彼女の姉妹とズブズブの浮気セックスをした話

著者: ヘイドラ

電子版配信日:2025/01/24

電子版定価:880円(税込)

山下隆斗と三船愛華は幼馴染で恋人同士、誰もがうらやむラブラブカップル。
順風満帆な未来のはずだったが、隆斗は自身の強すぎる性欲に悩んでいた。
愛華の姉で、自分にとっても姉貴分である里奈に突然呼び出された隆斗。
それが後戻りのできないズブズブの浮気セックスの始まりだった……
さらには、三姉妹の三女・胡桃までエッチなバトルに加わって……
WEBの大人気作に、夏休み&4P温泉──特別書き下ろし2編を追加!

目次

プロローグ 隆斗と愛華は恋人同士

第一話 長女・里奈の危ない実験

第二話 三女・胡桃の体当たり告白

第三話 夜までズブズブ

第四話 帰ってきた愛華

【書き下ろし】第五話 それぞれの夏休み

【書き下ろし】第六話 4P温泉旅行

本編の一部を立読み



プロローグ 隆斗と愛華は恋人同士



 35℃を越えようかという真夏の昼間、カーテンの隙間からうっすら光が差し込むその部屋には灼熱の太陽とは別の熱気が充満していた。
「あっ、あっ、あっ、いくっ、いくよ、隆斗っ」
「うん、イッて、イッて愛華っ」
 その部屋は十分にエアコンが効いていたが、正常位で繋がる若いふたりの男女のみずみずしい肌にはじっとりと多量の汗が浮かんでいた。前戯を含めてもうかれこれ一時間近くは交わり続けているのだからそれも当然だ。引き締まった肉体を懸命に動かす山下隆斗は、恋人である愛華との同時イキで今日二度目のフィニッシュを迎えようとしていた。
「あああっ、いくっ、いくぅ!!!」
「あああ、あああああっっっ」
 激しい快感とともにドクドクと精液が吐き出され、厚さ0.02ミリのポリウレタン膜によって受け止められていく。奮発してちょっとお高いコンドームを買っただけに、その感触の臨場感はひとしおだ。やがて充実した射精が終わると、ふたりはぴたりと繋がったまま幾度となく甘く口づけしあった。
「えへへ~、大好きだよ、隆斗」
「僕も大好きだよ、愛華」
 しばらくそうやって繋がったままイチャイチャしていた隆斗だったが、やがてゆっくりと腰を引き抜くと愛華の隣で仰向けになった。シングルベッドなので当然互いの汗濡れた体はくっついたままだが、もちろんふたりともそのことを不快に思ったりはしない。むしろ、大好きな人とこうしてくっついていられることが幸せで仕方なかった。
「隆斗、どんどんえっちが上手になってるね。あたし何回もイッちゃった」
 至近距離で隆斗の瞳を覗き込みながら愛華が微笑んだ。子猫のような大きくてくりっとした瞳が、恋人の照れ顔を映しつつ嬉しそうに細まっている。隆斗にとってはもうとっくに見慣れている表情のはずなのに、それでも思わず心臓がドキリと跳ねてしまうぐらいに可憐で魅力的な笑顔だ。
(ううう、やっぱり愛華ってば可愛すぎるよ! 今こうして付き合えているのが夢みたいだ……)
 隆斗は己の幸運を改めて実感した。隆斗の通う学校の中でも、三船愛華あいかは大変な美少女として名が通っている。しかしそんな他人からの評価は問題ではなく、彼にとって彼女はずっと昔から大切な人だった。隆斗はまだ男女の知識など何もない子どもの頃から、この先もずっとあいかちゃんと一緒にいられたらいいなと思っていた。いつ頃から恋心を自覚したのかもはっきりとはわからない。その想いはずっと彼の心の奥深いところにあったのだ。
 ただし、だからといって順風満帆に恋人同士になれたわけではない。彼らが幼馴染の、甘酸っぱいけれどじれったい壁を乗り越えて彼氏彼女の関係になったのはほんの数か月前のことだ。それから何度かのデートや甘ったるいイチャイチャののちにお互いの初めてを捧げ合い――まあなんだ、こうして若いふたりは他の遊びなど二の次三の次でヤリまくることになった。
 特に今は夏休み。両家の両親はいずれも共働きなので、平日はいくらでもふたりだけの時間を作れる。そうなるともう彼らのヤることはひとつしかなかった。まあそういうわけで、今日も彼らは真っ昼間から熱く交わっていたというわけだ。今日も今日とてとっても気持ちのいいイチャラブセックスを終えたふたりは、それから特に何をしようというわけでもなくずっと体をくっつけあって戯れていた。
「こうやって隆斗とくっついてイチャイチャするの、すっごく幸せ」
 隆斗の腕に抱きつき、同年代離れした豊かな胸を密着させながら愛華が顔をほころばせた。本当に心から幸せそうな笑顔だ。目を細めて恋人のつややかな髪を優しく撫でていた隆斗は、ふと明日のことを思い出した。
「そういえば愛華、桜木さんちにお泊まりするのって明日だったっけ?」
「うんそうだよ。ごめんね、隆斗をほったらかして」
「ばぁか、彼女が親友の誕生日をお祝いするのを邪魔するほど心の狭い彼氏じゃないよ」
「えへへ~、知ってる! ありがと隆斗、大好き♡」
 愛華は満面の笑みとともに隆斗の頭を抱き寄せてぎゅうっと抱きしめた。必然、彼の顔は愛華の深々とした谷間に包まれることになる。呼吸は少し窮屈だったが、男としてこのふわふわすべすべの魅惑に抵抗するのは不可能だ。やがてその至福の拘束から残念にも開放されると、ふたりはお互いの目を見つめて微笑んだ。
「明後日はまたいっぱいえっちしようね」
「うん!」
 頬を赤らめて嬉しそうにうなずく愛華は世界一かわいいと、隆斗は心から実感した。



