若妻・由香利

著者: 熊谷禄朗

本販売日:1987/01/23

電子版配信日:2012/06/08

本定価:535円(税込)

電子版定価:660円(税込)

ISBN:978-4-8296-0104-4

一瞬の隙を衝いて押し入った男は、

若妻を羽交い締めにして下着まで毟った!

大の字にベッドに縛られ、剛直が肉の狭間へ……

悲嘆に暮れる若妻のもとを訪れた義妹は、

横たわる裸体を見て敵意をむき出しにする!

幸せな若妻を襲った悲劇は、レイプからはじまった。

登場人物

ゆかり 人妻

れいこ 女子大生

本編の一部を立読み

「ああ!」

由香利の抵抗などまるで意に介さず、指は楽々と急所に突き入ってきた。男の指は容赦なく肛門を犯しにかかる。それはあまりにも惨めな感触だった。

「どうした、力んでみせろ。俺の指をしぼってみろよ」

「ああ……」

由香利にはもうなんの気力も残っていなかった。ぐったりと、されるがままになっていた。男がゆっくりと指を抜いた。

青ざめた魚のように冷えきった身体のなかで、そこだけが妙にぬるく、痛痒く火照っていた。男の暴虐な指に押しひろげられ、風がわたっていく。

ジジジ……シュルッ……ウインドブレーカーが脱ぎすてられる音がする。つづいて、垢じみたジーパンがずりおろされる気配がある。

男が体を寄せてきた。熱く怒張したものが、尻の割れ目に当てられる。腰に腕がまわされ、由香利の下半身が持ちあげられる。

「お願いです、やめてください」

必死に振りたてる尻が無骨な手で押さえつけられ、男の猛りたつものの先がヴァギナの淵に触れた。

「私には夫も子供もいるんです。お願い……やめて……ああっ!」

ああ、神さま……。

男のものは、一気に根元まで深々と入ってきた。男の下腹を覆っている剛毛が、由香利の柔らかい尻をくすぐる。強靭な腰が抽送をはじめた。

「いや!……いや、もうやめて……」

だが、男は何も答えない。ベッドが軋みをあげた。次第に狂乱の度合が増してきた。

何度も何度も突きあげられて、いつしか由香利も、男と同じように息を荒げていた。伸びあがり、さらに伸びあがる。それでも男の硬い肉棒は、由香利の一番深いところをおびやかす。

男の腰が一段と激しさを増し、息をつめて体中の力を一点に向けてみなぎらせる。漏斗の口に向かって収斂されていく水のように、やがて動きがなくなる。

世界が熱く沈黙した。

由香利はその沈黙が何を意味するかを知っていた。由香利はそれを幾度となく経験していた。しかし、あの優しい愛の行為の中で起こるべきことが、こんな邪悪な暴力のさなかにも起ころうとしていることが、由香利には恐ろしかった。

「中には出さないで……お願い、外に……」

背中から由香利の肌に巻きついている男の腕に力が入った。男の腰が間歇的に強く上下した。

中には出さないで……由香利の見栄も外聞もかなぐりすてた悲痛な叫びも、ついには聞き入れてはもらえなかった。射精は由香利の中で起こった。身体の奥が熱くなった。

しばらくして、由香利の身体もビクンビクンと震えだした。震えはいつまでもとまらなかった。

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