エンドレスハッピーハーレム 神の手違いで死んだらモテ体質になって生き返りました

著者: かくろう

電子版配信日:2024/05/24

電子版定価:880円(税込)

「私たちと一緒にハーレムつくろ」美少女アイドルユニットが
俺の前に現れて、いきなりエッチなダブルご奉仕を!?
神の手違いで死んだお詫びに、精力絶倫のモテ体質に魔改造された誠也。
家が隣同士の幼馴染み・梨紗、超ハイスペ生徒会長・春菜、
憧れの先輩・詩織、お嬢様な後輩・桜花も次々と俺のハーレムに……
突然の幸運に戸惑いながら、神ボディとモテモテスキルによって、
仲良しハーレムでひたすらイチャLOVEするエンドレスでハッピーな楽園、開幕!

目次

第零章 天使たちの淫らな踊り

第一章 幼馴染みとアイドル

 ◇プロローグ 神との邂逅

 ◇第一話 幼馴染みのあいつ

 ◇第二話 神の力 発情

 ◇第三話 熱に浮かされた初体験

 ◇第四話 これからのこと

 ◇第五話 朝チュンな目覚め

 ◇第六話 『深窓の令嬢』風『庶民派少女』

 ◇第七話 パワフル生徒会長

 ◇第八話 ガチのお嬢様と梨紗の悩み

 ◇第九話 一世一代の大勝負

 ◇第十話 彼女でいたい。一人だけがいい。だけど

 ◇第十一話 梨紗の理由

 ◇第十二話 何かが始まりそうな予感

 ◇第十三話 天使の少女

 ◇第十四話 あなたへの愛 その形

 ◇第十五話 梨紗の愛し方

 ◇第十六話 破天荒な天使登場

 ◇第十七話 ハーレムを作ろう

 ◇第十八話 フリーダム母さん

 ◇第十九話 新しい何かが始まるデートの日

 ◇第二十話 二人の天使

 ◇第二十一話 国民的美少女アイドルユニットは君に夢中

 ◇第二十二話 長い間見ていた夢

 ◇第二十三話 小さな魔性 フィリエリール

 ◇第二十四話 天使の織りなす淫らな宴

 ◇第二十五話 そんなこんなで順調にハーレムしてます

 ◇閑話 女神再び

 ◇特別書き下ろし 独占できるのは今日が最後かもしれないから

本編の一部を立読み

第零章 天使たちの淫らな踊り



「あ、はっ……うん……ああ!」
 目の前に裸の少女がいた。
 細い、しかし健康的に引き締まった脚。
 ほどよく肉付きの良い太もも。
 そこから広がるふくよかなお尻。
 相反するようにキュッとくびれたウェスト。
 豊かなバスト。
 くぼんだ鎖骨。
 黒く、つややかなロングヘアーは一つにまとめられポニーテールになっている。そこから見えるうなじは男のリビドーを激しく刺激する美しい少女。
 普段は気が強く、切れ長に見えるその瞳も今は潤み、目尻が下がっていた。
「あ、ああ。いいよ……奥に……入ってる。もっと!」
 目の前の少女は俺の上にまたがり腰を振っている。そう、俺はこの美しい少女と今セックスをしているのだ。
 幼馴染みのこの少女【篠沢《しのざわ》 梨紗《りさ》】。
 まさかこいつとこんな関係になるなどと想像すらしていなかった。妄想はしていたけどな。
「あ、誠也……好き、好きなの、好きぃ」
 愛を囁きながら梨紗が腰を振るたびに目の前にある豊かなバストが上下に揺れる。頬を真っ赤に染めて夢中になって腰を振る梨紗の膣の刺激に思わず俺もうめき声を上げた。
「くっ……梨紗、うあ、すげぇ」
「誠也、あん、気持ちいい? あたしの膣内《なか》、気持ちいい?」
「ああ、気持ちよすぎて、もう、限界が近いぜ」
「出してぇ、私の中で、いっぱいビュウビュウしてね」
 射精が近いことを知った梨紗は歓喜に満ちた表情で強く腰をグラインドさせる。
 子宮の奥にペニスの先端があたりコリコリとこすられる。
 完全に男の精を搾り取る動きをし始めた極上の快楽が梨紗の膣内を伝わって俺の脳髄に甘い痺れをほとばしらせた。
「うふふ、もう少しですわお兄様。桜花が更なる快楽をご奉仕いたします」
「じゃあフィリも手伝う」
 梨紗が興奮した様子で腰を振っている横から別の少女が、それも二人ひょこっと顔を出す。
 片方は綺麗に切りそろえられた黒の前髪を垂らし長い舌先に唾液を絡みつけて俺の乳首をくるくると舐め回す。
 彼女の名前は【歌島《うたじま》 桜花《おうか》】
 まるで日本人形のようにしっかりと手入れされた美しい艶髪は彼女の育ちの良さを表しているようだ。
 もう片方の乳首を舐め回しているのは金髪の美少女。
 青く透き通るような瞳と輝きを放ったブロンドの髪。