 西の空が赤くなった頃、隆斗は愛華の住む三船家から目と鼻の先にある自宅に帰り自室のベッドに倒れ込んだ。うつ伏せで顔だけを横に向け、隆斗はぽつりとつぶやいた。
「明日は……愛華に会えないのか……」
 目を閉じればすぐに愛華の姿がまぶたに浮かぶ。幸せでたまらないとばかりに自分を見つめる彼女の笑顔が――そして、裸で汗をにじませ快感に悶える彼女の痴態も。
(ああ、だめだ……! また……!)
 あれだけたっぷり情事に励んだにもかかわらず、隆斗の分身は早くもたくましい剛直に戻っていた。それも半端な硬度ではない。あの程度のセックスでは足りないとばかりに、早くもう一度射精させろと大声で自己主張していたのだ。
(ううう、これじゃあまるで愛華に満足してないみたいだよ……)
 もちろん隆斗は愛華のことを心から愛しく思っている。彼女とのセックスだって、とてもとても気持ちがいいし本当に幸せを感じている。だがそれはあくまで精神的な面に限った話だ。若く健康で精力に満ち溢れた男の肉体は、理性とは無関係にもっともっとと快楽を求めていた。
 以前に一度、隆斗は勢いに任せてノンストップで何時間も愛華を抱き続けたことがある。愛華はそれに対してなんら不満は言わなかったが、疲労困憊し翌日には体調を崩してしまった。己の身勝手さが招いた始末に隆斗はショックを受け、それ以来もっと愛華の体をおもんばかることを意識するようになった。おかげで彼らの愛情と信頼関係は前にも増して深まったが、しかしそれがどんなに正しいことであろうとも隆斗の若々しい雄の身体はその自制に満足はしていない。腹の底から理不尽に、そして無尽蔵なまでに湧き上がるその激しい性欲は、まさに燃え盛る野火のような類いのものだ。筋トレしたり深呼吸して静められるような生易しい代物ではない。
(だめだ、抑えられない、とにかく今は抜くしかない……!)
 隆斗は自慰に没頭し、夕食までの短い時間に二度射精した。それから今度は夜寝る前に三度も精を放つことで、ようやくその衝動は収まった。昼間のセックスと合わせれば一体何回射精したのか、数えるのもバカバカしくなる。
 もうひとつ問題なのは、その一連の自慰の中で頭に浮かぶお相手の顔ぶれだ。彼の妄想の中にはいつも愛華がいたが、しかし次々と湧き出てくる妄想はそこで留まってはくれなかった。かといって彼はAV女優や二次元美少女をオカズに使うタイプの男でもない。隆斗の脳裏に、理性のブレーキとは裏腹にいつも浮かんでくるのは、|愛華以外では最も身近なふたりの異性だった。あろうことか、彼の妄想における最大の定番はそのふたりに愛華を交えた4Pハーレムなのだ。それが倫理的には大いに問題含みの妄想であることぐらい彼はよくよく承知していたが、そうは言ってもその禁断のシチュエーションこそが最も肉棒を気持ちよくしてくれるという事実は否定のしようがなかった。
(はあ……またこんな妄想を……。これじゃまるでケダモノみたいだよ)
 自慰の疲労と眠気に包まれまどろむ中で、隆斗は己のこの強すぎる精力と禁断の願望をどう扱えばいいのか途方に暮れていた。


