男勝りな武道少女の安達蒼依、真面目な美少女の佐伯桜子。
彼女たちを待っていたのは、性悦に堕ちる隷奴への回廊だった。
桜子は蒼依の愛する人を誘惑するよう命令され、自らの身体を差し出し、
蒼依は複数の男たちの青い性欲の渦中へと放り出される。
「ねえ、蒼依。今、お前は、自分が不幸だと思ってる?」
絶対的支配者からの問いに、すべての性穴を穢し尽くされ、
想い人からも引き離された蒼依が、最後に出した答えとは……
熱狂的支持を集める舞条弦の超人気シリーズ、【蒼依&桜子編】完結!
プロローグ
第一章 謀略の淫夜
第二章 初恋の終わり
第三章 柔道少女は性悦に伏して
第四章 堕落と狂乱の夜
最終章 便女の幸福
本編の一部を立読み
プロローグ
「あの、ちょっといいですか」
放課後。昇降口で靴を履き替えている最中に、後ろから声を掛けられた。振り向けば同級生の佐伯桜子が立っている。自分から話しかけたくせに、俺と目が合った少女はバツが悪そうに目を背ける。そこに不穏な気配を感じて胸が騒いだ。
「えっと、俺に何か用かな? 佐伯さんだよね。女子柔道部でマネージャーしてる」
女子柔道部。幼馴染である蒼依が所属している部活で、部員の総数は二名だ。佐伯さんと蒼依だけ。俺と佐伯さんの間接的な接点と言えば、蒼依の存在くらいのものだろう。
「は、はい。佐伯桜子です。実は、蒼依さんのことで話がありまして」
予想通り。だけど、うれしくはない。佐伯さんの反応を見るに、愉快な話題ではないのだろう。胸のざわめきが酷くなる。今すぐ、家に帰りたいと思う自分がいた。そして自室にこもり、ヘッドフォンを着け、一人でゲームを楽しむのだ。……そう、一人で。
少し前まで、毎日のように蒼依と二人で過ごし、ゲームをしていたのに。いつからか、蒼依は家に来なくなった。柔道教室が忙しいようだが、他に何か事情があるに違いない。流石の俺も、蒼依が何かを隠しているのはわかる。でも、その何かがわからない。
「……最近の蒼依さん、様子がおかしいですよね? 何があったのか、ご存じですか?」
「いや、知らないけど……柔道教室が忙しいんだろ? それで、疲れてるんじゃないか」
「違います」
ハッキリと言い返される。なんだか批難されているような気分になるのは、俺が自分に対して強い無力感を抱いているからだろう。大切な幼馴染の身に何か異変が生じている。その事実を認識しながらも、何もできないでいる。そんな自分に、毎日悶々として、苛立っているから。
「私、知ってるんです。蒼依さんに何が起きたか。彼女が毎日、どんな目に遭っているのか。全部、知ってるんです。……知りたくないですか?」
「知りたくない」
「え?」
思ってもいない台詞が口から出る。いや、これが本音なのだろうか。蒼依のことはなんでも知っているつもりだった。そんな幼馴染の抱える秘密なんて、今更、知りたいとは思えない。そして何より、俺が知らない蒼依の秘密を、誰かから教えられることに屈辱を感じるのだ。
「……ごめん。今の、嘘」荒ぶる気持ちと息を整えて、言う。「知りたい。蒼依に何が起きてるんだ? 俺の予想だと、柔道教室に通ってる子供たちが関係してるんじゃないか」
「そこまでご存じなんですね」
「……やっぱり柔道教室で何かあったのか?」
佐伯さんはこくりと頷く。それからキョロキョロと、落ち着きなく周囲を見る。
「あの、すみません。詳しい話はここでは……どこかで、二人きりになれませんか」
「どこか……喫茶店とか、カラオケとか? 公園とか行く? それとも屋上とか……」
「いえ、万が一があっては困りますから。絶対に、誰もいない、誰にも見られない、誰にも聞かれない場所がいいんです。でなければ、話せません。絶対に」