 端整な顔立ちは色素の薄さが幻想的で、まるで妖精が人間の姿を借りているかのように現実離れした美しさを持っているフィリエリールというアイドルだ。
 彼女は俺もファンクラブに入っている二人組アイドルユニット【フェアリーチャーム】の片割れだ。
「ん、ちゅううう」
「ちゅるる、じゅぞぞぞ」
「くぉお、それやばいっ!」
 二人の愛撫が手伝って梨紗の膣内で暴れていたペニスが更に硬さを増す。
「あん♡誠也のおちん×ん、またおっきくなってる」
「はぁッ! うぁ!」
 もうそろそろ射精してしまいそうになった頃、俺の睾丸を柔らかくて温かい何かが包み込む。
「うひひ。誠也ちゃんってばタマタマがキュッてなったよ。もうすぐ射精しちゃうんだね。ん、ちゅ、れるれるれる」
「うっはぁう、春姉、それっ、あ、ダメッ」
 俺の睾丸を舐める頭が見える。魅惑的な大きな尻をフリフリと左右に振って誘うように動いてみせるのは【小牧原《こまきはら》 春菜《はるな》】先輩。通称は春姉《はるねえ》。
 俺の通う加美佐馬学園の生徒会長にして学園のカーストトップに君臨する間違いなく人生の勝ち組。
「んぁあ、ああ、あ、出てる、誠也の精液、出ちゃってるぅ」
 身体の奥底から湧き出る泉のように射精が止まらない。
 通常の人間ではあり得ない大量の精液が女の膣内を満たしていき、ビクビクと痙攣するたびに尿道に残った汁が梨紗の中へと入っていく。
「ん、はぁ、はぁ、最、高ぉ」
 恍惚の表情でペニスを引き抜く梨紗。ドロリとしたたり落ちる精液が俺の腹に水たまりを作る。
「あん、もったいないよ。ぺろ、ちゅ」
 その液体を俺の腹から舐めとるのは蠱惑的な瞳を持つ美女。
 おしとやかさと妖艶さを併せ持つ学校のアイドルは他の女から這い出た残り汁を愛おしそうに口内に吸い取っていく。
「詩織先輩、メチャエロいっす」
「うふふ、誠也君こういうの好きだよねぇ」
 俺の趣味趣向に合わせて扇情的にも純情にもなれる詩織という少女は俺の通う学園のアイドル的人気を誇る天上人だ。
 いや、詩織先輩だけではない。
 梨紗も、桜花も、フィリも、春菜先輩も、誰一人として俺なんかとこんな縁のある人物ではなかった。
 そんな一生交わることの無いと思っていた美少女たち。
 それも複数の女の子たちが、こんな何でも無いような平凡な男を「好き」「愛してる」とささやきながら喜んで身体を開いてくれる。
 なんという夢のような光景だろうか。
 未だに朝起きたら単なるエロい夢を見ていたのではないかと不安になる。
「ほら、今度はお待ちかねのあの人だよ」
「誠也様……ッ」
「リリシス……」
 梨紗たちが促し、導くように左右に捌けるとベッドの真ん中にひときわ美しい少女が横たわっている。
「どうか、どうかリリシスのおま×こに誠也様をください」
 それは憧れの女の子。
 決して、決して手が届くことのないと思っていた初恋の美少女。
【リリシス・シュエルレーゼ】
 フィリが組んでいるユニット「フェアリーチャーム」のもう一人。
 俺が憧れ、何度も想像し、妄想し、夢にまで見た女の子。
 彼女は、ある日突然俺のもとへとやってきた。
『あなたに、お仕えします』
 小さな頃から憧れたアイドルの口からそんなことを言われ、俺は雷に打たれたような衝撃を覚えた。
「この身は、あなた様のために……どうか、お好きになさって。愛して、ください」
 射精したばかりだというのに天を衝く怒張が痛いほどに勃起する。
 ギチギチと血液が肉壁を圧迫し、はち切れんばかりに膨らんだペニスに手を添え、両脚を持ち上げていつでも俺を受け入れる準備万端のリリシスに迫っていく。
「リリシス、入れるよ」
「はい……来てください、誠也様、愛して、おります」
 耳に張り付くチャームボイス。
 俺が分身を突き入れることで、普段は世の男たちに歌声を届けている細い喉から甘く淫らな嬌声を上げさせることができると想像しただけで脳汁がドクドクと溢れ出して興奮が強まっていくのが分かった。
 ああ、本当に夢のようだ。
「ん、はぁ、ぁああ、誠也、様ぁ♡」
 どうしてこんなことになったのか。
 俺は入り口にあてがったペニスがリリシスの小さな割れ目に沈み込み、彼女の喉から漏れ出る甘美な歌声に啼く音を聞きながら、どうしてこんなことになったのかを思い出していた。
 これより始まるのは不慮の事故で死にかけた俺が、俺のために生まれ変わってきたという運命の女の子たちとひたすら幸せになっていく物語。
 まずはその最初のきっかけとなった事件から話していくとしよう。
第一章 幼馴染みとアイドル


