09/11 電子版発売

こいつ弟の彼女だから。2

著者: まきします

電子版配信日:2026/09/11

電子版定価:880円(税込)

弟の彼女・天童寺茜との禁断の関係は、もうやめられない。
迎えた夏、弟と茜ちゃんのカップルに、さらに彼女の妹で
生意気なボクっ娘・千夏も交え、四人でプールへ!
茜ちゃんの水着姿を拝めて、無邪気に弟は喜んでいるが、
俺は知ってしまっている──ひどく甘美な、彼女の身体の味を。
だが、千夏ちゃんがいたずらな笑顔で急接近してきて……
バレたら終わりのダブルデート。美人姉妹とのインモラルな夏休み編!

目次

第一話 「私のビキニ、見たいですか?」

第二話 「そんなに読みたいの?」

第三話 「二人っきりですね」

第四話 「今夜で最後にしよう」

第五話 「これからボクとデートしない?」

第六話 「正面から堂々とちゃんと言え」

第七話 「あの、どうしてここに?」

番外編 「夕立と雨宿り」

本編の一部を立読み

第一話「私のビキニ、見たいですか?」



 カッと降り注いでくるのは、暴力的なまでに強烈な太陽光だ。
 目の覚めるような青空には大きな入道雲が浮かんでおり、その光景は本格的な夏の到来を感じさせるものがある。
 営業マンとして外回りしてばかりの俺としては、夏という極めて過ごしづらい季節を憎んでさえいるのだが、今日ばかりはそんな意見を正反対に引っくり返すべきだろう。
 なにしろ見上げるほど大きなウォータースライダーからは水しぶきが舞い、何種類ものプールでは水着姿の若者たちが歓声を響かせている。そう、都内にあるレジャー施設に俺たちはやってきたのだ。
 待ちに待った夏休みをついに迎えた学生たちにとって、それはまぶしいほどの光景として目に映ることだろう。しかし、一緒にきた連中とは違い、俺はしがない社会人なんだよね。
 あーあ、学生っていいよなぁ。一カ月も休みがあるなんて信じられねえよ。俺なんて死ぬほど働いているっていうのにさ、たった数日の休みしかもらえないんだぞ。ここまで不公平だとさすがに悲しくなってくるよ。はあーっ、と大きな溜め息を吐くと、すぐ隣から怪訝そうな視線が向けられた。
「兄貴、なんでこんな場所で不機嫌そうにしてるの?」
 そう問いかけてきたのは弟の克樹《かつき》だ。サッカー部のエースストライカーらしく肌はだいぶ日焼けしており、また髪も派手な金色である。とはいえ、お前たち学生が死ぬほど羨ましいなんて言いたくないし「別に」と口にしつつ話題を変えることにした。
 さっきからずっと気になっているのはさ、こいつの水着なんだよね。バナナみたいな色のブーメランパンツでさ、俺だったら死んでも穿きたくないし、売られていること自体が信じられないくらいひどいデザインなんだ。
「克樹、その水着って……」
「おっ、気づいた? 絶対にウケるだろうと思って、ネタで買ってみた!」
 おいおい、こいつ白い歯をきらりと輝かせやがったぞ。
 まったく、こいつはいつもノリと勢いだけで行動しやがって。どこかの小学生みたいだし、自信たっぷりのようだけど、少なくとも俺にはぜんぜんウケなかったからな。
 正直なところ「ばっかじゃねえの」と言ってやりたかったが、どうせ恥をかくのは克樹だ。痛い目に遭うまで放っておこうと決めた。
 さて、あとは二人が来るのを待つだけかと考えていたときに、なぜか克樹は目をぎらりと輝かせた。
「兄貴、もうすぐ茜《あかね》ちゃんたちが更衣室から出てくるよ!」
 おいおい、どうして目を血走らせているんだ。おまけに息も荒いしで、どうひいき目に見たって、茜ちゃんの彼氏というよりは不審者っていう感じだ。
「克樹、頼むから落ちついてくれ。俺のほうが恥ずかしくなる」
「ハッ、兄貴はまるでわかってないな。あの茜ちゃんが水着姿でもうすぐやってくるんだぞ?」
 はあ、なにを言っているんだ。そんなの当たり前だろうと言いかけたまさにそのとき、不意に俺の脳内で彼女の姿が浮かびあがる。
 茜ちゃんはお嬢様のような品性さえも感じさせる美しい顔立ち、そして艶のある長い黒髪の持ち主だ。外を出歩いたことがないのではと思うほど肌は白く、透き通りそうなほどである。だというのに……おっぱいの迫力がものすごいのだ。ただ頭に思い浮かべるだけでも、ごくっと喉を鳴らしてしまうほどに。
 女性たちは「男の人って胸ばかり見て嫌だわ」なんて口にするけどさ、それは「程度による」としか言えない。茜ちゃんの胸は存在感があまりにも強くって、見ないように視線を逸らすだけでも気力を振り絞らなければならないのだ。
 俺はハッとする。まさか、本当なのだろうか。あの茜ちゃんがもうすぐ水着姿となり、ここに現れるとでも言うのだろうか?
 いやいや、落ちつけ、俺。ここはプールなのだから水着なんてごく当たり前のことじゃないか。ただ単に茜ちゃんがものすごくエッチで、目が離せないくらい可愛いというだけで……えっ、もしかして、お尻やおっぱいをちらちらと見ても、ここでは犯罪として訴えられないのでは? 公然と眺められるプールって、もしかして最高なのでは?
