二の腕も露わな巫女装束を纏い、霊力を備えた薙刀を手に、
淫魔を討伐するため学園にやって来た藍髪の美少女・斐川真琴。
使命に燃える真琴を苦しませる、潜入初日からつづく謎の淫夢。
純潔の身体は性悦に蝕まれていき、やがて現実と夢の境界が曖昧に……
宿願の仇敵は、淫魔・メノウを従えた〝性伏王〟福弥。
〝薙刀の蒼女〟の気高き理想をくじく、絶頂地獄への扉が今開く!
舞条弦の大人気ダークファンタジー、終わらない淫夢編!
第一章 穢れを知らぬ蒼の乙女
第二章 淫らな夢にうなされて
第三章 ゆめうつつ
第四章 爛れた肉欲に溺れて
第五章 排泄の悦びを知る乙女
第六章 うたかたのせかいへ
本編の一部を立読み
第一章 穢れを知らぬ蒼の乙女
生温い夜の空気が満ちていた。ねっとりと舐めるような風が吹いて、少女は癖のない髪を抑える。満月の光を吸った藍色の髪は、雲のない夜空を塗ったように艶めいていた。
「……ここが、理汪学園」
黒々と磨き抜かれた校門の前で、斐川真琴はぽつりと呟く。サファイヤの輝きを灯す双眸には、理汪学園の新校舎が映っていた。
午後の八時を過ぎた頃合いだが、一階の窓からは煌々と明かりが漏れている。まだ教員が仕事をしているのだろう。右に左に忙しなく動く人影が見えた。それが健全な状態なのかは判らないが、とにかく、学園に目立った異変は見当たらない。
(結界も正常に機能している。皆さん、うまくやってくれているようですね)
そっと手を伸ばす。薄いラップフィルムに触れたような感触が指先に伝わる。学園の敷地全体を、シャボン膜にも似たドーム状の結界が覆っていた。
校門から少し距離を置き、改めて学園の全体像を視界に捉える。明日から、この学園に通うことになるのだ。そう思うと、心臓がトクトクと心地好い弾み方をする。斐川家の頭首となるべく特殊な教育を施され、魔を払う使命に人生を捧げている真琴にとって、学園生活とは夜空に瞬く星のようなものだ。どれほど想いを馳せて見つめても、決して手が届くことのない、彼方で燦爛と輝く憧憬。それが今、文字通り目と鼻の先にある。
(……学校に、通えるんだ。授業受けて、他愛もないお喋りをして……友達、作って。部活動には……流石に参加できない、けれど。それでも……普通の女の子みたいに、青春できるんだ)
口元が緩むのに気づいて、真琴はハッと我に返る。煩悩を払うように首を横に振った。
(――何を考えてるの。普通とか青春とか、そういうのは、全部捨てたでしょう)
真琴は自分に強く言い聞かせ、柔らかな頬をピシャリと叩く。少女の使命は、先に潜入調査している仲間たちと合流し、この学園に潜伏している淫魔を探しだし、討滅することだ。青春を謳歌する時間はない。今までも、これからも。真琴の人生とは、そういうものだ。
(……一人でいると余計なことばかり考えて……しっかりしなさい、真琴)
もう一度、頬をペシッと叩く。軽く運動して、頭をスッキリさせてから帰ろう。そう思い、くるりと校舎に背中を向けた。直後、異変を察知する。
(魔の気配……!)