 ◇プロローグ 神との邂逅



 白く、白く、限りなく、どこまでも白い世界が視界を支配する。
 ここは一体どこなんだろう。
 いつものように帰宅の途につき、風呂に入って夕食を済ませ、シングルマザーの母がお付き合いしている男性の家へとおめかしして出かけていくのを見送り、いつものように憧れのアイドル【フェアリーチャーム】のライブDVDを見ようと二階にある自分の部屋へと階段を上っていた。
 俺は、そうだ……階段で足を滑らせて、いや、確かに足が何かに引っ張られた感触があった。
 木造の階段を後頭部からダイビングした俺の頭蓋骨が衝撃を受けて砕けた感触を思い出して身震いをする。
 慌てて我に返った俺は手を動かした。指は動く。後頭部を触り少し硬めの自分の髪の感触を確かめた。
 いつも通りの若干ゴワゴワした髪は手触りが良くなくて自分ではそんなに好きではない。
 だがそこにあったはずの傷は無く、俺は後頭部を強打したことは夢だったのではないかと錯覚した。あれは確実に頭蓋骨が逝った音がしたんだが。
 あの感覚は夢だったのか。それとも……
「生きてる……?」
 そして俺は地に足をつける。地面とは思えないほどの何も無い真っ白な空間は、地面に足をつけられなかったらどっちが上なのかも分からないほど何も無い空間だった。
 俺は、うん、そうだ。俺は【神沼《かみぬま》 誠也《せいや》】。青春真っ盛りの学園生だ。今日は先輩に無理矢理引き込まれた生徒会の仕事を終えて夕方過ぎに帰宅の途についた。
 そして自室への階段をいつも通り上っている最中、急激に身体が何かに引っ張られるような感覚があって、それから。
「まさか、これって死後の世界、とか?」
 現実に意識はあるのにどこか自分が自分でないような気がする感覚。
 自分の手を閉じたり開いたりして感触を確かめるが、確かな感触がありながらどこか頼りない気がするのはこのヘンテコ空間のせいだけでは無い気がする。
 キィイ……ン
「ん? な、なんだッ!?」
 奇妙な、空気を切り裂くような音が聞こえて何気なく上を向くと大きな光に包まれた塊がもの凄い勢いでこちらに向かってきているのが見えた。
 徐々に大きくなってくるそれは真っ直ぐに俺の方向へと落ちてくる。まるで隕石のように。
「うおぁああああ」
 ズドォォオオオオォォオオォオオンンンンォォォン……。
 このままでは衝突すると思われたその塊を必死の思いで避ける。
 衝撃的大爆発を起こした真っ赤な塊は、そのまま土煙を上げながら粉塵をまき散らした。
 しかし不思議なことに衝撃を感じたのは衝突の一瞬だけで、立ちこめる煙も炎の残り火も一切熱を感じないどころか爆風すら起こらなかった。
「な、何が……」
「神沼、誠也さんですね……?」
「え?」
 尻餅をついた俺は聞こえてくる謎の声に間抜けな顔を晒した。
 こんな訳の分からない空間で自分の名前を呼ばれることになるなど思わなかった俺は事態が呑み込めずに困惑するばかりだった。
「え、あ、ハイ……え? だ、だれ……?」
 名前を聞かれて思わず答えてしまう。
 土煙の中から徐々に浮かび上がってくる人影。
