ギャルになったTS幼馴染は僕の部屋でだけ女の顔になる

著者: 四号戦車

電子版配信日:2024/07/26

電子版定価:880円(税込)

「信じられないかもしれないが、彼女が青谷だ」
教壇で先生が説明する言葉でクラスがパニックに!
この美少女が、あの金髪ヤンキーの青谷由貴だなんて。
女体化して、ギャルになって、僕の部屋に入り浸る幼馴染に
無自覚な誘惑を仕掛けられ、僕の理性はついに決壊し……
投稿サイトの人気TS作品を、大幅加筆&全面改稿!

目次

第01章 僕をいじめていた幼馴染が突然美少女になって

第02章 ギャルになった幼馴染に居座られました

第03章 悶々とした居座り同棲生活

第04章 オナニー目撃のお返しはオナニーで

第05章 幼馴染は『ユキ』になる

第06章 僕とアイツの初めての協力プレー

第07章 爛れていく僕達の性活

第08章 だんだん可愛く見えてきて困る幼馴染、そして……

第09章 僕にだって僕の言い分がある

第10章 こうして、アイツは居座り続ける

本編の一部を立読み



第01章 僕をいじめていた幼馴染が突然美少女になって



「――――修司、飲みもん」
「ハイ」
「修司、肩揉んで」
「ハイ」
「修司、アイス買ってきて」
「ハイ……ってイヤだよ! なんで僕が行かないといけないのさ!?」
「ハァ? 修司のくせに生意気だろ」

 そう言って僕の部屋のテレビを占有しながらゲームに興じる同じクラスの女の子。
 色気のないグレーのスポーツブラでおさえつけた胸の膨らみは、前をはだけたワイシャツの下でわずかにその存在を主張している。
 金色に染め上げられたミディアムボブの髪は無造作に跳ね、前髪は整った彼女の顔立を邪魔しないように左右に流されている。
 顔をテレビに向けたまま涼しげな目線だけで僕をひとにらみするけど、その表情すら見るものを呆けさせるくらいには美しい。

 まぎれもなくギャルで、ついでに言えば美少女である。
 少しばかりヤンキー風味ではあるものの、それすらも彼女の顔立ちとスタイルのせいで魅力的に映ってしまう。
 クラスはおろか、学年全体を見渡しても1、2を争う美貌なのは間違いない。
 アイドルにだって劣りはしないだろう。
 普段は他愛も無いワガママを言ってるコイツだけど、それだけならよいのだ。
 問題はむしろ、それ以外のおねだりなのだ。

「修司、これ、なんとかして」

 僕のベッドの上で僕の枕をクッション代わりにして座りながら、両脚をするりと広げてくる。
 窓際の壁を背にしながら、ちょうど相対する僕に向けて少し気怠そうな、それでいて切なそうな視線で僕を見つめてくる。
 拡げた両脚の付け根にはしっかりと白いショーツが見えていて、はだけた胸元の色気の無いグレーのスポブラとは対称的なコントラストを描いていた。
 ぐっしょりと根本の濡れたショーツは少しばかり透けて、布1枚隔てた彼女の秘所の形をくっきりと映してしまっている。
 上下の下着の色を合わせるなどと言う殊勝なことをするタイプでは無い。
 でも、その引き締まった肢体とアイドル顔負けの容貌と、淫靡に僕を見つめるその視線の前にはなんのデメリットにもなりはしないのが見ていて悔しい。
 ぷらぷら遊ぶ左手の指先がその拡げた股間の付け根を指している。
『これ』とはつまり――――この濡れたショーツと、それが隠しているもののことだ。

