本販売日:2023/10/23
電子版配信日:2023/11/02
本定価:825円(税込)
電子版定価:880円(税込)
ISBN:978-4-8296-4690-8
「康太の精子すごく元気。お腹の中、あったかいよ」
対面座位で身震いしながら幾度も絶頂を遂げる亜希。
まさか人妻になった親友とセックスする日がくるなんて。
学生時代から知っている亜希が初めて見せる女の顔に、
友達以上の感情が湧き、二人は許されざる決断を……
新世代エースが贈る大人の青春、最高の禁愛物語!
プロローグ 十年来の大親友
第一話 ただ、人妻の女友達と生でしているだけ
第二話 ただ、友人として互いに気持ちよくなるだけ
第三話 ただ、セックスレスの相談に乗って三回戦するだけ
第四話 ただ、勝負下着の効果をチェックするだけ
最終話 ただ、キスしながら二人で子作りするだけ
エピローグ 女友達が妊婦になりまして
あき(26歳)人妻
本編の一部を立読み
プロローグ 十年来の大親友
狭い部室で俺とやっさんが新入部員の到着を待つが誰一人訪れる気配が無い。
「誰も来ないな」
「ね」
やっさんは皺が気になったのか制服のスカートを軽くはたく。
「このまま部員が俺とやっさんだけなら文芸部は同好会に格下げだぞ」
「でも正直活動らしい活動してないからなぁ。あたし達」
「文芸部らしい活動って何すんだ?」
「そりゃあリレー小説書いたりするんじゃないの」
「そういうもんか」
「だね」
緊張感の欠片も無い間の抜けた会話を交わす。
俺とやっさんこと安田亜希は放課後ここに集まって、各々好きな小説を図書館から借りてきて読むだけだ。読書をしているならまだマシで、ただ雑談している事も多い。
やっさんとは中学も一緒だったのだが、その時は関わりが無かったので話した事が無かった。
仲良くなったのはこの高校に入ってからだ。何の部活に入るか決めかねていた俺は、当時の部長に一目惚れしたという不純な理由で文芸部に入った。そこでやっさんと出会い、何となくウマが合い、気の置けない友人として一年を過ごす事となる。
「今時文芸なんて流行らないのかなぁ」
やっさんはどことなく寂しげにそう呟いた。
「そんな事無いさ。きっと文学の道を志す有望な新入生がこの扉をその内ノックしてくれるだろう」
「女目当てで入部したミッチーが言うと説得力あるわ」
やっさんは皮肉たっぷりにそう言った。
ちなみにミッチーとは俺こと道長康太のあだ名である。やっさんとは出会って一ヶ月も経たない内にあだ名で呼ぶ仲になっていた。
「やっさんだって文学少女なんて感じの見た目じゃないだろ」
「人を見た目で判断するな」
そう言ってやっさんは対面する俺の脛を、机の下で爪先で小突いてきた。
色恋沙汰で文芸部員になった俺とは違い、やっさんは生粋の読書好きだった。
しかしそれほど長くない髪を後ろで纏めたショートポニーテールといい、フランクで気安い性格や言動はアウトドア派の印象を振りまいている。
「でもミッチーもこの一年で読書好きになったよね」
「おかげ様でな」
小説なんて今まで読んだことも無かった俺に、やっさんはお薦めの本を教えてくれて今では立派な読書家だ。最初は学校の図書館の本だけを借りていたが、今では放課後や休日にやっさんと一緒に街の図書館や書店を巡るという一応文芸部らしい活動もしている。
そしてその時借りたり買ったりした本は、お互いの家で読むというのがお決まりのコースだ。
今まで女子と付き合った事の無い俺だが、女子を自分の部屋に入れたり、または女子の部屋に入る事に何の緊張も無かった。きっとやっさんを女子として認識していないのだろう。
それは俺が先輩に恋をしていたという事もあるが、やっさんとは友人として波長が合い過ぎていて異性として見られないという理由が大きい。やっさんも俺の事を男として見ていない。
しかし友人の名誉の為にも補足しておくが、やっさんは客観的に見て魅力的な女性だと思う。その性格は勿論、目鼻立ちも整っている。若干たれ目がちで猫のように愛くるしく、そして睫毛が長い。鼻筋も通っている。実際に男子からの人気はそこそこ高いらしい。
『康太は良いよな。安田さんと二人きりで部活できて』
男友達からそんな羨望の言葉を投げかけられた事だって何度かある。
しかし繰り返すが、やっさんとの密室での時間は俺にとっては空気のようなもので、とても落ち着く時間だ。
どういうわけか男友達と居るよりも余程気兼ねなくリラックス出来ている。童貞なのに。
「ま、同好会に格下げされたらされたで別に良いじゃん。仮に部室が無くなっても、今まで通り図書館に出かけるかお互いの家で読書してたら良いんだし」
やっさんはそう言いながらパイプ椅子に背中を預けた。
「そうは言ってもだな。部長に存続を頼まれたからな」
「そういえば振られたね。その部長に」
「掘り返すなよ。折角失恋の傷が癒えてきたところなのに」
「あはは。ごめんごめん」
彼女は屈託なく笑うと言葉を続ける。
「でも頑張ったじゃん。桜舞い散る卒業式に告白なんてドラマティックだったよ」
「その件ではお世話になった。改めて礼を言う」
俺はやっさんに頭を下げる。
恋愛相談から告白の段取りまで俺は彼女におんぶに抱っこだった。他に女友達なんて居なかったし、女子の機微を随分と学ばせてもらった。