 それは、女神と見紛うほどの美しい女性だった。
 顔立ちは整い、眉は柔らかく薄い。睫毛はピンとカールしており人形のように長い。
 肩から腰にかけて胸の開いた扇情的なドレスを纏い、スリットから覗く生脚は白い彫刻のようにシミ一つなかった。
 ギリシャ神話に出てくる女神を彷彿とさせる美少女の顔立ちはどことなく幼さが残る造形をしていながらあまりの美しさに声が出なかった。
 なによりも目を奪われたのはその輝くプラチナ色の髪の毛だ。
 輝くってのは比喩でも何でもなく、実際に後光が差して眩しいほどに柔らかい光を纏っていた。
「め、女神、様……?」
 思わず口をついた女神という言葉。彼女はまさしく人間ではあり得ないほどの極上の美を備えた美しさの化身だった。
 なぜだろう。彼女を見ているとどういう訳か懐かしい気持ちが湧き上がってくる。
 こんな美人は一度見たら絶対に忘れないだろうに、見たことが無いはずの彼女を見たことが、いや、会ったことがあるはずなのに思い出せないという訳の分からない感情に困惑を覚えた。
「このたびは……」
 ダンッ!!
「えッ?」
 美少女女神(仮)が突然屈伸したのかと思いきや上空高く飛び上がる。
 そして空中でクルリとウルトラC級の二回転を決めた後、自由落下と共に身体を丸めていく。
「申っし訳ありませんでしたぁぁぁぁあぁああああ!!!!!」
「ええ!?」
 土下座である。それはもう見事なまでに完璧な土下座であった。
 俺は面食らった。なぜなら女神と見紛う美しい少女がいきなりフライング土下座をかましたら誰だって驚くだろう。
「いや、ほんとに申し訳ない! なんとお詫び申し上げたらいいか。この上は腹かっさばいて」
「ちょ、ちょちょちょ待ってって。いきなり切腹宣言されても何が何だか」
 カオスな光景に頭が混乱した。訳が分からない。
「そ、そうですね。すみません。まずは状況の説明をば」
 少女は居住まいを正しスカートの埃を払う。
「神沼誠也様。いきなりのことで混乱していることでしょう。私は、ソフィア。一応、この世界で神をやっております。以後お見知りおきを」
 そう言うとぺこりと頭を下げる。胸元が大きく開いたスリットドレスから垂れ下がった布地の奥に桜色の突起物が目に入る。
 顔立ちは幼いのにそれなりに育った立派な形をしている、ってッ、俺は何を見ているんだ。
 こんな状況だというのにスケベ心を忘れない自分に悲しくなる。
 それにしても神様? この少女が? 確かに女神と見紛うほどの美しい少女だが、その背丈は思った以上に小さく俺の胸のあたりまでしか無い。
 神様っていったら真っ白い髭生やした老人ってイメージだが、この少女が神なんだとしたら死後の世界というのも案外悪くないのかもしれない。
 しかし俺はその女神様から絶賛頭を下げられている真っ最中である。
「こちらへどうぞ」
 やがて頭を上げた女神様はいつの間にかその空間に現れていたテーブルと椅子に案内してくれた。
 ティーカップとケーキスタンドを備え付けた優雅なアフタヌーンティーセットは真っ白な世界に彩りを加えている。