「はいはい……わかったよ」

 僕はそう言ってスカートを避けながら彼女の腰に手を突っ込んで、彼女の無地の白いショーツを脱がせる。
 ショーツが彼女の股間から離れると、べとりと粘性のある透明な液体が彼女のスリットとの間に名残惜しそうに糸を引いて、キラキラと窓から差し込む朝日を反射しながら彼女の太腿と僕のベッドに垂れては汚している。
「どんだけ濡れてんのコレ……? 毎回掃除大変なんだけど?」
「どーしよーもねぇんだからしかたねーっしょ? こんなんじゃガッコいけねーし、とっとと済ませちゃおーぜ」
 済ませちゃおーぜって…………。
 ため息をつきながら僕もベルトを外して、ズボンと一緒にトランクスを下ろす。
 彼女からはむせかえるほどの濃いメスのニオイが僕の鼻腔を直撃して、何もして無くてもとっくに準備万端だ。
「そのまま挿入れちゃっていい?」
「いーよ。そっちの方が手っ取り早いっしょ」
 僕がベッドの上に乗ると、彼女はイタズラっぽく笑いながら両手を僕の首にまわす。
 べっちょりと愛液がまとわりつく彼女の秘所に右手で握りこんだペニスの先端を押しつけて、周囲の愛蜜を拭うように二、三度撫で回したら、割れ目の下から突き上げるようにゆっくりと腰を沈めていく。

 ずぷっ……ぬぷぷぷぷぷ…………。

「んっ……ふぅ……やっぱ修司のチ×ポ、でっけぇ……っ、なぁ……ぁっ」
 ふぅふぅと甘い吐息を漏らしながら冗談めかして彼女がつぶやく。
 その頬は熱に浮かされた様に上気して、その瞳は潤んで愛おしそうに僕……というより自らの膣内に迎え入れた僕のチ×ポを見つめている。
 大量の蜜を垂れ流す彼女の膣口は僕の肉茎で左右に押し拡げられながら、隙間無くぴったりと咥え込んだ僕のチ×ポをヌルヌルの膣壁で締め付けてくる。
 気を抜けば僕の方が一瞬で果ててしまいそうになる。
 グッと堪えながら僕は乱暴に抽挿を始める。
 ぐちゅっ、ぐちゅん! ずぶっ! ずぶずぶっ! ずっちゅん!
「んひっ、ひあ……っ、あっ、んあっ! 修司、いきなり激し……っじゃん……っ!」
「登校時間迫ってるし、とっとと済ませちゃおうって言ったのはキミだろ?」
「んへへ……がっこー、サボっちゃおうぜ? んぁっ……今日は1日つながってよーよ、ね?」
 僕にズボズボとオマ×コを蹂躙されながら、目を細めて僕に『お誘い』をしてくる彼女。
 でも僕はそんな彼女の誘惑を素っ気なく躱す。
「可愛くしてもダメ。ただでさえキミ単位ヤバいんだから」
「ちぇっ、つまんねーの……っく! そこ……っ、そこグリグリされんの、好きぃ……っ」
 僕の先端が彼女の膣奥でパクパクとヒクついている子宮口をコツコツと叩き、そのままこじ開けるかのようにグリグリと更に深く押しつけると、彼女のザラザラした膣壁がキュンッ! と閉まって射精を促してくる。
 彼女が軽イキした合図だ。
 イキやすい体質なのか、彼女はいつも挿入するとこうしてすぐに軽イキしてしまう。

「イッた?」
「んな……なワケねぇだろ! そんな簡単にイッてたまるか! んっぐぅ……っ」
「はいはい。キミはイッてないイッてない」

 全身を震わせながらそんなこと言われても全然説得力は無いのだが、彼女はこうして軽イキしてもそれを認めないので、結局最後までハメ潰さないと『満足』してくれないのだ。
 だから僕はそんな彼女の強がりをスルーして、首元に唇を付けてキスマークをつけてやる。
「んひゃっ!? おまっ、そこ弱いって知ってるだろぉ……っ」
 もちろん。知ってるからこそ責めてるのである。
 彼女の上に覆い被さるようにして、秘所を突き上げながらそろりと彼女のスポブラを上にずらす。
 小ぶりではあるが、しっかりと存在感のあるハリのいい彼女の乳房がぷるんっ! と顔をだすと、僕は彼女の胸を揉みしだく。
「んっ……おっぱい……好きだよな修司、こんなちっちゃなおっぱいにも夢中だもんな……あはっ」
 おっぱいを掴んだ親指の腹でピンク色の可愛らしい彼女の乳首を捏ねくりまわすと、彼女のカラダがぴくん、ぴくんと刺激に反応するのがわかる。
 僕は精一杯の強がりを言う彼女に仕返しをしてやることにした。
「んひゃうっ! あうっ! ダメだってぇ……っ! んぐぅ……っ!」