 などと浮かれたことを考えていると、なぜか急に弟はしゃがみこむ。さては熱中症かと心配しかけたというのに、まったくの杞憂《きゆう》だとすぐにわかった。克樹は泣きそうな顔でこう言ってきたのだ。
「兄貴、どうしよう。もうすぐ水着を見れると思うと、俺……いまは立てない。いや、立ってはいるんだけど」
「うっわ、弟の下ネタとか最悪だな! ブーメランパンツでそんなのを見せてみろ。今日は妹さんまで来ているんだから、マジで茜ちゃんから嫌われるぞ!」
「ひええっ、助けてっ! どうにか俺を萎《な》えさせて!」
 こらこら、しがみついてくるな。隠しようもないそんな水着を選んだお前の自業自得なんだから巻きこまないでくれ。そう突き放したくなるけどさ、寝ても覚めても茜ちゃんのことを考えてしまっている俺のほうがずっと問題だ。
 笑っていても、泣いていても茜ちゃんは愛らしい。魅力的で、ぜんぜん目が離せなくって、困っていることがあればなんでもしてあげたくなるし、もし許されるならずっと一緒にいたい。
 そこまでならただの片思いで済んだのに、彼女と俺は身体的な関係がある。一度ではなく、幾度もだ。
 弟の彼女なのだから身を引くべきなのもわかっている。それなのに距離を置くことができなくって、今日はプールまでついてきてしまった。
 罪悪感で胸が苦しいけれど、今日はどうにか明るく接し続けなければいけない。俺にとって茜ちゃんは大事な存在だけど、それと同じくらい克樹もかけがえのない相手であり、唯一の家族なんだ。そう考えていたときに、俺たちの背後から心配そうな女性の声が響く。
「ちょっと克樹君、大丈夫?」
 つ、ついにきた。茜ちゃんの水着姿だ、とでも考えているのか、克樹は子供みたいに目をきらきらと輝かせながら振り返る。
 すると、茜ちゃんは魅惑的なビキニ姿……などではなく、長袖のラッシュガードと短パンの組みあわせなどという極めてガードの固そうな水着姿だったものだから、俺たち兄弟は心底がっかりした。
 いや、うん、いいんだけどさ。いくら洋服みたいな水着でも茜ちゃんのおっぱいは隠しきれないほど大きいし、エッチなんだけど、本当はもっともっとエッチな姿でいて欲しかったよ!
「兄貴、戻った。もう立てる」
「お、良かったな。じゃあ売店に行って、飲みものでも買おうか」
 すっくと立ち上がった弟に優しく声をかけたのだが、しかしなぜか茜ちゃんの瞳は、すうっと冷ややかなものに変わる。女性は異性からの視線に敏感だというが、まさか俺たちががっかりしたことさえも見抜かれたのだろうか。
「えー、最近ではこれくらいが普通なのに。男の人って、どうして肌の露出が好きなのかしら。少なくとも私は、その下品なブーメランパンツだけは絶対に理解できないわ」
 べぇっと舌を見せて、克樹に特大のトラウマを植えつけるや、茜ちゃんは怒りも露わにすたすたと歩いていってしまう。慌てて後を追いたかったが、弟が再びうずくまってしまうと、兄としてはそうもいかないよなぁ。
「そんなに変だったかなぁ、このパンツ。絶対にウケると思ったのに」
 そうぼそりとつぶやかれたが……うーん、逆に聞きたいけどさ、どうしてウケるなんて思ったの? テレビに出てくる芸人ならわからないでもないけど、お前は茜ちゃんの彼氏なんだぞ。嫌がられるに決まっているだろうが。
 などと弟に伝えているせいで、更衣室から出てくるもう一人の女性、千夏《ちなつ》ちゃんには気づけなかった。
 茜ちゃんの妹というだけあってとても愛らしい顔立ちである少女は、俺を目にするなり妖しく笑い、そろりそろりと背後から近づいてくる。がばっと思いきり抱きついてくるのも活発な彼女らしいのだが「わーい、掴まえたーっ!」と耳元で言われた瞬間、俺は心底びっくりした。
 えっ、どむんって背中で弾んだんだけど?
 まさかこれっておっぱいですか、などと聞くことはできないので、くるっと俺は振り返る。すると黒髪を左右に結んだ千夏ちゃんが視界いっぱいに笑いかけており、その日焼けした肌と相まって、本当に夏が似あう子だなって思った。
「ん? 徹《とおる》、どしたの? ボクにびっくりしちゃった?」
「うん、意外と大きいなって」
 ぱちんっと千夏ちゃんは瞳を丸くする。
 おっとしまった。つい正直に言ってしまった。そんな後悔をしていたときに、少女の頬は真っ赤に染まる。
 やはり千夏ちゃんは活発だ。俺の背中から飛び降りて、すたっと着地するのも、ややガニ股に開きながら片脚を持ち上げるのも一瞬だった。
「嘘だからっ! ただの冗談っ! そこまで大きくは……」
「っ! 徹の馬鹿ああーっ!」
 つま先が宙でくるんと角度を変えて飛来してくる。まさか、その技はかつて空手界において猛威を振るった幻の……と考えたあたりで、ぱかぁんっとブラジリアンキックが炸裂する。プール場までわざわざ車で送り、彼らのプール代をひとまず立て替えて、かつ弟のフォローまでしていた心優しいこの俺の頭部に、である。