 ◇◇◇◇◇

 愛くるしい顔立ちの小さな女神ソフィアちゃんは俺が置かれている状況を説明し始めた。
 いわく、俺はどうやら死んだらしい。
 だが本来は死ぬ予定ではなく、とある手違いによって無理矢理死後の世界に引っ張り込まれてしまったところを慌てて拾い上げたらしい。
 どうやら階段で足が引っ張られた感覚があったのは、寿命を管理している命の灯火が消されてしまったため無理矢理死ぬ状況が作られたからだという。
 なんとも適当な理由で死んでしまった俺をこのまま輪廻転生の流れに入れることはできないので、肉体を神が作った生前の俺そっくりの新しいものに入れ替えた状態で蘇生させる必要がある、という説明をされた。
 なんでも死んでしまった俺の肉体は、脳が手遅れなダメージを受けてしまっておりこのまま魂を戻しても再び即死してしまい、そうなったら今度こそ本当に死んでしまうとのことだ。
「というわけでぇ! 神の手違いで死んだらチートがん積みで異世界に放り込まれて無双しちゃおうぜ! みたいな展開にしようと思っていたのですがッ、あいにくと現在は異世界が平和そのもので解決すべき案件もなく全然面白くありませんから」
「異世界とか本当にあるんですね」
 話がぶっ飛びすぎててにわかには信じがたいが、神様が俺のおでこに指を置くと脳内に信じられないほどの情報量が流れ込んできた。
 宇宙の始まりから現在に至るまで、星々が生まれては消滅し破壊と再生を繰り返してきた歴史が一秒で理解できた。
 そんなとんでも映像を見せられた俺は、目の前の少女が神様なんだと信じざるを得なかったのである。
「ええ。剣と魔法が当たり前のコテコテファンタジー世界があるんですが、そっちの案件は既に解決してしまっていて理由も無く異世界転生させてしまうと宇宙軸のバランスが狂って天変地異が起きかねません。とりあえず世界の半分の大陸は沈むでしょうけど異世界転生にしますか?」
「そんなん聞いて行くなんて言えるわけ無いでしょ! 俺、凡庸な学生ですよ? そんな危険な世界へ行ってまともにやっていけるとは思えませんから結構です」
「いやぁ、誠也さんなら案外いけそうな気がするんですけどねぇ」
 何を根拠にそんなことを言うのか。
 たしかに興味はあるが、実際に戦いのある世界に行って生のバトルなぞできるはずもない。
 格闘技の経験もろくに無い人間がそんな世界に行ってまともな活躍ができるとは思えん。
「論点がズレそうなんで話をもとに戻してもいいでしょうか?」
「はい、すみません。それでですね。誠也さん、手違いで死んだあなたを私が拾ったのも何かの縁です。こちらのミスを埋める代わりといってはなんですが、あなたには私から祝福を授けましょう」
「祝福?」
「端的に言えば女神からのギフトというやつです。ほら、異世界転生とかでよくあるやつですよ」
 ああ、異世界転生物の小説とかだと始めから強い能力をもったりレアなスキルで強くてニューゲームができて無双できたりというやつがあるな。
「いや、そういうのはいいですよ。なんか普通の人生歩めなくなっちゃいそうだし」
 はっきり言って気にならないといえば嘘になる。
 しかしたとえギフトで、そうだな、例えばチート能力みたいなものを授かって人生を有利にしたってそれは自分の力で勝ち取った人生といえるだろうか。
 もしかしたらそんな便利なものではないかもしれないが女神様の口ぶりから考えて大分スゴそうだ。
「まあまあそんなこと言わずに受け取ってくださいよぉ。そうじゃないと神の面目丸つぶれですからねぇ。お願いしますよ誠也さぁん」