粘っこい風が物の怪の匂いを孕んでいた。真琴は周囲に人の気配がないことを確認したあと、「カグノコノミ」と呟く。直後、少女の右手に薙刀が出現した。
香倶之湖之壬。斐川家に伝わる二大法倶の一振りであるソレは、特殊な魔力を帯びた霊符が大量に貼りつけられていた。その様子は傍目に見れば呪具のような禍々しさを放っている。実際、物の怪どもからすれば、その清浄なる長刀は恐怖の象徴でしかないだろう。
薙刀の柄でトンと地面を叩く。湖に小石を投げ入れるかのように『聖』の気配が広がり、柔らかな旋毛風が吹いた。発光した蒼い粒子が足元から真琴を包みこむ。
刹那、少女の服装が変化した。
純白の小袖が風に靡いている。眩しい二の腕が覗く衣装は、少女に一切の穢れがないことを周囲に知らしめる。水色の袴は、まるで陽光を浴びた海のように、燦爛とした白銀の輝きを散らす。巫女を想起させる乙女の聖装は、闇を晴らす荘厳な気配を纏っていた。
「参ります」
誰に言うでもなく呟き、少女はトン……と地面を蹴る。一瞬で家の屋根を飛び越え、電柱の上に立つ。長い睫毛を伏せ、夜風に紛れる邪気に意識を集中させた。十秒と経たぬうちに、少女は気配の出どころに目ぼしをつけると、電柱を蹴って移動を始めた。
重力を感じさせない動きで、真琴は素早い跳躍を繰り返す。それはまるで、銀色の鱗粉を散らす蝶々が、闇の中を鮮やかに舞い躍っているようであった。
(……なるほど。どこかと思えば……旧校舎、でしたか)
現場に到着した真琴は、古びた校舎を見上げて小さく息を吐く。最近まで淫魔が封印されていた土地だ。そういう場所は、得てして物の怪の類を呼びやすくなる。
(あれは鬼……しかし、妙な気配を感じる……ただの鬼じゃない。何か、混じっている?)
校庭を二体の鬼が歩いている。人間の倍はあろうかという体躯が、並々ならぬ迫力を放っていた。筋骨隆々とした身体に、それぞれ牛と馬の頭部がついている。
(これほど力のある鬼が、その辺りを平然と歩いているなんて)
やはり、この町にはよくないことが起きているのかもしれない。真琴は薙刀を握りなおし、校庭に足を踏み入れる。すぐに鬼たちは来訪者に気づいた。二メートルはあろうかという棍棒を肩に置いて「ゴギギギ……ッ」と唸り声を漏らしている。
(……やるしかない、ですね)
真琴は薙刀を構えた。「ムテンソウジョ」と少女が呟くと、薙刀に巻かれている霊符が六枚、ふわりと優しく剥がれる。宙で制止したソレは淡い輝きを放った。小さな霊符から迸る光の粒子は、半径二メートルほどの球形を形作ったあとで、人の形へと収束していく。
女型の式神が六体、旧校舎の校庭に出現する。六天蒼女。真琴の用いる基礎的な式神術である。大多数の人間がイメージする雪女の風貌に近いだろうか。
「ギギギギギッ!」「ゴゴォッ!」
鬼たちは大きな口から唾を撒き散らし、醜い怒声をあげると、一気に駆けだした。巨大な武具を片手に、真琴へ向かって猛進してくる。真琴が指示を出すまでもなく、〈六天蒼女〉は三体ずつに分かれて鬼どもと対峙する。振り下ろされた棍棒が〈蒼女〉の身体を叩いた。式神の形がぐしゃっと崩れ、液状化する。その正体は水だ。青く色づいた水が、棍棒に纏わりついた。
「ゴゴッ……ゴォオオッ!」
武器が水に飲まれ、牛頭が苛立ちの混じった声をあげる。必死に棍棒を取りだそうとしているが、強烈な圧力の加わった水は、鬼の武器を引き摺りこんで離さない。その間にも、別の式神が鬼に抱き着く。そしてまた、先ほどと同じように液体となって、その巨体を包みこんだ。
「ぐぼ……ごぼぼっ……ごぉお……ッ」
「ぎぎゅ……グご……ッ、ご、ご……ッ」
