなさい」
「………仕方ない。君は来週までに私の論文に関するレポートを提出しなさい」
「わ、わかりました」
 僕が頷くと、アリア先生は「ぱんぱんっ」と手を叩いて、他の生徒たちに訓練を始めるように促した。カイト様達は僕を見て鼻で笑うと、それぞれ自分のグループへと入っていった。
 嵐が過ぎ去ったのを確認して、僕はそれぞれのグループを遠目に眺める。
(見えにくい………)
 平民である僕が近づけば、集中力が乱れるとか言われたり、睨まれたりするのだから仕方がない。
 平民らしく静かにしていると、視線の先でクラスメイト達が杖を手に取った。それを、机に置かれた植物に向けて呪文を唱え始める。
 今回の授業はアリア先生の編み出した魔法――――生命魔法の訓練だ。
 生命魔法とは、怪我の治療に特化した回復魔法とは原理からして違う、『生体に生命力を吹き込む魔法』だ。なんでも、病気に対する免疫を強化したり、植物の成長を促したりできるらしい。
 ただし、アリア先生曰く、使いこなすには適性が必要とのことだった。この訓練は、その適性を確かめるためのものでもある。
「シロ、こっちにきなさい」
 生命魔法について頭の中で復習していると、ふと声をかけられた。
 クロア王女殿下だった。
 この国では珍しい彼女の黒髪は、光を反射して黒く輝いている。その整った容姿やバランスの良いボディラインなどは、男女問わず目を奪われるほど美しい。しかしそれ故に、どこか近寄りがたい雰囲気も醸し出している。
「よ、よろしいのですか?」
 僕は周りの顔色を窺いながら、控えめに問いかけた。そんな僕を見てか、クロア王女殿下は悪戯な笑みを浮かべる。
「私がいいと言っているのよ。シロは不服かしら?」
「そ、そんなことは!」
 そこまで言われて断れるはずもなく、慌ててグループのほうへと近づいた。
 しかし、
「クロア殿下。彼は魔力を持っていませんから、近くで見学するのは危険ではないでしょうか?」
 意を唱えたのは、カイト様だった。
「っ………」
 一瞬、僕は足を止める。
 実際、彼らと違って魔力を持たない僕は、いざという時に自分の身を守ることができない。それは魔法行使に失敗するなどして、魔法が暴発したとき、僕は死ぬかもしれないということだ。
 ただ―――。
 カイト様の言葉は最もだけれど、彼の表情には、それ以上に、僕、あるいは平民に対する嫌悪が見え隠れしている。彼の実家であるヘイローゼ家は血統主義者で有名だから、つまりそういうことなのだろう。
「彼をこの学園に入れたのは私よ。何かあった時の責任は私が取るわ。………これでいいかしら」
「っ………かしこまりました」
 カイト様は僕を不快そうに一瞥して、訓練に戻っていった。
 クロア王女殿下は僕に近づくと、肩に優しく手を乗せてくれる。
「シロ、気にしないでね」
「あ、えっと、その……ありがとうございます」
 肯定すればカイト様の提言を否定したことにもなってしまいかねない問いかけ。返事に困った僕は、お礼だけを口にした。
 ―――平民である僕が、貴族だけが通う学園に通えているのは、なにもかもクロア王女殿下のおかげだ。
 およそ一年前、文官の不足が問題視されていたこともあり、平民を文官として招くべきだと、クロア王女殿下が国王陛下に提唱したらしい。
 それの実験体として選ばれ、学園に誘致されたのが、孤児院育ちの僕だった。
 本当に幸運だった。
 子供の頃、お忍びで下町を視察にいらっしゃっていたクロア王女殿下と偶然にも出会い、顔見知りになることができたのだ。
 そのおかげで、僕は今ここにいる。
 子供の頃から必死に勉強を続けていて良かったと、心の底から思ったものだった。
(………頑張ろう)
 この果てしない恩をお返しするには、立派な文官として出世するしかない。
 ………殿下が僕に優しくしてくれているのは、この施策が王位継承の評価に関係するからだろうし。

◆◆◆

 午前中の授業が終わり、昼休みに入ってすぐの事だった。
「ろ、ローラさん。よかったら、その、ら、ランチをご一緒してもよろしいですか?」