 女神様はもみ手をしながら異様にプッシュしてくる。引くつもりはないようだ。
 そこで俺はなぜだか猛烈に嫌な予感がした。
 なんだろう、この女神様。随分と俺にギフトとやらを渡したがっているような。
「いえ、俺は普通の人生を歩みたいので、本当に結構です。お気持ちだけ受け取っておきますから」
「いえいえ、ただいま女神キャンペーンの期間中でして、一兆年に一度の大チャンスなんですよ。お得でっせ旦那!」
 ますます怪しい。女神はこびた笑いを浮かべながらもみ手の速度を速めて迫ってくる。
「なんだかイヤに押してきますね。俺がギフトを断ると困る理由でもあるんですか?」
 俺はなんだか気になって女神様に疑問をぶつける。すると明らかに狼狽した態度でせわしなく口笛なんぞ吹き始めた。
「ギクッ、そそそそ、そんなわけないですよ。これ以上恥のうわ塗りなんてするわけ無いことなんてないじゃないですか」
 おかしな日本語を使って狼狽する神の態度に俺は疑念を確信に変える。
「つまり有ると?」
「す、すみません! 実は隠していたことが一つだけ」
「隠していたこと?」
「手違いで死んだというのは嘘なんですぅ!」
 俺の中でこいつが嘘つきに確定した瞬間だった。
「すみません! 実は手違いで死んだというのは嘘なんですぅ」
 再びの土下座である。
 ここまで来ると一体何なのか気になってくるぞ。
「どういうことだ?」
 俺は敬語を使うのも忘れて再び地面に頭をこすりつける女神に問いただした。
 ここまできたら相手を敬う必要もないだろう。露骨に人を騙そうとしてくる奴なんて敬語で目上扱いする必要もあるまいて。
「ええっと、正確に言うと手違いで死んだのは間違いないんですが」
 速攻で述べた言葉を覆してくるスタイル。確実に嘘つき確定だ。
「手違いで死なせてしまったのって私だったり……」
「お前のせいかよ!」
「ひぃぃんッ、ですから救済措置としてギフトで埋め合わせをしようと」
「だったらそう言えってんだッ! なんで騙そうとしてるんだよ」
「いえ、それがですねぇ、そのぉ、なんといいますかぁ」
 もったいつけて結論を言おうとしない女神にだんだんイラついてきた。
 だが一周回って冷静になろうと努めた俺は椅子に座り直すように促し、俺をここに連れてきた本当の理由を問いただすことにした。
「んで? なんだって神様がそんな手違いをしちまったんだ?」
「いやぁ、普段はそんなことしないんですが、実はあなたの魂ってすごく特別でして。いつも私が見守り役をしていたのですが、現世から取り寄せた漫画が面白くて飲んでいたお茶がブホッwwってなってロウソクの火が消えちゃいました。テへっ♪あっ、痛い痛いッ! ぐりぐりしないでぇ」
 かわいこぶってテヘペロしやがった女神のおでこにゲンコツをくれてやる。
 なんというか、出会った時からずっと感じていたのだが、こいつとこういうやりとりをするのは初めてではないような気がするのだ。
 どこか懐かしささえ覚える心地よさみたいな感覚がある。しかしやっていることはちゃらんぽらんな管理で人一人を殺しやがったことなので、あまり優しい気持ちにはなれない。
「なんだそのちゃらんぽらんな理由は!? 俺が特別な魂ってどういうことだ」
「はい、実はあなたは……」
 そこから聞いた内容というのは突拍子もないどころの話ではなかった。
 いわく、俺は今世が終わったら神として生まれ変わり、目の前の女神の主人となる存在である。
 いわく、手違いで死なせてしまった弊害として現在の肉体が修復不可能なダメージで蘇生ができない。
 そこで俺が次に転生するときのために作っておいた神としての肉体を現実世界用にカスタムした状態で戻そうとしていたという。