 まだ痛む頭を押さえつつ、俺はプールサイドを歩いてゆく。
 うーん、足の裏がくすぐったくなるザラザラした感じは、なんとも言えない懐かしさがあるな。学生のころに戻ったような気分だし、こうして仕事を忘れられるだけでも来た甲斐はあったかもしれない。
 そう思いつつ隣を眺めると、ふんっと鼻息を漏らしながら千夏ちゃんは目を逸らしてしまう。困ったなぁ、まだ怒っているのか。
「ごめんね、千夏ちゃん。さっきは変なこと言っちゃって」
「ばーか、知らない、もう」
 そう不機嫌そうに言い、つんつーんと顔を背けられる。だけど少しだけ待つと、ちらっと見つめてくるところが可愛くて仕方ない。もしもこういう子が俺の妹だったら、死ぬほど可愛がっちゃうだろうな。
 彼女の選んだ水着は、肩紐で吊るすピンク色のスポブラみたいなものとパンツの組みあわせだ。ちなみに小さなおへそをちらりと覗かせている胴体あたりは真っ白だ。スクール水着みたいな日焼け跡だし、学校のプールで泳ぎまくっているのかな。
 まあ、せっかく遠くまで遊びにきたのだし、いつまでもぶすっとさせておくわけにはいかないか。そう思い、ひとまず笑いかけることにするのだが、そう簡単に機嫌を直せる感じはあまりしない。
「千夏ちゃんの水着、可愛いね。すごく夏っぽい」
「そっ、そぉ? 適当に選んだやつなんだけどなーっ」
 あれぇ、得意げな顔をくるんと向けてきたぞ。おまけにするんと指先を絡めてくるし、気のせいかもっとたくさん褒めて欲しそうだ。さっきまでの不機嫌さはどこに消えてしまったのだろうか。
 しかし、そうやって見上げられるとだね、水着では覆いきれない胸の谷間をしっかりと覗けてしまうことに気づき、俺はごくっと喉を鳴らした。
 さ、最近の子って発育がいいなぁーっ。というかあの茜ちゃんの妹なんだから、当然と言えば当然なのかもしれない。なんて思っていたら、さっと胸元を隠されてしまう。
「わ、やらしー。徹ってばなに見てんの?」
「なにってそりゃあ、おっぱ……水着?」
 まったくもう。どうして俺はいつも正直に言っちゃうんだよ。すぱーんとお尻を蹴られてしまうのは当然だし、ついさっきブラジリアンキックを食らったことも忘れちゃうなんてさ。
 いや、それよりもずっとキツいことが待っていた。それは前を歩いていた茜ちゃんが振り返り、極寒のように冷たい瞳が向けられたことだ。
 ゴオオと吹雪が吹きすさび、身体の芯まで一瞬で凍てつくように感じたのは俺の気のせいだろうか。妹さんに負けないくらい……いや、それ以上に頬をむくれさせると、ぷいっと顔を逸らされた。
「ふんっ! 克樹君、行きましょう!」
 そう言って俺に見せつけるように腕を組み、むぎゅりと胸を押し当てるのだが……弟はすぐさま地面にうずくまる。だってしょうがないよ。あれはブーメランパンツの仕様みたいなものなんだし。
 うーん、どうしよう。茜ちゃんが機嫌を損ねたのは、たぶん俺のせいだよな。
 本当は彼女の水着も褒めたかったけど、克樹の前ではさすがに難しいよ。もしかしたら俺が千夏ちゃんと話してばかりのせいかも……なんて考えかけたけど、それはさすがにないか。だって、喧嘩していた克樹と仲直りして、交際を再開すると決めたのは茜ちゃん自身なんだから。
 そう、本当なら俺は彼女たちの前から消えなきゃいけない。もう邪魔をしないと俺は決めたのだ。それなのに二人のデート先までやって来て……って、さすがにそれは俺のせいじゃねえ。運転手がどうしても欲しいと言って、あいつらが譲らなかったんだ。
 まったくもう。茜ちゃんが少し怒っただけなのに、どうも最近の俺はグチグチと考え続けちゃうな。気持ちの浮き沈みが激しくって、なんだか辛いよ。
 俺は営業マンだし、考えを顔に出さないのはすごく得意だ。でも、そんな俺をじっと見つめてくる千夏ちゃんには、なにかが見えたのかもしれない。彼女は不機嫌そうな鼻息をふんと吐くと、俺の手を強く握ってきた。
「行こ、徹。泳ぎかたを教えてあげる」
「えっ、俺だって体育でちゃんと習ってるよ?」
 いいからいいからと言われながら、俺は青色の綺麗なプールに連れられてゆく。
 まったく、元気な千夏ちゃんと一緒だと、あれこれ悩んでいる暇もないな。とはいえ、空から太陽光が降り注いでいるのだし、ここは大人も子供も楽しめるレジャー施設だ。残念ながら彼女たちのような長い夏休みなんて俺にはないけれど、そのぶんしっかり楽しまなきゃいけないな。
 そう思い、にやっと笑うと、千夏ちゃんと一緒に盛大な水しぶきを上げた。
 うーん、やっぱり夏っていいね!