 後ろの席のローラ様に、話しかける男子生徒がいた。カイト様の仲間の一人―――ブルーノ様だった。
 ぽっちゃりとした体形で、濃い目のソバカスとくすんだ茶髪が特徴的。嫡男かどうかはわからないけれど、確か、子爵家の子息………だっただろうか。
 貴族の間では、男女間での食事のお誘いはそう珍しいことではないし、ローラ様の容姿は貴族の中でも整っているだけあって、これで何回目のお誘いかもわからない。でも確か、ブルーノ様からの誘いは、始めてだっただろうか。
「あら、とても嬉しいお誘いですわ。けれど私、お昼は一人で食べるのが好きでして。またお誘いいただけると嬉しいですわ」
「そ、そうですか! それは失礼いたしました! ではまた―――、こ、今度はディナーのお誘いをさせていただきます!」
「都合が合えば、ぜひ」
 ローラ様はいつものように軽くあしらう。次に期待を持たせるような言い方に聞こえるかもしれないけれど、ただの社交辞令なのは明白だった。
 立ち去るブルーノ様は、どこか嬉しそうにしていたけれど―――まあ、僕には関係のないことである。
 僕は食堂に向かうべく、腰を上げ―――
「ぐぇっ」
 瞬間、後ろから首根っこを掴まれ、ぐいっと引き寄せられた。
 恐る恐る振り返ると、ベージュ色の瞳が、観察するように僕の顔を見つめていた。
 当然ながら、ローラ様だった。
「あんた、シロって言ったっけ。頭いいのよね?」
 先ほどとは打って変わって、砕けた口調だった。貴族としての社交辞令的なタテマエは持つ彼女だけれど、ご友人と話すような時はこんな具合である。
 僕は―――まあ、平民だから、こんなものだろう。
「そ、それはどうでしょう………」
 僕はいつものように下手に出ながら、愛想笑いを浮かべる。
 いくらクロア王女殿下の庇護下にあるとはいえ、僕自身が偉くなったわけではない。
 僕は平民で、ローラ様は貴族。その差は何があろうと、決して埋まることのない事実だ。僕がアリア先生やクロア王女殿下を下の名前を呼べるのも、校則で「校内では貴族の姓を捨てるべし」などと明確に定められているからだ。
 勘違いしてはいけない。調子に乗るなどもってのほかだ――――けれど、ローラ様は。
「いやいや。あんた、この前の学年テスト、確か総合六位だったわよね? その前も八位だったし………卑屈になられると、腹立つんですけど」
「あ、あはは………申し訳ありません」
「謝らないでよ、私がいじめてるみたいじゃない………まあいいわ」
 ローラ様は一拍置くと。
「シロ、私に勉強を教えてくれないかしら」
「え………ぼ、僕が、貴族であるローラ様に、ですか?」
 唐突なお願いに、僕はきょとんとした表情を浮かべてしまう。
 貴族といえば、自尊心の塊のような存在だ。下々の存在である平民に教えを乞うなど、あってはならないはずである。
 そんな心情が顔に出ていたのか、ローラ様は自嘲気味に笑った。
「私、貴族って言っても所詮は四女なのよ。家を継ぐこともないし、嫁ぐにしたって、私は――――まあ……………あー、ともかく!」
 ローラ様は誤魔化すように「こほんっ」と咳払いを挟む。
「私、学校を卒業したら、家を出て就職するつもりなの。成績は良いに越したことはないでしょ?」
「な、なるほど?」
 一限目にアリア先生から叱られていたように、ローラ様は貴族らしからぬ言動をすることもあって、クラスでは少し目立っている存在だ。不敬ながら、四女というのも少し納得である。
 家督を継げない貴族が就職の道を進むのも、そう珍しい話ではない。
 とはいえ―――、なぜ僕に、という疑問は残る。
「でも、家庭教師なんかでも………」
「いやよ、お金がかかるじゃない」
「そ、そうですか………」
 考え方が意外と庶民的だった。
 貴族といえば浪費家のイメージがあったのだけれど、色々な貴族がいるということだろう。
「ちなみに、失礼ですが、ローラ様の前回の順位はどの程度だったのですか?」
「全体で四七位ね」
「………十分ではないですか?」