第一話 長女・里奈の危ない実験



 朝食を終えて自分しかいない家でだらだらと過ごしていた隆斗は、着信音を鳴らしたスマホを手に取り表示名を見て少し驚いた。その相手から電話が来るのは珍しいことだった。
「もしもし里奈姉? うん、今は暇だけど、どうしたの?」
「えっ? いや、急にそんなこと言われても。いや、そりゃ別に行けないわけじゃないけど、なんの用?」
「……わかったよ、行くから、行くから。はいはい、わかったわかった。じゃあまた後でね」
 隆斗は通話を切るとふうっと小さく息をついた。結局のところ、里奈がなぜ自分を呼びつけたのかさっぱりわからない。しかしいざ里奈から強く言われてしまえば隆斗にはそれに逆らうという選択肢はなかった。なにしろ彼女はずっと昔から、隆斗にとっては姉貴分というよりむしろ親分のような存在なのだから。



「おじゃましま~す」
 コンコンとノックを鳴らし部屋の扉を開けた隆斗は、ベッドの上で壁に背を預けて座っている彼女の正面で床に腰を下ろした。玄関の鍵は、隆斗を招き入れるためかわざわざ開けられていたから、隆斗はこの部屋に来るまでこの家の住人に会うことはなかった。
「ええっと、今って家には里奈姉だけ?」
 隆斗が尋ねると、里奈はぷいと顔を横に逸らして口先を尖らせた。
「愛華なら朝からとっくに出かけちゃったわよ」
「そ、それは知ってるよ。ええっと、胡桃ちゃんも?」
 胡桃というのは里奈と愛華の妹であり、三船家の末っ子だ。里奈、愛華、胡桃は誰もが認める美人揃いの三姉妹であり、全員が隆斗の幼馴染でもあった。
「知らないわよそんなの。まだ寝てるんじゃないの? なに、胡桃に会いたいの?」
 里奈は心底不機嫌そうに隆斗を睨みつける。
「いやいや、そういう意味じゃなくって。ええっと、まあいいや、それより僕に用事って何なの?」
 隆斗の当然の質問に対し、里奈は何も答えなかった。無視しているというわけではなく、答えるかどうか迷っているように隆斗には思えた。里奈は口を真一文字に閉じたまま所在なく目線をさまよわせていて、時々指先が不規則に動いている。よく似合っているセミロングの髪をくりくりといじることもあった。
 隆斗は里奈が口を開くのをただじっと待っていた――ただ、視線はどうしても彼女の女性的な部分に引き寄せられてしまっていた。
(ううう、里奈姉ってばなんで家の中であんな短いスカート穿いてるんだ? なんか黒い下着が見えちゃってるんだけど、あれって見せていいやつなの? おまけにあんな胸元丸出しのタンクトップって……いくら暑いからってさすがに無防備すぎるよ里奈姉!)
 隆斗の知る里奈は、ここまであられもない格好で彼とふたりきりになったことなどなかった。確かに彼女は中高時代バレーボール部で活躍したスポーツ女子で、普段から動きやすいラフな格好を好んでいたが、いくらなんでもここまで露出の多い姿で異性――それも妹の彼氏――の前に出てくるのはいささか問題があるのではないだろうか。
(それに里奈姉のあの表情……。何考えてるのか全然わからないけど何か僕に言いたいことがあるはずで……。なんだろう、前にも里奈姉の同じ表情を見たことある気がする……)