 じゃんけんっ、ぽんっ、ぽんっ、ぽぽんっ!
 そんな怒涛のジャンケン大会により、ウォータースライダーの二人乗りボートの組みあわせが決まる。俺の相手はちんちくりんの千夏ちゃん、そして向こうはカップル同士という、まったく面白みのないペアとなった。まあ、克樹と組まされるよりは断然いいけどさ。
 しっかし、ウォータースライダーって意外と高さがあるなぁ。下から見たときは余裕そうだったのに、階段を上るうちだんだん気になってきた。
 別に高所恐怖症っていうほどじゃないけどさ、裸足だし、階段が濡れているし、ちらっと下を見てみると軽くすくんじゃうんだよね。
「わっ!」
 どんっと背中から押されてしまい、俺の心臓は跳ね上がる。恐る恐る振り返ってみると心底楽しそうな千夏ちゃんの表情と「うきゅきゅっ」という笑い声が待っていて……もう本当にやめてくださいません? 金玉がきゅっと縮んじゃったよ?
「千夏ちゃん、そういうのはやめよう!」
「えーっ、なにが? そういうのって、どういうの?」
 またこの子ったらすっとぼけちゃって。どういうことか身体に教えてあげようかなと思いつつ軽く抱きつくと、それがくすぐったかったらしい。弾けるような笑い声を千夏ちゃんは響かせた。
 ふっふっふ、本気になった大人の恐ろしさを教えてやろうか。なんてふざけていたときに、茜ちゃんはまた冷ややかな視線を向けていたらしい。遊んでいたせいで俺は気づけなかったが、むっすうと頬を膨らませており、さすがの克樹も気になったようだ。
「ご、ごめんな、茜ちゃん。うちの兄貴って、こういう娯楽に慣れてないから、つい大はしゃぎしちゃうみたいでさ」
 ははと乾いた笑いを響かせるのだが、彼女はその言葉にまったく反応せず、あからさまに苛立ちながら俺たちをじっと見つめ続けている。そんな様子に、克樹は戸惑いの表情を浮かべた。
 気まずい空気が漂っていることにさえ、千夏ちゃんと笑いあっていたせいで俺は気づけない。階段を一歩ずつ上ってゆき、そして頂上に辿り着くときに、なにか言いたそうな茜ちゃんの視線にようやく気づく。
「ん、どうしたの?」
「……別に、なにもありません」
「ああ、ごめんね。千夏ちゃんが騒がしくって」
「はぁーっ? うるさいのは徹のほうじゃん! さっきは高さでビビってたくせに」
「ぜんぜんビビってませんがなにか?」
 なんてまたも言いあっていたときに、ふいっと茜ちゃんは顔を逸らしてしまう。
 あれ、てっきり一緒に笑ってくれると思ったのに。瞳の冷たさも相変わらずなまま克樹とボートに乗ってゆく様子に、思わず千夏ちゃんと見つめあってしまう。気のせいか、少女はなにか勘づいていそうな顔つきだった。
「茜ちゃんが不機嫌そうだったけど……やっぱり、あれのせいかな?」
「っ! ニブチンの徹が気づけた!?」
「まあな、女性がイライラするということは、つまり『あの日』ってことだよな」
「お兄さんっ、ぜんっぜん違いますからっ!!」
 おわっ、びっくりした。ものすごい形相の茜ちゃんから怒鳴られた。
 とはいえ二人乗りのボートは颯爽と滑りだしてしまい、怒りの表情は瞬時にして悲鳴顔に変わってしまう。そして、きゃああああっという長い悲鳴をウォータースライダーに響かせた。
 うーん、怒ったり悲鳴を上げたりと、今日の茜ちゃんは大忙しだ。とはいえ「きゃーい」と歓声を上げながらボートに乗りこんでゆく千夏ちゃんも騒々しい。
「ボクが前ね! 徹は後ろ!」
 そんな明るい声をかけられて、ふっと笑いつつ俺は近づく。
 ここのボートは、どうやら浮き輪をふたつ繋げたような形らしい。前後に乗りこんで、そのまま滑り降りるという感じだ。高さがだいぶあるし、油断したらさっきの茜ちゃんみたいに悲鳴を上げかねないぞ。
 係員さんの誘導に従いながら乗りこみ、後ろから千夏ちゃんをそっと支える。振り返り、にまにまと笑いかけてくる少女と手を握りあうと、俺たちの乗るボートは水の流れる台を滑りだした。
 ほんの少し進むと角度が急になり、またも金玉がきゅっと縮んでしまうほどの光景に変わってしまうのだが、俺は決してビビりなどではない。
「お、お、けっこう速いぞ。大丈夫か?」
「えーっ、こんなので怖いんだ。うりうり、もっと怖がれーっ!」
 こらこら千夏ちゃん、こんな場所で暴れたら駄目だって。係員さんから怒られちゃうでしょう。などと言っても少女はぜんぜん聞いてくれない。
 ボートはだんだん不安定になってきて、その勢いのまま急カーブの縁にぶつかると、どうんっという衝撃がやってきて……気づいたら俺たちは宙に浮いていた。
 ひっ、と千夏ちゃんは息を呑む。プール場を見渡せる景色となり、一瞬だけとはいえ浮遊感に襲われたせいだ。
「千夏ちゃん!」
 派手に上がる水しぶきのなか、少女の身体をしっかと抱きしめる。すぐに彼女からもしがみつかれたのだが、ウォータースライダーはアトラクションの目玉ともいえる最後の急坂に突入してゆく。
 恐怖を覚えたときにこれだ。いつもの千夏ちゃんなら歓声を上げていただろうに、今回ばかりはこの娯楽施設に絶叫を響かせた。
「んやああああーっ!!」
 大人から子供まで楽しめるこのアトラクションは安全で、もちろん怪我なんてしない。最後にはプールが待っており、ざばあっとたくさんの水しぶきが舞うのだ。
 振り返ってきたときの表情はやはり泣きだしそうで、思いきり抱きついてくるのをそのまま受け止めると、彼女の激しい心音まで伝わってきた。
「千夏ちゃん、暴れたら駄目!」
「ご、ごめんなさぁいっ!」
 ひっひっと嗚咽《おえつ》を漏らしながらそう言う様子に、なんだかちょっとだけ安心できたかな。まだまだ子供だし、俺たち大人がしっかり守ってあげなきゃいけないね。
「千夏っ!」
 そんなときに茜ちゃんがざぶざぶと水をかきわけながらやってくる。
 さっきの絶叫が聞こえていたのか表情は険しく、それに気づいた千夏ちゃんは「お姉ちゃんっ!」と言いながら抱きつく。
 さっきまで頑張っていたけど、お姉さんが来たらもう駄目か。ぴゃっと泣きだしてしまう様子に、やっぱり二人は姉妹なんだなと当たり前のことを俺は思った。たぶん千夏ちゃんは昔っから甘えん坊だったんだろうね。