絶対に、の部分を強調して言う。よほど人に聞かれてはまずい話なのだろう。
「あの、家とか……どうですか」
「家って……俺の?」
周囲に生徒がいないことを確認したあと、佐伯さんは遠慮がちに首肯する。正直、俺は戸惑った。彼女との関係は希薄だ。同級生。幼馴染の友人。その程度の間柄でしかないのに。
「できれば、ご家族のいない日がうれしいです。変な噂が流れても嫌でしょう? お母さんや、蒼依さんに勘違いされると私も困りますし。ほら、男女の関係だと思われたら……」
確かに困る。特に母さんに知られるのは面倒だった。だけど、母さんは基本的に家にいる。母さんが不在のときを狙い、佐伯さんを家に呼ぶのは手間が掛かりそうだった。
そのことを伝えると、「お母さまはバレーとか好きですか?」と、佐伯さんは訊ねてきた。
「バレー?」
「はい。私の母親、ママさんバレーに通ってて。バレーと言っても、ダイエットや雑談、ストレス発散目的の軽い運動なんですけど。もしもお母さんにご興味がおありなら、ママさんバレーの体験に誘ってみてはどうかと。そうすれば、確実に不在の時間を作れますし。あ、これ、チラシです。母に、誰か勧誘してくれないかと頼まれてて。よければ、どうぞ」
カラー印刷されたチラシを渡される。大きな字で『ママ友求ム!』と書かれた紙を見下ろす。元々、母さんも運動が好きなほうだ。ダイエット目的でのバレーなら喜んで参加するだろう。
「……とりあえず誘ってみるよ。でも、ここまで入念に準備する必要あるのか? パパッと、どこかで喋ってくれればいいと思うんだけど。今だって、ほとんど人もいないし」
「私が嫌なんです。それに、簡単に説明できる話でもなくて。ごめんなさい」
「いや、佐伯さんが謝る必要もないけど……」
佐伯さんは今にも泣きだしそうな表情で言う。神妙な面持ちで謝罪されては強く言い返せない。きっと、これほど万全を期す必要があるほどに、蒼依の置かれた状況は深刻なのだろう。
「……わかった。じゃあ、家で二人きりになれるタイミングを探ってみるよ」
「は、はい。お願いします。本当にすみません」
「だから、謝る必要ないって。寧ろ感謝してるんだからさ。蒼依のこと、気にかけてくれてありがとう。あいつ、大雑把で気が強くて、一緒にいると色々大変だと思うけど……これからも、よろしく頼むよ。――って、まるで兄貴みたいだな、こりゃ」
苦笑いを浮かべ、ぽりぽりと頭を掻く。佐伯さんは目をパチクリと瞬かせたあとで、ふッと笑みを零す。そこでようやく、柔らかな雰囲気がふわりと広がった。
「それじゃあ、申し訳ないですけど……お願いしますね。日時が決まったら連絡をください」
「うん。えっと……お互い、頑張ろう」
いったい、何をどう頑張ると言うのだろう。曖昧なままに俺は言う。佐伯さんもまた、曖昧な表情を浮かべた。後になって思い返してみれば、このときの俺はまだ、随分と楽観的に物事を考えていたと思う。一種の昂揚感さえ抱いていたかもしれない。
蒼依の異変を解決する糸口を得たのだ。このまま、幼馴染に発生している問題を解決に導いて、元の日常に戻る。平穏で、健やかで、凡庸で、かけがえのない日々に戻ることができる。いや、戻るどころか、遂に蒼依との仲も進展するのではないだろうか。この危機を乗り越えることで、幼馴染から恋人へと至れるのではないか。そんな期待さえ抱いていた。
第一章 謀略の淫夜
『明日、夜の七時からなら空いてるけど、どうかな』
