学園魔眼王3

寝取りの魔眼で他人の彼女を落としてハーレムを作ろう

著者: 源氏乃左大将

電子版配信日:2024/08/23

電子版定価:880円(税込)

寝取りの魔眼──好きな人がいる女性を発情させる瞳。
思うままにハーレムを築く亜門の次の獲物は地下アイドルグループ!
レズカップルの遙香と由衣を片方ずつ魅了し、仲良く3Pエッチ!
メンバーの不祥事を知った美貌の女プロデューサー・天野吏が、
突如天使に変身し、口封じで襲ってきた! 気絶した亜門だったが、
その身に潜んでいた悪魔・アモンの自我が目を覚まし……
学園異能ハーレム、急展開の第三巻! 亜門誕生秘話の書き下ろし収録!

目次

一 たまたま会った、同級生達にアイドルのライブに誘われる

二 ライブが始まるよ

三 熱狂、童貞達の宴

四 初めての特典会

五 ライブが終わったから打ち上げにいこう

六 レズカップルを襲ってやろう

七 ギーメルちゃんが僕のものになった

八 レズカップルに男の良さを教えてやろう

九 遙香の前で由衣と中出しセックスをする

十 由衣の前で遙香と中出しセックスをする

十一 魔眼のルーツ

十二 そうだレズカップルと3Pしよう

十三 紗栄子、お昼になると肉棒を欲しがるようにすっかり躾けられる

十四 紗栄子、友達と話しながら自分がすっかりドスケベな女になってることを自覚する

十五 ファミレスでこれだけ好き勝手やって誰にもバレないわけがない

十六 紗栄子、土曜の午後はオナニー三昧

十七 紗栄子、ママにめちゃくちゃ怒られる

十八 プロデューサーと交渉しよう

十九 天野さんと大人の交渉をしよう

二十 罪と罰

二十一 アモンの目覚め

二十二 アモンと亜門

二十三 天使と悪魔

二十四 アモン、天野さんの能力を奪う

二十五 アモンとの対立

二十六 天野さんのボディチェックをしよう

二十七 君が、泣いても、僕は、ボディチェックをやめない

二十八 隠せる場所をなくしてしまえばボディチェックもしやすいよね

二十九 天野さんを限界まで追い込め

三十 天野さん、悪魔の契約書にサインする

三十一 天野吏、精液便所の初仕事

三十二 天野吏を精液便所として躾けよう

三十三 帰宅

三十四 受け取り方は人それぞれ

三十五 天野吏、屈辱の帰宅

書き下ろしSS 学園魔眼王、エピソードゼロ

本編の一部を立読み

一 たまたま会った、同級生達にアイドルのライブに誘われる


 責任を取らせてやる! そう捨て台詞を残して加々美《かがみ》弥奈《みな》は去っていった。
 うーん、失敗した。
 誰にもバレないように一発やったら、そのままやり捨てにして逃げるつもりだったのに。
 トイレに篭もってやりまくって……駅まで送るよなんて言って一緒に歩いて……連絡先の交換までして……
 あげく、魔眼の効果が切れてトラブって……弥奈にブチ切れられて……
 なんでこんなことになったんだろう? 中学時代に振られた相手を弄んで、ざまぁしてやるつもりだったのに……
 弥奈の身体に夢中になって何度も中に出してしまった……
 魔眼の効果が切れた後の弥奈に、ずっと好きだったって何回言っただろう? 我ながら情けないけど、彼女になって欲しいって……未練があったのかなあ……
 責任取らせるってどうするつもりなのかなあ? 訴訟かなあ? 最強弁護士軍団とか来ちゃうのかなあ? でも、弥奈の身体……すごくよかったなあ。訴えられてもいいから、もう一回抱かせてくれないかなあ。
 あーあ、明日は紗栄子《さえこ》とデートだっていうのに、僕は何やってんだろうなあ。
 