 私は昔っから優等生だったし、いいお姉さんだったし、親からも先生からも怒られたことはほとんどない。
 同学年の子たちと違って、感情や衝動に流されないようにするのは得意だったはずなのに、今日の私はというと自分でもはっきりわかるほど苛立っていた。彼にキツく当たることもあったし、こんなのぜんぜん優等生なんかじゃないってこともわかっていた。
 まあ、ぜんぶお兄さんが悪いんですけどね。
 彼が私のことを大好きなのは間違いない。だというのにそうとは絶対に言わず、せっかくプールまで遊びにきたっていうのに私の視界にさえ入ろうとしないのだ。しかも妹と遊んでばっかり!
 なんですか、あれは? 見せつけているとか? 私なんて眼中にありませんけどなにか? みたいなノリ? そんなのイライラするに決まっているじゃないですか!
 せっかくのデートだっていうのに、ぜんぜん面白くない。なので、むっすりと不機嫌そうな顔つきで、ぽちっと私はスマホを押す。それは「さっさときてください」という彼へのメッセージであり、やや暗い通路で私は待つことにした。
 のこのこやってきたら、たくさん文句を言ってやろう。
 すみませんでしたと彼に謝らせるまで、ぐちぐちと小言を聞かせてやろう。
 そのように私は計画を着々と組んでゆくのだが、困ったことに問題がひとつもないわけではない。というのも私はそんなに口喧嘩をしたことがなく、どうしたら相手にダメージを与えられるのかきちんとわかっていないのだ。
 いや、お兄さんのほうこそわかっていない。女性の扱いというものがぜんぜん駄目で、普通ならこういうデートの日は、まず爽やかに挨拶するのが当たり前なのだ。
 そういう風に、うんうんと悩んでいたせいだろう。ふと気づいたらすぐ目の前に彼がいて「ごめんね、待った?」と笑いかけられてしまい、不覚にも天童寺《てんどうじ》家の長女であり、優等生であり、面倒見のいいお姉さんであるはずの私の胸はドキッと高鳴った。
 そうそう、それですよ。まず最初にそう言ってくれたら私の気が済んでいたのです。まったくもうとむくれていたら、そんな彼の笑顔は少しだけ引きつった。
 さて、楽しみにしていた反撃のときである。とはいえ、こんなところで騒いだら他の人の迷惑になってしまうので、もっと近づくようにと指先で彼を招く。それから異性ではなく、妹を相手にするときの口調で彼を責めようと決めた。
「お兄さん、私になにか言うことありませんか?」
 うん、さすがは私だ。小言として完璧な入りである。負い目がある相手には、こうやって向こうに言わせてやるのが一番いい。弱みがぼろぼろと出てくれば、今度はそこを突いてやれば良いのだ。
 やはりお兄さんは戸惑い、うつむき、そしてすぐ近くから囁きかけてきた。
「あー、なんでも言っていいの?」
「どうぞ、聞いてあげます」
 つんとそっけない態度でそう答えてやる。
 ふっふっふ、こういう冷たい態度、意外と効くでしょう。千夏なんてすぐ涙目になっちゃうし「お姉ちゃんっ」と泣きついてきてすごく可愛いんだ。
 さてさて、お兄さんはどんな反応をしてくるかな。そう楽しみにしていると、彼は真っすぐに私を見つめてきた。
「茜ちゃんの水着、すごくかっこいいね。さっきはちゃんと言えなくってごめんね」
 そっちじゃない! 言って欲しかったのは、私を無視していたこと!
 えっ、でも「かっこいい」ってなに? どうして「可愛い」って言わないわけ?
 などとめちゃくちゃ不満に思いながら自分の身体を見下ろしてみると、長袖のラッシュガードという水着であり……うーん、これは確かに可愛さとは無縁だ。もうちょっと肌を見せたほうが良かったかしら。でもそうすると日焼けが気になっちゃうしなぁ。
「じゃなくって、私を無視していたことです!」
「え、無視なんてしていないけど……ああ、でも、ちゃんとそうしなきゃだな。ごめんね、茜ちゃん。今度こそ俺は……」
 そうひどく言いづらそうにする彼に、私は思わず息を呑む。
 駄目だ。この先を彼に言わせたら駄目だ。たぶん「君の前から消える」とでも言うつもりだったろうけど、絶対にそんなこと言わせないし、させないし、お兄さんを手離す気なんて私にはぜんぜんありませんから!