「お姉ちゃ~ん! 重大発表しま~~~す! えへへ、あたし達、付き合い始めちゃいました♪」
 それは隆斗と愛華が恋仲になったばかりのとある放課後のこと。愛華に手を引かれて久方ぶりに三船家を訪れた隆斗がリビングで里奈に鉢合わせると、愛華は勢いよく彼氏の腕に抱きつき満面の笑みでそう宣言した。
「あ、愛華、ちょっと、恥ずかしいってば」
 当時はまだキスも済ませていないピュアな関係だっただけに、愛華の大胆なアクションに隆斗は驚いた。帰り道に手を繋ぐだけで顔を赤らめていたうぶな彼女が、よりにもよって身内の前で抱きついてくるなんて予想外もいいところだ。
「えへへ、だぁめ♪ 恋人同士なんだからこれぐらい当たり前だよ♡」
「そ、そうかもしれないけどさあ……」
 愛華の心底嬉しそうな表情を見るととても引きはがす気持ちにはなれず、さりとてどう反応すればいいのかもわからず戸惑っていた隆斗は、おそるおそる横目で里奈の様子をうかがった。ぴんと伸びた背筋で腕を組んで妹カップルを見つめる里奈の顔つきは――完全な、無表情だった。口は真一文字に閉じられ、もともとクールな顔立ちが一層クールに冷えきっているような気さえした。てっきりからかわれると思っていた隆斗は、里奈のその不可解な反応に面食らってしまう。
「え、えっと……」
 口ごもる隆斗をじっと見つめてくる里奈。何かを言おうとしている? でも何を? 隆斗にはまるで見当もつかない。里奈はたっぷり間を取ってからようやく口を開いた。無表情のまま、とても淡々と。
「……ふうん、そうなんだ。まあお似合いなんじゃないの」
「やったあ! ありがと、お姉ちゃん♪」
 腕を抱きしめる愛華の力が一層強くなる。制服越しに彼女の胸の柔らかい感触が伝わり、童貞少年の心臓がドキリと跳ねる。ましてやそのくりくりとした大きな瞳で至近距離から見つめられるともうたじたじだ。
「……あんまり人前でいちゃつくのもどうかと思うけど」
 里奈の冷静なツッコミに引きつり笑いを浮かべる隆斗だったが、結局里奈が背を向けて立ち去っていくまで愛華がその腕を離すことはなかった。



