女性上位の美醜逆転世界で、貧乏貴族の長男に転生したカイ。
軍学校に通い、膨大な魔力量を活かして立身出世を目指すが、
同級生の侯爵家令嬢・エリカに突然、身請けされることに!
「お前は一生、私の夫という名の種付け性奴隷だ!」
自信なさげだった彼女に優しく接しただけのはずが、
身勝手な理屈でヤンデレ依存されてドロドロに愛されていく!
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第零章 婚姻逃れの軍学生
1話 軍学校と金髪の彼女
2話 葛藤
3話 宣戦布告
4話 特異魔術
5話 魔導演習戦
第一章 奴隷の花婿
1話 殿下とのお茶会
2話 報せ
3話 没落と取引
4話 黒い首輪
5話 婿入り先
6話 金色の凌辱
7話 二つの日常
8話 彼のキモチ
9話 汗だくの演習旅行その1
10話 汗だくの演習旅行その2
11話 紅い狼
12話 列車ジャックとの戦い
13話 その『命令』には従えない
14話 激突
15話 初めての告白
16話 エリカとのデート旅行その1
17話 エリカとのデート旅行その2
18話 灰色の影
電子書籍限定ストーリー デパートデート
本編の一部を立読み
第零章 婚姻逃れの軍学生
1話 軍学校と金髪の彼女
軍学校の入学式へと向かう車の中。
俺は落ち着かない気持ちを誤魔化すために、軍制服の胸に付けた、自らの位階を表す記章のメダルを何度も撫でていた。
胸元の小さな記章の横では、|この世界《・・・・》での俺の名前、『|東堂《トウドウ》|海《カイ》』という文字が刻まれた金属製のドッグ・タグが、太陽の光を受けてキラキラと輝いている。
それとは対照的に、〝貴士爵〟であることを示す円形のメダルは落ち着いた黒い色をしていた。
「ふぅ……」
この胸章のメダルに触れる度に、不安な気持ちが少しずつ和らいでいく。
軍学校の将校課程に入学した生徒には誰でも与えられる〝貴士爵〟なんて爵号を、俺みたいにワザワザ有り難がっているような奴はまぁ、殆どいないだろう。
なにせ家督を継げる立場の奴らなら、親からそのまま爵位を継げるだろうし、それ以外の奴らも、いずれは貴士爵より一つ上の位の准男爵には列せられるだろうから。
だが、一代限りの最下級爵位といえど、今の俺にとっては命の次に大事なものだ。
この理不尽極まりない女性上位の貴族社会において、男の俺に〝婚姻権〟──結婚相手を自分の意思で選ぶ権利──が認められるのは、この爵位があるからこそなのだから。
「しかし、オレと同じ男のお前が『爵位を得るために軍学校の将校課程を特別枠で受けるっ!』なんて言ってきた時には、流石に嘘だろって思ったけど。まさか本当に受かっちゃうなんてなぁ」
俺が物思いにふけっていると、隣の席に座る幼馴染が感慨深げにそう言う。
|明定《アケサダ》規彦《ノリヒコ》、俺の数少ない同性の友人の一人だ。
|この世界《・・・・》の男の割にはサッパリした性格をしているコイツとは、なかなかに気が合った。
「まぁ、とはいえさ、カイ。無理だけはするなよ。もし将校課程の|女だらけ《・・・・》の環境に耐えられない! ってなったら、いつでも相談してくれよ。実家パワーを使って、オレのいる看護課程に転属させてやることくらいはワケないからさ」
「おう、ありがとう。でも家の反対を押し切って、親の目を盗んでコッソリ受験までして入ったんだ。途中で音を上げるなんてことはしねぇよ」
「だからこそ心配なんだけどなぁ。自分を追い込みすぎないかって。……というか、男に飢えた汗臭い女共しかいない将校課程なんて、オレなら一週間と持たないな」
ノリヒコはそう言って顔をしかめると、両手を組んだままブルブルッと震える。
コイツは多少……いや、かなり女性が苦手みたいだ。
ただ、|この世界《・・・・》の男は大なり小なり女性恐怖症的なところがあるし、ノリヒコのこれは一般的と言っていいレベルなのだろうとも思う。