 一人で脳内反省会を行いながら、駅前を当てもなくブラブラと歩くことしばし、なんだかお腹が空くと思ったら、既にお昼を過ぎている。
「お昼は簡単に済ませるか」
 通り沿いにある有名ハンバーガーチェーン店に適当に入る。
「おっ、霍乱《かくらん》氏ではないですか、奇遇ですなあ」
 列に並んでいると、後ろからやけに馴れ馴れしく話しかけられる。
 振り返ると、同じクラスの男子、阿東《あとう》、新見《にいみ》、堀戸《ほりと》の三人がいた。
「やあ、阿東君、君達もお昼ご飯?」
「チッチッチッ……霍乱氏、何度言ったらわかるのです? 吾輩の名前は、阿東ではなくアトス! 世俗の名ではなくソウルネームを呼んで欲しいと何度も言っているではないですか」
「同じく、小生は新見ではなく、アラミス!」
「拙者は、堀戸ではなく、ポルトス!」
「我ら、聖欲学園三銃士」
「あっ……そう……そうだっけ、うん、ゴメン……あー、アトス君?」
「そのように他人行儀な呼び方、君は付けずとも結構ですぞ霍乱氏。我々の仲ではないですか」
 店内で意気揚々と名乗りをあげ、変なポーズを決めるどう見ても東洋系のフツメン、いや中の下くらいのルックスの男子学生達に周囲のお客さん達はドン引きだ。
 彼ら、自称『聖欲学園三銃士』、まあみんなからは童貞三銃士と呼ばれている――は、僕のクラスの中二病の男子グループである。
 サブカルチャー研究会という、アニメ、マンガ、ゲームなどなどのいわゆるオタク文化を研究する部活に三人共所属しており、阿東君が部長で、新見君と堀戸君は部員だ。
 こんな調子でいつも三人で固まってわけのわからないことを話しては、急に叫んだり、騒いだり、歌い出したりすることが多いため、女子からは蛇蝎のごとく嫌われており、クラスカーストの最底辺扱いをされている。
 もっとも、本人達は大して周囲の目を気にしていないのか、至って元気に学生生活をエンジョイしている。
 そしてなぜか、クラスで唯一僕と仲良くしてくれる人達だったりする。
 多分、中二病仲間だと思われているのだろう。
 阿東君は身長155センチ、体重60キロくらいで豆タンクみたいな体型。
 新見君は身長180センチ超、体重50キロくらいでヒョロヒョロガリガリ。
 堀戸君は身長175センチくらいで体重100キロ超の肥満児。
 休みの日だからなのか、部長の阿東君は頭に赤いバンダナを鉢巻きのように巻き、ヨレヨレの赤いチェック柄の長袖シャツに水色のジーパン、黒い指ぬきグローブという出で立ちだ。
 新見君は黒縁眼鏡になぜか緑の迷彩服上下、堀戸君は真っ黒い半袖Tシャツに真っ黒いチノパンという格好だった。
 肥満児の堀戸君の黒いTシャツは汗をかきすぎたのか、首回りなどに白く塩が浮いており、変な模様のようになっている。
 しかも本人には言えないが、かなりエキゾチックな匂いを発していた。
 ちなみに彼らの名乗っているソウルネームだかは、しばらくすると唐突に変わる。
 阿東君は去年までは、アナベル・アトーと名乗っていた。
 多分、その時ハマっているアニメとかゲームとかの影響で変わるんだと思う。
「それで、霍乱氏はこんなところで一人で何をしているので?」
 挨拶だけで終わるかと思いきや、当たり前のように僕と一緒に並んで世間話を始める三人。列に横入りされた後ろの人が超睨んでるし、仲間だと思われて得することが何もないので、正直やめて欲しいのだが、言って聞くようなメンタルはこの人達は持ち合わせていない。
「いや、僕はお昼ご飯にたまにはハンバーガーもいいかなと思ってさ……阿東……アトス達は?」
「我々もまあそんなところですな」
「午後に向けて、肉を食って鋭気を養うであります」
「エネルギーチャージにはビッグ○ックと昔から相場が決まってるでゴワス」
「そっ……そうなんだ……」
 チェーン店のハンバーガーって肉を食べたことになるのかな? まあ、本人達がそれで元気が出るっていうならなんでもいいけど。
「午後から何か体力を使うような用事があるの?」
「ハッハー、よくぞ聞いてくれたな霍乱氏」
「今日の午後、駅前の商業ビルのイベントスペースに天使が舞い降りるでゴワス」
「はっ? 天使?」
 何を言ってるんだこのデブは? 中二病が進行しすぎて遂に妄想と現実の区別がつかなくなったか?
「フフフフ、天使といってももちろん本物ではありまセン、プリティエンジェルスという我々が激推ししている四人組のアイドルグループがミニライブと特典会を開催するのですよ」
 あー、そういうのね。堀戸君が真顔で天使とか言うから、いよいよ狂ったのかと心配したよ。
 しかし、この三人がアイドルとかに興味があったのは意外かも。二次元にしか興味がないと思っていたけど。
「意外だと顔に書いてありますぞ、霍乱氏。我々とて健全な男子学生、三次元の世界に生きているのですから、生身のアイドルグループに興味を持っても不思議ではないのですよ?」
「いや、別に、意外だとまでは……まあ、少し思ったけど……ゴメン」
 だって君ら教室でゲームとかアニメとかの話しかしてないじゃん。
「我々もそのような目で見られていることは百も承知なので、別に怒ってはおりません」
「だけど、霍乱氏だって一度エンジェルスの歌を生で聴けば、我々がドハマりしてることをきっと納得すると思うでゴワス」
「その通り、彼女達の歌はそこらの三流アイドルとはひと味もふた味も違うのでありマス」
 へえ、普段アニソンしか聴かなそうな三人がこんなに熱弁するなんて……ちょっと興味が湧いてきたかも。
「その四人組のグループってさ、みんな女の子なの?」
「もちろんでゴワス」「しかもみんな可愛いのでありマス」
「「マジ天使!」」
 そう言って、新見君と堀戸君が真っ赤な顔でめっちゃはしゃいでいる。
 そんなに可愛いなら見てもいいかも……いやでも待て、この女っ気のない童貞三銃士基準で可愛いだからな、意外と大したことないかも……うーん。
「興味があるなら、ぜひ霍乱氏も一緒に行きませんか? 当日券の販売もあるはずですぞ」
 仲間を増やしたいのか、三人から熱心に誘われた僕は、時間もあることだし、興味本位でアイドルグループのイベントに行ってみることにした。
二 ライブが始まるよ