 首筋、乳首、そしてオマ×コ。
 3箇所を同時に責められた彼女はなんとか快感から逃げようと身を捩るも、同時多発的な僕の責めからは逃げようがなく、ぴくんっ! ぴくんっ! と断続的にカラダを強張らせる。
 同時に彼女の膣内がきゅうっ! きゅうっ! と締め付けてきて、彼女が幾度も幾度も絶頂の波に飲み込まれていることがはっきりわかる。
「クソ……っ! クッソぉ……っ! 修司テメェ……っ! 他のオンナ知らねぇくせに……ぃっ! んぐぅっ!」
 そうだよ。僕はキミしか『オンナ』を知らない。
 だから、僕はキミをイカせるやり方だけは……いっぱい知ってるんだよ。
 グチュッ! ぐっちゅ! どちゅんっ! ぐりゅぐりゅっ!
「んっぎ! おっ、膣奥っ! 膣奥の方ガンガン突くのダメっ! それダメっ! 深ぁっ! あ゙っ! イクっ! もう無理イクっ! 我慢……っ! むりぃ……っ! こ、こうなったらぁ……っ!」
「うわっ!?」
 連続絶頂で息も絶え絶えの彼女が急に両脚で僕の身体をがっちりとホールドする。
 不意に下半身をぎゅうっ! とホールドされて、僕は思わず下半身にグッと込めていた力を緩めてしまう。
 ヤバッ……! 今力を抜いたら……っ!

 びゅくん……! びゅくっ! びゅくびゅくっ! びゅびゅーっ! びゅるんっ!
「んあああっ! あっつ! 修司のせーし、めっちゃ射精てる……っ! あっく、んくぅっ! イクっ、イッくぅうううっ!!」

 力を抜いた僕のペニスから、射精寸前で我慢していた精子が勢いよく噴き出していく。
 びゅくんっ! びゅくんっ! と大きく跳ねる僕の怒張は、彼女の一番膣奥に深々と挿入ったままで、キツキツのオマ×コで逃げ場の無い精液達は鈴口と熱いディープキスをしてた彼女の子宮へとドクドクと注がれていく。
 彼女の膣内で僕のモノが跳ねる度に合わせるように上背を大きく仰け反らせて彼女は跳ねる。
 今までの軽イキとは次元の違う深い膣内絶頂。
 スベスベの彼女の柔肌はぶわりと汗を噴き出して、じっとりと濡れた肢体をガクガクと震わせながら僕を強く抱きしめる。
「んっぐ……! イッく……! イッてる……! ヤバ……! これ、いつもだけど……マジでキクぅ……っ!」

 互いにハァハァと粗い息をしながら、絶頂の余韻に浸る僕と彼女。
 いつからか、こうして爛れた肉欲をぶつけあうのが当たり前になってしまった。
「へへ……やりぃ……今回は……引き分けだなぁ……ハハ」
 そう言って彼女は意識を手放す。
 生来の負けず嫌いで、こうしてどんなに僕にイカされても、一矢報いないと気が済まないヤツなのだ。
 僕は彼女をベッドに横たわらせると、用意しておいたタオルでグチョグチョに汚れた2人の体液を拭っていく。
 後始末はいつだって僕の仕事だ。

 一体全体、いつからこうなってしまったのか。
 彼女は顔良し、スタイル良し、しかも……めちゃくちゃ気持ちいい名器まで持ってる。
 ついでに言うと男嫌いで人嫌いで他の連中とは会話をするのも面倒くさがるくせに、めちゃくちゃ僕とのエッチが大好きで、こうして毎日求めてくる。
 そこだけ見ればある意味非の打ち所の無い完璧な美少女だ。
 そんな彼女に居座られて、気付けば僕は彼女に言われるがままに下僕のようにあれこれ言われてはハイハイ従っているけど、別に弱みを握られているってわけじゃない。
 ギャルとは言え美少女に顎でコキ使われる趣味があるわけでも無い。
 もちろん、セックスしたいからって理由でワガママを聞くとか、そう言うのじゃ無いってコトだけは僕の名誉のために弁解させて欲しい。
 とにかく、彼女は僕の部屋に我が物顔で居座って、僕にあれこれ要求をしているというワケだ。
 ……要求の中にはエッチなものもあるってだけで。
 むしろうらやましいって? まあそうだよね。
 学年一の美少女と同じ部屋でダラダラ一緒に過ごして、ヤることヤッているのである。
 それだけ聞けば多少わがままだってうらやましいと思うのは普通のことだと思う。
 僕だって男として、こんな美少女と一つ屋根の下、爛れた生活を送るなんて妄想をしなかったかと言えば嘘になる。

