本販売日:2024/11/22
電子版配信日:2024/12/06
本定価:825円(税込)
電子版定価:880円(税込)
ISBN:978-4-8296-4768-4
「今日は私を彼女に選んでくれてありがとう」
待ち合わせ場所に現われた年上の「レンタル彼女」。
笑顔が素敵なワンピース姿の美熟女は母に激似!?
疑心を抱きながらデートをするうちに湧き上がる恋情。
二時間だけのカップルのはずが本気で好きになり……
嘘から始まった関係が母子を禁忌の迷宮に誘う!
第一章 デートに現われたのは母に激似の年上女性!?
第二章 「彼女」になってくれた母との濃厚セックス
第三章 実姉から「レンタル彼氏」になってと頼まれて
第四章 浴室での交尾で深まる姉弟の愛情と禁絆
第五章 愛の証しに後ろの穴を捧げてくれた淫母
第六章 レンタルではなく真実の恋人同士になった日
本編の一部を立読み
第一章 デートに現われたのは母に激似の年上女性!?
(レンタル彼女って、いったいどんな女性があらわれるんだろう?……優しくて、口下手な僕でも話しやすいタイプの人だといいけど……)
十八歳の大学一年生、晴彦は県内一の繁華街の中心にある、待ち合わせ場所に指定したとある老舗百貨店の正面エントランスの前に一人、胸を高鳴らせながら佇んでいた。
胸の昂りは期待のワクワク感からではなく、今日こそは失敗せずにうまくやれるだろうか、という緊張感からだった。
七月初旬の気温の影響もいくらかはあったが、Tシャツに薄手のジャケットを羽織った彼の体には、「暑いから」とは別の理由の汗が、既にうっすらとにじみつつあった。
(この前の人生の初デートみたいな残念な結果に終わらないように、レンタル彼女との予行練習で、しっかり女心を勉強するんだ)
レンタル彼女。
それは一時間数千円の契約をすることによって、店舗から派遣される見ず知らずの女性が顧客の「彼女」になりきってデートをしてくれるという、いかにも今時らしい新種のサービスだった。
当然風俗とは異なり、一切の性的プレイはあらかじめ固く禁じられていたが、いまだに正式なガールフレンドができたこともない童貞の晴彦の目的は、そんなものではなかった。
(女子をどんなところにエスコートして、どんな会話をして、どう振る舞えば嫌われずに済むのか……僕は女性の気持ちを、ちゃんと知りたいだけなんだ)
数週間前、彼は第二外国語のフランス語の授業で知り合った同い年の女子を、生まれて初めてデートに誘うことに成功したものの、目も当てられない惨憺たる結果に終わったばかりだったのだ。
高校時代は勉強ばかりしていて、これまで異性と触れ合うチャンスなど一度たりともなかったゆえの、失態だった。
もう十八の大学生なのだから、その分の遅れを一刻も早く取り戻したい。
同じ学校に通うイケてる男子たち並みに、素敵な女性の心を掴む術をしっかりと身につけるための、リアルなトレーニングをしておきたい。
それこそが、本来奥手な彼が「レンタル彼女」というものにチャレンジしてみようと考えた、最大の理由だった。
(望美さん……いったいどんな人なんだろう)
加藤望美、三十四歳。それが晴彦が待っている、「彼女」の名前と年齢だった。
彼が会員登録した店舗のサイトでは、初回利用の客にはまだパスワードが知らされず、「レンタル彼女」たちの顔写真は非公開の設定になっているので、先方がどんなルックスなのかは今のところ、彼は知るよしもなかった。
(綺麗な女性だったら嬉しいけど、外見なんかは二の次なんだ……性格が良くて、僕と気の合うひとであってくれさえすれば……)
三十四、という一まわり以上も歳上を選んだのにも理由があった。同級生との失敗がトラウマになり、たとえ相手が二十代であっても、年齢が近い若い女子と接するのが、どうにも怖くなってしまったのだ。
(若い子よりもお姉さん系の方が、人生経験が豊富なだけ温かく接してくれる気がするし……何よりも、望美さんの紹介文に惹かれちゃったし……)
サイトのプロフィールには、こう書かれていた。