太一からそんな連絡が来たのは、放課後の昇降口で言葉を交わしてから三日後のことだった。予想よりも随分と早い。きっと、太一も話の続きが気になって仕方なかったのだろう。もちろん、断る理由もない。獲物が罠に掛かったことを幸哉に報告した後、桜子は返事をした。
『わかりました。では、夜の七時に伺います。よろしくお願いします』
そして今、桜子は、太一の家の前に立っている。時刻は丁度、夜の七時になったところだ。
チャイムを押す前に玄関扉が開いた。家の中からジャージ姿の太一が姿を見せる。少年は何かを警戒するように、周囲をキョロキョロと見渡したあと、囁くような声で言った。
「……どうぞ、入って」
「は、はい。お邪魔します……」
太一に促され、桜子は家に足を踏み入れる。二階に上がり、太一の部屋に入った。意外にも、と言うと失礼だが、太一の部屋は綺麗に片付いていた。恐らくは、桜子が来る前に整頓したのだろう。部屋の中は柑橘系の匂いがした。消臭スプレーの匂いだ。
「ここ、座って」
「は、はい。失礼します。あの、これ、ケーキです」
座椅子に腰を掛け、テーブルにケーキの箱を置く。中身を取りだし、用意していた紙皿に置いて、太一の前に差しだした。白いクリームのたっぷり乗ったガトーショコラから、甘いチョコレートの匂いがふわりと広がる。
「ケーキって……そんなに気を遣わなくてもいいのに」
「いえ、色々と都合をつけていただいたので。飲み物、コーヒーで大丈夫ですか」
返事を聞く前に水筒を取りだし、紙コップに黒い液体を注ぐ。砂糖とミルクも机に置いた。これで準備完了だ。あとは、太一がコーヒーを飲むのを待つだけだった。
「一応、確認してもいいですか。今日、ご家族は……」
「うん。誰もいない。母さんはママさんバレーの体験会に行ってる。飲み会にも行くらしいから、結構遅くなると思う。親父も、今日は残業があるって」
「そう……ですか。じゃあ、長い時間、二人きりなんですね」
二人きり。口にした瞬間に、桜子は喉がヒリつくのを感じた。今更だが少し緊張する。太一も同じ気分なのかもしれない。少年は、自分の部屋だというのに少し居心地が悪そうだ。
「えっと……じゃあ、本題だけど。蒼依の身に何が起きているのか……教えてくれる?」
「……その前に、ケーキを食べませんか。コーヒーも注いでしまったので、冷める前に」
ぎこちない台詞だなと、我ながら思う。太一に疑われてはいないだろうか。不審な挙動を誤魔化すように、桜子はケーキのフィルムを剥がし、プラスチックフォークの封を外す。
「そうだな……じゃあ、折角だし。いただきます」
太一はコーヒーにミルクと砂糖を入れ、フォークで掻き混ぜる。それからケーキを口に運んだ。乾燥したガトーショコラを食べれば水分が欲しくなるはずだ。目論見通り、少年はごくごくとコーヒーを飲む。
「お代わり、ありますよ。注ぎますね」
スクールバッグの中から新しい紙コップを取りだす。中には白い粉が入っていた。温かいコーヒーを注いで粉を溶かす。目の前に差しだせば、少年は疑うことなく口をつけた。
「ケーキもコーヒーも美味いな。わざわざ買ってきてくれてありがとう」
「いえ。私も食べたかったんです。それに、今から私たちは、蒼依さんを助けるための作戦会議をしますから。糖分とカフェインで頭を働かせるのは大事です」
「作戦会議……」
噛みしめるように太一は呟く。桜子の意識は彼のコーヒーに向いていた。一杯でも充分だったが、二杯目も半分ほど飲んでいる。桜子はガトーショコラにフォークを刺した。どうやって時間を稼ごうかと思案しながら、チョコの塊を崩す。
「蒼依さん、実はトラブルに巻きこまれているみたいで。おじいさんの柔道教室が経営難なのはご存じですか? 多額の借金を抱えているそうで」
