ヤリサーのリーダー・黒咲は催眠能力持ちだった!
催眠でビッチ化した新入生・花村ひなたを救うため、
麗央はサークル幹部となり、解除方法を探ることに。
舞台は、露天風呂付きコテージでの夏合宿へ。
夜になれば、欲に溺れた男女たちで溢れかえり……
狂乱の乱交会場で明かされる、催眠術師・黒咲の野望とは。
大人気ノンストップ絶頂系ハーレム、大学ヤリサー完結編!
1 日曜昼過ぎ、同棲アパートのドアを叩かれる
2 黒咲の取引
3 ヤリサーイベントは文化祭なのかもしれない
4 ヤリサーバーベキューここに開幕
5 水着だらけのバーベキュー大会
6 妊婦向けスク水とかいう多様性に俺は感謝した
7 平穏だったバーベキュー
8 催眠
9 絶頂による支配
10 告白
11 絶頂カウンター
12 化学準備室をもう一度
13 黒咲の長い春
14 絶頂カウンターが見えた男の末路
本編の一部を立読み
1 日曜昼過ぎ、同棲アパートのドアを叩かれる
日曜の昼過ぎ、玄関のドアを叩く鈍い音が部屋に鳴り響いた。壁の薄いアパートでこうなるのは時間の問題だった。
――ドンドン
早く出てこいと言わんばかりに再びドアが叩かれた。
その音に怒りが滲み出ているのは、俺たちが昨日の夜からセックスをしていたからだ。休憩やうたた寝を挟みながらも俺は既に五回射精している。いまから六回目を始めるつもりだった。
六回目の相手、花村さんはベッドの脇で足をM字に広げクリトリスを刺激して陰部を濡らして待っている。
俺が涼風と同棲を始めた頃、お互いセックスには自制的でいられた。もちろん猿のように毎日していたけれど、翌日の授業に影響するほど夜遅くまではしなかったし、涼風の喘ぎ声は常識的な範囲だった。
恐らく隣の部屋には漏れ聞こえない程度に抑えることができていた。
いまは、それができなくなった。自制できず節度がなく、欲望に身を任せている。1DKの狭いアパートには二人の喘ぎ声を吸収する家具もない。喘ぎ声は直接壁に響いてしまう。
花村さんのせいだ。
涼風と同棲するこの部屋で花村さんと一緒に生活をすることになったのは、五月になる前だった。当初は三人とも我慢をしていた。
同棲が始まったその日から一日一度はセックスをしていたが、花村さんの前では我慢をした。
我慢できなくなると花村さんがお風呂に入った隙をみて隠れてこっそりと楽しんでいたが、いまでは花村さんに隠れるどころか花村さんを交えて三人でしている。
俺も涼風も花村さんも、誰一人こうなることは考えていなかった。
北海道から出てきたいかにも純朴そうな花村さんは、大学デビューのためイベントサークルに入ると言って涼風を心配させた。花村さんを守るため俺たちもその新歓に参加した。
大学のイベントサークルなんてヤリサーに決まっているが、花村さんが興味を持ったサークル、『ベーシック』はそれ以上だった。
新歓は一見健全にも思えたが、会場の居酒屋には隠し部屋があり、花村さんはそこに連れ込まれ、サークルのトップである黒咲の精子を飲んでしまった。
しかも、ただの精子じゃなかった。
飲めば黒咲の言うことにはなんでも従ってしまう、催眠のトリガーとなる精子だ。
新歓の夜、催眠状態に陥った花村さんは黒咲の命令で一番近くにいた男、俺を襲い処女を散らした。
花村さんは彼女と同居しながらもセフレの千波との縁を切れない俺を軽蔑していたというのにだ。
相手が軽蔑する男だろうが黒咲の命令には従ってしまう。絶対服従。しかも命令に嫌悪感を持つどころか、従うことで充足感や達成感が得られるらしい。
俺と涼風は花村さんにかけられた催眠の恐ろしさを目の当たりにした。
命令に従う花村さんを目の前で見た涼風は、催眠状態の花村さんを一人にはしておけないと、花村さんを俺たちのアパートに住まわせることにした。
この時点で性は乱れていなかった。俺たちは花村さんに隠れて体を重ねて愛し合っていた。俺も涼風も自制していた。
それなのに、いまは自制心がなくなってしまった。
タガが外れたきっかけは、またしても花村さんだ。花村さんが乱交パーティーに参加したからだ。
いや、催眠のせいだ。花村さんを責められない。
悪いのは黒咲だ。
乱交パーティーで花村さんだけは乱交せずに済んだのは幸いだった、はずだった。
乱交から花村さんを守るための俺の行動が裏目となり、花村さんには俺とのセックスの義務が生じてしまった。
ルールに従うよう黒咲に命令された花村さんは俺と十回以上ものセックス義務を残したまま、乱交パーティーは終わった。
アパートに戻ってからも、花村さんは俺に対する性欲が無限に湧いてくるかのように、義務セックスの消化を迫った。
もちろん花村さんの性欲は偽物だ。催眠が花村さんをそうさせているだけだ。
黒咲にかけられた催眠を解くことができない以上、根本治療はできず対症療法しかない。偽物の性欲から花村さんを解放させるには義務セックスをするしかなかった。