 そう思ったときにはもう、彼を壁際に押しつけて、唇で塞いでしまっていた。
「っ!」
 ひいっ、なにしているの私は!?
 人のいる場所で無理やりにキスするとか、これで本当に優等生なつもりなの!?
 そう、今日の私はどこかおかしいのだ。朝からイライラしっぱなしだし、やっと話せたと思ったらお兄さんはひどいことを言いかけるしで、だからこうして口づけたまま離れられないのだろう。それどころかさらに近づき、もう少しだけ壁に押しつけてみると、やはり私の下腹部には彼の硬いモノが触れてきた。
 私はふと思いだす。身動きさえできないほど彼の大きな手にしがみつかれて、どくっどくっと体内に精液を浴びせられた夜のことをだ。肌を通じて彼の思いがたくさん伝わってくるあの瞬間には、言いようがないほどの幸福感があった。大げさかもしれないが、生まれてきて良かったとさえ私は思ったのだ。
 ああ、セックスしたい。いますぐに。
 そして、お兄さんがもう馬鹿げたことを言わないようにしてやりたい。
 私にはかなりの魅力があるのだと信じて、無言で彼の手を引く。連れてゆく先はすぐそこの多目的トイレであり、大して周囲の目を気にすることなく狭い空間に入る。そして、がちゃりという施錠の音をそこに響かせた。
「茜ちゃ……」
「時間がありませんので」
 ふーっ、と熱い息を吐きながらそう口にする。
 私は優等生で、口喧嘩に不慣れで、男の人と会話することだってあまりない。だけどこちらのほうならわかる。チャックをジジと引き下ろすと、彼の目が私の乳房に向けられてくるのも、ぼそっと「残りはお兄さんが開けてください」と囁くだけで彼の興奮をさらに煽れるということもちゃんとわかっている。
「いや、俺はもう邪魔をしないって……」
「こんなに勃起させて、説得力がまるでありませんよね?」
 かりかりと指先で硬いモノを引っかきながら、互いの息が届くくらい近くから囁きかける。キスしたいと思ったらいつでもどうぞと瞳で伝えつつ「仕方ないから私が射精させてあげます」と囁きかけてまた彼の欲情を誘う。
 お兄さんの水着に指を潜りこませるときも、紐を引っ張り、ぷつっと解くときも、そこを緩めてあげるときも彼は抵抗らしい抵抗をしない。
 どうにか抗おうと頑張っているみたいだけど、あんっと私が唇を開き、そこから舌を覗かせると、思わずという風に彼もまた口をわずかに開かせる。互いの唇は、もう指一本ぶんの隙間しかない。
 はっはっはっと小刻みな呼吸をお互いに吐きながら、私はじっと待つ。
 舐めたらすごく気持ちいいですよと瞳で訴えかけると、抗いきれずにお兄さんは近づいてくる。そのときを見計らい、舌先でちょんと突く。ちょんちょんとまた彼の舌に触れて、そこを少しだけ舐めてあげると、彼の息づかいはさらに増す。
 大きな手がこちらの肩と腰に触れてきたせいで、私の吐息もまた熱を帯びる。早く、早く、と瞳で訴えかけ続けていると、のっぷと彼の唇に覆われてしまい、私は「あ、ヤバ」と内心で呻いてしまうほど背筋にぞくりと走るものがあった。
 きっとたくさん我慢したせいだ。むしゃぶりつくように彼と舐めあうことになり、瑞々しい舌がとても美味しくて甘いものに感じられた。
 ああ、涎まみれの舌を絡ませあうのってすごく気持ちいい。顎に垂れてゆく唾液ごと彼が食んできて、ちゅっ、むちゅっと唇を鳴らすときには、彼の手によってさらに密着させられるのだ。
 がちがちに硬いし、熱いし、これがもうすぐ私のなかに挿《はい》ってくると思うと、下腹部がどんどん熱を帯びてゆくのがわかる。もうセックスしなければ気が済まないという昂ぶりのなかでするキスは本当に最高で、ぬ゙ぢゅっ、むぢゅっ、という音が鳴るほどの濃厚さに変わってゆき、私の思考はどんどん蕩けてゆく。
 そんななか、ジジーッと音を立てて、私の水着のチャックは引き下ろされてゆく。
 彼の手によって乳房が露わにされてゆくことにさえも、ぞくぞくと背筋が震えだす。涼しい外気が流れこみ、インナーの水着も剥かれると、やはり私の乳首は硬く尖っていた。