「しかし未だになんでお前がそんなに〝爵位〟に拘ってるのか、よくわかんないんだよなぁ。なんなら黙っていても、お前ならいくらでも名家の人間から婚姻の申し込みが来るだろう? 結婚すれば悠々自適に暮らせるっていうのに……」
車のウィンドウに反射して映っている自分の顔を見て、俺はしかめっ面をした。
(前世と全く変わらない黒髪黒目の目立たない地味顔……この顔でイケメン扱いになってるなんて、この世界はやっぱり変だ……)
この異世界に転生してはや十数年。
『科学ではなく魔術が社会の基盤となっている』ことや、『男女の役割が逆転している』ことに納得はできなくとも、|慣れ《・・》はした。
けれども――〝前世〟と神様による〝転生の記憶〟を完全に取り戻した十歳のあの日から考えても、既に数年もの時間をこの世界で過ごしてきたわけだが――未だに違和感が拭えないことが一つだけある。
美醜観の狂い――この世界の女性に対する美醜の評価は、元の世界(日本)とちょうど逆転していた。
つまり、
──肌にシミやシワ、吹き出物がなく瑞々しいこと
──目がパッチリと大きく、小顔であること
──胸と尻が大きく、腹が凹んでいること
──髪がサラサラとしていること
以上のような|俺《カイ》基準での美少女が、この世界では醜女としての扱いを受けていた。
男性に対する美醜の評価も逆転とまではいかなくとも、少々狂っていた。
まぁ俺のような平凡な芋顔がイケメン扱いされるわけだから、十分に狂ってるとは言えるかもしれないが。
「〝美人〟で有名な名家のお嬢さんからも婚姻申し込み来てたって話じゃないか。勿体ない」と続けて言うノリヒコに、俺は苦笑いで答えた。
「まぁ、俺には俺の考えがあるからさ。っと言ってる間に着いたみたいだな」
◆◆◆◆
軍学校の無骨な校舎の周りには、満開の桜が艶やかに咲き誇っていた。
入学式会場となっている大講堂の周りは、期待と緊張の入り混ざった表情を浮かべる新入生達で溢れている。
ちらほらと看護課程の男子学生の姿も見受けられるが、そのほとんどは将校課程に所属予定の|女生徒《・・・》達で占められていた。
講堂へと近づく度に、彼女達からの視線が自分に集まって来るのを感じる。
「うわー。わかっちゃいたけど、お前めちゃくちゃ目立ってるな……」
俺の後ろから恐々と顔を覗かせたノリヒコがそうボヤいた。
「お、おう……」
ただでさえ人口比率的に少ない男の俺が、茶褐色の将校課程の制服を身に纏っているのだ。
目立つことは覚悟していたつもりだったが、いざ実際にこうも注目されてしまうとなると流石に顔が熱くなり、動作が固くなってしまう。
(っと、こんなことじゃいけないな。今日からここで、俺の新生活が始まるんだ……!)
正面に見える鉄筋コンクリート造の講堂のその威風堂々とした様は、怯んでいた俺の心を再び奮い立たせてくれているように思えた。
俺は一歩一歩踏みしめるようにして、入学式会場へと歩みを進める。
中庭から続く大講堂入口の石造りの低い階段を登り切ったあたりで、何気なく後ろを振り向いた俺は……見惚れてしまった。
(金髪の……妖精……?)
軍学校の庭を彩る桜の木々の下。
絹糸のような美しい金色の髪の少女が、キョロキョロと不安そうにあたりの地面を見渡しているのが、目に飛び込んできた。
「悪い、ノリヒコ……。先に会場、入っておいてくれ」
「おい、カイ! 何、戻って……ってゲッ、|嬢ヶ崎《ジョウガサキ》じゃねぇか。カイ、アイツはヤバイって……」
背中越しにノリヒコのうめき声が聞こえたような気がしたが、俺は吸い寄せられるように彼女の元に歩き出していった。
「はぁ、入学初日からまた私はヘマをして……自分自身がホトホト、嫌になる……」
ボソボソと小声で泣き言を呟きながら、猫背姿でトボトボと歩き回っている彼女。
何か困り事だろうか?