義務セックスを消化するため週末を利用して集中的にセックスをすることにしたが、涼風も参加し、俺たちの理性は崩壊し、乱れた。
涼風は俺が花村さんやセフレの千波とセックスすることを認めてはいるが、思うところがあるのだろう。まるで花村さんに負けないと言わんばかりに淫れた。
涼風と親しくなる前、俺は涼風のことをクールな性格だと思っていたが、当時はまだ上辺しか知らなかった。
付き合うようになり、同棲が始まり、涼風と一緒に長い時間を過ごして涼風の強い性格を知っていると思ったが、花村さんが淫れたことで俺の知らない涼風を目の当たりにした。
昨日からのセックスで涼風は感情豊かに性の喜びを表現して俺と花村さんを驚かせた。そして恐らく隣人を怒らせた。
――ドンドンッ
早く出てこいと言わんばかりに玄関のドアはさらに強く叩かれた。
隣人を怒らせたが、花村さんに課せられた義務セックスの残りは、あと二回か三回程度にまで減らすことができた。数回なら口を塞いででもこなせるだろう。
義務セックスをこなせば、花村さんに隠れ涼風とだけセックスをする生活に戻る。
――ドンドンッ
ベッドの上の涼風は口を開け顔を赤くして、時々ビクンっと体を痙攣させ絶頂の余韻に浸っている。
涼風とのセックスが終わるのを待っていた花村さんは、オナニーをしながら膣の奥に愛液を溜めていたから目を蕩けさせて挿入を待っている。
二人とも快楽の世界にどっぷりと浸り、ドアを叩く音が聞こえていないようだ。女の絶頂は長く続く。
男は違う。射精を終え賢者モードだ。俺が出るしかない。
Tシャツを着てパンツを穿き、散らばったコンドームの包みを足で寄せて、渋々玄関へ向かった。
夜もなく昼もなく薄い壁越しに二人の喘ぎ声を聞かせたんだ、隣人にはただただ頭を下げるしかないよな。とにかく頭を下げて、怒りを鎮めてもらい強制退去だけは避けたい。
少しドアを開けるとすぐ「声、大きすぎじゃない?」と鼻にかかった女性の声が聞こえた。
「すみませんでした」
俺は頭を下げながらドアをゆっくりと開ける。
ただ、予想していた怒声は飛んでこない。
「うるさくして、すみませんでした」
もう一度謝ってから恐る恐る頭を上げた。
ドアの向こうでニヤニヤと微笑んでいるのはアパートの隣人じゃない。セフレの千波だった。
「ふふふ、凄い匂い」
千波の言葉で思い出したかのように、部屋中に女の匂いが充満していることに気がついた。男とは違う体臭、男にはない愛液の匂い。
香水や化粧品の匂いとも違う、男を滾らせる匂いだ。
「君たち乱交パーティーで興奮してるんでしょ。足りないのやだから買ってきた」
見透かされてたか。
ニヤケ顔の千波が差し出した紙袋の中身は間違いなくコンドームだろう。千波はそのまま厚底を脱いで部屋に上がった。
「次は無垢ちゃん?」
千波は花村さんを無垢ちゃんと呼ぶ。俺たちが花村さんと最初に会った時の印象は、確かに無垢な女の子だった。
「あの顔じゃあ、もう無垢ちゃんって呼べないね」
それは嫌味でもなんでもなく、素直な感想だろう。以前の純朴な印象は、いまの花村さんにはない。
涼風にも千波にも負けない、性欲を貪る女の顔になっている。
「でも、次はあたしとでいいよね?」
言いながら千波は地雷系特有のフリルで装飾されたピンクのシャツのボタンを外していく。
昨晩から涼風も花村さんも裸のままだったせいで、シャツの下から現れた黒い下着が却って卑猥に見える。
千波も俺の視線に気がついている。シャツを脱ぎスカートを下ろしても下着を脱ごうとしない。二人とは別だとアピールする。
千波は俺を興奮させるツボをよく知っている。
「ダメです!」
恍惚と快楽に耽る花村さんには何も聞こえてないと思っていたが、意識は残っていたか。
「もうちょっとで私も膣中《なか》イキできそうなんですから」
イキやすい涼風とは違い花村さんはセックスで絶頂しない。
俺は絶頂した回数を見ることができる特殊能力を持っている。オナニーにしろセックスにしろ、絶頂するとその数が増えるから俺にだけは絶頂したかどうか隠すことはできない。
この能力のおかげで、花村さんが俺と涼風のセックスを覗き見してオナニーしていたことも知っている。
時々隠れてオナニーをする花村さんだが、イキにくい体質なのかセックスで絶頂したことはなかった。
「ふふふ、膣中イキよりも脳イキの方がいいよ」
そう言うと千波は俺に顔を向けて「ね?」と微笑んだ。
千波がセフレになったのは俺の能力がきっかけだ。俺の能力は絶頂した回数が見えるだけではなく、その数字を強制的に増やすこともできる。
強制的に絶頂させる能力だ。
俺が偶然千波の絶頂回数を睨んだことで強制的に絶頂させてしまい、千波はそれを脳イキだと思い込んだ。
そこから千波との関係が始まり、俺たちはセフレになった。
千波はいまでも脳イキだと思っているけど違う。ただ、俺はその正体を明かしていない。話したところで、絶頂回数が見えたり強制的に絶頂させたりできるなんて信じてもらえないだろう。