「んっ、うっ!」
 彼の舌によって舐められだすと、背筋から腰にかけて快楽が広がり、ぴくんぴくんと震えてしまう。
 大きな手で鷲掴みにされて、いいように舐め回されてゆくその光景は、私に対する強い執着を確かに感じられるものだった。つい熱い息を吐いてしまう私は、恐らく恍惚とした表情を浮かべていただろう。
 多目的トイレには性的な匂いがこもり始める。外でするなんて初めてだけど、その匂いは私のよく知っているものだ。なぜか頭がぼうっとし始めて、私の警戒心はどんどん薄れてしまい、セックスすることしかもう考えられなくなる。
「お兄さん、時間が……」
 本当はもっと楽しみたかったが、トイレに行くと言い、千夏と克樹君を待たせているところだ。急ぐように伝えると、すぐに下の水着まで脱がされてゆき、どろっと愛液がそこに伝うほど私は濡れていた。
 白くて清潔そうな便座に腰かけて、両足もそこにのせてから、ゆっくりともったいぶるように脚を開いて見せる。そうしてしとどに濡れたものを露わにさせると、彼は食い入るようにそこを見つめてきた。
 はあはあと吐きだされる息は荒くって、恥ずかしさに思わず頬が熱を帯びてしまう。だけど私にすっかり魅了されているとわかる目つきなものだから、ふっと私の唇は緩んでしまった。
 明るいところで見る彼のアレは本当に大きくて、すごくいやらしい形で、雄としての気配がとても濃い。
 それがあてがわれると、ぬ゙りゅっという粘液質な感触がまず起こる。そのまま愛液を絡みつかせるよう上下に擦られだすと、私の下腹部には甘い快楽が広がってゆく。だけどぜんぜん物足りなくって、もしかして焦らしているつもりかなぁ、と思った。
「おっ、お兄さん、早くし……てぇッ!」
 そう言い終わる前に、にゅぢぢぢっ、とぶっといモノが挿入されてくるものだから、私はしばし打ち震えることしかできなくなった。
 太くて、硬くて、すごく熱いものが私の膣壁をみちみちに広げていき、ぬぢゅっと最奥まで占拠してくる。存在感がものすごくって「息っ、できないかもっ」と内心で呻いてしまうほどだった。
「茜ちゃん、すごい、吸いついてくるよ」
 そう言い、彼は私の太ももを撫でてくる。そんな軽い愛撫だけでもぞくんと震えてしまうほど私は昂ぶっていたらしく、もう少しだけ彼が腰を寄せてくると奥側がかなり押し潰されて「あ゙っ♡」という喘ぎ声を響かせてしまった。
 慌てて口元を手で塞ぐ。トイレとはいえ木目調の落ちつきのある壁紙だったから、つい気を抜いてしまいそうになる。だけどたまに外から話し声や足音が聞こえてくるのだから身がすくむ。
 そんな軽い緊張が残っているせいか、彼のペニスの形がはっきりわかるほど私は締めつけてしまっている。上反りで、エッチな段差があるそれは、抜かれてゆくときにぞりぞりと私の膣壁を擦りつけてきて、これはまずいかもしれないと危惧するほどの甘い刺激が押し寄せてきた。
 大きく息を吐き、落ちつこうとしたのだが、ぬ゙り゙ゅっ、ぬ゙る゙っ、ぬ゙る゙っ、と前後に動き始めるともう駄目で、押し殺しきれないくぐもった喘ぎ声が多目的トイレに響き始める。
 全身の肌はぞくぞくと震え始めており、その気持ち良さによって私の表情はどんどん緩んでゆくのがわかった。
 ああ、いけない。普通にセックスで気持ち良くなっていた。私を無視したひどい人に、そんなことなどもう二度とできないくらい魅了してあげなくちゃいけないのに。そう思い、全身から汗を滴らせながら私は問いかけた。
「ど、どうですか、私とのエッチは、意志の弱いお兄さん?」
「っ!」
 あ、すごい。彼のペニスがぴくっと震えるのがわかった。
 うーん、外でのエッチも意外といいですねと思いつつ、ゆさゆさと私は小刻みに揺さぶられ続ける。そして近づいてくる彼の顔に気づいて、あんっと唇を開いて見せた。
「茜ちゃん、すごく可愛い顔になってるね」
 え、どんな顔だろうと軽く疑問に思ったのだが、触れてきた彼の唇、そして唾液で濡れた舌まで覚えるとそうもいかない。舐め返すだけで酸欠気味にさせられるし、私の頭がぼうっとしてゆくのを感じてしまうのだ。
