魔指電車【あの子のお父さんに…】

著者: 御前零士

本販売日:2025/01/23

電子版配信日:2025/02/07

本定価:825円(税込)

電子版定価:880円(税込)

ISBN:978-4-8296-4781-3

それは代わり映えしない朝の通勤中に起こった!
満員電車の中、平凡なサラリーマン由希人が見たのは、
魔指にいたずらされ、頬を染めて恥辱に耐える制服の乙女。
中年男に湧く、自らも触ってみたいという危険な衝動。
欲望に負けてスカートの下に指を潜り込ませるが、
薄布を濡らす相手がまさか「娘の友達」だったとは!

目次

第一章 満員電車で目撃した痴姦現場

第二章 入れ替わった魔指

第三章 車内で開発される乙女の性感

第四章 嫌悪感が快感に変わった瞬間

第五章 娘の友達だと知っても止まらない淫技

第六章 友達のお父さんに捧げた純潔

第七章 妻の留守中、社宅で溺れる情事

第八章 娘のベッドで味わう蒼い肉体

本編の一部を立読み

第一章 満員電車で目撃した痴姦現場

 新年度の始まりには希望が付き物だ。そして自然と気が引き締まり、学業や仕事に一段と熱が入る。しかし現在四十歳の佐々木由希人にとって、年度の移り変わりはさほど重要なイベントではなかった。サラリーマンであり課長職に就く彼だが、新年度の訪れには気苦労しかないからだ。
 仕事に於いて由希人が最も重視するのは安定感だった。会社には申し訳ないが目覚ましい業績アップは狙っていない。下手に好成績を残せば上層部の目に留まり、望まぬ昇級と責任を負わされる。その分収入は増えるのだろうが、引き替えに負う疲労が大きくなってしまう。そこそこの成績を出しつつ目立たない、それが由希人の目指す社会人生活だった。
 由希人は身長百七十センチ、体重は平均値。顔立ちは平凡そのもので、人混みに紛れたら見つけ出すのは難しい。身体能力は普通で、これといった得意なスポーツもない。良くもなく悪くもない、実に平均的な存在なのだ。
 もちろん、若い頃には希望を胸に努力はした。勉強と部活動に打ち込み、人並みに恋もした。だが結果はいつも残念で、他人に誇れる成功体験はない。進学した大学は所謂Fランクで、いまいる会社だってぎりぎり滑り込めたに過ぎなかった。いつからなのか思い出せないが、諦めと妥協が基本の人生となっていた。
 四十歳で課長、社宅だが一戸建てに住んで妻と娘もいる。傍から見れば充分に成功者なのだが、由希人にその実感はない。同期入社の者たちは皆自分よりも役職が上で、華麗な人生を謳歌しているからだ。
 妻である深春とは大学の同級生で、付き合うようになったのはサークルの罰ゲームが切っ掛けだった。当時由希人には他に憧れている女性がいて、そちらに比べると深春は顔立ちもスタイルもぱっとしなかった。でも由希人は深春との交際をやめなかった。叶わぬ恋を追い続けても惨めになるだけで良いことはなにひとつない。それになんの取り柄もない自分にとって、女性と付き合えるチャンスは二度と巡ってこないと考えたのだ。
 深春との初めての夜は緊張で勃起せず、童貞を卒業できたのは交際を始めて三年経った大学四年になってからだった。意外にも深春は初めてではなかったが、特にショックを受けることはなかった。寧ろ、自分のような日陰者にはぴったりな現実だと笑いが込み上げたくらいだ。
 その後義両親から強引に結婚へと誘導されたが、これも拒否しなかった。深春は美人ではないがそこそこ気が合っていたし、結婚を申し込みに行って拒まれるよりはずっと良い。そして大学を卒業して内定先に就職をし、色々と落ち着いてきた一年後に小規模な結婚式を挙げた。大学の友人たちの中で一番早い結婚となったことだけが夫婦の自慢となった。その後順調に子どもを授かったのも幸運と言える。この時点で自分の人生に於ける運は全て使い切った、そう思えた。
 会社の通勤には中古の軽自動車を使う。同期は外車や高級国産車を乗り回しているが気にしてはいない。ひとり娘の成実は中学を卒業してこの春から学園へ通う。これから更にお金が掛かるのだ。由希人は特に趣味もなく蓄えはそれなりにあるのだが、やはり安定を重視して浪費と思えるものは全て遠ざけていた。
 そんな彼だから、部下たちを引き連れて女遊びに繰り出したこともない。ただの無駄遣いだし、なにより性欲が湧かないのだ。若かりし頃はそれなりに性欲はあったものの、娘を授かった頃から夫婦の営みは途切れてしまった。元々深春が好みのタイプではなかったことも、セックスレスの要因としては大きい。だが夫婦の関係は悪くない。深春はセックスを好まないらしく、それに助けられる形だ。
「行ってらっしゃい。帰りは?」
「うん、特になにもないと思うから定時だよ。行ってきます」
 妻との会話は多くはなく、しかも淡々としている。結婚して十七年が経つのだからごく一般的な状態だろう。娘の成実は部活の朝練に参加するため自分よりも早く家を出ており、朝の会話はほとんどできない。週末は母娘で出掛けてしまうことも多く、父親としては少し寂しかった。
 そんな平凡な毎日が続く。だが自分にはこれで良い。仕事も刺激とは無縁で華やかさがないが、代わりに安定感がある。今日も定時まで黙々と書類を片付けよう──会社の門をくぐって自分の課に向かう由希人だったが、この日は予期せぬ事態が待ち受けていた。