「へえ、こんな場所があったんだ」
 阿東君達に案内されて付いていくと、そこは駅前の八階建ての商業ビルだった。
「ここの地下一階がイベントスペースになっているのです。以前はロックバンドなどがコンサートを行うライブハウスのような場所だったのですが、数年前に経営者が変わって中を改装してからはどちらかというとアイドルのコンサートや握手会のようなイベントの方が多くなってるようであります」
「プリティエンジェルスもそれに合わせて、この場所を拠点として活動を始めたグループなのデス」
「この町のご当地アイドルのようなものでゴワスな」
 訳知り顔で三人が説明してくれる。
 何度も前を通ってる場所のはずなのに、ここがイベントスペースになってることも、アイドルのコンサートをやっていることも全然知らなかった。
 そう言われればポスターとか貼ってあった時があるような気もするけど、興味がないと近くにあってもわからないものなんだな。
 案内されるままに地下への階段を降りていくと、階段脇の壁には色々なアイドルグループやバンドのポスターやイベントの告知が掲示されている。
 その中には今回阿東君達が激推ししているプリティエンジェルスのものもあった。
 白を基調とした、ノースリーブと同じく白のミニスカートの衣装に身を包んだ若い四人の女性は、阿東君達が天使だと言うだけあって、いずれも綺麗な顔立ちだった。
 ただまあ、写真は幾らでも加工できるから現物を見るまでなんとも言えない。
 イベントスペースのロビーには既にお客さんが沢山集まっていた。
「おっ、アトス氏やっと来ましたか、今日は来ないかと思いましたぞ」
「フフフ、戯れ言を、たとえ明日世界が滅ぶ定めだとしても、私は必ずライブに来ますぞ」
「ハハハ、違いない」
 長い鉢巻きをして、揃いの法被を着た男性達が寄ってきて阿東君達に次々と話しかけてくる。
 顔見知りなのか、阿東君達も気安い態度で返事をして和気あいあいとしている。
 完全に彼らのホームといった感じで、なんとも取り残されたような気分だ。
「霍乱氏、当日券の購入はこっちでゴワス」
 阿東君達に教えられて当日券を二千円で購入する。
 思ったより安いなと思っていたら、ドリンク券を六百円で買わされた。
 よくわからないけど、そういうものらしい。
 釈然としない顔をしていたら、
「ここで開催される単独ライブの前売りならば千五百円なので、さらにリーズナブルですぞ」
「年会費を払ってファンクラブに入れば、前の方の席を優先的に買えるでゴワス」
 などと言われた。
 仲間になれという圧が強い。なんというか布教活動に余念がない。
 いや、次回来るかどうかはまだわからないからね。
「まだ時間があるから、物販スペースでチェキ券を買っておきましょう」
「えっ、まだ何か買うものがあるの?」
「何を言っているのです霍乱氏、チェキ券を買わねば何のためにライブに来たのかわからんではないですか?」
 ライブには歌を聴きに来たんじゃないの? 何だよチェキ券って? 意味がよくわからないまま、列に一緒に並び、そしてチェキ券とやらに千五百円を払う。
「拙者、今回で二十個目のスタンプが貯まったでゴワス」
「小生もであります」
「フフフフ、吾輩は遂に三十個目になったであります」
「これは何に使う券なの?」
 浮かれてスタンプカードを見せ合う三人に尋ねる。
「これはライブ終了後に行われる特典会で、好きなメンバーとツーショットチェキを撮るために使う券でありマス」
「ツーショットチェキ?」
「好きな子と二人で写真を撮ってもらえるでゴワス」
「それだけじゃありませんぞ、なんと! 撮ったチェキにはメンバーが手書きでメッセージを書いてくれるのです、そそそそして! その後!」
「その後?」
「メンバーと!」
「メンバーと?」
「あっ、あああ握手をしながら一分間お喋りができてしまうのですぞ!」