(そっか、どこかで見たと思ったら……今の里奈姉、あの時と同じ表情をしてるんだ)
 あの時里奈が何を言おうとしていたのか、今の今まで深く考えたことはなかった。健全な思春期少年として、彼の頭の中はすべて恋人とのイチャイチャハッピーライフに占められてきたのだからそれも当然だ。だけど今はあの時彼女が何を言おうとしていたのかが無性に気になりだして――いや、やはりと言うべきか、それについて考えようとする隆斗の理性的思考は視覚情報によって強烈にかき乱されていた。
(ああーもう! やっぱり里奈姉の格好が気になって集中できない! ううう、里奈姉ってやっぱり美人すぎるしスタイル良すぎるし……絶対昔よりもっと綺麗になってるよな……)
 バレーボール女子だった頃の里奈は、髪もかなりの短髪だったし化粧っ気はゼロで年中ジャージやスポーツウェアで過ごしていたけれど、それでも生まれ持った端正な美貌や抜群のスタイルは隠しきれるものではなかった。そのうえプレーヤーとしてもキャプテンとしても立派に活躍していたから、当然女子校という環境においてはモテてモテてモテまくった。バレンタインデーともなれば隆斗が見たこともないような大量のチョコレートを抱えて帰宅し、運がいい年の隆斗はそのおすそ分けにありつくことだってできた。
 部活を引退してからの彼女は髪も伸びたし化粧もするようになり、あっという間にどこかの有名ミスコンでも優勝できそうなぐらいの正統派美人へと垢抜けた。そんな彼女がなんとも大胆な格好で目の前にいるのだから、隆斗が平静を保てないのも致し方ないと言えよう。
 こうして数分以上の気まずい沈黙の果てに、ようやく里奈が口を開いた。
「昨日さ、あんた達のセックス覗いてたんだけど」
「ぶっ!」
 仮に飲み物を口に含んでいたら確実に里奈にぶっかけているだろう勢いで隆斗は吹き出した。
「な、な、何してんの里奈姉!?」
「……あの子、すっごく気持ちよさそうだった。本当に本当に気持ちよさそうで、それに本当に幸せそうで……。セックスってあんなに幸せな顔になれるものなんだって、ちょっとショックだった」
 里奈は隆斗のツッコミを無視して自分の話を続けた。しかし隆斗はもうその語りに割り込むことはできなかった。斜め上の天井を見つめる彼女の瞳が、この上なく真剣な目をしていたから。
「……あたし、こないだ彼氏と別れたの。まあこっちからフッてやったんだけどさ、サイテーな奴だったから。……でももしかしたらあたしのせいだったのかもなんて、つまんないこと思っちゃったりもして」
「……里奈姉……」
「……あたしね、セックスで全然気持ちよくなれなかったの。むしろ違和感しかなくて、いつも早く終わってほしかった。適当に感じてるふりだけして、でもそれは相手を傷つけないためにいいことをしてるんだって思ってた。……だけどやっぱりそういうのってバレてたみたい。とうとう怒らせちゃって、お前は不感症だ、女失格だ、お前みたいなマグロ女を好きになる男なんかいない……って」
「そんな……ひどいよ、それ」
 隆斗は里奈の彼氏についてほとんど何も知らなかった。確か大学の先輩だかで、隆斗と愛華が付き合い始めてから間もないうちに本人から彼氏ができたと聞かされたぐらいだろうか。なぜか里奈から惚気話の類いを聞いたことは一度もなかった。愛華は隆斗の前だろうとお構いなしにいつものろけていたというのに。
「あんなのでもあたしにとっては初カレだったからさ、最初は結構舞い上がってたと思う。それになんだかんだで顔はいいしモテる奴だったしね。それで、あたしと別れてすぐに他の子と付き合い始めたってつい最近噂で聞いた。っていうか多分別れる前から手を出してたんだろうけど」
 そう言い捨てる里奈の表情はどこかさっぱりとしていた。きっと、その男自体に未練は抱いていないのだろうと隆斗は理解した。どちらかというと、そういう男を一時的にでも好きになってしまった自分の見る目のなさを後悔しているのかもしれない。