「あの。君も、もしかして新入生?」
袖口の桜花型の銀ボタンが自分と同じ一個なのを見て、俺はそう声をかけた。
「ひっ?! え? あ、お、男……?! あ、あの。はい、そうです。私も新入生……です……」
突然、後ろから俺に声をかけられてビックリしてしまったのか、金髪の美少女はビクンっと体を跳ねさせてそう言った。
アワアワとした様子で体を左右に揺らす度に、胸元のメロンほどもある大きな膨らみが、ふにゅんと魅惑的な揺れを放つ。
(そのベビーフェイスで、その胸のデカさは反則でしょ……)
俺は眼の前の女の子に気付かれない内に、そのこぼれ落ちそうな爆乳からなんとか目線を戻す。
ブロンドの髪をハーフアップのお嬢様結びにしている彼女は、まるでエルフの姫君のように清楚で可愛らしい。
透き通ったエメラルド色の大きな切れ長の瞳は、少し涙目になっていて、俺の庇護心を|擽《くすぐ》ってくる。
(思わず声をかけちゃったけど。こんな可愛い子相手に、どう話を続ければいいんだ?)
この〝美醜逆転世界〟の審美眼的には、眼の前の女の子が〝不美人〟という扱いを受けていることは重々、承知している。
だが、前世の価値観を持っている俺からすれば、彼女は間違いなくアイドルも裸足で逃げ出すような美少女なわけで。
「あぁー、ええっと。何か困ってそうだったけど。手助け必要そう?」
女慣れをしていない俺は、緊張で声が裏返ってしまう。
「……士官手帳を落としてしまって」
彼女は伏し目がちにそう言うと、また桜の花びらで埋まる地面を、目を皿のようにして凝視し始めた。
入学初日で士官手帳を落としてしまったとなると、教官から大目玉を食らうのは避けられないだろう。
蒼白になった彼女の顔を見て、俺はフワフワと色ボケしていた気持ちをようやく切り替えることができた。
「オッケー。俺に任せてよ」
「え? どうやって?」
彼女の疑問に答えるより前に、腰に下げた軍用の〝魔導杖〟を抜くとそれを額に押し当てて、自分の瞳に魔力をゆっくりと込めていく。
〈魔眼〉のフィルターを通すことで、彼女から伸びる魔力痕跡の先に、地面に落ちている士官手帳が、緑色の輪郭を帯びて浮かび上がってくるのが見えてきた。
(いやー、入学前に予習していた魔術がこんな形で早速役に立つとは)
「お。あった、あった」
少し歩いた先で、桜の花びらに覆い隠されていた彼女の生徒手帳を拾い上げる。
(嬢ヶ崎|英里香《エリカ》さんか、綺麗な名前だな。って嬢ヶ崎?! 帝国三大名家の一つの侯爵家のお嬢様じゃねぇか!)
貴族社会に疎い自分でも聞いたことのある大貴族の名前に、震え上がる。
自分のような人間など、彼女の実家からすれば|塵芥《ちりあくた》のようなもの。
「あ、え、コレ……ドウゾ」
プレッシャーのあまり、ロボットのようなカチコチの動作になって彼女に手帳を手渡す。
士官手帳を受け取った彼女は、押し黙ったままだ。
おいおい、まさか「侯爵家のアタクシにぞんざいな口の利き方をして! 無礼ですわよっ!」と今更になって怒り始めるんじゃないよな……。
「あの……ありがとう」
俺の勝手な被害妄想に反して、彼女はそう短く告げた。
感謝の言葉を口にした彼女の顔には僅かに緊張の色は見られるものの、さっきの蒼白さはなく、桜の花びらのような薄紅色に染まっていて……。
(か、かわいい……)
俺は改めて眼の前の金髪の彼女、エリカの|初心《うぶ》で清純な姿に見惚れてしまうのだった。
◆◆◆◆
軍学校に入学して、二週間ほど経ったある日の昼下がり。
嬢ヶ崎英里香は、苛立っていた。
歩く息遣いは荒く、軍事教練の疲れと連日のオ×ニー三昧による寝不足のせいで、その目は落ちくぼんでいる。
金髪のストレートヘアーは、手入れを怠っているせいか、少しささくれ立っていた。