「……ふ、ふーん??」
 握手? お話? えっ? それだけ? それってすごいの? いやでも、アイドルと握手だからすごいのか? でも一分? 一分だけ? 一分て短くない? でも千五百円で写真撮って一分握手だからすごいのか? 阿東君達メッチャドヤ顔だし、えっこれ僕どうすればいいの? どう反応するのが正解なの? 全然わからないんだけど?
「すっ、すごーい、すごいねそれは、そんな特典があるなんて素晴らしいね」
 場の雰囲気を呼んで最大限に努力はした。
「そうでしょう、破格の値段設定ですよホント」
「超リーズナブルですぞ」
「大好きな子とたった千五百円で握手……夢みたいでゴワス」
 若干棒読みになったが、感心してみせると三人は満面の笑みを浮かべて我がことのように喜んでいたので、今の反応で正解だったのだろう。
 どうも千五百円で一分握手は破格のサービスらしい。
 デッカい声で話しているので周りで聞いている人も賛同するように肯いている。
「しかも、チェキ券を買う度に貰えるスタンプを集めると!」
「集めると?」
 いやまだあるの?
「ななななんと! 十個スタンプが貯まる度に三十秒間ハグしてもらえるであります!」
 顔を真っ赤にし、飛沫を飛ばしまくって阿東君が高らかに宣言すると、周囲からなぜか「ハレルヤ!」とか「アガペー!」とかって意味不明な喚声があがり、ロビーが拍手の渦に包まれる。
 イヤイヤお前ら何なの? この一体感がむしろ怖いわ。
 しかし、アイドルとハグか……ファンならすごく嬉しい……のかな?
「ギーメルちゃんとハグ、ギーメルちゃんとハグ」
「拙者はダレットちゃんとハグでゴワス」
「吾輩はラメドちゃんと……三十個目のスタンプなのでスプーニング、なんと同じ方向を向いてのハグが出来るのであります。」
 うん、最高に嬉しいんだろうな。
 三人の鼻息荒すぎて若干引く。
 なんなら堀戸君とか完全に勃起してるし。
 アイドルのコンサートとかライブとかって初めて来たけど、こういうのが普通なんだろうか? それとも、ここだけが変なんだろうか? 始まる前からこのテンションなら、本番ではどうなってしまうのか。
 なんとなく興味本意で来てしまったが、正直阿東君達のノリについて行けそうもない。
 そんなこんなで、迂闊に付いて来たことを既に若干後悔しつつあったが、お金も払ったしチケットやらチェキ券やらも買ったので社会勉強だと思って我慢することにした。
 時間が過ぎて、会場への入口が開放される。
 中は思ったよりもだいぶ狭かった。
 薄暗い会場にパイプ椅子が百席程度置いてあり、後ろの方はがらんとしていて立ち見のお客さんのためのスペースになっていた。
 それでも目一杯入って二百人程度じゃないだろうか? ステージには各種音響機材、照明器具、巨大なスクリーンなどが設置され、スクリーンにはこれから登場するプリティエンジェルスのPVが流れている。
 ライブハウスとかに来たことがないので、この会場が広いのか狭いのかもよくわからないが、お客さんはほぼ満員に入っている。
 客層は九割くらい男性だ。
 つーか、ほぼ阿東君達の同類に見える……のは偏見か? 僕が持っているチケットは当日券なので席は後ろの立ち見席だった。
 阿東君達は当然のように前売りでチケットを持っているので席も前の方のすごくいい場所だ。
 僕を誘った手前一人にするのは悪いからと言って三人も僕の近くの席に移動すると言ってくれたが丁重に断った。
 あんなに楽しみにしてる人達を後ろの席に移動させるのはなんか申し訳ないし、なんというかあの三人の近くにいるのがだんだん辛くなってきた。
 会場に入って待つことしばし、場内の照明が一斉に消えて暗転し、ステージ中央の照明だけが光る。爆音と大歓声の中、プリティエンジェルスのメンバーがステージに現れライブが始まった。
三 熱狂、童貞達の宴