――――それが、普通の美少女だったらだけど。

 残念ながら彼女、青谷由貴は普通の美少女ではない。
 これがそういう『夢に見たシチュ』の現実だとすればあんまりにもあんまりすぎる。
 傍目にはうらやましいことこの上ないように見えても、僕にとっては悩みの種以外の何者でも無い。

 だって、僕の部屋に居座ってるこの少女は。
 かつて僕をいじめていた――――男の子だったんだから。

  *  *  *  *  *  *

「あー……みんなビックリするとは思うが落ち着いて聞いてくれ。入院していた青谷が帰ってきた」

 それはある日のことだった。
 先生がいつになく沈んだ表情でそう言葉にしたのは。
 その言葉にクラスのみんなは『よかった……! 』だとか『青谷くん治ったんだ』とかガヤガヤ一斉に騒ぎ出す。
 クラスメイト達の嬉しそうな反応と裏腹に、僕はその言葉を聞いて一人憂鬱な気分になる。
 青谷君。青谷由貴。
 病気だか事故だか知らないけど、夏休みがあけて1ヶ月もの間ずっと学校を休んでいた彼がとうとう戻ってくるらしい。
 僕――――東浜修司にとっては気の重くなる話だった。
 小学校の頃からずっとクラスメイトで、何の因果か受験した学校にまでついてきた彼。
 いやまぁ世間的には僕の方が彼の後にくっついてきたって感じなんだろうけど。
 子供の頃からなにかにつけて僕に無理難題を言っては、僕が断ると「修司のくせに生意気だ」なんて、あーだこーだと言いがかりをつけては嫌がらせをしてくる。
 それでいて親同士は『仲が良いんだな』なんて勝手なことを言うもんだからたまったもんじゃない。
 子供の頃から手のつけられない暴れん坊だったけど、この学校に入る頃には髪も染めてピアスも入れて、どこからどう見ても立派なヤンキーに彼はなっていた。
 いつの間にやら取り巻き連中を従える様になったのもあって、この学校に入ってからというもの僕へのちょっかいも一層激しいものになり、僕は毎日気分の重い学生生活を送る羽目になっている。
 つまりはまぁ、彼はいじめっ子で僕はいじめられっ子だということだ。
 正直言って僕にとって彼が帰ってくるということは、この1ヶ月の平穏が終わり、またあの騒がしくて厄介な日々が戻ってくることと同義なのだ。
 出来ることなら関わり合いになりたくないが、こちらが遠ざかろうとしても向こうの方からグイグイとくるのだから避けようが無い。
「青谷、入って来て良いぞ」
 先生の言葉に応じるように教室の扉が開く音が聞こえる。
 ああ、憂鬱だな。
 そんなことを考えながらふと目線を上げると、入ってきたのは青谷くんでは無く見知らぬ少女だった。
 艶のある黒髪をスカートにかかるくらい後に伸ばした清楚なストレート。
 眉のあたりで切り添えられた前髪に、少し野暮ったい太めのフレームのメガネ。
 だがそんな邪魔者ですら隠すことの出来ない整った顔立ち。
 真面目そうな文学少女の出で立ちで、先生から青谷くんと呼ばれた少女が教壇の前に立つ。
 一体何が起こったんだ?
 クラスのみんなも僕と同じように困惑しているのか、一瞬の沈黙のあとざわざわと囁く声が聞こえだす。
 この瞬間意味も無くクラス全員の気持ちがひとつになっていた。