戦闘が始まってほんの数十秒。式神の姿は消え、巨大な水の塊に呑まれた鬼たちだけが残る。苦しげに呻く悪鬼を見て真琴の胸はズキリと痛んだ。
「……せめて一撃で。最期は、痛みなく、終わらせますからね」
薙刀から一枚、霊符を取りだす。紙を宙に振ると、五百ミリリットルほどの水が出現した。真琴はソレを薙刀の先に纏わせ、数メートル先にいる鬼たちに向かって振るう。鋭い水流の刃が、鬼たちの首を斬り裂いた。
それは、あまりにも呆気のない結末であった。
牛と馬の頭部が肉体から離れる。何が起きたかも判らぬ表情で、物の怪どもは絶命していた。水が赤く染まっていく。残酷な光景を前に、真琴の胸は再び締めつけられた。
(相手は魔に巣くう者たち……放っておけば被害が出るのは必定……そう判っていても、気持ちのいいものではありませんね。せめて、死後に安らぎがありますように)
真琴は武器を置く。水が消え、鬼たちの遺体が地面に転がった。いずれ消えていく骸を前に少女は膝をつき、両手を重ねる。そして長い睫毛を伏せ、祈りを捧げ始めた。
「「グゴァアアアアアッ!」」
「――ッ」
突如として、狂暴な雄叫びがこだまする。真琴はすぐに、薙刀を握って後退した。牛と馬の頭部が大口を開き、獰猛に咆哮したのだ。いったい何が――困惑する少女の前で、奇妙な事態が進行していく。
二体の頭部から、赤黒い紐のようなモノが伸びた。血管か腸か、ミミズじみた蠢きをするソレは、胴体の切断面へと突き刺さり、分離したパーツを繋ぎ合わせる。頭と胴体が再び一体となった。牛頭と馬頭はむくりと身を起こす。その体躯は一回り巨大化していた。
「ここからが本番、ですか」
真琴は息を整える。心臓がバクバクと弾んでいるが、悪い動悸状態ではない。自分の中を駆け巡る血液の熱を、魔力の迸りを、ハッキリと感じることができる。
(一瞬、首の切断面に宝石のようなものが見えた。十中八九、アレが核ですね)
鬼が迫ってくる。振り下ろされた棍棒を避けた。激しい音と一緒に砂埃が巻きあがり、地面に亀裂が奔る。魔術で強化しているとはいえ、細腕でアレを受け止めるのは苦労するだろう。
「ハァッ!」
核に向かって薙刀を振るう。水の刃が鬼の肉を裂いた。だが、宝玉のような紅い核に傷はつかない。すぐに切断面が再生する。宙に散った血飛沫さえも、瞬きの間に鬼の身体へと戻る。
(……なるほど。これは厄介な……明らかに、何かしらの意図が加えられ、強化されていますね。恐らくは淫魔が……いえ、今はやめておきましょう。目の前の問題に集中しないと)
「蒼女(ソウジョ)。媽守(ボモリ)。嗤犬(シケン)」
二体の鬼による連撃をひらりひらりと翻しながら、少女は呟き、薙刀の柄でトントンと地面を叩く。今度は二六枚にも及ぶ霊符が剥がれ、その数だけ式神が出現する。六体の女型式神と、白い毛並みの犬が十二体。そして大型の鳥類を模した式神が八体。迫りくる鬼たちを足止めする。鳥の翼は超高圧のウォーターカッターと同じで、鬼の胴を鋭く裂いた。
「グォオオオッ!」「ゴガァッ! ゴガーッ!」
激しい咆哮をあげ、足元に纏わりつく犬を煩わしさそうに叩く。水でできている式神に物理攻撃は通用しない。いくら叩き、蹴散らしても、液体はすぐに犬の形を為して襲い掛かる。
(水の刃じゃ砕けない……水に閉じ込めて窒息死させる? だめ、惨すぎる。それなら……より大質量の奔流で、痛みも感じぬ間に呑み砕く――)
少女は薙刀を地面に突き刺す。二重の瞼をそっと伏せて、意識を集中させた。常人の数千倍と言われる規格外の魔力を腹の底から練りあげる。水を沸騰させるかのように、魔力が煮え滾るように、全身が熱を帯びた。
「海尽罪(ウツツミ)」