「イエー! みんな元気ー!」
 ステージ袖から飛び出してきたプリティエンジェルスの姿に大歓声があがる。
「元気だよ! ギーメル!」「会いたかったー!」
 最初に出てきたこの子はギーメルというらしい。
 オレンジ髪のボブカットの子で、白い衣装の所々にオレンジのラインが入っている。
「ボク達もみんなに会いたかったよー!」
「ダレットー!」「ダレットちゃーん!」
 二番目に飛び出してきたグリーンの髪のショートカットの子はダレットというらしい。
 たしか堀戸君がハグしてもらえると言って興奮してた子だ。
「みんな私達との約束を守って、純潔でいてくれたかなー?」
「もちろんだよーザイン!」「ずっと童貞!」「俺の童貞をザインに捧げる!」
 三番目に出てきたのは青い髪のロングヘアの女の子はザインというらしい。
 しかし、登場するなりいったい何を叫んでいるんだこれは?
「あたし達ももちろん処女だよー!」
「イエー! ラメドちゃーん!」「ラメド愛してるー!」「ラメド最高!」
 そして最後に赤い髪のミディアムヘアの女の子が登場する。
 この子が阿東君激推しのラメドちゃんらしい。
 衣装の上からでもハッキリわかるくらいすんごくおっぱいが大きい。
 ラメドちゃんがステージを駆け回る度にバルンバルンと巨大なおっぱいが跳ね回っている。
 メンバーの四人はみんなスタイルもよく美人だった。
 そりゃあ、あんな子にハグしてもらえれば阿東君も夢中になるわな。
 言っちゃ悪いけど、三人共学校だと女子にモテそうもないし。
 でもこのちょいちょい挟んでくる処女だとか童貞だとかは何なんだろう? みんな盛り上がってるから、いつものことのようだけど。
「今日も張り切っていくよー!」
「イエー!」
「天界より使わされた純潔の乙女達、そう、それが!」
「プリティエンジェルス!!!」
 寸分の隙もないコールアンドレスポンス、大歓声が巻き起こりそのまま一曲目の曲へと突入する。
 普段教室では周りの生徒と距離を取り三人だけで固まっていることの多い阿東君達も沢山の仲間達と一緒に本当に楽しそうに歌い、踊り、叫んでいる。
 女子に文句を言われても斜に構えて、言葉尻を捉えて揚げ足を取ったりすることが多い阿東君だけど今日はみんなではしゃいでいる。こっちの姿が本来の彼なのだろうか? ライブは一曲目から大盛り上がりだった。
 エンジェルスのメンバー四人は歌い踊りながらステージを縦横に駆け回り、観客もそれに応えるように曲に合わせて踊り、歌い、ペンライトを振る。
 僕はというと、こういうのが初めてということもあり、イマイチ乗り切れず客席後方で申し訳程度に手拍子をしながら立ち尽くしていた。
 つーか、初回からあの輪の中には入っていけないって。
 乗り切れない僕を置いてきぼりにしたまま、ライブはどんどん進行していく。
「それじゃあ、ラストはいつもの曲だよ!」
「イエー! 待ってましたー!」
「みんな最後まで突っ走っていくよ!」
「どこまでもついていくよダレットちゃーん!」
「今、世界に必要なのは?」
「純潔!」
「今、世界に必要なのは?」
「寛容!」
「今、世界に必要なのは?」
「慈愛!」
「今、世界に必要なのは?」
「分別!」
「今、世界に必要なのは?」
「忠義!」
「今、世界に必要なのは?」
「節制!」
「今、世界に必要なのは?」
「勤勉!」
「お前達は隣人を愛してるか!」
「愛してる!」
「お前達は右の頬を打たれた時笑顔で左の頬を差し出せるか!」
「差し出せる!!」
 さっきからこのコールアンドレスポンスは何なんだろう? 会場は大盛り上がりなんだけど、すごくモヤモヤする。