 僕たち一年生は合計で二四六名もいるから、四七位であれば中の上といったところだ。それに、上位にいくほど家督を継ぐ生徒が多いから、就職するにあたってはライバルにはなりえない。四七位であれば、実質的には、上位十数名以内に相当するだろう。
 今の順位を維持すれば就職にはそう困らないだろうに。
「就職するなら、やっぱり好条件なところがいいじゃない」
「は、はぁ…………」
 意外と打算的な感覚の持ち主らしい。
「というわけだから、明日からよろしくねー」
「あ、ちょっ………」
 僕の返事を聞くことなく、ローラ様は教室を後にする。平民である僕には彼女のお願いを断る権利がないとはいえ、あまりにも一方的だった。
 こんなことでクロア王女殿下に相談するわけにもいかない。
 …………アリア先生からの課題に続いて、厄介な仕事を押し付けられてしまった。

◆◆◆

 その日の放課後。
 生徒たちが教室から出ていくのを見届けて、まずはアリア先生からの課題を済ませるべく、僕は図書室に向かった。
 だが、
「え? サロンですか?」
「ああ。君、確か今年入学したっていう平民だろ。今日は諦めてくれ」
 サロンとは、生徒達による勉強会という名目の、貴族の社交場とのことである。
 当然ながら、平民である僕は入室すら許されない。
「……久々にあそこに行こうかな」
 仕方なく、旧校舎の図書室に向かうことにした。
 旧校舎は本館から一〇分ほど歩いた場所にある。グラウンドの横道を抜けて、管理が疎かになった花園のさらに奥。蔓塗れの大きな建屋が見えてくる。
 ちなみに旧校舎といっても、正確には、数年前に使用人の住まいとして改築されている。ただ、使用人の教養のために図書室だけはそのまま残されたらしい。
 どうあれ、平民である僕でも、いつでも使える図書室はとてもありがたい。
「お? シロじゃないか。どうしたんだ?」
 旧校舎の入り口に入ってすぐ、しわがれた声に呼び止められた。
 くすんだ灰色の髪を後ろでお団子にしている中年男性、カロンジャールさんだった。
 彼は使用人寮の管理者で、主に共有スペースの清掃や、入退居者の管理をしている。僕が道に迷ってここに入り込んでしまった時に知り合って以降、顔見知りになっていた。
「すみません、図書室をお借りしたくて」
「あん? 図書室なら本館にもあるだろ?」
「ちょうどサロンが開かれていまして」
「……平民は入るなってか? ったく、しょーがねぇ連中だな」
「ちょ、そういうことは……」
 カロンジャールさんは不機嫌そうに「はんっ」と鼻を鳴らす。
「いいんだよ。どうせ、こんな小汚い場所に貴族は来ねえよ」
「でも……」
「あーもう、シロは真面目すぎるんだって。もっと気楽に生きろよ。俺みたいによ」
 自分の胸に親指を突き立てるカロンジャールさん。彼は元々王家に仕えていた執事だったのだが、溺愛するお孫さんが類稀な才能の持ち主のようで、その実力を見込まれて騎士団に徴兵されてしまったらしい。
 それ以降、上流階級を毛嫌いするようになり、執事を退職して今に至るようだ。
「………考えておきます」
「ま、お前の人生だ、好きにしな――――っと、図書室だったか。場所はわかるか?」
「一度来たことがあるので、多分大丈夫です」
「そういや、そうか。まあ、自由に使ってくれ。歌くらい歌っても、この時間、使用人は全員出払ってるから文句も言われねえぜ?」
「あ、あはは……ありがとうございます」
 僕はカロンジャールさんに一礼すると、入館証を受け取り、図書室へ向かう―――。
「あ、そうだ。シロよ」
「?」
「やっぱりお前、うちの孫と見合いしてみないか? 孫さえ気に入れば、お前なら―――」
「またご冗談を………。僕なんかは、きっと釣り合いませんよ」
 カロンジャールさんのいつもの冗談を軽く流して、僕は逃げるように図書室へと向かった。

◆◆◆

 旧校舎の図書室は四階に位置している。この階は居住用の部屋がないからか、少し埃っぽくなっている。窓も締め切られていて、じめじめとした空気が肌を撫でていった。
 ―――~~~ぁん!