「順番です! 脳イキよりも先に、私はちゃんとしたセックスで膣で感じてイキたいんです。脳イキはその後です」
脳イキもしたいとか、花村さんはすっかり性に貪欲になってしまった。
「ふふふ、すっかりビッチになってるけど、乱交パーティーそんなに凄かったんだ」
「みんな何度も何度も絶頂して凄かったです! だから私も膣中《なか》でイキたいんです」
花村さんは黒咲の催眠により参加した乱交パーティーに感化され、性に目覚めた。
会場でも貪欲に俺を求めたが、乱交パーティーが終わってもその熱が冷めていないのは、恐らく俺が知らないところで黒咲に何か言われたからだろう。
こんなにも花村さんがビッチになっているのは催眠が原因に決まっている。
「ビッチちゃんのおっぱい張ってるし、乳首も立ってるし、乳首ならイケるんじゃない?」
そう言うと千波はベッド脇の花村さんの背後に回り、おっぱいを揉みしだき指先で乳首を愛撫した。
花村さんの乳首はまだ幼い。性欲は急速に膨れ上がっているが、体はまだ追いついていない。
乳房に対して小ぶりな乳首は敏感に反応する。
「はんぅ♡ んふっ♡ はぁんぅ♡」
千波は花村さんをイカせてしまうつもりだ。乳首だけでなく陰部に指を伸ばすと、漏れ出る声はさらに大きくなっていく。
「ダメ♡ ダメぇ♡ 指はダメぇ♡」
女だから女のいいところはよく知っている。
花村さんは上半身を反らし腰を浮かせて抵抗するが、千波は膣に挿れた二本の指の動きを緩めない。
セックスしたい千波は、邪魔な花村さんをイカせるつもりだ。
「ふふふ、すぐイッちゃいそう」
千波はニヤニヤと笑いながら、わざと陰部からグチュグチュと卑猥な音を鳴らして花村さんの奥から愛液を掻き出す。
「指はダメ♡ おちん×ん挿れてぇ♡」
花村さんの頭の上に浮かぶ数字、いままでの絶頂を示す『56』は揺れない。数字の揺れは絶頂する前兆だが、花村さんは膣中を刺激してもそれがない。
「挿れてぇっ♡」
俺が千波の口元に半勃起したち×こを寄せると、何も言わずにパクリと咥える。
千波は器用だ。指は花村さんの膣への刺激を止めず、口は俺のち×こを吸い勃起へ導く。
俺のち×こをよく知る千波は、舌や唇で完全な勃起を確認すると口を離した。
「君はどっちに挿れたいの?」
花村さんの愛液を掻き出していた千波の指は、今度は自分の小陰唇を広げている。ずらしたパンツから覗く、陰毛のないつるりとした陰部は、愛撫をしていないのに愛液でたっぷり濡れている。いますぐ挿れられる。
しかし、千波のアピールは濡れていることだけじゃない。膣口だ。
膣口がまだ閉じている。
昨晩からセックスを続けて、さっきまで千波に手マンされた花村さんの膣は口を開けている。口を開け、はぁはぁと大きく息をしている。千波の膣口はまだしゃっきりとしている。
千波は自分の方が締まると言いたいんだ。
ち×こが反応する。千波だ。千波に挿れよう。
ただ、花村さんは不自然なほど積極的だった。抱きつくように俺に覆いかぶさってきた。
もしかしたら涼風には遠慮していたのかもしれない。乱交パーティーから戻ってきてからは、花村さんとは必ず涼風とやったあとだった。
付き合っているわけでも同棲しているわけでもない、ただのセフレの千波には遠慮は無用だと言わんばかりに積極的に欲しがる。
俺の上に乗った花村さんは自らち×こに手を添え、亀頭に体重を預けるようにして膣に挿れた。
――ブチュリ
ち×こに押し出されて溢れ出た愛液が陰茎を伝い落ちてくる。
千波の手マンで膣口はだらしなく開いてしまったが、ナカは違う。
涼風や千波が熟れた果実だとすれば、花村さんの膣肉はまだ青い熟す前の果実だ。熟す前の桃のように硬く、俺のち×こに服従しない。
千波の膣肉なら吸い付くようにピタリとまとわりつくが、花村さんの不慣れな膣はそれができない。オナホに似ている。
ただ、膣肉は刺激に不慣れなせいで反応は早い。
「そこ♡ そこぉ♡」
花村さんが腰を前後に揺らすたび、熟す前の膣肉がち×この先端を不揃いに締めつける。
涼風や千波なら快感のリズムを作ってくれるが、花村さんの腰使いにはリズムがない。ただ気持ちいい場所を探して、がむしゃらに腰を動かしている。
俺の動きにも合わせず、花村さんの動きも予想できない下手クソな騎乗位なのに、膣肉の反応はすこぶる良い。
「ここぉ♡ 気持ちいぃ♡」
花村さんが見つけた場所は膣口の近く、比較的浅い場所だ。亀頭がそこを擦るたびに膣肉がびくりびくりと痙攣する。頭上の絶頂回数が微かに揺れた。
初めてだ。花村さんの数字が揺れるのを見たのは。オナニーで絶頂回数を増やしてはいるが、セックスで絶頂に近づいたのは初めてだ。
「ふふふ、もっと奥もいいんじゃない」
千波が花村さんの背後から腰を掴み、角度を変えた。千波の細い指が花村さんの腰骨に食い込み、強制的に深く押し込む。
奥に溜まっていた愛液がブジュっと音を立てて漏れ出した。
根元まで沈んだ瞬間、花村さんは背中を弓なりに反らせる。
