05/02 電子版発売

女友達が未亡人になりまして

著者: 懺悔

本販売日:2024/04/23

電子版配信日:2024/05/02

本定価:825円(税込)

電子版定価:880円(税込)

ISBN:978-4-8296-4724-0

「もっと濃い精子を、悠馬の精子をなかに出して」
27歳の若未亡人に囁かれ、子宮の奥に注ぎ込む白濁。
澪は亡き親友の妻、そして俺がかつて恋していた女。
心に巣くう罪悪感に反し、全身に巻き起こる激悦。
友人の妻に欲情する獣に俺はなりたくない、でも……
新世代エース・懺悔が贈る、興奮して泣ける官能小説。

目次


プロローグ 遺志

第一話 亡き友の妻に中出しして

幕間 十年前

第二話 本能が理性を上回って

幕間 三年前

最終話 淫情と感情が張り裂けて

幕間 半年前

エピローグ 未来

本編の一部を立読み

プロローグ 遺志

 冬が終わり長袖だと汗ばむ程の陽射しが差す季節になった。
 都心から車で一時間ほど走るともう長閑な風景が広がり始める。背の高いビルはとんと見かけなくなり、国道沿いに様々なチェーン店が建ち並んでいる。如何にもな地方都市といった趣だ。
 そこから更に山脈の方へと向かうと田園地帯が広がり、その辺りに住宅地が点在していた。
 その中の一つが俺の目的地である。
 俺が運転するSUVのナビがとある和風な古民家の前でルート案内を終了する。親友の家に到着したのだ。
 土地が安いのか庭はやたらと広く、大きな車でも駐車するのは容易だった。俺はエンジンを切った車の中で少しだけ考え事をする。しかし何を考えるべきなのかすら纏まらない。
 結局彼女に掛ける言葉一つ見つからず、俺は車を降りた。雲一つ無い晴天からは春の到来を予感させる柔らかい陽射しが降り注ぐ。もうコートは必要無いかもしれない。
 安く買った古民家を修繕したとは聞いていたが、思った以上にその一軒家は小奇麗だった。なんでも業者に頼まず自力で仕上げたらしい。
 そういえば『省吾』は昔から手先が器用だったことを思いだす。学生の頃はプラモデルを作るのがとても上手だった。
 俺は引き戸の玄関の前に立つと、突っ立ったまま後頭部を掻いた。さて、どうしたものか。
 少し伸ばし気味だった茶色い髪が指に纏わりつく。
 中々呼び鈴に指が伸びない。彼女に会うのは最後に三人で呑みに行った時以来だ。ひと月振りくらいになる。
 やはり引き返して帰ろうか、なんて弱気すら頭に浮かんだ。
 俺はそんな自分を嘲るようにため息を吐く。
 そしてようやく覚悟を決めて呼び鈴に手を掛けた。その瞬間、玄関が勢いよく開く。
「いつまで玄関の前で突っ立ってんの」
 俺は驚く暇すらなく彼女と対面した。『省吾』という親友の妻、いや、今は未亡人となった澪は昔と何も変わらない。長い黒髪に小さな顔。愛想の悪い猫のような目つき。中肉中背でどこか儚い存在感。
「ビックリするじゃないか。出迎える為に待っててくれたのか?」
「そんなわけないでしょ。玄関先を掃除してたらいつまでも動かない人影が見えたからどうせ悠馬だろうなって。あんたいつもぼうっとしてるから」
 澪の口調は冷淡にも聞こえるが、本人曰く特に機嫌が悪いわけでもなくこのテンションの低さが通常運転らしい。
「散々な言われようだ」
「それで? 入るの? 帰るの?」
 そこでやっと俺の決意が固まった。というよりは他に選択肢が無い。
「お邪魔するよ」
 澪は無言でスリッパを用意してくれた。俺は靴を脱ぐとそれを履く。すると美緒はやはり何も言わずに家の奥へと歩いていく。俺はその背中を追った。
「どんなボロ家かと思ったけど、随分と綺麗だな」
 新築みたいとまでのお世辞は出なかったが、築数十年の建物には見えない。床の木目も鮮やかだ。
「あの人が色々と手を入れたから」
「『省吾』は日曜大工も得意だったろうからな」
「そうだね。よく休日にはホームセンターで木材を買ってきてノコギリで切ったりしてたよ」
 相変わらず澪の口調は平坦で距離感を感じるものだったが、どこか得意気にも聞こえる。
 澪が俺を案内したのはとある和室だった。縁側からは陽射しが入って明るい印象の部屋だ。
 そこには仏壇が置かれており、俺は無言でその前に正座した。遺影に映る『省吾』の笑顔は今にも豪快な笑い声が聞こえてきそうだ。
 俺は喪服どころかスーツ姿ですらなかったがそれに関して澪は何も言わない。俺と『省吾』の間にそんな堅苦しい慣習は不要だと理解している。
 澪もカジュアルな服装をしていた。細身のボディラインが出るタイトな白いワイシャツにジーンズ。彼女が好むスタイルだ。『省吾』が好む装いでもあった。