 観客がヒートアップすればするほど、不快感が増してくる。
「よし最後の曲だ! いくぜーー! SevenVirtues!!!」
 偏頭痛のように頭が痛い。
 なんでこんなに急に体調が悪くなるんだろう? みんなこんなに楽しそうにしてるのに、どうして僕だけこんなに不快な気持ちになってるんだろう? 原因はわからないけど、とにかくこの歌を聴いているのが辛い。
 周りを見渡すが気分が悪くなっているようなお客さんは一人もいない。
 みんな大盛り上がりで、棒立ちで聞いているのは僕だけだ。
「ああ、もう無理」
 彼女達の歌う最後の曲を聴いているのが苦しくなり、Aメロのサビが終わったあたりで会場を出てロビーへ戻る。
 ロビーのベンチに座り、ドリンク券で交換したペットボトルのスポーツドリンクをちびちびと飲む。
 五分ほどして曲が終わると偏頭痛や不快感も少しずつ治まって来たのだが、すっかりテンションが下がりきってしまい、会場内に戻る気にもなれずにベンチで休んでいた。
「おお、霍乱氏こんなところにいましたか、まもなく特典会が始まりますぞ」
 いつの間にかライブは終わったようで会場内にいなかった僕を探して、阿東君が僕を呼びに来た。
 阿東君は全身汗だくなのにこれ以上ないくらい清々しい顔をしていた。
 なんというか、一つのことをやり切った充実した男の顔だった。
「ああ、ごめん、ちょっと気分が悪くなっちゃって……」
「むむ、それはイケませんな、熱中症ですかな? それとも過呼吸? そういえば霍乱氏はアイドルのライブに来るのは初めてと言っておりましたな? ライブの熱気に当てられ、興奮しすぎて体調が悪くなるのはまあよくある話ではありますな」
「そうなんだ……じゃあ、会場内の熱気にやられたのかなあ。最後の曲? を聞いてるうちにだんだん辛くなってきて会場から出たんだよね」
「なんと! あの曲が一番の名曲だというのに聞かずに退出してしまうとはなんと勿体ない。次に来る時は体調を万全にして、ぜひ最後まで聞いていただきたい。心が洗われるような最高の曲ですぞ。吾輩など、あの曲を聞いているだけで生きる活力が湧いてくるのです」
「へえ、そんなにいい曲だったんだ、ちゃんと聞けばよかった。勿体ないことしたかなあ」
 阿東君がここまで熱弁するんだからいい曲だったんだろうなあ。
 でも、あの曲が始まった途端に気分が悪くなったんだよなあ。
 熱中症とかだったのかなあ? それとも隣で踊ってたオッサンすげえ汗臭かったから、それで気分が悪くなったのかなあ。
「そうですな、ですがまずは特典会ですぞ! 特典会に出ればたちまち元気になること請け合いですぞ、ささ、急ぎましょう」
 半分くらいもう帰ろうかと思っていたが、勢いに押されて会場へ戻る。
 会場内では既に客席が片付けられ、四人のメンバーに握手してもらうための四つの待機列が作られていた。
 見れば新見君はギーメルの、堀戸君はダレットの列に並んでいる。
「それでは、霍乱氏も気に入った子の列へ、吾輩は愛するラメドちゃんの列へ並ぶであります」
 スキップしながら阿東君がラメドちゃんの列へと駆けていく。
 さて、僕はどうしようか……
 プリティエンジェルスのメンバーは全部で四人。
 元気いっぱい かわいい系のギーメル 推定Fカップ。
 ボーイッシュなダレット 推定Bカップ。
 清楚系のザイン 推定Dカップ。
 ロリ顔巨乳のラメド 推定Gカップ。
 どの子も魅力的で甲乙つけがたいが……
「やっぱりザインちゃんかなあ」
 阿東君達と握手をしたりハグをした後の女の子と触れ合うのに若干の抵抗があり、消去法的にザインちゃんの列に並んだ。