「ええっと、里奈姉……。その、なんて言ったらいいのかわからないけど、でも里奈姉なら絶対にもっといい人が見つかるよ。絶対だよ。だってその、里奈姉ってめちゃくちゃ魅力的な女性だと思うし……」
 なんだか恥ずかしくなって最後の方は声が小さくなってしまった隆斗だが、里奈はそれを聞いてにんまりと目を細め隆斗に顔を近づけた。
「ふ~~~ん? 隆斗クンはあたしのことそんなふうに思ってたんだあ~? なになに、あたしのこと美人でセクシーで才色兼備なオトナの女だと思ってる?」
 前のめりで接近されたおかげで、頼りないタンクトップだけに守られた胸の谷間までもが視界にドカンと入ってしまっている。長くパチッとしたまつげ、シャープにして繊細な光が宿る瞳、すっと通った鼻筋、みずみずしい唇、そしてほんのりと甘く漂うオトナの香り……。いくら隆斗が既に童貞を卒業して久しいとはいえ、こんな美女にこんな格好で近づかれてドキドキしないはずもない。
「そ、そりゃそうでしょ、だってその、誰が見たって里奈姉は美人だよ」
「へえ~~~? おかしいなあ、あたしあんたからそんなふうに褒められたことないんだけど?」
 さっきまでの憂鬱な表情はどこへやら、里奈はなぜかとても上機嫌な様子で隆斗を横目で見つめニヤニヤと笑みを浮かべている。
「も、もう、からかわないでよ。……で、でもそういうの恥ずかしいから言えなかっただけで、本当はずっと前から里奈姉のこと、ええっと、つまりその、すごく綺麗だって思ってたよ」
 隆斗の口ぶりはぎこちなかったが、里奈の目を見つめ返しながら一生懸命自分の気持ちを伝えるための言葉を探しているようだった。その健気な振る舞いは、その言葉が確かに本心からのものであることを里奈に伝えていた。
 里奈は一瞬かすかに頬を赤らめ、そのことを隠すかのようにぷいと横を向いた。
「ふ、ふ~~~ん……隆斗のくせに、一丁前に女の子褒めれるんじゃん。あーあ、これも愛華のおかげってわけかあ。ちぇっ」
「な、なんで残念そうなのさ」
「べっつに~~~……。妹は大好きな幼馴染と結ばれて毎日ハッピーなのにあたしはクソ彼氏掴まされたからって、嫉妬なんてしてませんよ~だ」
 ぺろりと舌を出して不満げに眉を寄せる里奈。本当に不機嫌なのかそれとも茶化されているだけなのか、隆斗にはさっぱりわからない。
「そ、そんなこと僕に言われても……」
「まあいいわ。別にこんなこと愚痴るためにあんた呼んだんじゃないし」
「えっと……結局、里奈姉の用事って?」
「へっへ~」
 里奈はいたずらっぽい笑みとともに三角座りになって隆斗に向き合った。もはや彼女は、その体勢でミニスカの中の下着が見えることなんてこれっぽっちも気にしていないようだ。もちろん、靴下も何も履いていない長く引き締まった生脚もすべてさらけ出されている。隆斗の心臓がドキリと跳ねたが、里奈はそんな弟分の動揺などまったく気にせず口を開いた。
「言ったでしょ、あたしセックスで感じたことないって。だけどそれだけじゃあ、単にあいつが下手くそだったのかそれともあたしが不感症なのかわかんないじゃん? かといって変な男で〝実験〟したくもないし、それに少なくともちゃんとできるやつが相手じゃないと〝実験〟になんないし」
 里奈は隆斗の目をまっすぐ見据えながらとんでもないことを言い出した。一拍遅れて里奈の意図を理解した隆斗が思わず後ろにたじろぐ。
「り、里奈姉、ちょっとまさか……」
 里奈は笑顔で隆斗に近づき、数十センチの距離でその瞳を覗き込む。その頬にはうっすらと朱が浮かんでいた。
「あたしの身内のあの子をあんだけ感じさせちゃうあんたなら、実験相手としては最適でしょ? それにあたし、あんたが相手なら……うん、まあいいかなって、思ってるし」