「はぁあっ♡♡」
亀頭がポルチオに押し当たる。花村さんの膣肉が痙攣し、不揃いだった締めつけが一瞬だけ揃った。ち×こ全体を絞り上げる。
「奥、いぃっ♡ ぁっ♡」
頭上の数字がまた揺れる。今度はさっきより大きく。絶頂が近い。
「ふふふ、しっかり女の顔になってきてる」
千波は花村さんの耳元に唇を寄せ、囁きながら両手を胸に回した。小ぶりな乳首を人差し指と親指で摘まみ、引っ張る。
「ぅんっ♡♡」
花村さんの膣がきゅうっと縮んだ。乳首への刺激が膣の奥まで繋がっている。
「ねえ、ここ好き?」
千波が乳首を捻りながら花村さんの耳たぶを甘噛みする。花村さんは首を横に振るが、膣は正直だ。愛液が溢れてち×この根元を伝い、俺の下腹部まで垂れてくる。花村さんの淫靡な匂いが部屋に広がっていく。
俺は下から腰を突き上げた。
――パンッ、パンッ、パンッ
花村さんの丸い尻が俺の腿に叩きつけられるたびに、湿った肉の音が部屋に響く。それまで部屋を満たしていた涼風の匂いに花村さんの愛液の匂いが混ざり合う。甘くて青臭い。まるで潰れた果実の匂いだ。
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ おくっ♡ おくぅっ♡」
花村さんの声が壊れていく。丁寧語が消え、意味のある言葉にならなくなっていく。
数字の揺れがさらに激しくなった。
「ダメ♡ なんか、来るっ♡ 来ちゃうっ♡♡」
千波が花村さんの乳首から手を離した。代わりにクリトリスに指を伸ばし刺激する。
「んぁああっ♡♡♡」
花村さんの背中が大きく跳ねた。
膣が痙攣する。不規則で、激しくて、俺のち×こを締め上げたまま離さない。波打つように膣壁が収縮と弛緩を繰り返す。
数字が回った。
花村さんの頭上で絶頂回数が一つ増えた。確かに『57』に変化した。
「っあ♡」
声にならない叫び。花村さんは目を見開いたまま、体を硬直させている。口は開いているのに息ができていない。腹筋が波打つように痙攣し、太ももが俺の腰を万力のように挟み込む。
膣中イキだ。花村さんが初めて、セックスで絶頂した。
「出るっ」
腰を押し上げて奥に押し当てたまま、コンドームの中に射精した。花村さんの膣が精液を吸い上げるように収縮を繰り返し、まるで数回分を一気に射精したような感覚に陥った。
「熱い♡」
コンドーム越しのわずかな精液の熱を感じ取り花村さんが小さく呟いた。
痙攣が収まらないまま、花村さんは俺の胸に崩れ落ちた。肌に汗が滲んで、髪が顔に張り付いている。吐息が首筋にかかる。甘い匂い。千波の香水とも涼風の体臭とも違う、花村さんだけの匂いだ。
しばらく花村さんの背中を撫でていると、小さな声が聞こえた。
「イッちゃいました♡」
掠れた声で花村さんが呟く。
「三条さんとセックスで……」
目尻に涙が溜まっている。嬉しいのか、安堵なのか、それとも快感の残滓なのか。たぶん、全部だ。
千波はニヤニヤとその様子を眺めていたが、花村さんの余韻が落ち着くのを待ってから俺の横に座った。
千波は萎えかけたち×こからコンドームを外し、溜まった精子を伸ばした舌に落とした。
花村さんは脱力したまま目を閉じている。時折、無意識に体がびくんと跳ねる。絶頂の余韻がまだ続いているのだろう。
千波はゴクリと喉を鳴らして口を開けて精子を飲み込んだことを示してから言った。
「まだ勃つんだよね?」
花村さんに先をこされ不満げな千波の言葉に俺は頷いた。涼風、花村さんと立て続けに二回射精したが、あと一回ならできる。一回やれば千波も休ませてくれるだろう。
「もう一回」
さっきまで脱力していた花村さんが四つん這いで迫ってきた。絶頂直後の上気した顔は、初めて会った時の印象とはまるで違う。
大学デビューを目指した花村さんのメイクは幼い顔に不釣り合いに思えたが、いまはあのメイクが似合うだろう。
はっきりと女の顔に変わっている。
「もう一回」
千波が使うつもりだったコンドームを奪い、手際よく被せると、花村さんはそのまま対面座位で挿入した。両手両足を俺の背中に回し、全身で抱きしめ顔を近づけキスをする。
表情だけじゃない。キスもこれまでと違う。
唾液がこぼれるのも気にせず、舌を大きく動かし大胆に絡め合う。
いままでは恥ずかしさを隠しきれていなかった。涼風に遠慮があった。それがない。夢中で性を貪っている。
対面座位のまま花村さんの腰がゆっくりと動く。さっきの騎乗位のようにがむしゃらではない。どこに当てたら気持ちいいのか、探さなくても体が理解したんだ。
腰を回すように動かし、俺のち×こを味わっている。
「んっ♡ んぁっ♡ 三条さんぅ♡」
花村さんがセックスの最中に俺の名前を呼んだのは初めてで違和感があった。まるで花村さんが俺を求めているような気分になって。
花村さんが俺とセックスをするのは黒咲が仕掛けた催眠に従っているだけで、俺を求めているわけじゃないのに。