「それで、いつからなの?」
「来週の月曜から。急だよな、ほんとに」
 金曜日の夜七時。家族三人で夕食を摂りながら、妻に尋ねられた夫は肩を落とす。出社してすぐに部長から呼ばれ、転勤の辞令を渡された。新事業の一環として社屋外に事務所が設立されていたのだが、その責任者の後継に命じられてしまったのだ。
 新事務所は立ち上げ時からいままで成績優秀者を集めて運営されていた。その業務が軌道に乗ったため、社の上層部は優秀者を本社に戻したいという思惑らしい。そこで交代要員として白羽の矢を立てられたのが自分だ。もちろん優秀だからではなく、本社にいなくても業務に差し支えが出ないから選ばれたに過ぎないと分かっている。複雑な思いだが命令とあれば従わざるを得ない。
「ふぅん、でも良いじゃない。お給料上がるんでしょ?」
「うん、まぁちょっぴりなんだけどな」
 娘にあっけらかんと声を掛けられ、父は苦笑する。転勤は予想もしない出来事だった。このまま目立たず地味にサラリーマン人生を続けるつもりだったのに。新しい環境に加え初顔合わせとなる部下たちとのやり取りで相当に気疲れする羽目になるだろう。
 事務所は駅前にあって従業員用の駐車場がなく、電車での通勤になるのも辛い。娘が通学に利用している路線なのだが、朝夕のラッシュはかなりのものと聞く。この歳になって満員電車に乗ることになるとは──想像するだけで溜め息が出てくる。しかも事務所の最寄り駅は娘の遣う学園最寄り駅のひとつ先だ。その分長く満員の苦しさに耐えなくてはならない。
「あたしの時間帯は結構空いてるから、一緒に行く?」
「ははは、そりゃ嬉しいお誘いだけど難しいなぁ。あんまり早く出社しても怒られちゃうからね」
 愛娘から意外な言葉をかけられて父親は思わず笑顔を見せる。しかし朝練に赴く娘と共に電車へ乗るのは無理だ、業務開始の一時間半ほど前に着いてしまう。寂しいがこれが現実というものだろう。
 不本意な転勤となったが、辞令を拒めば最悪の場合クビも有り得る。波風を立てずに会社員生活を続けるコツは上からの命令に逆らわないことだ。その上でそこそこの成績を出していればいずれ元の職場へも戻れる。
 こうして新たな生活が幕を開けた。通勤ラッシュの混み具合は予想を遙かに超えていて、平凡なサラリーマンはただでさえ冴えない顔立ちを更に曇らせる羽目となった。
     *
(まったくツイてないな。まぁこれがオレの人生なんだけどさ)
 新たな職場での仕事は覚えることが多く、必死になる分だけ時の進みが早く感じられる。瞬く間に一週間が過ぎ、由希人は疲労の色を顔に浮かべて駅のホームへ上がる。今朝もホーム上は利用客でごった返しており、乗車の待機列がずらりと並ぶ。その内のひとつへ加わり、由希人は溜め息を吐く。
 落ち着いた毎日を送るにはルーティンが大事だ。決まった時間に起きて決まった道を通り、電車の乗車位置も定める。仕事ではどうしても突発的なアクシデントに見舞われる。しかし他のことがいつも通りであれば気疲れは最小限で済む。由希人にとって、流れ作業のように一日を過ごすのが心の平穏を保つコツだった。
 事務所最寄り駅までの電車は十両編成の急行を使う。自駅を出れば目的地までノンストップだ。煩わしい乗り換えをしなくて良いのは有り難いのだが、二十分強の時間寿司詰め状態に耐えなければならない。前から四両目の前から二つ目のドア、そこが自分の決めた定位置だった。
 電車の接近を告げるアナウンスが流れ、やがて急行が入構してくる。車窓から見える車内の状態はいつも通り芳しくない。既に八割以上空間が埋まっていて、そこへ自分たち新たな乗客がぎゅうぎゅうに押し込められることになる。