真琴が呟いた瞬間だった。数十メートルはあろうかという水の柱が、少女の背後に出現する。逆巻く奔流は二叉に分かれると、鋭く尖った先端を鬼たちに向けた。まるで巨大な電動ドリルだ。大渦を描く水流は、火花が散りそうなほどの強烈な旋回運動を繰り返す。
まさに規格外。旧校舎の校庭に、一瞬で天災級の術式が展開されていた。
「――呑め」
一言発し、薙刀の切っ先を鬼たちに向ける。渦巻く激流が、二体の鬼へとそれぞれ襲い掛かる。それはまるで、白銀に輝く龍神が、悪鬼どもを食い散らかすようだった。
式神を吸収して質量を増した水流は、鬼たちを一瞬にして呑み砕く。破片すら残さぬ怒涛の水撃は、悲鳴をあげる時間すらもなく、対象を粉々に粉砕した。
「……ふぅ」
静けさを取り戻した校庭で一人、真琴はそっと息を吐く。指先が震えている。手汗もびっしょりだ。なんとか最後まで平静を装えたものの、感情が酷く揺れている。
「……でも、今回は結構、うまくやれました……よね」
戦闘の痕跡を見て、安堵の言葉を漏らす。そしてすぐに後悔が胸を刺した。相手が悪鬼羅刹とはいえ、命を奪った後に胸を撫でおろすなんて、どうかしている。
「……お祈りしよう」
文字通り跡形もなくなった鬼たちの亡骸――その跡地に、真琴は再び膝をつく。そして懺悔するかのように、祈りを捧げ始めるのだった。
斐川真琴が祈りを捧げているころ――廃校舎の屋上に、二人ぶんの人影があった。少年の名前は福弥。中肉中背の、いかにも平凡な容姿をしている。性格は真面目だが陰気、そして卑屈で極度のマイナス思考。人の顔色を伺い、背中を丸めて生きているような人間であった。
だが、それも昔の話である。
福弥は、かつてこの廃校舎で淫魔と契約を交わした。文字通り魔性の力を手に入れた少年は、自分を虐めていた二人の少女を――天音凛那と雪永昴を性悦によって屈服――〈性伏〉した。他にも同級生、教師、近隣住民に至るまで、福弥は次々と女たちを性伏し続けている。三桁を超える女性との性交渉を遂げた少年は、今やもう、牡としての威厳と力を備えていた。
そして少年の傍に立つ――露出の多い煽情的な黒ワンピースに身を包む女は、名をメノウと言う。かつてこの土地に封印され、福弥と契約を結ぶことで自由を得た上位魔族である。その性格は傲慢にして不遜。プライドの高い彼女は、何にも媚びぬ独尊の女王である。
というのもまた、昔の話である。
女淫魔は、契約を結んだ福弥に凌辱され、今や彼の性奴隷と化していた。
「凄かったね。まるでファンタジーだ。自分が酷く場違いな気がしたよ」
「淫魔と契約した人間が、いまさら何を言っているんだ。私も充分ふぁんたじいだろうが」
福弥の言葉にメノウは返す。カタカナの発音が時々怪しく聞こえるのは、彼女が本来、数百年前の存在だからだろう。その不慣れな感じが妙に可愛らしくて、福弥はくすりと笑う。
「それで、どうだった? 今から戦う敵を目の前にして、淫魔の女王は何を思う?」
「どうもこうもない。御三家の中でも斐川家は最も歴史ある一族だが、その中でもあの女はやばい。怪物だ、アレは」
やばい、という表現を淫魔が使うのがなんだかおかしくて、福弥はまた、小さく笑みを零す。対して、メノウの表情は真剣そのものだった。
「あの武器を見ろ」
「ペタペタと札の貼られている薙刀のこと? シールを色々なところに貼りたくなる気持ちは判るな。僕も、お菓子についているシールを、部屋のあちこちに貼って母さんに怒られた」
「アレは香倶之湖之壬という至宝だ」
福弥の言葉を無視してメノウは言う。その言葉には随分と苦い感情が込められていた。「カグノコノミ」と呼ばれる薙刀は、相当な代物らしい。
「私は、アレで封印された」
「……どうりで、嫌な顔をしていると思った。そんなに強いんだね、あれは。戦っても勝てない? もし君が全盛期だとして、今の彼女と対峙すれば――」