 図書室の前にたどり着くと、中から声が聞こえてきた。なんとなく耳をすませば、ぱんっ、ぱんっと手を叩くような音も響いてくる。どうやら先客がいるらしい。
「………カロンジャールさんは、誰もいないって言ってた気がしたけど」
 まあ、いくら管理人とはいえ、全員の所在を把握しているわけでもないだろう。僕は深く考えず、引き戸を左にガラリと引いた。
「ぁあ! んっ………ぁん!」
「お嬢様、声が大きいですよ……!」
「誰も来ないわよ、こんなところっ………っ! それよりもっと―――え?」
「え?」
「…………………え?」
 あろうことか、高等クラスの制服を着た女の子と、執事服の若い男が性行為に及んでいた。
 女の子がお尻を突き出して、それを掴んだ男がへこへこと腰を振っていた。
 僕たちは互いの存在を認識して、ぽかりと口を開く。
 どう見ても、生徒と使用人が情を結んでいるようにしか見えない……………というか、女学生のほうは、見覚えがあった。
 後ろの席の、ローラ様だった。
「し……」
「はい?」
「失礼しましたぁ!」
 執事の男は、もう一つの出入り口から足早に逃げだした。片手で顔を隠し、もう片方の手でズボンを上げながらの逃走劇。
 突然の光景にうまく理解の及ばない中、なんとも間抜けな姿だと苦笑いを浮かべそうになった。
「ちょ、ちょっと!」
 彼を捕まえようと前に突き出されたローラ様の手が空をきる。一緒に逃げないのかと疑問に思ったけれど、どうやら脱げた下着が両足首に引っかかり、動けなかったらしい。
 執事服の男が帰ってこないことを悟ったのか、ローラ様は呆然としている僕を睨みつけてきた。彼女は手早く下着を上げて制服を着直し、ぐんぐんと僕に近づいてきた。
 そして、
「見たわね」
「あ、その……んぐっ!?」
 突然のことだった。
 ローラ様が、なんの躊躇もなく、口づけしてきたのである。
 …………え?
「んんっ!?」
 だんだんと理解が及び始めた僕は、引き剥がそうとして慌ててローラ様の華奢な肩を掴む。でも、彼女は僕の首に腕を回し、力強く引き寄せてくる。
 僕より一回り小さな女の子とはいえ、魔力持ちである貴族を相手に、平民が力で敵うはずもない。僕は彼女の唇を受け入れることしかできなかった。
「ん……ちゅるッ……」
「――――ッ!!!」
 ローラ様は僕の口をこじ開けて、その柔らかな舌を無理矢理にねじ込んでくる。舌で押し返そうとしても何の意味もなく、蛇のように蠢く彼女の舌に、口内は蹂躙されていった。
 僕の舌に彼女の舌がまとわりついて、唾液を絡めとるように嬲られる。そのお返しのように、彼女の舌を伝って甘い唾液が送り込まれてきた。
 人生で初めての、それも大人のキス。ぼうっとする意識の中、僕の思考は快感に埋め尽くされた。
 けれど、甘美な時間もすぐに限界がやってくる。やけに息苦しい―――そこでようやく、自分が呼吸をしていないことに気がついた。
「んむッッ!!」
 僕は息苦しさのあまり顔が赤くなるのを感じながら、震える腕をどうにか上げて、ローラ様の肩をぽんぽん叩いた。
「ん? んむぅ……んっ」
 幸いにも気が付いてくれたらしく、不服そうにしながらも、彼女は唇を離してくれた。
 唾液の糸が二人の間につぅと伸び、床に垂れる。
「ぷはぁっ……!」
 僕は水中から顔を上げた時のように、勢いよく肺に空気を取り込んでいく。
 酸素を求めて、口で呼吸をすること数回。その間も首に腕を絡められ、逃げることはできなかった。
 ふと、ベージュ色の瞳がこちらをじっと見つめていることに気がついて、僕は思わず息を呑んだ。
