私の寝室(へや)の前でなにをしてたの、幸治さん。
いいのよ、理由(わけ)を言わなくて……前から知ってたわ。
でも、私はあなたのお姉さん。お兄さんの妻なの。
二人きりの今夜だけ、今だけ望みを叶えてあげる。
私の熟れた身体、私の唇、全部あなたのもの……。
だから、ビクビクしないで寝室(なか)に入っていらっしゃい。
ゆみこ 兄嫁
なみこ 秘書
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「私のことが欲しいのね。欲しくて欲しくてたまらないんでしょう、幸治さん」
「ああ、優美子さん、ぼ、僕……」
「いいのよ、なにも言わなくても……私、ずっとわかっていたの。あなたが熱い視線で私を見ているのを……でも、私はあなたのお姉さんでしょう……好きになられてもどうしようもないの。でも、二人きりの今夜だけは、姉と弟の衣装を脱ぎ捨てましょう。今夜はあなたの望みをすべて叶えてあげる……」
言うつもりがなかった言葉を、とうとうとしゃべっている自分が不思議でならなかった。普段の自分なら、こんな大胆なことを言えるわけがないだろう。自分のなかにもう一人の自分がいて、その人物が勝手にしゃべっているような感じだった。
もしかしたら、夫が出張に出かけると聞いたときから、こうなるのを心の隅のどこかで願っていたのかもしれない。とにかく、もうあと戻りのできないところまできてしまったのだ。
ふたたび、唇を重ね合わせた優美子は、幸治の唇を割って舌を誘いだし、巧みに唾液を交換しながら、パジャマの前ボタンをはずし、上着をかなぐり捨てた。放り投げられた上着はふわりと宙を舞い、廊下に舞い降りた。
豊かな胸の隆起がじかに胸に押しつけられてくるのを感じた幸治は、矢も盾もたまらず、身を沈めて、廊下にひざまずいた。
熟れた白桃のような乳房が目の前に隆起し、豊かな房を揺らしていた。ああ、なんという素敵な乳房なんだ。
デッサンの授業で女性の胸は見馴れている幸治だったが、こんなに均整のとれた乳房は見たことがない。豊かな隆起は胸幅から完全にはみだし、ほれぼれするような見事な丸い曲線を双つ描きだしている。
ゆったりと裾野をひろげた円丘のてっぺんを飾る乳暈がまた、いかにも若々しい淡いピンク色をしており、艶やかなアクセントを乳房に与えていた。
瞬間的に美しい乳房の全貌を網膜に焼きつけた幸治は、感激に胸を震わせながら胸の谷間に顔を埋めた。
「ああ、優美子さん、ぼ、僕……」
「さあ、好きなだけ、私のオッパイを吸っていいわよ、幸治さん」
優美子はすがりついてくる幸治に身を預けたまま、乳房にむしゃぶりつく幸治の頭を抱き寄せ、やさしく髪の毛を掻き撫でた。
頬を包むふわふわした温かい肉の感触はたまらないほど心地よかった。手にあまる二つの乳房をわしづかみにした幸治は、肉のクッションで顔を包みこみ、めくるめく官能にむせびながら、ビロードのようになめらかな柔肌に頬をなすりつけ、盲滅法にキスの雨を降らせた。
「あ、ああ……こ、幸治さん……」
夫とのセックスでは味わえない新鮮な興奮が優美子を押し包んだ。もちろん、これが許されざる行為であることはわかっている。だが、その背徳感がいつにないスリルを興奮につけ加えていることもまた事実だった。全身を包む悦楽の渦は、もはや鎮めようのないほど勢いづきはじめていた。