「瞬殺だろうな」
「流石、淫魔の女王」
「違う。一瞬で私が負けるという意味だ。認めたくはないが、アレらには敵わん」
「僕たちも相当力を蓄えたでしょ。それでも無理なの?」
言うほど単純な話ではないが、淫魔の契約者は女を犯すたびに力をつける。福弥の経験人数は数百という単位だ。事実、その能力は日に日に強まり、淫術をいくつも会得していた。
「だめだ。まるで遠く及ばん」
「どのくらい?」
「お前の蓄えた煩力の総量がソレだとすると」メノウは地面に転がるカフェオレの空き缶を指さす。内容量は二百ミリリットル前後だろうか。「あの女の魔力はダムみたいなものだな」
「……そんなに?」
驕っているわけではないが、福弥はそれなりに自分が強いという自負があった。だがメノウの喩えを聞く限り、天地ほどの開きがあるようだ。
「ま、大丈夫だろう。油断はしないよ。それに計画も練っただろ。情報は仕入れてる。負けないさ。いや、そもそも僕たちがするのは勝負なんかじゃない。だろ?」
淫魔の身体に腕を回し、少年はそっと耳元で囁く。ワンピース越しに、福弥は右手でゆったりと脇腹を愛撫した。メノウの肩がピクリと跳ねる。女の瞳に、桃色の光が灯り始めた。
「なぁメノウ。相棒として振舞う君も好きだけど、そろそろ普段の関係に戻ろうか」
「普段の関係って……ここでやる気か? 危険すぎる。相手はそこに……あっ♡」
福弥がファスナーを下ろす。淫魔の力によって強化された二十センチ級の逸物が、スラックスからの解放を歓ぶようにぶるるんッと跳ねた。
籠っていた牡の熱気が宙に融ける。複雑な匂いを孕んだ風が、淫魔の鼻先を撫でた。それだけで軽い陶酔感を抱いているのだろう。眉尻がとろんと垂れ、半開きの唇からは涎が浮く。
「欲しいだろ?」
福弥は短く言葉を放ち、誇示するように竿を扱く。精液のような粘度のカウパー汁が、掌の中でぬじゅぬじゅと泡立つ。淫魔・メノウの視線は少年の股間から離れない。はぁはぁと息遣いを乱す肉欲の女王は、己が支配すべき牝欲に憑かれていた。
「欲しいだろ、メノウ。なら、ご主人様に差しだせ」
もう一度、念を押すように福弥が問う。豹変した態度は有無を言わせぬ威圧感を纏っていた。
「ほ……本当に、やるんだな? 見つかったら、計画がすべて、パーになるぞ」
「力を使わない限り探知はされない。僕たちが今からやるのは、魔術だの淫術だのとは関係のない、ただのセックスだ。気づかれやしないさ。お前が喘ぎすぎない限りはね」
「あ、ああ……私は、それを心配しているのに……はぁ、はぁ……」
言いつつも、メノウは福弥の誘いを断らない。否――断れない。
メノウは錆びついたフェンスに指を掛けると、ツンと上向く媚臀を無防備に差しだした。ベビードール同然の黒いワンピースが巨大なヒップに持ちあげられる。薄い生地の先から、艶々とした臀丘が顔をだした。
汗ばむ桃果実は、月光を吸って色っぽく艶めいている。女に穿かせているのは黒いティーバックで、紐だけで構成されたソレは尻穴すら隠せてはいない。
「あ……ッ♡」
福弥が尻頬に手を置く。それだけで、女淫魔は弾んだ声をあげ、鼻先を揺らした。尻肉がキュッと内に寄り、深い谷間が紐下着を呑みこむ。福弥が尻臀をゆったり撫で回すと、女はその動きを追うように腰をくねらせた。
「福弥……ああ、焦らさないでくれ。や、やるなら、一思いに……ああん、頼む……♡」
「さっきまでの態度が嘘みたいだな。まるで借りてきた猫みたいだ。鳴いて、誘ってみろよ」
「にゃあ……にゃあん♡ にゃあ、にゃふぅ……♡」