 ――――この娘いったい誰よ? と。

「静かにしろ。混乱するのはわかるがちゃんと説明するからまずは静かに」

 先生がそう言ったことでクラスのみんなはようやく口をつぐむ。
 だが頭の中がパニックなのは僕がそうであるように間違いないだろう。
「信じられないかも知れないが彼女がずっと入院していた青谷だ」
 先生が話した事情によると、どうやら青谷くんは夏休みに入ると同時にとある病気が発症して入院していたらしい。
 病名は突発性うんたらかんたら転換症とか言ってたけど、よくわからない言葉の羅列だったので耳から頭をすり抜けてどこかにいってしまった。
 ともかく、その病気のせいで青谷くんの肢体は遺伝子レベルで女性になってしまったそうだ。
 なんでもものすごく珍しい病気らしく、入院期間はすぐに開けたけどそのあと手続きやらなんやらでずっと学校に戻れなかったらしい。
 死ぬ病気とかじゃなかったことにクラスメイト全員(一応僕も)ホッとしてはいたけど、あまりにも男の頃の青谷くんと違いすぎる目の前の美少女に、それを青谷くんだと認識するのを脳が拒否している。
 だって青谷くんだよ?
 金髪ヤンキーで宿題だって僕に押しつけて、テストの前には強引に僕を拉致して勉強会と言う名の猛獣飼育に僕を付き合わせ、自分から言い出したくせにすぐサボってゲームを始めようとするおバカの青谷くんだよ?
 目の前で無表情で立ってるいかにも真面目そうな黒髪少女と、金髪ヤンキーの青谷くんのイメージが一切重ならない。

「ほら……挨拶しろ」
「あ゙ぁ……青谷っす。これでいーかよ先生?」
 あ、これは青谷くんだわ。
 少し低音でハスキーではあるが、ちゃんと見た目相応の少女の声で発せられようと間違えようがない。
 やりたくないことを嫌々やらされるときに目線を少し逸らしてブスッとやるあの態度。
 そしてとどめの『これでいーかよ? 』と言うふてくされた確認。
 あれは完全に青谷くんの反応だ。

 じゃあ……あれはやっぱり青谷くんなのか。
「見た目は変わったが青谷がお前達のクラスメイトだと言うことは変わらない。青谷、お前からもなにかないか?」
「ねぇよ」
「……だ、そうだ。名前は漢字はそのままで由貴に変わるそうだ。まぁ気にせず今まで通り接してやってくれ。」
 クラス中が一瞬だけ一斉に静かになる。
 イヤイヤイヤイヤ! 無理に決まってるでしょ!? という総ツッコミの反応だ。
 だが、それも次の瞬間には大騒ぎに変わる。
「ほんとに青谷なのかよ!?」「マジで? マジでこの娘が!?」「ていうか美少女過ぎねぇか?」「顔ちっさ! アイドルかよ!?」「ヤバ。アタシ勝てる気がしないんだけど……青谷くんだよ!?」「青谷! お前マジで青谷なんだよな!?」「ドッキリとかそういうんじゃないよね!?」
 などと驚愕と疑問でクラス中が一斉にザワつき、誰が何を喋ってるのかわからないほどの大混乱にクラスは包まれていた。
「落ち着け! お前ら落ち着け! とにかく、青谷は自分の席に戻れ! 聞きたいことは沢山あるだろうがもう授業が始まるんだ! そう言う事は休み時間にやれ!」
 そう言って先生がバンッ! バンッ! と机を出席簿で叩く。
 その音でようやくザワザワした喧噪がヒソヒソとして囁きに変わって静かになる。
 青谷くん(と呼ばれている少女)はそんなクラスメイト達の間を少し不機嫌そうに眉間の皺を寄せながら歩いて行く。
 彼の席は僕の後だから、必然的に僕の座る席の横を通ることになるのだが、一瞬だけ青谷くんの視線がこちらに向いた気がした。
 が、悪いが僕は青谷くんに積極的に関わらないと決めているのだ。
 たとえ見た目がヤンキーだろうが清楚系文学美少女だろうがそれは変わらない。
 僕は今まで通り目を伏せる。
 青谷くんはそれをどう思ってたのかわからないけど、とりあえず黙って僕の後に座ったようだ。
 願わくば青谷くんが見た目通りの真面目な少女になって僕にちょっかいをかけないでいてくれればこの1ヶ月の平穏が続くのだけど。
 そうして、後に「青谷くん女体化ショック事件」と呼ばれる朝のホームルームが授業開始のベルと共に終わりを告げた。