「んむっ♡ おぅっ、お兄さ、そこ……♡」
 いくら抑えても喘ぎ声が漏れてしまう。それも仕方ないなと思うのは、唾液が顎から滴るほどの口づけをし続けており、そのあいだもずっと彼の腰使いが止まらないせいだ。熱に浮かされたように身体は熱くなってゆき、彼のぶっといモノが身体の芯をめがけて突いてくる。ビリ、と痺れるような感覚がそこで起きた。
 ああ、イクかも。濃厚さにうっとりするほどのキスをしながら、私はイカされてしまいそうだ。ものすごく幸せな思いを味わえそうだし、たくさん言いたかった文句はひとまず置いておこう。
 そう考えて、両手と両脚で彼にしがみつき、本当に酸欠で死にそうだったけど、お兄さんの熱い舌と唇、それとぶっといペニスのことだけに集中し始めると、予想外にそれは早くきた。
 ビリッ、ビリッ、と連続的に弾けるような感覚が身体の芯で起こり、引きずられるように身体の体温がカッと高まる。あまりにも凄いその熱量に、たまらず「んうゔッ♡」と私は呻き、唇からどろっと垂れてしまう唾液さえ気にならない状態のなか、びぐんっと身体が跳ねてしまうほどの強い波がやってきた。
 うーっ、これは凄いっ。
 なにも考えられないほどなのに、私の舌がたくさん舐められてるっ。あっ、あっ、すごい。お兄さんの舌っ、すっごく美味しいっ!
 そう思うくらい私は完全に惚けてしまっており、全身の肌には先ほどの波の余韻のように、ぞくんぞくんという感覚が残されている。そんなどうしようもない状態のなかで、がしりと彼の大きな手が掴んできて、先ほどよりもずっと荒々しくペニスが突き立てられた。
「ゔんッ!!」
 やだっ、声っ、出るっ、出ちゃうぅっ♡
 そうパニックに陥るくらいお兄さんの腰使いは本気で、もう間もなくたっぷり射精させられると予感してしまうほどだった。
 でも、それでいいのかもしれない。これが一番いいかもしれない。このまま、彼の熱い舌を味わいながら膣に思いきり射精されたら、さっきよりもっともっと幸せな気分になれそうな予感がある。
 そう思い、私もお兄さんにしがみつくと、ちゅこちゅこと舌を鳴らしながら身体の芯にめがけて突き立ってくる熱いモノを意識しだす。
 執着心という強い熱を感じられる彼からのキスは、ものすごくいい。丁寧に、丹念に、私をしつこく舐めてくるものだからぞくぞくさせられるのだ。これは最高だなぁと思いつつ、流しこまれてくる唾液をごくっと私は飲みこむ。
 そんなときに、私の熱く滾った身体の芯に突き刺さってくるくらい、彼から与えられる刺激は力強いものに変わる。濃い精液の気配を感じて私もまた迎えるような腰使いをすると、びたッ、びたッ、という挿入音、そして互いの激しい呼吸音だけが多目的トイレには響き渡ってゆく。
 膣に射精されることに快楽を覚えるようになったのは、ごく最近のことだ。
 優等生でいようと己を律していた私がただの女にされて、彼の熱い思いごと射精されるあの瞬間がたまらなく好きだから、近ごろはピルまで飲み始めている。
 だから引き抜かれようとする間際には、両手と両足で彼の身体にがっちりとしがみつき、そして、びゅうううっという熱くて濃いザーメンを直に浴びる。それがあまりにも大量だったものだから、途端に全身が痙攣してしまうほどの強い波に私は襲われた。
「~~ッ! あッ、あ゙ああぁーッッ♡」
 んッ、んッ、イクっ、イッてるっ。心臓がばくばく鳴っているなか、尚も私の子宮口には精子が吐きだされていて、どぴっどぴっというすごくエッチな音が下腹部越しに響いている。
 ああ、すっごい、これ。
 ピルを飲んでいなかったらヤバかったなって思うくらいの量だし、すごく息苦しい。だけどイッているあいだずっと彼に舐められているものだから、意味がわからないくらい全身がぞくぞくしっぱなしだ。
 お薬の管理とか意外と大変だけど、こんな思いができるのなら、これからもちゃんと続けようって思うくらいだった。

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