女は逡巡すら挟まなかった。先ほどの凛々しさはどこへやら、甘えた声音を作り、にゃあにゃあと鳴いてみせる。媚びるように腰を揺らして牡の寵愛を乞う姿からは威厳など少しもない。そこにいるのは、生殖願望に支配されたマゾ牝ただ一匹である。
「ふふ、いいね。普段とのギャップがたまらない。最高にそそるよ、メノウ」
「あ……♡」
福弥は肉幹を谷間に宛がう。牡の気配を察知した菊座が、放射状の皺を忙しなく蠕動させた。腸肉も相当に疼いているのだろう。女淫魔の肛門は卑猥に開閉を繰り返し、熱い肛臭を吐きだす。腸から漏れる吐息を浴びた逸物は、更に勃起の角度を強めた。
「前戯はいらないよね?」
「……はい♡ 福弥さまの専用奴隷ま×こ、生殖準備万端です。淫魔の熟成トロマン、右手代わりのち×ぽ擦りにお使いください……♡」
淫魔は言葉遣いを奴隷仕様に変えると、意味を成さぬ下着を脇に除けて、裂け目を露出させた。くぱぁと拡がった花弁の中央から、薄く白濁した本気汁がこぽこぽと零れる。甘いような酸っぱいような、強烈な牝の匂いが鼻奥を衝いた。
「ぁンッ」
福弥は蕩けた祠に指を差しこむ。フック状にした指を旋回させると、媚壺がぬちぬちと淫靡な音を奏でた。熱く蕩けた襞肉が指に絡みつく心地は、複数人の女から熱情的に舌愛撫されているようだった。
「ふふ、とんでもない濡れようだな。ずっとこんなに濡らしてたのか?」
「はぁ、はぁ……あっ、あん……だって、ああん」
「すぐ傍に、あんな危険な女がいるってのに。真面目な顔して語ってたくせに、セックスのことで頭がいっぱいになってたのか。この淫乱め。ち×ぽ欲しくて、飢えてたんだろう。ん?」
低い声で囁き、Gスポットの辺りをコリコリと掻く。膣壁に生えている肉粒はクリトリスのように充血・勃起していた。そこに指先を引っ掛けられるのはたまらないのだろう。淫魔は鼻先を揺らし「ああん♡」と艶啼きを響かせた。
「こらこら、喘ぎ声が大きいぞ。あの女に見つかっても構わないのか?」
「あ、ああ、そんな、だめだ……見つかったら私、また封印されてしまう」
「じゃあ、セックスはやめておく? お前が嫌なら、今日はなしでもいいよ」
緩慢な動きで膣肉を捏ねつつ、答えの判りきった質問をする。メノウは黒髪を横に揺らした。月光を反射する艶髪は、どこか紫がかった煌めきを返す。
「こんな状態で放置されたら、私は狂ってしまう……お、お願いだ。頼む……」
「何を頼むの? もう一回、さっきみたいに言ってごらん。ほら、どうしてほしい?」
「ああ……ッ♡」
福弥は手早く指を引き抜いた。伸びた白濁の糸を追うように、女のヒップがビクンビクンと躍る。ぬらついた媚尻の淫舞に福弥は舌なめずりをした。剛直の根元を掴み、先端を肉裂に触れさせる。性器と性器の接吻に、少年の腰はじんわりと甘く痺れた。
「お願いします、福弥さま……淫魔のマゾ牝ま×こ、そのぶっとい牡ち×ぽでホジホジしてぇ……はっ、はーっ♡ 子宮をずんずん捏ねて、濃厚な子種どぷどぷ注いでください……♡」
「くく、可愛いやつめ。昔のお前に見せてやりたいよ」
巨大な桃尻をねっとりと撫でながら、福弥は腰を押しこんでいく。張り詰めた勃起がトロ肉に包まれていく快美感に、少年はうっとりと息を漏らした。
「あふぅン……っ♡」
切っ先が奥に達すると同時、女は恍惚の声をあげた。たわんだ背中に肩甲骨が浮きあがる。喜悦に震える女体は一気に発汗を増して、濃厚な発情牝の臭気を夜に散らした。
「ふふ、凄いな。じゅくじゅくだ。ち×ぽが溶けちゃいそうだよ」
「あッ、あんッ」
鋭く穂先を突き刺す。秘奥をゴッ、ゴッと力強く叩くたび、隆起した肩甲骨が震えた。身を捩る女の肩で、ワンピースの紐がずれている。福弥が少し指を引っ掛けてやるだけで、薄い衣装はするりと肌を滑った。一度ペニスを抜く。ワンピースが、地面に落ちた。