「借金……それで、トラブルって?」
桜子はもったいぶるように、ケーキを一口食べる。チョコが舌腹で溶けて、程好い苦味を孕んだ甘い風味が、ふわッと鼻に抜ける。唇に付着したケーキをぺろりと舐めて、桜子は言う。
「その前に……すみません。少し服を脱いでもいいですか」
「え……っ?」突然の申し出に太一は驚く。「ごめん、部屋、暑いかな」
「いえ、大丈夫です。ただ、私も少し緊張していて。上だけ脱がせてください」
だめ、とは言えないだろう。「ど、どうぞ」と太一は震える声で言った。桜子は制服に手を掛ける。少年はギョッとした表情を浮かべ、慌てた様子で桜子に背中を向けた。
(……可愛い。童貞なんだろうな。私が偽ち×ぽで蒼依さんを犯したことを伝えたら、どんな反応するのかな。ああ、蒼依さんの感じている姿……思いだすだけでおま×こ濡れちゃう)
はぁはぁと息遣いが乱れる。体温が更に上昇して、桜子はいそいそと制服を脱いだ。身に着けているのはキャミソール一枚だ。やたらに薄く、面積も頼りない布が、細い肩紐で吊られている。インナーから覗く深い谷間はびっしょりと汗ばんでいて、濃い女の匂いがした。
(ああ、牝臭い……今日も、たっぷりセックスして、シャワーを浴びてないから)
朝と昼。いつも通り、桜子は学校で柚原と性行為に及んだ。放課後には、柔道部の男子五人と順番にセックスした。狭苦しい男子更衣室の中で輪姦されるのは、酷く興奮した。
(おっぱい、凄く張ってる……なんていやらしいの。ああ、乳首が……)
勃起した乳首が薄いインナーに紅い突起を築いている。桜子はこるりと喉を鳴らした。急激に性欲が高まるのを感じながら、スカートを短く折る。汗で光沢を帯びた白い脚は自分から見ても艶めかしく映った。
「あ、あの。佐伯さん、そろそろ大丈夫……かな……?」
「あ……ッ、ご、ごめんなさい。時間を掛けちゃって。もう、大丈夫です。どうぞ」
「う、うん……わッ」
太一がこちらを向く。思わず、と言った様子で少年は声をあげ、慌ててサッと顔を背けた。目の前に、乳も太腿も大きく露出した同級生がいるのだ。驚くのも当然だろう。
「ごめんなさい。下品な恰好しちゃって。でも、なんだか熱くて……ああ、室温の所為じゃないんです。ただ、身体が火照って……たまらないの……ケーキの所為でしょうか」
「ケーキって……どうして」
「ほら、チョコには媚薬作用があるって言うじゃないですか。だから、発情してるのかなって」
「はつ……ッ、佐伯さん、な、何を言って――あッ」
腕を動かし、偶然を装って肩紐を更にずらす。乳輪の縁が姿を見せた。薄布はかろうじて勃起した乳首に引っ掛かっているだけで、ほとんど丸出しと大差ない。
「……? どうかしましたか?」
「い、いや……えっと」
太一はもごもごと口ごもる。無理もない。たいして接点もなかった同級生だ。「乳首出てるよ」なんて言えないだろう。
(こんなに簡単に餌に食いついて……この調子だと、もっと派手に誘惑できるかも……)
「きゃッ」
テーブルに腕を伸ばし、紙コップにわざと手を引っ掛ける。コーヒーが零れた。桜子は傍にあったティッシュを手にとり、両膝をついて床を拭く。不自然な動きだとは自覚しながら、身体の向きを変え、少年のほうへと尻を向けた。短いスカートが捲れ、媚臀が露わになる。
(あ……っ、見てる……お尻……全部見られちゃってる……)
ごくりと生唾を飲む音がした。今頃、少年の視界には、丸々と実った双臀が映っていることだろう。紐同然の黒いティーバックは尻肉を少しも隠してはおらず、白い尻頬は剥きだしだ。いや――尻どころか、紐下着からは肛門まではみ出している。可憐に咲いた菊華は、少年の視線を察知して卑猥に蠕動した。腸肉がざわめき、桜子は豊かな肉づきの腰を左右に揺らす。