「あたしらの仲じゃん」
やっさんは益々後ろへ仰け反っていく。
「やっさんも好きな人が出来たら俺に相談してくれよな」
「ん〜。今のところはそういうの無いかな」
「新しいクラスで良いなって思う人居ないのか?」
「居ないなぁ」
彼女は天井を見上げながら、どこか遠い目をしながら言った。
「どういう男がタイプなんだ?」
「年上」
即答する。
「あ〜、分かるかも。やっさんは大学生とかの彼氏が似合いそう」
「大学生はチャラそうで嫌だなぁ。逆にミッチーは年下の彼女似合いそうだよ」
「そうかな」
「そうだよ。後輩狙ってけ」
「後輩ねぇ……文芸部に入ってくれると良いけどな」
そこで一旦会話が途切れる。かといって気まずい空気にはならない。俺とやっさんの間では熟した友情が成立している。
そんな静寂を彼女が天井を見ながら破る。
「てかさ、本当にもう失恋の傷は癒えてきてるの?」
「なんだよそれ」
「だって振られた後すごい号泣してたし、その後数日寝込んでたじゃん」
「……まぁ、一世一代の大恋愛だったからな」
「本当に立ち直ってるのかなって、親友としては思うわけですよ」
「心配すんな。これも青春の一ページとして受け入れていくよ」
「なんならおっぱい触る?」
やっさんは椅子の背もたれに体重を預け、天井を仰ぎながら何でもないようにそう言った。
「なんでそうなる」
「男の子はそれで元気になるって一説を聞いたからさ」
俺は考え込む。
確かに女子の胸部は俺にとって未知の理想郷である。
しかし相手はやっさんだ。
異性のいの字も感じない友達である。
「こう見えてあたし結構隠れ巨乳だよ。Fカップあるし」
「触らせて下さい」
その魅惑のカップ数は、俺の葛藤を一瞬でどこかへ放出した。
「よし来た」
やっさんは後ろに掛けていた体重を反動にして前のめりになる。そして胸を張ってどこか得意気な顔を浮かべた。
「あたしのおっぱいで癒されるといい」
「……失礼します」
俺の手がやっさんの胸に伸びる。
そこに童貞としての不安感や緊迫感は無い。女性の身体を触るという高揚も感じない。
ただ友達とスキンシップをする。
そんな気軽なノリだった。
俺の手の平がやっさんの胸を正面から鷲掴みにする。制服の上からでも確かに感じる柔らかな弾力と質量。
「どうすか?」
やっさんが尋ねる。
「……なんだろ。まぁこんなもんかって感じ」
机の下でまた脛を小突かれる。
「もっと感動しろよ。童貞の癖に」
「やっさん相手に無理を言うな」
確かに心地の良い感触ではあった。俺の手の平は悦んでいる。しかし心は弾んでいない。
俺はその現象を一言で纏める。
「やっさんの胸にはロマンが詰まってないんだよな」
「いやいや。自分で言うのもなんだけど希望の塊でしょ。女子校生のFカップだよ?」
「脂肪の塊じゃなくて?」
「お、上手いね」
「あくまで俺にとっては、って事ね。そりゃ大概の男にとっては垂涎の代物だとは思うよ」
「そっか。まぁあたしらの間柄じゃそうなるか。力になれなかったな」
「いや、その気持ちが嬉しいよ。ありがとうな」
「いえいえ」
「はぁ……俺って彼女出来るのかな」
「大丈夫だって。それにほら、もし三十歳まで独身だったらあたしが貰ってあげるから」
「それも良いかもな」
「でしょ? あたし達ならきっと楽しそうでしょ?」
「でもやっぱり好きな人のおっぱい触りたいな」
俺のそんな言葉にやっさんは手を叩いて大笑いした。
そして高校時代、俺は結局彼女も出来ずに卒業を迎える。ちなみに文芸部は潰れて、俺とやっさんで慎ましく同好会を続けた。
大学はやっさんとそれぞれ別の進路を進む事になる。それでも親交は続いた。お互いの一人暮らしの部屋を往来し合い、時には雑魚寝で泊まる事もあった。それでもやはり俺達の間に異性のいの字も発生しない。
相変わらずモテなかった俺とは違い、やっさんにはすんなりと年上の彼氏が出来た。元々引く手あまただったのだから当然だ。親友の魅力が認められるのは俺としても誇らしい。
特に成人したやっさんは客観的に見ると、女性としての華を完全に開花させたように思える。
それでもやはり俺にとっては何でも話せる距離感皆無の友人でしか無かったのだ。
「相手は社会人なんだって?」
「そう。しっかりしてる人でさ」
「そりゃ良かった」
「ミッチーも早く彼女作ろうよ。ダブルデートとかしようぜ」
「まぁ正直気になる子はいる」
「マジで? 告白しちゃお」
不思議とやっさんに背中を押されると、妙な万能感に包まれる。何でもやれる気が湧く。
俺は翌日告白し、そして交際の承諾を得た。
俺はすぐに歓喜の電話をやっさんに掛け、そしてやっさんも飛び跳ねて喜んでくれた。
しかし半年ほどで振られた。
号泣した。
夜中の人気が無い公園のベンチで、俺とやっさんは安酒で酔っ払っている。夏なので公園灯には羽虫がやたらと集まっていた。
情けなくも嗚咽を漏らす俺の背中を、やっさんは優しくも鼓舞するように叩きながら言う。
「ほら、これは人類にとっては小さな一歩だけど、ミッチーにとっては大きな一歩だって」
「うぐぅ……」
俺は声にならない呻きを上げながらも頷いた。
やっさんはそんな俺を見ていられないといった風な様子で言う。
「またおっぱい触る?」