「あたしのために、初めて取っておいてくれると嬉しいなあ」
「もっ、もちろんだよギーメルちゃん!」
「嬉しい、じゃあ約束だよ♥♥」
 むぎゅっ♥♥
「はっはい、かっ、かならっ、必ず、必ずやくしょくは守りマシュ」
 右隣の列では新見君がギーメルちゃんと熱烈なハグをしている。
 緊張なのか興奮なのか新見君は真っ赤な顔をしてセリフを噛みまくっている。
 しかし、すごいな今どきのアイドルは、冗談抜きで思いっきり新見君とハグしてるぞ。
 新見君のガリガリの胸板に顔を埋め、ぐりぐりと頬ずりするギーメル。
「ギッ……ギギギギ……ギーー♥♥」
「ふふ、アラミスさんておもしろーい」
 興奮しすぎて新見君がぶっ壊れてしまいそうだ。
「ねえ、ボクのためにずっと童貞でいてくれる?」
「もっ、もちろんでゴワス、拙者の純潔、ダレットちゃんに捧げるでゴワス」
 むぎゅう♥♥
 左隣の列では堀戸君がダレットちゃんとハグをしている。
 しかしアイドルのプロ根性は凄いな。
 ライブで汗だくになった堀戸君は頭から黒酢を被ったみたいな臭いがしてるのに、あんな笑顔で抱きつけるなんて。僕だったら絶対無理だ。いくらお金のためだとしても世の中にはできることとできないことがある。
「ポルトスさんてすっごく大きくて温かくてお父さんとハグしてるみたい♥♥」
 だってさ、すっごい笑顔でそんなこと言ってんの。学校で「濡れた野良犬みたいな臭いがする」とか「腐った雑巾みたい」とか言われて蹴っ飛ばされてた堀戸君、アイドルにこんなこと言われたらそりゃあ夢中にもなるよな。
 興奮しすぎたのかハグしながら堀戸君から湯気がもうもうと立ち上っている。
「すごーい、アトスさん、もう三十回も来てくれたんですか? ラメド感激ですー♥♥」
「もちろんですよ、ラメドさん吾輩はラメドさん一筋ですから」
「嬉しい♥♥じゃあラメドと一緒になれる日までずーっと童貞でいてくれる?」
「神に誓って吾輩は童貞を守り抜きます!」
 むぎゅっ♥♥
 新見君のさらに右の列では阿東君がラメドちゃんとハグをしていた。
 しかも三十回目のスタンプが貯まった特典でスプーニング――同じ方向を向いてのハグだ。豆タンクみたいな阿東君とロリッ子のラメドちゃんは同じくらいの身長だ。
 阿東君がラメドちゃんの背中側に密着し、お腹の方へ両腕を回す。
 ラメドちゃんの爆乳がボヨンと音を立てて阿東君の腕の上に乗っかる。
「ラメドちゃん、吾輩……吾輩はっ!!」
「やだぁ、アトスさん、ラメドのお尻に硬いモノが当たってますよ♥♥」
「ラメドちゃんっ……ぁ……ぁ」
 ラメドちゃんに密着した状態で阿東君の身体がビクビクと小刻みに痙攣する。
 まさか、阿東君射精とかしてないよね? いやでも、あの惚けきった顔……でもみんなの前だぞ、いくら何でも……
 特典会の列が少しずつ前に進み、もう少しで僕の順番が来る。
 しかし、この子達、握手する時必ず「私のためにずっと童貞でいてくれますか?」って聞くんだな。
 そういう客層を狙ってるってことなのかな? 確かにリアルでモテない人の方がこういうのにお金は使ってくれそうだけど……
 童貞でもなんでもない僕はここにいてもいいのかな? 阿東君に誘われたんだし……実際学校ではモテているとは言い難い状況だから大丈夫か? まさか、童貞じゃない奴は帰れなんて言わないだろう? そんなことを考えながら大人しく列に並んでいると――
「はい、次の方前に進んでください」
 ニッコリと微笑むザインちゃん。
 僕の順番がやっと回ってきた。

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