 彼女は唇に指を当てて「んー」と少し考え込むと。
「弱みを握って口封じ……の、つもりだったんだけど。私も中途半端に終わって欲求フマンだったし、あんたでいいや」
 そんな女の子が、僕の眼前で妖艶に目を細め、ピンク色の舌を覗かせている。ぷるりとした唇を舐めると、口角を上げて白く整った歯を見せた。
 燈色の太陽を背中に、逆光で影になった彼女の顔は、まるで小悪魔のように映る。僕は彼女の瞳から逃げるように、つい視線を逸らしてしまった。
「あんた、童貞でしょ?」
「えっ………え?」
「キスで息止めるとか、わかりやすすぎ」
 ローラ様は小さくけらけらと笑う。いつも教室で見せるような調子の彼女のはずなのに、まるで別人のように思えた。
 そんな彼女を見ていると、つい先ほどの光景が脳裏をよぎる。一瞬だけだったけれど、今まさに目の前にあるかのように鮮明に思い出せた。
 悩ましそうに歪む眉、嬉しそうに上がる口角。艶やかな嬌声、生々しい肉と肉が跳ね合う音―――。
 普段の彼女とのギャップに、僕の心臓がどきりと跳ねた。肺に充満した彼女のフェロモンが、そして胃に送り込まれた甘い唾液が、血を介して全身に染み渡っていくような気さえしていた。
「私と、シテみたい?」
 ローラ様は僕の耳元に顔を近づけて、そう囁いてくる。空気を含んだ甘く掠れた声。まるで耳から脳を侵されたかのような錯覚を覚えて、ゾクリと背筋が震えた。
「す、するって……な、なにをですか?」
「わかってるでしょ?」
「………」
 沈黙は肯定だと受け取られかねないとわかっていても、僕は何も返すことができなかった。なにせ、提案を断れば不敬罪と言われるかもしれない。
 かといって、受ければそれはそれで大変なことになることは明白で、僕にはしどろもどろに目を泳がせることしかできない。
「かわいい反応するじゃん」
「あ、そこは……」
 何も言えずにいると、ローラ様の手が僕の股間に乗せられて、すりすりと撫で始めた。
 少しずつ固くなってきていたペニスに刺激が加わり、加速度的に熱が集まっていく。
「ぅあ……」
 ローラ様は蠱惑的な笑みを浮かべながら、その細い指を僕の股間に這わせる。
 これ以上は不味い。
 理性を総動員して、僕は彼女の手を掴んだ。
「ま、待ってくださいっ………ローラ様は、子爵令嬢で……」
「ん? ああ、そんなの気にしないでいいのよ、私なんて―――………」
 ふと、ローラ様は少し悲しそうに眉尻を下げる。しかしすぐに取り繕うように、「ふんっ」と鼻を鳴らした。
「所詮は四女だからね。政略結婚の話もなかなか来ないから、自由にやらせてもらってるってわけ」
「だからって、こんな事っ………」
「………あー、もう。うるさいわね!」
 ローラ様は僕の手を振り払うと、突然、その場にしゃがみこんだ。
 僕の股間の前に、ローラ様の顔が置かれる。
「ロ、ローラ様!?」
「あんたは黙って、おっ勃ててればいいのよ」
 そしてあろうことか、ローラ様は僕のベルトを慣れた手つきで外し始めた。
 抵抗することすら許されない僕は、ただ嵐が過ぎ去るのを待つことしかできない。羞恥心で顔が熱くなるのを感じながら、ベルトがするりと外される瞬間から顔を背けた。
 ローラ様の指がズボンにかかり、下着ごと床に落とされた。
「―――きゃっ!」
 僕の勃起したペニスが何か――――彼女の顔に「ぺちんっ」とあたった。
 これ以上ないくらいの、侮辱だった。
「ご、ごめんなさい……ッ!」
 咄嗟に目を瞑って謝るものの、しかし数秒しても一切反応がなかった。魔法が飛んでくることも覚悟していたのだけれど………。