首に回した花村さんの腕に力がこもる。しがみつくように体を密着させ、額を俺の肩に押し当てた。汗ばんだ肌が張り付いて、花村さんの体温が直接伝わってくる。
「もっと強くっ、ぎゅってして♡」
囁くような声だった。快感に溺れた叫びじゃない。俺に向けた、意思のある言葉だった。
花村さんがセックスをするのは乱交パーティーのルールに従っているってだけなのに。それなのに、俺を求めてセックスの快楽をもっともっと高めようとしている。
催眠のせいだ。黒咲が命令したんだ。
俺の頭に浮かんだ邪な考えを、花村さんの尊厳を傷つけるような考えを振り払った。
花村さんは催眠状態なんだ。
だって、そうじゃなかったら、花村さんが自分の意思で俺を求めていることになる。
あり得ない。
新歓の夜、催眠に操られた花村さんは処女を散らされた。催眠をかけられる前の花村さんは俺を軽蔑していた。涼風と同棲していながらセフレの千波と関係を続ける俺を。
催眠がなければ花村さんが俺を求める理由なんてない。
だからこれも催眠のせいだ。そうじゃなきゃ辻褄が合わない。
催眠が解ければ花村さんはまた俺を軽蔑するし、まるで俺を求めるようにセックスをするのは黒咲の命令に従っているだけだ。
「三条さん♡ いっしょに♡ いっしょにイキたい♡」
花村さんの膣が締まる。さっきとは違う、まるで意識的に締めつけているかのようだ。まだ完熟しきらない花村さんの硬い膣にそんなことができるわけがない。催眠のせいだ。
膣肉がち×こを締めつけ射精が近づき俺の腰が自然に動いた。花村さんの腰の動きとリンクする。リズムに合わせて突き上げる。
さっきの不器用に噛み合わなかったセックスが嘘だったかのように、俺と花村さんの快楽のリズムが合致する。
「あっ♡ あっ♡ そこ♡ また、そこぉ♡♡」
花村さんの頭上の数字が揺れ始める。前からは想像がつかないほど絶頂へ向かうスピードが速くなった。花村さんの膣が、子宮が絶頂を覚えたんだ。
花村さんの指が俺の背中に食い込む。爪が肌を引っ掻くその痛みは、花村さんの切実さのように思えた。
「イクっ♡ イクっ♡ イクっうっ♡」
ゆっくりと絶頂カウンターが回る。
絶頂した膣壁の痙攣に促され、俺も射精した。花村さんは俺の首筋に顔を埋めて小さく震えている。声を殺して、静かに絶頂の波に身を委ねている。
痙攣が終わるのを待って、花村さんをベッドに寝かせた。続けざまの絶頂に花村さんは放心したかのように体から力が抜けている。
「で、あたしは?」
千波が黒い下着の肩紐を指先で弄びながら俺を見た。
花村さんの変化について考えるのは後だ。目の前の千波を満足させなければ、千波は帰らないだろうな。
千波にコンドームを外させると、今度はコンドームに溜まった精子を飲まずにち×こを口に入れて、膨れていく亀頭を喉の奥に当てて感触を楽しんでいる。
涼風は花村さんの横で気を失ったかのように眠っている。昨晩から付き合わせてしまったんだから、いまは眠らせてやりたい。
俺も休みたいが、千波も気持ちよくさせてあげたい。あと一回ならできるだろう。
ただ、花村さんが嬌声に混じり俺の名前を呼んだことが引っかかっていた。違和感を忘れたくて、千波の頭を掴んでイラマチオをした。
考えたくなくて、千波の反応を確かめることもしたくなくて、俺は乱暴に喉の奥を攻めた。
2 黒咲の取引
インスタントコーヒーの匂いで目が覚めた。窓から射す日は既に傾いている。
どうやら、やり疲れてベッドにもたれかかったまま眠っていたらしい。花村さんと立て続けに二回。その後に千波とも二回。千波との二回目は無理やり勃起させられて最後はどうなったのか記憶がないが、俺に重なるように抱きつく千波の柔らかな表情を見ると満足させられたのだろう。
俺と千波はまだ裸だけど、花村さんはいつもの部屋着姿で体育座りで俺の方を見ていた。寝ていたのは俺だけか。
なぜか花村さんの表情から初めて会った時のような純朴さが感じられる。執拗といえるほど膣中《なか》イキセックスを求めていた淫靡な姿は影を潜めている。
やっぱりあれは催眠のせいだったのか。何かがトリガーになって発動した催眠だったんだろうな。
「麗央も飲む?」
涼風はパンツは穿かずにワンピース代わりにTシャツを着ている。涼風はまだやりたいんだろうな。
涼風は持っていたマグカップを俺に渡して、お湯を沸かしに狭い台所に戻った。
裸の千波は俺のち×ぽを握るが反応は鈍く硬くならない。さすがに限界を超えている。
こういう時の千波は意外なことに聞き分けがいい。地雷系の服が好きだけど重い女だと思われたくないらしい。ち×ぽは諦めてカバンの中からミルクティーを取り出し、それを一口含み俺に口移しした。
なんのアピールかわからないけど、目の前で俺が涼風のマグカップを使うのが不満なんだろう。
でも俺は口の中の甘いミルクティーをインスタントコーヒーで洗い流した。
「無垢ちゃん、乱交パーティーで変わっちゃったんだ」
「すっかり影響されちゃいました」