  *  *  *  *  *  *

 最初の授業の後、休み時間に青谷くんはクラス中に囲まれて質問攻めにあっていた。
 どうでもいいけどクラスの諸君、僕がトイレにいってる間に僕の机を占拠するのはやめてくれ。
 自分の席に戻りたくてもこの人垣をどかすのは難しそうだ。
 しょうが無いので少し離れた位置で壁を背にしながら場所が空くのを待っていたが、その中心にいる青谷くんのことが否応なしに視界に入る。
 はじめの方はクラスのみんなの質問に機嫌良く答えていた青谷くんだが、だんだん疲れてきたのか笑顔の中に『面倒くせぇ』がすぐに浮かびだす。
 意外とクラスメイトはおろかおそらく取り巻き連中ですら知らないことではあるが、青谷くんは人付き合いがあまり好きでは無い。

 苦手かと言えばむしろ表面的には如才なくこなしはするのだが、本人的にはあまり楽しいものではないらしく数人の取り巻きをのぞけば昔から僕以外に自分から話しかけることは滅多にない。
 だからいつまでたっても僕がターゲットにされてしまうのだが、このことは古い付き合いの僕くらいしか知らない事実である。
 あのまま放置してたらそのうち癇癪起こして爆発するんじゃないかな?
 そうなるとその爆発を喰らうのは僕なんだからたまったもんじゃない。
 やめてくれクラスのみんな。
 その地雷は僕に向いてるんだよ。

「ごめん……席に戻りたいんだけど?」
 僕はしょうがなくクラスメイトで出来た人垣に突っ込んで行く。
 ちょうどよくチャイムが鳴ったおかげもあって、クラスのみんなもいったんお開きになったのか自分たちの席に戻っていく。
 青谷くんの方をチラリと見ると、やっぱり疲れていたのかゲンナリした表情になっていた。
 僕はやっぱりな、なんて思いながら自分の席に座り教科書を取り出した。

  *  *  *  *  *  *

 なぁ青谷くん。
 頼むからこっそりと僕の椅子を後から蹴るのをやめてくれ。
 授業が始まってからというもの先生や他のクラスメイトにバレないように青谷くんが僕にこうしてちょっかいをかけてくる。
 ああもう、ここは試験範囲だからテストに出るんだよ。
 ちゃんとノート取っておかないとどうせ後で青谷くんがわかんねー! って聞きに来るんだから。
 僕が授業を受けるのを妨害して困るのは自分だってことがわかってないのかな?
 まぁ、それが青谷くんと言えば青谷くんである。
 残念ながら僕の後の美少女はやっぱり青谷くんのようだった。
 残念だ。とても残念だ。

「なぁ修司……オレが誰かわかるか?」

 僕の椅子を足蹴にしても反応がないのが気にくわないのか、後の席から聞き慣れぬ少女の囁きが聞こえる。
 まぁわかるよ青谷くん。けどその質問あんまり意味ない気がするんだよね。
 僕は右手でノートを取りながら左手を先生に見えないように後にまわし、シッシッと犬を追い払うように手を振って返す。
『今大事なとこだから静かにしてくれ』という僕のサインだ。
 いつもの手慣れたやりとり。
 彼女が本当に青谷くんならこれで静かになるだろう。
 そうするとちゃんと後からの椅子蹴り攻撃も囁き声も静かになる。
 やっぱり…………青谷くんなんだろうな彼女は。
 見た目は全然変わってしまったけど、仕草やこういうやりとりは青谷くん以外考えられない。
 後に座っているせいで姿が見えないからか、青谷くんが帰ってきたんだなということが実感として少しずつ沸いてきた。
 そうか……本当に青谷くんなのか。
 そんなことを考えながら、僕はうっかり先生の板書をノートに取るのも忘れてしまっていた。

  *  *  *  *  *  *

 授業中は僕にちょっかいをかけて、休み時間にはクラスメイトにもみくちゃにされる。
 午前中の青谷くんはずっとそんな感じだった。
 僕はそれを遠巻きに見ては、青谷くんが爆発しそうになるのを見つけたら適度に邪魔して僕への被害を未然に防衛すると言うことを繰り返した。
 これじゃまるでタワーディフェンスでお姫様を守る騎士みたいだなと思ったりもするが、残念ながらお姫様の中身は大分気難しいヤンキーで、僕は騎士でも何でもないただの陰キャ学生である。
 そんな感じで午前中を過ごしていたら、お昼時間にトラブルが向こうの方からやってきた。