 里奈の口角が吊り上がる。いつもの彼女らしいいたずらっぽい笑顔のようでもあり、だけどその瞳には抜き差しならない「本気」が宿っているようにも見えて。きっぱりと拒絶すべきはずの隆斗の態度はますます腰抜けたものになっていく。
「えと、その、ぼ、僕は愛華と付き合ってて……」
「知ってるわよそんなこと」
 里奈がさらに身を乗り出し、もはやキス寸前の距離にまで接近する。隆斗の視界はすべて彼女の整った顔立ちに占領されてしまった。そのシャープで熱のこもった瞳は今や、隆斗の視線をがっちりと捉え縛りつけていた。
「いいじゃない一回ぐらい。ねえ、お姉ちゃんを助けると思ってさあ。こんなことあんたにしか頼めないもん。ねっ?」
「で、でも……こんなこと愛華に知られたら……」
「そんなのあたし達が黙ってたらわかんないでしょ。あたしはあんたのこと信頼してるから全然心配してないし」
 信頼。色気なんて関係ないはずのその言葉が、隆斗の胸をドキリと弾ませる。あの里奈姉が、自分を男として信じ頼っているというのだ。
「それはそうだけど、でも……」
 隆斗の理性はダメだと言っている。しかし彼の体は里奈から目を逸らすことさえできなかった。間近で見る里奈は、本当に綺麗だった。その顔立ちはそこらの芸能人が裸足で逃げ出すぐらいに端正で、その声色はナレーターとしても通用しそうなぐらいに美しくて。
 そしてそれら以上に重要なことに、彼女の大きなアーモンド形の瞳はいま、隆斗の間抜け面をじっと映して細かに揺れていた。彼女の声もまた、不安や恐れがこもっているように思えた。彼女は隆斗をからかっているのではない、切実なのだということが隆斗にも理解できるような気がした。彼女は本気で、今ここで自分を必要としているのだと。
「どうしても、だめ?」
 はっきりと声を震わせ、悲しそうに自分を見つめる里奈。いつの間にか彼女の手は隆斗の手に重ねられていて、その手もまたかすかに震えていた。
 それは隆斗にとってあまりにも酷な状況だった。かつて隆斗は、愛華だけでなく里奈に対しても淡い想いを抱いていた。あるいはもしかしたら、幼い頃に抱いた里奈へのほのかな憧れこそが初恋だったのかもしれない。そんな相手にこんなふうに迫られて、拒める少年などいるものだろうか。
 そしてもうひとつ、彼の体の一部分はこの状況にどうしようもない反応を起こしていた。
「あれっ? 隆斗もしかして……」
 里奈の空いていた左手が隆斗の股間に伸びる。彼女の手のひらがズボンの膨らみに触れた途端、隆斗は「ひあっ」と情けない声を上げた。
「うわあ、すっごく固くなってる」
 さっきまで不安げだった里奈の声が、途端に弾んだものになる。
「隆斗ってばあたしのことしっかりそういう目で見てるんじゃん♪」
 里奈は表情をほころばせて手先をくりくりと回転させる。ズボン越しの、たったそれだけの些細な刺激で少年は腰砕けになった。
「ううう、だって、里奈姉の格好がエッチすぎるから……」
「要するにあたしにコーフンしてるってことでしょ? もう、素直になればいいのに。……うわあ、このおちん×んすごい、こんなに固くておっきくて……それにピクピクしてる」
 憧れの年上美女が自分のペニスを撫で回し目を輝かせている。頼りないタンクトップに覆われただけの無防備な乳房が手の動きに合わせて目の前でぷるぷると揺れ、フェロモンじみた甘い匂いまでもが鼻孔に突き刺さる。衣服越しに撫でられるだけの緩慢な刺激が、信じられないほど気持ちいい。
 もはやこれ以上の我慢は不可能だった。一瞬だけ目を固く閉じ、(ごめん愛華)と念じて開く。開いた途端、里奈とまっすぐに目が合う。期待に満ちた眼差し、ほんのり朱に染まった美貌。この瞬間、隆斗の理性は白旗を上げた。

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