「………へ?」
 代わりに、彼女の素っ頓狂な声が聞こえてきた。
 恐る恐る目を開くと、そこには僕のペニスを前に、目を真ん丸にするローラ様の姿があった。
 そこに怒りの気配はなく、ただ驚いているように見える。
「……ローラ様?」
「ひぁっ!?」
 訝しげに声をかけると、ローラ様は肩をびくりと跳ねさせた。彼女は少し恥ずかし気に頬を紅く染めて顔を背けると、負け惜しみのように小さく溢す。
「な、なかなかいいの待ってるわね」
「うっ………」
 その言葉の意味をすぐに理解して、恥ずかしくなった僕は、半ば無意識にペニスを隠そうとする。その手を、ローラ様はがしりと掴んだ。
「ろ、ローラ様?」
「味見させて」
「味見って――――――ぅぁあ……っ!」
 突如、震えるような快感が、ペニスから背筋を駆け上がった。
 僕は反射的に体を震わせて、情けない嬌声をあげる。見下ろす先にあったのは、ローラ様の尖った舌が、亀頭の先っぽをちろちろと舐めている光景だった。
「んっ……」
 足元に跪いた貴族の女の子が、勃起した自分のペニスに舌を伸ばしている。ひどく背徳的な状況に、僕のペニスがぴくんと跳ねた。
 それを逃がさないとばかりにローラ様の舌が追いかけてくると、
「あ、ちょ、そこは……っ」
「ん……ちゅっ……」
 ねっとりとした唾液に濡れた舌が、竿部分を塗すように這う。ハーモニカを吹くように唇を滑らせ、涎を均す。それを掬うように、ざらりとした舌の腹で舐め上げられる。
 ローラ様の口淫に身悶えていると、唾液濡れのほっそりとした手指が、そっと陰嚢に添えられる。そのままコロコロと睾丸が転がされ、皺を伸ばすように揉まれていった。彼女のフェロモンが睾丸に直接塗り込まれるような気さえして、グングンと精子が作られていくような錯覚を覚える。
「んぐ……れろ……」
「う、ぐ……ッ」
 やがて、ローラ様はほっそりとした手指で血管の浮き出たペニスを扱きながら、陰嚢を口に含んだ。あろうことか、そのまま飴玉を転がすように片方の玉を咥内で転がし始めたのだ。
 上から見ると彼女の顔に僕のペニスが乗っているようにも見えてしまい、ぞくぞくと背筋が震えた。
「はぁ、はぁ……うぐっ……!」
 急激に高まる射精欲に、僕は全身に力を入れて眉を顰める。上目遣いに僕を見つめるローラ様の行為は、止むどころかどんどんと加速していく。陰嚢に強く吸い付き、くちゅくちゅと卑猥な音を立てながら僕の竿を右手で扱き続けた。
「……ッ!!」
 犯罪的な快楽の波が背筋を駆け上り、脳へと届く。それでもどうにか我慢を続ける僕のペニスは、ビクビクと痙攣していた。
「そろそろイきそう?」
 限界を察したらしいローラ様は、陰嚢からの顔を離すと、ペニスの前で口を開く。歯を食いしばって耐える僕に、「んべー」と舌の腹を見せつけてきた。
「らしていーよ……♡」
 スパートをかけるように竿の扱きが激しくなる。陰嚢の根本を指で押し込みながら、手のひらで玉が転がされた。
 ローラ様が僕を気持ちよくさせるためだけに、その綺麗な手を汚している。
 射精を受けるために、間抜けな顔をペニスの前に晒している。
 貴族である彼女が―――。
「くっ、やば―――っ!」
 びゅっ………びゅぅうう!!!
 ―――我慢の限界に達し、白濁した精液が鈴口から噴水のように吐き出された。
 ローラ様の綺麗な顔が、艶のある赤髪が、みるみるうちに汚濁に塗れる。

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