花村さんは否定しなかった。
「乱交パーティーは三人で行ったんでしょ? あの帰国子女も君のセフレになったの?」
千波の語気からは不機嫌さを感じた。セフレが増えることを一番嫌っているのは涼風ではなく千波かもしれない。
いまは花村さんともするから、千波は割を食っているもんな。
「星野さんは凄かったです。あんなにドスケベだとは思っていませんでした」
「そうなの?」
驚いたのはインスタントコーヒーを作り直した涼風だった。
乱交パーティーで星野に何が起きたのか誰にも話していない。花村さんの感想は涼風が思ってもいなかったものだろう。
「私はあんなにはならなかったのに、星野さんは催眠にかけられたら豹変して」
「ふふふ、ビッチちゃんに言われるほど凄かったんだ」
「ちょっと待って、星野さんも催眠にかけられたの?」
サークルの秘密を知ろうとして近づいた星野だが、秘密に近づくこともできず黒咲の催眠にかけられてしまった。
つまり俺は、花村さんの催眠を解くどころか、星野を守ることができなかった。
「星野さん、喉を突かれるとイクようになったんです」
花村さんは躊躇することもなくあの日のことを話した。
「ふふふ、楽しそう」
元からイラマチオも好きな千波はニヤニヤ笑うが、星野にとっては最悪だ。星野はまだ男にも慣れていないのに、催眠にかけられたせいで強制的に体がイラマチオを求めるようになってしまったのだから。
「星野さん、なんだか凄く嬉しそうでした。気持ちいいってだけじゃなくって」
確かに星野はイラマチオをされ喉を突かれ、何十回、何百回と絶頂を繰り返していた。ちゃんと息もできずに苦しいはずなのに、星野の目はそうじゃなかった。
花村さんは前に話してくれたが、催眠に従うことで幸せを感じるという。星野もそうだったのだろう。
催眠で強制的に絶頂させられるだけじゃなくて、催眠に従うことの喜びがそこに重なった。同じ催眠状態の花村さんは、それが嬉しそうに見えた。
でも、俺にはそう見えなかった。星野が壊れていくように思えた。
「麗央はそれでいいの?」
もちろん星野にかけられた催眠をほったらかしにするわけにはいかない。
しかし、乱交パーティー以来、星野からの連絡はなかった。俺も星野に会うのは気まずくて、大学で顔を合わせることすらなかったのはちょうどよかった。
ただ心配している涼風を安心させるために、あれから星野がどうなったのか確かめる必要がある。
とりあえず星野にメッセージを送ってみたが返事はなかった。既読すらつかない。
もとより星野が関心を持っているのはイベントサークル『ベーシック』で、俺じゃない。サークルや黒咲の催眠の情報じゃなきゃ俺に返事をするつもりはないのかもしれない。
便りがないのは良い便りとは言うが、涼風の心配は収まらない。だったら直接会いに行くしかない。
直接星野に会えるとすれば、心当たりは部室だけだ。
星野は『ベーシック』を調べるために大学に入学し、わざわざダミーサークルを作ったと以前教えてくれた。
俺が星野に会えるとすればダミーサークルの部室しか思いつかない。
一度、部室へ入ったことがあるが、その時はがらんどうで殺風景だった。星野が殺風景な部室に入り浸るとは考えにくいが、部室が唯一の手がかりだ。
乱交パーティーを思い出すと気が重いが、それでも午前の授業が終わると俺は学食ではなく部室棟へ向かった。
「例の彼女に会いに行くんでしょ?」
昼休みということもあり人の流れがごちゃつくが、千波には関係ない。ストーカーのごとく学科まで同じ、授業も同じ千波から逃れることはできない。
「ふふふ、そんなに気まずい関係なの?」
乱交パーティーで星野がどうなったのか見ていない千波は、いつものように、ふふふと笑ってニヤけている。
「言っておくけど、星野はセフレじゃないからな」
「君も喉の奥を突いてあげたの?」
「突いてない」
俺は八重原と花村さんに襲われていたから星野には手を出していない。手を出せず助けることもできなかった。
激しく喉を突かれ絶頂を繰り返し星野が壊れていく様子を、ただ見ていただけだ。
「そう」
千波の返事は抑揚のない平坦なものだった。
部室棟をうろうろするうちに『フォトジャーナリズム研究会』だったことを思い出し、部室をようやく見つけた。
ドアの向こうは静かで、手を伸ばすと鍵はかかっておらず、あっさりと中に入ることができた。
「もしかして夜逃げされちゃった?」
「もとからだ」
事務机と椅子しかない殺風景な部室を見れば、千波だけでなく誰だってそう思うだろう。『フォトジャーナリズム研究会』は星野が立ち上げた部室を得るためだけのダミーサークルで活動はしていない。
掃除が行き届いていると言えばいいのか、活動実績どころか、この部室に星野がいた痕跡を見つけることすら難しそうだ。
「君は彼女が現れるまでここで待つの?」
星野はイベントサークル『ベーシック』を調査するためだけに入学したらしいから、授業には出ていないかもしれない。