「それならそうと言ってくれればいいじゃないか。なんでわざわざ隠そうとするんだよ。なんかバレるとマズい訳でもあるのか?」
「それは……誠也さんが生まれ変わった後で怒られると思ったので」
 あからさまに目をそらしやがった。こんにゃろう。どんな理由かと思ったら保身かよ。
 ああ、なんか分かってきたぞ。こいつもの凄くダメなタイプの部下なんだろうな。
 だが憎めない。この口ぶりからいってこいつは元々俺のことを知っていたのだろう。
 見守っていたとか言っていたし。とはいっても今の俺は単なる学生であって人間だ。神様なんて言われてもピンとこないしどうしたらいいのか分からない。
 どうやら人間として生きている間はその記憶は封印されており認識はできないがずっと過去の前世から一緒に過ごしてきた旧知の仲であるらしい。
 確かに先ほどから感じている懐かしさのようなものは以前から知っている気の知れた仲を彷彿とさせる。
「分かった分かった。もう手違いで死なせたことは責めないから」
 こいつが神であるのは確かなようだし、俺を生き返らせようとしているのは間違いないらしい。
 本当はもっと色々と言いたいことはあるが、目くじらを立ててへそを曲げられてもやっかいだ。
 相手は神なのだから人間の俺なんていつでも滅してしまえそうだからな。
「ほんとですか!? では早速ギフトをお授けして現世に戻りましょうッ!」
「待て待て。ギフトとかはいらないって言っただろうが」
「いえ、それがですねぇ」
「まだなんかあるのかよ」
「慌ててカスタムしたボディなので色々と調整が追いつかないんですよ。このままギフトなしで送り返してしまうと肉体スペックと精神のバランスが悪すぎて女と見れば誰でも襲いかかる性犯罪者になってしま――」
「なんでそんなことになるの!!」
「あははっ、それはギフトをお渡しする前提で作ったので、男性なら特典はハーレムとかだろうなぁとか思って精力絶倫のバキバキボディに改造を」
「どうしてそんな発想になるんだかッ」
 ハーレムとか言われてちょっと興味を惹かれたりもしたがそんなことは口に出してはいけない。
「あれあれ? もしかしてハーレム興味ありますぅ?」
 プークスクスッとか聞こえてきそうなムカつく顔で笑いやがった。
「う、うるせぇな、健康な思春期男児なんだからあってもおかしくないだろうが」
 思わず心を読まれて狼狽してしまう。だってしょうがないじゃん。ハーレムとか言われたら興味出ちゃうじゃん?
「それじゃぁ快諾も得られたことですしこのままギフトをお渡しする儀式に入りましょう」
 もはやギフトを受け取らないと正常な人生を送ることすら困難であるというのは想像に難くない。
 仕方なく受け入れることにした俺は諦めてソフィアの言葉を待つことにする。
「ん? 儀式? 儀式っていったいンぐっ!?」
 奇妙なワードが聞こえて疑問を投げかけようとした瞬間、眼前にはその虹色の髪をした少女が迫っており唇を塞がれた。
「ん、んちゅ」
 急なことで戸惑ってしまい思わず身をよじるが、小さな女神は信じられない力で俺の首に手を回し後頭部を押さえ込んでさらに深く口づけをする。
 びっくりして振りほどこうとするが女神はびくともしない。
 おい! なんでこんなに力強いんだっ!
 やがてにゅるりと柔らかいモノが口内に侵入したかと思うとチュルチュルと舌を吸い上げられた。
「んふぅ、れる、ちゅ」
「んぐ、ふ」
 美少女の柔らかい唇のプルプルの感触と甘い香りに頭がクラクラする。