彼女の目の前には、見目麗しい看護課程の男子生徒が数人程たむろしている。
「井上さんっ! 軍事教練での魔術戦、すごくカッコよかった~♡」
「|駒沢《コマザワ》さん、貴女のためにお弁当作ってきたんだ♡これ食べて、元気出してよ♡」
彼ら男子学生が囲っているのは、先程の軍事教練の魔術戦で活躍した将校課程の女生徒達。
(……強い女に|傅《かしず》くしか能の無い、寄生虫のような男共め)
自分が望んだ所で決して手に入ることのないものを目の当たりにして、心の中にはドス黒い怒りの火が|燻《くすぶ》り始める。
「井上さん~♡この後、看護課の友達とご飯一緒してよー♡」
「ははは……困るなぁ、君達」
(井上も井上だ! あんな尻軽で知性の欠片もなさそうなオス共に鼻の下なんか伸ばしやがって。低俗な奴だ)
群がる男達に困り顔をしながらも、満更でもなさそうな顔を見せる同性の姿を見て、エリカの苛立ちは頂点を迎えつつあった。
(あーイライラする。早く部屋に戻って、オナって寝よう)
いつものごとく日常生活で受けたストレスを自慰行為で解消しようと、足早に女子寮へと向かう。
エリカは、自分の部屋に戻ると制服も脱がずにすぐベッドにバタンと倒れ込んだ。
「カイ……」
シーツに顔を埋もれさせたまま呟くのは、入学式の時に顔見知りになった美青年の名前。
これまでの人生、異性に本心から優しくされたことなど一度たりともなかった。
家の権力に取り入ろうと、表面上は取り繕いながら接してくる男であっても、その瞳の中には隠しきれない恐怖と侮蔑の色が覗いていた。
まるで、汚らわしい昆虫や病原菌を相手にしているような、あの独特の歪んだ目つき。
だが、彼だけは……東堂海の瞳には、それが無かった。
むしろ、恥じらいや気後れが宿ったあの時の視線はどこか頼りなく、生身の男に複雑な感情を抱いてしまうエリカの心すら、不思議と落ち着かせてくれた。
一瞬、「実は彼が自分のことを異性として好いてくれているのでは」という馬鹿げた妄想を頭に思い浮かべるが……すぐに自分の滑稽さに対する嫌悪で、枕に顔を埋めてジタバタとしてしまう。
これまで貴族の祝賀会で見たどの男よりも、カイは器量が良く、それでいて傲慢さは欠片も見られない。
(いや、カイだって所詮、男だ。自分の感情を隠すのが上手いだけで、どうせ内心では他の男連中と同じように私のことをブスだ、落ちこぼれだと馬鹿にしてるに違いない)
今までの人生で歪みまくってしまった人格から導かれる、被害妄想じみた推測。
自らの醜さを嫌う異性にしか会ったことのないエリカにとって、〝男〟は欲望の対象であると同時に忌むべき対象でもあった。
渦巻きのような暗い思考による疲れと苛立ちが、エリカの湿った情欲を余計に駆り立てていく。
急き立てられるような勢いで制服のボタンを外していき、半裸になった彼女は、|宝物《・・》を詰めたキャビネットから一枚の写真を取り出した。
入校式の時に取った集合写真、そこには自分の他に、同じ将校科に属する駒沢や井上といった同性の同期と共に、|彼《・》も写り込んでいる。
「カイっ……カイっ……!」
シーツの上に置いた写真を見下ろしながら、M字に開脚して自分の秘所を乱暴に弄っていく。
脳裏に浮かべるのは、オナニーのために構築したエリカが治める妄想の王国。
暗く湿った城の地下牢……目の前には荒縄で後ろ手を縛り上げられた黒髪の彼と、それを見て哀れに泣き叫ぶ美しい彼の妻達、駒沢と井上の姿。
「お前らの夫は、締まりの悪いおマ×コなんかよりも、私のくっさーいマン汁まみれのレ×プ魔のキツキツ無毛穴の方が好みらしいぞ」
エリカは泣きじゃくるカイの頭を無理矢理にロックして、ベロベロと執拗に顔を舐め回して涎のマーキングをしながら、無慈悲に腰を振り続ける。
「カイッ♡カイッ♡イクぞ♡絶対にお前の子を孕んでやる♡泣いても無駄だぞ♡」