 仏前に座り手を合わせる。
 そして十年来の友人に対して心の中で愚痴を零した。
 あまりに唐突で、そして早すぎるだろう、と。
 道路に飛びだした子どもを庇って車に轢かれるなんて、今時漫画でもお目に掛からない。あまりに陳腐だ。
 でもお前らしい死に方だよと納得もしている。
 子どもはかすり傷一つ無かったみたいだぞ。良かったな。俺もお前が誇らしいよ。
 とはいえ手放しで褒める気にはなれない。
 俺と殴り合ってまでハートを射止めた澪を一人にさせるなよ。澪だってお前にべた惚れなんだぞ。
 しばしの黙とうの後、背後に居るであろう澪に尋ねた。
「この写真はいつ撮ったものなんだ?」
 さして興味があるわけではない。『省吾』はどんな時でもこんな風に満面の笑顔を浮かべていたからだ。
 頼り甲斐のある力強い白い歯と口角。それが彼のトレードマークだった。
『省吾』について語る時、全てが過去形になってしまうことに気付く。その事実は背中を物悲しくさせた。
 澪は俺の問い掛けに対して間髪入れず言葉を返す。しかしその内容は会話になっていない。
「薄情者」
 その声色には本気の怒りは混じっていない。どちらかといえば俺をからかっているようにも感じる。
 言葉に詰まる俺に対して澪は言葉を付け加えた。
「通夜も葬式も顔を出さないなんて」
 俺はため息をついてから弁明する。
「海外出張中だったんだから仕方ないだろ」
「でも旦那は絶対悠馬に出席して欲しいと思ってた」
「大雑把なあいつがそんな繊細なことを気にするタマかよ」
 俺の主張を澪は真っ向から切り伏せた。
「旦那はきっと悠馬に死に顔を見てもらいたかった。火葬する時も見送ってもらいたかったに決まってる」
 俺は何と言えば良いのかわからずに、頭を掻きながら座ったまま澪の方へと振り返る。
 澪は仁王立ちで俺を見下ろすように睨みながら、下唇を噛んで不満そうな表情を浮かべている。
 落ち着き払ったというよりはもはや悟りを開いたかのような泰然とした物腰で、感情が読み取りにくい澪ではあるが今はわかりやすい。
 俺を非難しているのだ。
「……そうだったのか?」
 俺は『省吾』の遺影に問いかけた。
 しかし当然誰も何も答えてくれない。
 代わりに未亡人となった澪が問い詰めるように尋ねる。
「そんな話を旦那としたことないわけ?」
「ねぇよ」
 俺と『省吾』、そして澪を含んだ三人はまだ二十七歳だ。理想の死に方を語るには中途半端な年ごろだろう。
「あんた達はどんなことでもわかり合ってたじゃない。あたしを差し置いて」
「なんだ。妬いてたのか」
 俺が茶化すと澪は間髪入れずに答える。
「当たり前でしょ。付き合ってるのかと疑ってたくらいなんだから」
「俺もあいつもストレートだよ」
 苦笑いを浮かべてもう一度遺影と向き合う。
「俺が死ぬ時は樹海の奥でひっそりと誰にも知られることなく朽ち果てていきたいけどな」
 俺の独り言に澪が反応した。
「だったらやっぱり旦那は悠馬に最期を送られたかったんじゃない」
「どうして」
「あんた達は正反対だったから」
「確かにそうだな」
 そして俺は立ち上がりながら呟く。
「ま、どちらにせよ、そんな細かいことを気にする奴じゃないよな。お前は」
 そして澪と向き合った。互いに平均的な背丈なので、俺が頭一つくらい高い。『省吾』はそんな俺の更に一回り大きかった。俺は華奢な方だが澪は当然女性なので更に細身で、そんな『省吾』と澪が並ぶと美女と野獣、もとい無愛想な猫とプロレスラーといった風体だった。
「それで、これからどうするつもりだ?」
「どうもこうもしないわよ」
「何かあったら頼ってこいよ」
「別に悠馬の助けなんて要らないわよ」
 確かにその通りだ。澪は感情を表に出さないので気が強いわけではないが、人間としての芯は誰よりも強い。
 そして有資格者の税理士として働いているので経済的な問題も無い。一介のサラリーマンの俺よりもよほど稼いでいるだろう。
 澪は繰り返す。
「助けは要らない。でも旦那の遺志は一緒に達成してもらう」
 俺は眉をひそめた。
「……遺志? もしかしてあの戯言か?」
 澪は眉根一つ動かさず、落ち着き払った様子で言う。
「旦那はあたしの子どもを見たがっていた。そしてもし自分の身に何かあったら、悠馬と子どもを作って欲しいって常々言ってた」
 確かにあの馬鹿は、そんなことを口にしていた。よりにもよって昔、親友でありながらも恋敵だった俺に。

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