「ああ……床板の隙間に入っちゃってる……染みにならないよう、ちゃんと拭いておきますね……拭き終えたら、お話の続きしますから……そこで、待っていてください……」
返事はなかった。いや、「はあ……」とか「ああ……」とか、そんな声が聴こえたような気もする。きっと、目の前の光景に困惑しているに違いない。当然だ。
(お尻だけじゃなくて、おま×こも……マン汁塗れの、チンハメ孔も見て……)
欲望を揺さぶろうと、更に大きく尻を振る。生地の食いこむ裂け目からじわぁと漏れた蜜が、ガムシロップのような粘度で、とろりと滴り落ちていた。腰を動かせば、細い下着が剥けた肉芽に擦れる。それだけでも喜悦が奔って、桜子は尻頬を引き攣らせた。
「あの、すみません。ウェットティッシュって、ありますか?」
「あ、ああ……ご、ごめん、気が利かなくて……っ」
ちらりと後ろを見る。太一は慌てて顔を背けて、逃げるように立ちあがる。少年は、机の脇に置いてあるウェットティッシュを手にとり、桜子と同じように四つん這いになった。隣で、一緒に床を拭き始める。耳朶も頬も首筋も、少年の肌は朱く染まっていた。
「ごめんなさい。ドジなことして、ご迷惑をおかけして……」
「め、迷惑だなんて。俺は全然……」
そこで太一の台詞は途切れた。代わりに、ごくりと、喉を鳴らす音がもう一度聞こえてくる。少年が、横目で胸を見つめているのがわかった。キャミソールが緩んで、乳房が横から覗いているのだ。重力に従って長く垂れた媚乳が、少年の欲望を集めていた。
(だめだよ。蒼依さんのことが好きなんでしょう? ほら、ちゃんと理性を保たないと。私のおっぱいを見るのが目的じゃないでしょう? こんなことしてて、いいの?)
胸裏で声を掛ける。太一は手を動かすフリをして、ちらちらと胸を見続けていた。まさか、ここまで誘惑に弱いとは思わなかった。であればもう、勝負を仕掛けても問題ないだろう。
「ああんっ」
「え――わっ」
桜子は喘ぐような声をあげ、太一にもたれかかった。押し倒した、と言うほうが近いかもしれない。少年に覆い被さり、潰れるほど乳房を押しつける。鼻先が擦れそうな距離に太一の顔があった。少年はドキリとした表情を浮かべ、口をパクパクと開閉させる。
「ご、ごめんなさい。ちょっと、バランスを崩してしまって……大丈夫ですか?」
「だ……大丈夫……だけど」
「だけど……?」
「い、いや、その、当たってて……あ、あの、佐伯さん……早く、身体を……」
狼狽しながらも、桜子を無理矢理に押し退けようとはしない。そして桜子も、太一の上から移動する気はない。熱い吐息を顔に吹きかけ、潤んだ瞳を煽情的に震わせながら、囁く。
「……ごめんなさい、遠野くん……実は私、嘘を吐いていたんです」
「う、嘘って?」
「私、蒼依さんの事情なんて何も知らないの。ただ、遠野くんと二人きりになりたくて。私、遠野くんのことが好きなんです。遠野くんが蒼依さんのこと好きなのはわかってるけれど……何度も、諦めようとしたけれど。それでも、諦められなくて。我慢、できなくて……」
「え、え……っ?」
太一が困惑の様相を浮かべる。理解が追いつかないのも無理はない。正直、意味がわからないだろう。口にしている桜子さえ、自分の発言が酷く馬鹿馬鹿しいと思う。だが関係はない。
(……遠野くん、興奮してる……全然、何が起きているのかわかってないのに。なのに、おち×ぽ反応しちゃうんだ? 女の子に押し倒されて、勃起、するんだ?)