 頭の中に今までの俺とは違う何かが侵入してくる感覚を覚えた。これがギフトとやらを身につけた感覚なのだろうか。
「んちゅ、れる、ずずずず」
 激しい音を立てながらのディープキスに脳が蕩けそうな快感に襲われた。
 さすがにこれだけ激しく粘膜接触をされてしまうと性癖とか関係なく勃起しそうになる。
「はふぅ誠也さんの唇はふわっとしてて美味ですね。感じちゃいましたぁ」
 永遠とも思える甘いキスを終え女神は顔を離す。口元にこぼれたよだれをペロリとなめて艶めかしい流し目をしながらしなを作る。
「お前いきなりキャラ変わりすぎだろ! なんのつもりだ今のは」
「何って、お話通りギフトに内蔵されたチートスキルをお渡ししたんですよ。これで誠也さんは現代においてチートオブチートの存在になりました。とはいってもいきなり強すぎる力を与えると色々と面倒なので、チートスキルの素質といったところでしょうか。思いつく限り色々詰め込んでありますから」
「お、おう、そうか。それはどうも」
 しどろもどろになってしまう俺。悪戯っぽい笑みを浮かべた女神は俺をからかい始めた。
「あれあれ? もしかして誠也さん、女の子とキスするの初めてだったりします?」
「そんな訳あるか!」
 うそです。初めてです。俺のファーストキスは訳の分からんポンコツ女神に奪われました。ちょっとショック。
 めっちゃ可愛いからそんなに損した気分ではないのが余計悔しい。
「その様子だと間違いなく童貞ですね。よほど女性に縁が無かったんでしょうか。まあその顔なら納得ですが」
「よ、よよよ、余計なお世話だ! 顔のことはほっとけ!」
 はい、童貞です。悪いか!? だって思春期だもん! 興味あっても相手いないじゃん!
「うふふ、本来ならここで私が童貞卒業のお相手をさせてもらいたいところなのですが、それはまたの機会、いえ、何でもないです」
 なんだか今の台詞からいうとこいつとまた会う機会があるのだろうか?
「それじゃあギフトもお渡ししたことですし早いところ現世にお送りいたしましょう。向こうの時間は止めてありますがそれもそろそろ限界なので」
 クッ。こっちはファーストキスを無理矢理奪われてちょっとセンチメンタルな気分に浸ってるってのに。
 当の本人はけろっとしてやがる。人間ごときのキスは数に入らないってか?
「あれ?」
 なぜだか、分かった。こいつが俺とのキスをとんでもなく喜んでいることが……。
 まるでウブな少女が無理矢理大人ぶって彼氏をリードしようとしているかのような純情な想いが伝わってくる。
 なんだこれは、気のせい……ではないよな?
「なあ、もしかしてお前も初めて」
「さーてっ! それではタイムリミットなので現世に送りますよそうしましょう!!」
 どうやら認める気はないらしい。
「ああ。もう隠し事はないだろうな?」
 若干顔が紅潮しているソフィアは一瞬だけ逡巡した表情をしたあと……
「テへっ♡」
「おいこら」
「いってらっしゃーい」
「ちょっとまてぇえええええええ」
 有無を言わさず手を振った女神の身体が光り、いきなりの浮遊感に襲われ俺の身体が落下し始めた。
 女神が笑顔で誤魔化した瞬間、俺の足下に突如としてぽっかり穴が空き、俺はそこに真っ逆さまに落ちていったのだった。
 こうして俺は肉体を改造された状態で現世へと送り返された。
「あ、一番大事な事を言い忘れてました。私もすぐそっちにいきますからねー♪」
 女神の手抜きで俺がこの後トンデモない目に遭うことなど、想像する余裕すらなかった。

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