 一般車両にちらほらと女性客の姿があるのが意外だ。男性でも周囲からの圧力で息が詰まるのに、華奢な女性が耐えられるのかといつも心配になる。
 彼女たちも本当は最後尾の女性専用車両に乗りたいのだろう。だがたった一両しかないそこは他の車両よりも混雑が酷い。乗りたくても乗れず、仕方なく一般車両を選ぶというのが実情のようだ。しかし密閉空間に男女が押し込められるのだから、中には不届き者も出てくる。それが痴漢だ。女性客は人いきれの苦しさに耐え、更に痴漢を警戒しなくてはならないのだから同情せずにはいられない。
 乗車の人波に呑まれて車内へ詰め込まれて間もなく、急行電車は重たそうにゴトリと動き出す。乗客は進行方向と逆向きに大きく揺られ、それぞれに立ち位置を確定させて床を踏みしめる。由希人は周囲に倣ってブリーフケースを太腿の前で持ち、圧力に耐えて顔をしかめる。
 今朝も混み具合は最悪だ。周囲の乗客は自分と同じ背広組ばかりで、皆同様に浮かない面持ちで俯いている。毎日幸せな者ばかりではないと分かり、由希人の胸は少し楽になる。
 急行電車はなめらかに加速を続け、やがて最高速に達する。走行音が大きくてただでさえ苛立つのに、身体の全周に他人の体温が感じられて更に気が滅入る。これが夏になったらどうなってしまうだろうか。学生たちが夏休みに入って多少乗客が減るとしても、相当に暑苦しい状況になるのは想像に難くない。
 夏の通勤状況を想像して軽く溜め息を漏らしたその時、電車がカーブで揺れて乗客も一斉に傾く。すぐ右に立つサラリーマンに肘打ちに近い接触をされ、由希人は内心ムッとしながらも平静を装う。こういう場合は下手に感情を表に出さない方が良い。相手だって混雑で苛立っているのだから高確率で喧嘩になる。
(……お……?)
 揺れが収まって元の立ち位置に戻った由希人は、人垣の隙間に意外な乗客を見付ける。左前方の隙間から見えるのは、娘と同じ制服を纏った長い黒髪の少女だった。俯いて必死に耐えている彼女は右の横顔が確認できるだけだが、しがないサラリーマンは目を丸くして思わず見詰めていた。その少女は自分がいままで出会ってきたどの女性よりも眩く可憐だった。
(すっ、すごいな。こんなに可愛い子がいるなんて……)
 由希人は呼吸も忘れて人垣の隙間を凝視する。背広の群れに囲まれて俯く乙女は睫毛が長く、肌の白さがなんとも眩い。身長は百六十センチほどだろうか、おとがいの細さから全体的に華奢なのだと分かる。
 もし自分のクラスにこんな美少女がいたら、毎日が晴れやかで楽しかったに違いない。いや、余計に惨めな気持ちになっていただけか──中年サラリーマンは微かに口元を歪める。自分のように平凡で日陰が似合う者を、見目麗しい少女が
気に掛けてくれる訳がないではないか。そして美女と親しくなれる夢の如き状況は絶対にこの先も訪れることはないのだ。ひっそりと息を潜めて、目立つことなく空気のように存在を続けるのが運命なのだから。
 自虐にまみれながらも人垣の隙間を見詰めていた由希人は、妙な違和感を覚えておやと目を見開く。俯いている少女の様子が心なしかおかしく思える。小刻みに震えているようで、時折息まで詰めているのが分かる。気のせいかと見詰め続けていると、それらの現象は気のせいではないと確信できてくる。電車の揺れに隠れて周囲に悟られないようにしているものの、少女の様子は普通とは言い難いものだった。