もじもじと腰を揺すり、むっちりとした太腿で少年の股間を擦る。「あ……ッ」と太一は少女のような声を漏らした。緩い傾斜を築いた股間が、熱を放っている。桜子は右手を伸ばし、ズボン越しに太一の逸物を擦った。小ぶりのペニスが、指遣いに合わせて脈を刻む。
「ちょ……っと、待って……何がなんだか……と、とにかく、早く身体を除けて……」
太一が肩に手を置いてくる。だが、身体を押す力は酷く弱い。顔を見れば、表情筋が緩み始めていた。眉が垂れ、焦点の合わない様子で瞳が揺れている。唇の端に浮いた涎が頬を流れていた。コーヒーに混ぜた薬が効き始めたのだろう。
『飲みすぎると眠るけど、量を調整すると、身体にうまく力が入らなくなる。あと、頭が凄くぼーっとするんだよね。例えば女をレイプするときにね、この薬と酒を一緒に飲ませると、強い酩酊状態になって犯し放題になる。僕はあまり薬を使うの好きじゃないんだけどね』
太一の家に来る前、幸哉はそう言って、小さな袋に入った粉を渡してきた。小麦粉や粉砂糖にも見える粉薬は、よく見るとほんのりと黄土色が混じっていた。
『出すときはコーヒーに混ぜるといいよ。味もわかりにくいし。カフェインと反応して、心拍数が上がるんだ。興奮剤代わりになる。ガトーショコラとコーヒーを持っていくといい』
『あ、あの、危ない薬じゃないん、ですよね……?』
『大丈夫大丈夫。大学でヤリサーを運営してる知り合いにお試しで使わせて、何年もかけて正確な薬のデータを取ってるし。――あ、こらこら。そんな固い表情しないの。失敗してもいいから、桜子も愉しみなって。成功しようが失敗しようが、どうだっていいんだからさ』
そう言って幸哉は白い歯を見せて笑った。嗜虐的で、それでいて爽やかな笑顔は、思いだすだけで背中に冷たいモノが奔る。しかし同時に、言いようのない昂りを抱く自分もいた。
「佐伯、さん……お、俺……」
太一がぼうっと呟く。肩に置かれていた少年の手が、二の腕を滑り落ちていく。桜子は上半身を起こした。体勢を整え、改めて太一の股間に跨る。腰を前後に揺すり、牡の膨らみを刺激した。太一は「ああ……ッ」と声をあげ、汗ばみ始めた首を振って悶えた。
「さ……佐伯さん、おかしいって……こんなの、変だ」
「何がですか?」
「何がって……だって、その、ほら……」
太一は口ごもる。呂律が回らなくなってきていた。思考も回っていないのだろう。言葉が、うまく口から出てこないようだ。唇に浮いた涎が頬を伝うが、啜る素振りも見せない。
「ごめんなさい、遠野くん。せめて、最高の初体験にしてあげますから。私のおま×こで、遠野くんの童貞ち×ぽ、気持ちよくしますから。私との生ハメ、愉しんでください」
「な……なに。生ハメ……? お、おま×こって……あッ」
「ほら、遠野くん……おっぱいですよ。私の胸、あなたの好きにして、いいですよ」
桜子は頼りない肩紐をずらす。女体を滑るように、キャミソールがはらりと腰まで落ちた。透明感のある白磁色の肌が露わになる。白い柔肌に浮いた汗が、艶々と淫猥に煌めいていた。
(ああ、凄い視線……ワケもわからないまま、私のおっぱいを、真っ直ぐ見てる)