「落ちつきのある、大人の女性です。聞き上手なタイプで、お客様の相談事にも何でも乗ってくれる、優しい望美さんです」
(僕が今求めてるのは、ガチでそういうひとなんだ……どうかこの宣伝文句が、適当なツリやインチキなんかじゃありませんように)
そう念じつつ腕時計を見やると午後三時五十五分、待ち合わせ時刻のちょうど五分前だった。
と同時に、耳もとでおだやかな声が響いた。
「モスグリーンのジャケットに、デニム……晴彦さん、ですか?」
スムーズに落ち合えるように、先方にあらかじめこちらの服装を伝えていたので、
(遂に来たんだ……僕の、今日だけの「彼女」が……)
と胸を高鳴らせたまま、晴彦は目の前に静かに佇む、淡い水色のワンピース姿の女性の顔を確かめようと、ゆっくりと視線を上げた。
ドックン……とジャンプするようにひと際激しく、ハートが弾んだ。
突然わけがわからなくなり、頭が真っ白になった。
望美という女性が、あまりにも彼の実母・雪乃と瓜二つだったからだ。
(……か、母さん?……いや、まさか……そんなこと絶対にあり得ないよ……)
驚くばかりの晴彦は、初対面であるはずの「彼女」の容姿を不躾にも、呆然と見つめずにはいられなかった。
(名前も歳も違うし……母さんはいつも眼鏡にほぼスッピンで、この人みたいに綺麗なメイクなんかしてないし……母さんは普段パンツルックなのに、おしとやかなワンピースを着てるし……)
何よりも同居している四十二歳の母は以前から事務の仕事をしていて、「レンタル彼女」などという今風の客商売に関わっているはずもなかった。
(てことはやっぱりただの偶然……他人の空似ってヤツなのかな……母さんもかなりの美人だけど、このひとはもっと綺麗で、若々しく見えるし……)
ただ無言で自分を凝視するばかりの若者の様子に、戸惑ったのだろう。「彼女」が少し困ったような笑みを浮かべ、ルージュに彩られた唇を開いた。
「もしかしたら晴彦さんじゃなく、お人違いでしたか?」
「……いいえ、僕です。僕が晴彦です……望美さん、ですね……」
実母がつけているところは見たこともないパールのピアスを飾った美貌が、うなずく。
「はじめまして、望美と申します……それにしても、どうしてそんなにびっくりしたお顔をしていたの?……やっぱりわたしなんかじゃ学生さんのあなたには、歳上過ぎたのかしら」
会員登録の際、こちらの年齢と身分は先方に伝えることになっていた。
ピアス同様、母が持っているところは見たことのないハンドバッグから、「彼女」がスマホを取り出す。
「もしももっと若い女の子がご希望でしたら、わたしからお店に変更をお願いすることも可能ですけれど、どういたしましょうか」
晴彦はごく自然に、首を横に振っていた。
ずっといっしょに二人暮らしをしている仲良しの実母にそっくりの女性なら、きっと自分と気が合うはず。直感的に、そう思えたからだ。
ホッとしたように、望美が微笑む。
「それじゃあ早速、デートを始めましょうか。二時間コースの、お散歩プランでよろしかったですね?」
「お散歩プラン」とは、二人で繁華街などをそぞろ歩きながら会話を楽しむというものだった。
他にも「美術館めぐり」や「映画鑑賞」等のプランもあったが、女心についての相談をするには、これが最もちょうどいいように思えたのだ。
首肯すると、美女が当たり前のようにすんなりと、すべすべの手指で彼の手を握ってきた。
先日のデート相手はおろか、実母とさえももう十年ほども手を繋いだことがなかったので、たかがこれだけで、全身がビクッと跳ね上がってしまう。
「……いきなり触れ合ったりして……いいんですか?……」
上品な化粧に彩られた艶やかな美貌が、やわらかくほころぶ。
「もう、何を遠慮なさっているの? わたしは今から二時間、あなただけの彼女なんですよ。お手てを繋ぐなんて、当たり前のことでしょ」
「彼女」の手は温かく、柔らかく、十八歳の童貞青年の緊張はそれだけで少しずつ、ゆっくりとほぐれていくのだった。