本販売日:2026/07/23
電子版配信日:2026/08/07
本定価:957円(税込)
電子版定価:957円(税込)
ISBN:978-4-8296-4886-5
陸人は今でも信じられなかった。目の前で瞳を潤ませ、
献身的に肉棒に奉仕する彼女が、自分の恩師の未亡人だなんて。
遺影の前で四つん這いにされ、喪服を捲られ美尻も露わに、
年下男の深い突き込みと一途な情欲にもろくも翻弄される31歳。
塞ぎこんでいた心も衝き動かされ、女体は幾度も絶頂へ。
恭香の姉・望美も巻き込んだ、素敵な恩返しの行方は……
プロローグ 心残り
第一章 「私、あなたに救ってもらった未亡人です」
淫らすぎる訪問者
第二章 「もっともっと感じてくださいね」
甘やかしてあげます
第三章 「夜這いを仕掛けていいですか?」
バツイチ姉の目を盗んで
第四章 「もう一人きりにしないで」
喪服と遺影と未亡人と
エピローグ 残照
本編の一部を立読み
プロローグ 心残り
(あの人が私の前から去って、もう一年……)
平坂恭香は、遺影の中で微笑む亡夫を見て、瞳に涙を滲ませる。
(お別れの時間はたっぷりとありました。納得もしたつもりです。でも……ダメ。一人で生きていくのがこんなにつらいものだなんて、知りませんでした。知りたくなかったです、あなた)
法要の最中は気を張っていた反動か、参列者のほとんどが帰った途端、恭香の心は悲しみと寂しさで覆い尽くされてしまう。恭香は仏壇の前で、二度と会えない夫の顔をただただ、見つめ続ける。
「恭香、まだここにいたの」
「……お姉ちゃん」
そんな恭香に声をかけたのは、今や世界でただ一人の身内となった、姉の望美だった。
「つらいのはわかるし、無理に元気を出せなんて言うつもりもない。泣きたければ泣けばいいの。けどね、自分もちゃんと労りなさい。あなたになにかあって一番悲しむのは、わたしとあの人なんだから」
「……ズルいです。二人の名前出されたら、私、なんにも言い返せません」
望美に向かって、恭香は笑顔を浮かべる。だが、久しく笑ってなかった表情筋がうまく動いてくれた自信はない。
「……っ」
恐らくは笑みと呼べるものになってなかったのだろう、妹のその顔を見て、望美が息を呑む。が、この妹想いの姉はすぐに笑顔を浮かべる。まるで、こうやって笑うのだと教えるかのように。
「なに、今頃わかったの? 可愛い妹のためなら、お姉ちゃんはいくらでもズルくなれる生き物なのよ?」
そう言って恭香を抱き締め、ぽんぽん、と背中を優しく叩いてくれた。
(ああ、そうでした。あの人を亡くしたときも、お姉ちゃんはこうして私を抱っこしてくれましたっけ)
子供の頃からずっと変わらない姉の温かさと匂いに、徐々に落ち着きが戻ってくる。
「……ありがとうございます、お姉ちゃん。もう大丈夫です」
「遠慮しなくていいのよ? わたし、あなたなら何時間でも、ううん、一日中だって、ぎゅうってしてあげられる」
「お姉ちゃんならホントにやりそうで、ちょっと怖いかも。ふふっ」
ここで初めて、恭香は自分が笑えたと気づく。顔の筋肉に続いて、強張っていた心も、わずかではあるが緩んだのがわかる。
「うん、少しは落ち着いたみたいね。じゃあ、可愛い笑顔を見せてくれたお礼に、一つ、面白い話をしてあげる」
「面白い話?」
「ええ。最近聞いたんだけどね、あなたの旦那のやってた研究を引き継いだお弟子さんがいるそうよ」
「えっ!? で、でも、あの人の研究室はもうないはずじゃ……」
「それがね、なんと大学を辞めて、起業したんだって。それも、たった一人で。……興味、あるでしょ?」
「は、はいっ」
それは夫を喪って以降、恭香が初めて他人に興味を抱いた瞬間だった。
(先生の生き甲斐、ううん、人生そのものだった研究を引き継いでくれたお弟子さん……どんな人なのかしら。気になりますっ)
これから自分を待っているのは、身に纏っている喪服のごとき黒一色の人生しかない。そう覚悟していた未亡人に新たな幸せをもたらす出会いは、この一ヶ月後のことだった。