太一の視線が胸部を這う。乱れた息遣いに合わせて伸縮する媚乳は、女体の中でもひときわ強く存在感を放つ。蒸れた深い谷間から濛々と立ち昇る牝香は、牡の理性を融かす魔性を孕んでいた。太一は惚けた双眸に乳首を映し、困惑と興奮の混じった息を吐く。
「佐伯さん、お、俺……あの、意味が……今、わけが、わかってなくて、これ、なんで」
「大丈夫。大丈夫ですよ。気持ちいいことだけ考えましょう。おっぱい、好きですか。好きですよね。このおっぱい、今から、好きにしていいんですよ。ほら……」
「あ……」
太一の右手首を掴み、胸に誘導する。少年の手が左の乳房に触れた。勃起した紅い蕾が掌に擦れて、甘い痺れが首の裏を奔る。桜子は「あンッ」と喘ぎを撒いて、背中を反らす。汗と香水と、発情した牝の匂いを撒き散らすように、大袈裟に髪を振り乱す。甘酸っぱい臭気が空気を侵し、太一の嗅覚も犯す。思惑通りに、太一の理性はますます融けていく。
「あ、ンン……ッ」
少年の手が動き始めた。最初は少し遠慮がちに。徐々に、大胆に。乳房に沈めた五本の指を、むにむにと蠢かせる。指が乳頭を掠めるだけで、桜子の視界にチッと星が横切った。
「はぁはぁ……ああ、いいの……桜子のおっぱい、もっと揉んで……」
「ああ、佐伯さん……俺……」
「おっぱい、気持ちいいです……揉まれると、たまらないの……」
上半身を伏せ、鼻先数センチの距離に顔を寄せ、桃色に染まった息を吐きかけて囁く。暖簾のように垂れた長い髪の内側、薄暗い空間で、二人の視線と吐息が混じり合う。
「んむ、ちゅ……っ」
そのまま、桜子は太一の唇を奪った。少年は一瞬目を見開き、かすかに首を横に振る。無意味な抵抗だ。桜子は舌を差しこみ、少年の口腔を味わう。チョコとコーヒーの風味がした。
「はぁはぁ……ほら、もっと私に身を委ねて……キス、気持ちいいですよ」
「キス……あ、蒼依……」
なぜ今、太一が蒼依の名を呼んだのかはわからない。倒錯した状況のなか、想い人を思いだすことで、気力を振り絞ろうとしたのか。それとも、桜子と蒼依を誤認するほどに朦朧としているのか。その可能性に賭けて、桜子は少し無理があると自覚しつつも、演技をしてみる。
「はい、私は蒼依さんですよ。あなたの大好きな、安達蒼依です。遠野くん――太一。太一、ほら……もっと、キスしよう……おれのおっぱいも、ま×こも、唇もケツも、お前のものだよ」
「蒼依……ああ、蒼依……キ、キス、していいのか。蒼依と」
「……もちろん」釣り針に獲物が掛かったのを理解する。そして今、彼の初恋と純心を自分が穢していることも。「キスして、いいよ……太一……好きなだけ、味わって……んむッ」
再び唇を重ねる。今度は、太一のほうから積極的に舌を絡めてきた。生温い粘膜をねちゃねちゃと触れあわせるたび、桃色の恍惚がうなじの辺りから全身へ滲み、広がっていく。接吻を続けながら、桜子は近くに置いてあるリモコンを手にとり、部屋の照明を消した。
「ん、んふ……ちゅッ、ンン……ッ、あむ、んふ」
薄闇のなか、唾液を撹拌するように舌を蠢かせる。桜子は主人にじゃれつく犬のように、少年の頬や鼻、顎に舌を這わせ、顔面へ唾液を塗り広げる。柚原に教えられた奴隷の性技だ。
(そろそろ、本番……ああ、親友を裏切って味わうち×ぽ……きっと、凄く背徳的で気持ちいいよ……。ごめんね、蒼依さん……。好きな人の童貞、食べちゃうね……?)