だとすれば星野が部室に来るのは、授業とも昼休みとも無関係なタイミングだろうか。
出直して入れ違いになるより、ここで待つ方がいいよな。
「覚えてるでしょ、みやちゃんと化学準備室でやってたの。学校にヤリ部屋あるのっていいよね」
みやちゃんは俺の元担任で、担任までセフレにしていたことを知った花村さんにドン引きされたが、あれからまだ一ヶ月も経っていないのに遥か昔のような気がする。
「ここは俺の部室じゃないからな」
「みやちゃんも化学は関係ないのに自室みたいに使ってたでしょ」
確かに。みやちゃんは英語教師なのに化学準備室を乗っ取ってたんだよな。
「だから同じでしょ?」
一瞥して俺の顔色をうかがうと、千波は事務机に腰掛け、ピンクのスカートに両手を入れて黒いパンツを脱ぎ、床に落とした。
「ふふふ、たまには君が舐めてよ」
そう言われて、しばらくクンニをしていなかったことに気がついた。涼風も花村さんも、千波も、みんなすぐにたっぷり濡れるから前戯を蔑ろにしていた。
濡れていたって前戯をしたっていいのに。
俺は千波の前で膝立ちになると、左右の太ももを持ち上げM字に開き顔を埋めた。千波の甘い匂いをゆっくりと吸うと、昼休みの大学にいることも忘れ簡単に勃起する。
騒がしい学生の声は部室の中にまで聞こえてくる。
「外に聞こえるから大きな声は出すなよ」
「ふふふ、我慢した方がたっぷり舐めてくれそう」
千波は微笑みに期待を滲ませた。
小陰唇の割れ目にそって舐め上げると膣口から愛液が湧き出してくる。事務机を汚さないように舌先ですくい上げるが、追いつかない。
唇を尖らせ膣口を覆い吸い上げる。
「んふっ♡」
千波は甘い吐息を漏らした。
本来、千波は責められる方が好きだ。涼風や花村さんに対抗するように積極的に攻めることが多くなっていたけれど、こうして俺が千波を責め立てるのも悪くない。
「んんぅ♡」
唇や舌が与える刺激に素直に反応するが、外に声が漏れないように抑えているらしい。
言ったことにちゃんと従うところも可愛らしい。ストーカーみたいに付きまとわなけりゃ、俺には勿体ない女だ。
「このままイカせて、ぎゅって来るやつやって」
脳イキのことだろう。
頭の上に浮かぶ、俺だけが見える数字を睨むと強制的に絶頂させることができる。千波に何度もしたことがあるけど、いまはしたくなかった。
じっくりとクンニで千波を楽しませたい。
上目で千波を見ながら舐め上げると、絶頂をお預けされた千波は甘い目で恨めしそうに俺を見つめる。
それでも千波の頭の上に浮かぶ数字は震えだし、絶頂が近いことを示している。
「んっ♡ んうっ♡ んっ♡ イッちゃうっ♡」
――ガチャ
千波の絶頂とともに不意にドアが開いた。その音に俺は思わず千波の股間から顔を離した。
千波の恨めしそうな視線も入口へ向いた。
「あれ、もしかして三条くんも尋ね人?」
ノックもせずに部室に入ってきたのは八重原だった。ミルクティー色の髪と、見せるように大きく開いた胸元がいかにもビッチだ。
部室に入ってきたのは八重原一人じゃなかった。すぐ後には黒咲が続いた。
「これからセックスをするなら鍵はかけておいた方がいいね」
鼻の先を愛液で濡らした俺に向けた黒咲の言葉は、感情を顔に出さないせいで冗談なのか説教なのかわかりにくい。
「そんなに怖い顔をしないで。僕たちが探しているのは星野さんじゃなくて、鷺宮だ」
鷺宮を探している?
「困ったものよね。次のイベントの幹事なのに姿を消すなんて」
鷺宮はサークル幹部の一人で、乱交パーティーでは幹事を務めた。
鷺宮はホストをやっていて、パーティーに参加した女性はホストクラブの客がかなりいたらしい。
客といってもホストクラブに借金がある女たちだ。恐らく、鷺宮たちホストが女たちの恋愛感情を利用して借金をさせたんだろう。
乱交パーティーはセックスをすることでメダルを貰い、そのメダルは換金できるから、乱交パーティーに参加させてセックスをさせ、ホストクラブの借金を返させる。それが鷺宮のスキームだ。
「そっちは新しいセフレ?」
「ふふふ、あたしは最初で最愛のセフレ」
千波はすぐに前戯に戻るんだと主張するかのように、M字に開いた足を閉じることもなく言った。
「最愛か、三条君には沢山のセフレがいるんだね」
黒咲は芝居がかった声を使った。セフレなら催眠でどうにでもなるくせに。
「鷺宮だけでなく星野さんも行方不明だと知ってね。部室に何か情報があるかと思って来たんだ」
「星野と鷺宮は何か関係があるのか?」
「同じサークルの一員に聞くのはそんなに変なことかな?」
「俺には聞いてこないだろ」
「もちろん三条君にも聞くつもりだったよ」
「それで、星野さんの行方はわかりそう?」
「いや」
「私たちも鷺宮の行方はさっぱり」
「どうやら、この部室にも情報は何もないようだしね。でも、却《かえ》ってちょうどよかったのかもしれない」
「黒咲さん、鷺宮を切るつもりなんでしょ」
鷺宮を切る?