 寿司詰め状態で具合でも悪くなったのだろうか。見詰め続ける由希人は次の刹那にどきりと大きく心臓を弾ませる。乙女の長い黒髪が時折さらりと揺れるのだが、その時に真っ赤に染まった右耳がちらと覗くのだ。良く見れば少女は頬も紅潮させている。それは気分が悪いのであれば起こり得ない反応だ。もしや──由希人はばくばくと心音を加速させながらひとつの予想に辿り着く。彼女は痴漢被害を受けている最中なのではないのか。
(お……、おいおい、マジかよ……)
 車内の混み具合は最悪で身動きが取れず、数十センチ先を見通す余裕すらない。それでも意識を集中させて少女を観察していると、電車が揺れる際に僅かだが人垣の隙間が広がって視線が通る。信じられないことに、予想は的中した。乙女の背後に陣取っている背広姿の中年男が、右手を制服のミニスカートへ差し入れているのが一瞬見えたのだ。
 痴漢男は自分と同年代だろうか、見た目は地味で体型も似たようなもので目立たない。ちらと見えただけで断言はできないが、顔立ちも冴えなかった。そんな気弱そうな男が公衆の只中で性犯罪に勤しんでいるのだから驚くほかない。初めて痴漢の現場に遭遇したこともあり、由希人の心音は加速の一途を辿る。
(信じられん。失うもののない奴なのか)
 いま自分が声を上げれば、少女に痴漢を働く男は取り押さえられて人生を終える。仕事も家庭も失い、死ぬまで孤独にまみれる羽目になるのだ。もしこの痴漢が自分だったらと思うと冷や汗が出てくる。これまでの人生は二度と巡ってこない幸運に依る部分が大きい。もし全てを失えばいま以上に悲惨な毎日を送ることになるだろう。そうまでして劣情を満たしたいとは思わない。
(ど、どうする? 助けた方が良いのかな)
 由希人は固唾を呑んで少女の横顔を見詰める。なにを迷う必要がある、目の前でか弱い乙女が性被害を受けているのだから止めに入るのは当然だ。しかし衝撃のあまり喉が凍り付き、視線を逸らせない。凡庸な毎日を送る男にとって、可憐な美少女が痴漢される光景は別世界の出来事過ぎて現実味がなかった。
 痴漢男の責め方が大胆過ぎるのも現実味を薄れさせる要因のひとつだ。なにしろ右手がミニスカートの中へ入り込んでいるのだから。そんな責め方ができるのはアダルト映像作品の世界だけであって、実際には衣服の上から胸やおしりを触るのが精一杯だと思っていた。しかし眼前で繰り広げられている行為は本物だ。アダルト映像作品の撮影にしては浅慮が過ぎる。もし周囲に気付かれて騒ぎになれば、たとえ撮影だったとしても逮捕は免れないからだ。
 注意して観察するようにしたお陰で、少女がどんな反応をしているのかが細かに分かってくる。痴漢男が僅かに右手を動かすだけで、はっと息を呑みびくついてみせる。
 ミニスカートの中でなにが行われているのかは容易く想像が付く。そこまで侵入できていて、獲物の神聖な部分に触れない男はいない。間違いなく少女はショーツに守られた割れ目を弄られている。いや、そんな生易しいものではなく直接性器にいたずらされているかも知れない。そう思うと由希人の心音は見る見る加速する。そして少女にとって侮辱となる思いまで浮かび始める。
(……もしかして……)
 彼女は耳も頬も火照らせている。恥辱にまみれて心臓を跳ね狂わせているせいもあるのだろうが、他にも理由がある気がする。もしや感じているのでは──由希人はいつしか正義の心を忘れて好奇心に囚われてゆく。地味で面白味のない暮らしをしてきた男には、密かに行われる性犯罪はあまりに刺激的だった。

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