ベッドの上で金色の髪を振り乱しながら、彼からくすねて来たハンカチを|現実の世界《・・・・・》で鼻に押し当て、思い切り吸い上げる。
僅かに残る彼の匂い分子が鼻腔を通して、体いっぱいに広がっていくような感覚……オ×ニーのために作り出した脳内の|妄想世界《・・・・》の彼のリアルさが更に高まっていった。
『いやだっ! やめてくれっ! こんなキモブス女に俺の精子盗られたくないっ! 赤ちゃん、産ませたくないっ!』
「やめないっ! お前は一生、私の〝孕ませ肉棒〟として生きていくんだっ♡お前の赤ちゃん、何人でも何十人でも孕みまくってやるぞ♡」
興奮状態のままに、彼の首に白い指を沿わせてゆっくりと締め上げていく。
苦しそうに顔を紅潮させる彼の泣き顔を拝みながら、エリカは最後のトドメを刺すように、腰振りのラストスパートをかけた。
妄想の中のプレイの激しさとリンクするように、自身のコリコリとした陰核への指使いの集中攻撃を加速させ、乳首をグリグリと引っ張るように乱暴に弄り倒す。
「あっ♡くるっ♡子宮降りてくるっ♡お前の赤ちゃん汁よこせっ♡早く私の卵子によこせっ♡」
パンパンパンッ! パチュッ! ヌチャッ! ズリュンッ!
「うっ、あぁぁ……ぐぁぁぁ……苦しいよ……エリカ……」
絶望に染まる彼の顔を見て、嗜虐心が更に高まる。
母乳を飲ませたい……美しい彼の身体に自分のおっぱいエキスを染み込ませて、内も外も汚し尽くしてやりたいっ!
嫌がる男を無理矢理に犯す獣欲と罪悪感で、エリカの脳髄は痺れ上がっていた。
「私の乳首を吸えっ! 私のおっぱいミルクでお前の身体の中も犯してやる」
「飲みたくなんかないよ……誰か助けて……」
「助けなんて来ないぞ♡ほら、早く舐めろ♡」
自分の胸のピンク色の先端をつねるように揉みしだきながらそう叫ぶと、妄想の中のカイが自分の胸に舌をチロチロと這わせてくる。
「んほぉっ♡お゛お゛っ♡イクっ♡」
一際大きな快楽の電流が肢体を走り、ぷしゃぁ~と勢いよく吹き出す膣液と母乳が、|現実世界《・・・・》で、シーツの上に広げられたアルバムの写真の上に降りかかった。
エリカは舌をダラリと口の端に垂らしながら、下半身に脳が支配されたような甘い陶酔にしばし浸った。
「んっ……あっ……ふぁぁ……♡」
しばらくすると快感に痺れていた頭のモヤが徐々に晴れていき、代わって自分の体液でベタベタになった不快感と、思い人を脳内で汚してしまった自己嫌悪の方が|勝《まさ》ってくる。
冷静さを取り戻したエリカは、ヌトヌトになってしまったアルバム写真を丁寧に拭っていき、保存場所の棚を開けた。
「はぁ……カイ……」
写真を保存しているキャビネットの中に眠る〝お宝〟の数々。
入校してすぐの頃に棚の中心部を占領していた春画や男優のブロマイドは、今では隅の方にこぢんまりと置かれているだけ。
代わりに秘密のキャビネットの一等地を占めているのは、妄想の中で何度も凌辱に凌辱を重ねてきた彼に関連するものばかり。
カイが写る入校時の記念写真、「東堂海」と刺繍がされたハンカチ、彼が口を付けて飲んだ後に捨てたラムネの瓶……。
自分自身でもこんな風に好きな男の私物を勝手にかき集めているのは、性犯罪者一歩手前のストーカー的な行為だということはわかっている。
だが、わかっていても止められない。
(あぁ、カイを監禁して本当に私の性奴隷にできたら……)
先程シたばかりだというのに、〝宝物〟を見ているだけでまたムラムラとした妄想が加速し始める。
クチュリと股間から愛液が垂れてきたのを感じる。
(明日の朝も早いし、課題も終わっていない。これ以上、自慰に時間を使っている場合じゃないんだけど)
エリカはそう自覚しながらも、自らの陰部を慰める快楽の沼に抗えず、沈んでいった。