「三条君、君にお願いしたいことがある。鷺宮の代わりに次のイベントの幹事を務めてもらえないかな?」
「イベントって言っても、乱交パーティーじゃなくてちゃんとしたやつだから」
「よくあるバーベキューだよ」
「俺がお前たちに加担すると思ってるのか」
「ヤリサーの幹事ってだけでモテるから、やりたい男はいっぱいいるんだけどね」
「僕からお願いするんだ。タダで働いて欲しいとは言わないよ。三条くんにとって悪くない条件を用意しよう」
「ふふふ、セフレなら間に合ってるから」
「そうみたいだね。だからこそ、三条くんはヤリサーの幹部に適任なんだよ」
「ヤリサーなのは認めるのか」
「もちろん。ただ、誰でも参加できるイベントで乱交はしないから安心して欲しい。もちろん、三条くんに任せる次のイベント、バーベキューも同じ」
「待て、俺は幹事なんてする気はない」
「条件については二人だけで話したい」
やらないと言っている俺を無視して黒咲は強引に話を進める。
「条件を聞いてくれれば納得してもらえるはずだ。どうして二人だけで話したいのかも含めて」
まるで打ち合わせをしていたかのように八重原が部室の外へ出ると、空気を読んだのか千波も何も言わずに続いた。
千波は「あたしが濡れてるうちに終わらせて」と一言残してドアを閉めた。それを確認した黒咲は、一呼吸置いてから条件を提示した。
「鷺宮の代わりにバーベキューの幹事を務めてくれたら、催眠の解き方を教える」
催眠の解き方!?
「その顔、やっぱり気がついていたんだね。僕の催眠のこと」
なんで、催眠のことを俺に話しているんだ。しかも、黒咲は秘密を明かしたというのに表情一つ変えていない。
催眠は切り札だ。黒咲から打ち明けるなんて予想できるわけがない。詐欺師だろうが、顔に出ない方がおかしい。
「まあ無理もないよね。花村さんや星野さんの変貌を目の当たりにすれば違和感に気がつかないはずはない」
そうは言っても、催眠だと仮定するのも突飛すぎる。催眠なんて馬鹿げている。
「僕は三条くんも何か秘密の力があるんじゃないのかって思っているんだ。僕とは違うやり方で何らかの力を発揮しているんじゃないかって。催眠なんて不条理な能力を持っているからこそ可能な思いつきだけどね」
その通りだ。
疑うことなく催眠を信じたのは、俺自身が絶頂した回数を見ることができる不可解な力を持っているからだ。
「どうやら嘘は苦手みたいだね。顔に出やすい」
黒咲の口角がわずかに上がった。
そうか。黒咲は自ら手の内を明かすことで俺の切り札を暴いたのか。
「でも大丈夫。君の力については詮索しないし、誰にも話すつもりはない。そのために二人だけになったんだから」
黒咲は千波の前で話してもよかった。
俺が催眠のことに気がついているなら、警戒した俺は千波に知らせていると考えるのが自然だろう。そもそも俺に催眠の力を明かせば千波にも花村さんにも伝わる。
黒咲からしてみれば、二人だけになった意味はない。
二人だけになったのは、俺の能力を千波に知らせないための配慮。俺に気を使うことで譲歩を迫るためのカードだ。
「僕は君の力を借りたい。それなのに周りに漏らしたら台無しになる」
「力を借りたい?」
「僕たちのサークル『ベーシック』は君が言う通りヤリサーだ。ヤリサーの幹事はモテる男がなるべきなんだ。サークルの女の子たちにちょっかい出すような男じゃ幹部は務まらないんだ」
行方不明の鷺宮はホストをやっているくらいだ、女には困らないだろう。乱交パーティーに参加させた女はホストクラブの客で、サークルの女じゃない。
「俺に乱交パーティーは無理だ」
「あれはサークルのイベントじゃないから気にしなくていい。まずはバーベキューの幹事だけでいい。さっきも話したように僕たちは鷺宮が行方不明で困っているんだ」
「一回だけでいいのか? それで花村さんの催眠を解くことができるんだな」
「定期イベントはまだまだ続くからお願いしたいけれど、とりあえずバーベキューだけでいい。それが終われば、催眠を解く方法を教える」
花村さんの催眠を解けば黒咲にもサークルにも用はない。なし崩しに幹事を続けることもない。
ただ催眠状態は花村さんだけじゃない。
「星野の行方に心当たりは?」
催眠状態だから星野は黒咲に従う。
「彼女も催眠状態だからね。心当たりはあると言いたいところだけど、実は僕も連絡がつかないんだ。僕からもメッセージを送ろう。見れば君に連絡するはずだ」
俺に連絡しないよう星野に命令している可能性はあるが、黒咲の表情や声は嘘をついているようには思えない。
「もう一つ条件がある。この先、花村さんに命令はするな」
「もちろんだ。僕にとって花村さんより君の方が大切だからね」
どうして俺が大切なのか気になったが、催眠さえ解けるなら、黒咲が『ベーシック』で何をしようが関係ない。乱交パーティーでもなんでも好きにすればいい。
「わかった。バーベキューの幹事をすればいいんだな」
「ありがとう」
黒咲の笑顔は一切屈託がなく、まるで少年のようだ。