「なあ修司、いつまでも無視してんじゃねえよ」

 ふと横を見るとそこにいるのはいつもの取り巻き2名を引き連れた青谷くんの姿。
 黒髪清楚な格好と裏腹に、そのふてぶてしい表情は青谷くんのそれだった。
 後にいるのは赤石に柳田か。
 青谷くんがいない間は僕にちょっかい一つかけてこないくらい度胸がないくせに、暴れん坊の青谷くんの威を借りた途端そうやって僕のことを小馬鹿にしたような目で見てくるような連中だ。
 こいつらが並ぶと、ああ、あの青谷くんがまだ男だった頃の面倒な感じが帰ってきたんだなということがわかる。
「何度も言ってんだろ修司、オレは指示を出す側で、お前はその通り動く側だろうがよ」
 まったく、青谷くんを美少女にするという奇跡を起こしたカミサマも、僕がこうして青谷くんという名のトラブルに巻き込まれることだけは変えられなかったらしい。
 案外たいしたことのないカミサマだ。今度神社に行くときはお賽銭を入れないことに僕は決めた。

「修司……いい加減返事くらい返せよ」
「今忙しいんだよ。午前中ノート取り忘れちゃったしお腹も減ったし。話がしたいならそこの赤石か柳田とでも話してればいいだろ?」
「ふぅん…………オレが青谷ってことは疑ってねえのか? クラスの連中には散々替え玉だの別人だの言われたけどな」
 まぁ認めたくはないけど、午前中の彼女はどう考えても青谷くんそのものだったからね。
 けどそれを言うのは何故かちょっと悔しい感じがしたので答えてやらないことにした。
「先生がそうだって言うならそうなんじゃない? 君が青谷くんでも別の女の子でも、青谷くんだって言うなら青谷くんとして扱うだけだし」
 僕がそう言うと青谷くんはなにが気に入らなかったのか、ものすごく不機嫌な顔になる。
 もしかして美少女として扱って欲しいのかな?
 じゃあ僕は美少女として扱ってやらない。
 普段好き勝手されてるんだ。これくらいのささやかな抵抗はしたいところである。
「青谷くんなら何で僕が忙しいかくらいわかるだろ? はやいとこ弁当を片付けたいんだから用があるなら後にしてくれ」
「弁当まだ自分で作ってんのかよ?」
「そうだよ。青谷くんには前に話したから当然わかってるだろ?」

 僕の両親は去年父親の転勤で地方に引っ越すことになったけど、僕は今年卒業で次の進路も県外には出ないともう決まった後だったからということで、僕は一人残されることになったのだ。
 流石に前の家を維持する余裕は両親にもなかったから、慌てて契約したアパートに僕一人別に引っ越す形になったけど。
 時折青谷くんがやってきてはたまり場にしようとするのを追い払うのがすぐに日課になってしまったけどね。
 子供の頃から母さんと一緒に料理を作ってたから自炊をするのは苦じゃなかったし、親からの仕送りにだって限度はあるのだ。
 あれこれ節約するためにも、毎食パン生活だと高く付くのだ。
「なにさ? 僕の弁当狙いかい青谷くん?」
「いらねぇよテメエの作ったクソマズ弁当なんざ」
 そう言いながら時々僕の弁当をつまみ食いしてるじゃんか君は。
 と、思ったけどこれ以上不機嫌に油を注ぐのはヤバそうだから黙っておこう。
 このあたり、腐れ縁だけど長い付き合いの僕にしかわからない部分ではある。

「チッ……行くぞ赤石、柳田」
「おぅ」「うす」

 翻って歩き出した青谷くんの後を取り巻き連中は追っかけていく。
 こんなやりとりは、まぁ日常が戻ってきたなぁと言う程度だ。
 とは言え、真正面にたったニュー青谷くんを間近で見ると、やっぱり目の覚めるような美少女なのは間違いない。
 胸元の膨らみははち切れるというほどではないものの、はっきりと彼女が女の肢体であることを証明するには十分なほどの主張はしていたし、髪の毛はサラサラとしていて男のがさつな髪の毛とは同じ物質で出来ているとは信じられないほど別物だ。
 目元も鼻筋も綺麗に整っていて、もし中身が青谷くんじゃなかったら僕だってドギマギしてしまうこと間違い無しだ。
 そう言えば青谷くんにはお姉さんがいたな。
 言われてみればお姉さんの面影が少しだけある気がする。
 多少の混乱はあったけど、気付けば僕の中であの娘が青谷くんだと言うことは疑いようのない事実になっていた。

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