「ああん♡」
もう一度挿入し、露わになった乳房を掬いあげる。指先で下乳を弄ぶと、肉壺のうねり心地が変わる。特に乳首をキュッと抓んでやれば、面白いくらいに粘膜が収縮した。勃起した朱い突起を指先で弾いてやる。孔がキューッと窄まって、結合部から白い汁が零れた。
「ふふ。淫魔のくせに人間にセックスで弄ばれて情けない。恥ずかしくないのか」
「は、恥ずかしい、です……でも……ああん、メノウは変態だから、それが興奮するの。恥ずかしくて情けないのが……ああッ♡ 惨めに啼かされるのが、たまらないんです、あんっ♡」
キュッ、キュッと膣孔を窄め、女は従順に応える。たまらず腰が引き攣りそうになるのを堪え、少年は左右の突起を指で捏ねる。淫魔は被虐の悦びに唇を震わせた。
「ああ、乳首ぃ……勃起乳首抓らないでください。あん、感じすぎちゃいます、ンふぅ♡」
「乳首が嫌なら、こっちがいいかい?」
「ぁンッ♡ もぉ、そっちのほうが弱いって知ってるくせに……あっ、あはぁんッ♡」
右手を股間に滑らせる。愛液を掬った指で、勃起した肉豆をコリコリと転がした。乳首以上の感度を誇るソレを弾くたび、美しい女体が妖艶に波を打つ。引き攣る肌から立ち昇る媚臭に心地好い眩暈がした。吸えば吸うほどに性の酩酊感が強くなり、勃起もますます硬度を増す。
「福弥さま……」
「ほしいのか?」
「……はい♡」
淫魔は甘えた声で言うと、小さな唇からだらりと舌を伸ばした。福弥は口の中でぐちゅぐちゅと唾液を泡立て、女の顔に向かって垂らす。
メノウは首を傾け、健康的な色味の舌を懸命に伸ばした。精液のような唾が、女の舌腹を流れていく。糸が途切れると同時に、メノウは朱唇を閉じ、ごくりと唾液を飲んだ。
「ンふぅ……♡」
細い喉が上下する。唾液を嚥下する悦びに女は目を細めた。媚尻が揺れ、膣中で粘膜同士が擦れあう。恍惚と鼻孔を緩めるメノウは、もう一度「あーん」と口を開いた。
「何度も何度もツバをねだって……まるで辛抱の利かない犬だな。卑しい牝め」
「私をこんなふうにしたのは、お前だろう……ああ、責任をとれ……ほら、早くぅ♡」
はっ、はーッ♡ と荒く息を乱し、女は更なる褒美を乞うてくる。口調がコロコロ変わるが、本人は無意識なのだろう。だが福弥からしてみれば、淫魔と牝奴隷の間で揺れる女を見るのは酷く興奮した。自然と口元に涎が浮く。それをもう一度、高い位置からメノウに流しこむ。
「んむぅ……ッ」
今度はそのまま女と唇を重ねた。メノウは頬の筋肉を緩め、口腔を主に差しだす。舌がぬるぬると絡みついた。
「ンむっ……んぅ、んふッ、んっ、んっ♡ んむふ、んふぅ、んむッ♡」
舌を滑らせながら腰を前後に遣る。豊かな桃尻を緩衝材にして、女の肉をずんずんと捏ねた。淫魔は口腔に唸り啼きを零し、鼻孔を拡げて身を捩る。ずれた唇の隙間から涎が溢れた。
下の結合部でも、汁を塗りこむように粘膜を擦りつけあう。熱感を強めた蜜肉がふるふると痙攣を起こしていた。見事な安産型のラインを描く下半身が、激しく引き攣る。
「イキそうなのか、メノウ」
「はぁはぁ……は、はい……♡ 淫魔ま×こ、限界です♡ あっあっ、イッてもいいですか、ご主人様っ……メノウの雑魚ま×こに、アクメ許可ください♡」
「ふふ、いいよ。意地悪はなしといこう。僕が射精すると同時にイけ。いいな?」
「……♡」
メノウは返事しなかった。涎で濡れ光る朱唇を緩め、正面を向く。未だ、校庭には真琴の姿があった。祈祷か懺悔かは知らないが、両膝を地面につけたまま、両手を重ねて顔を伏せ続けている。そうやって女が清楚な側面を見せるほどに、福弥は黒い感情を掻きたてられる。
「あッ、あんッ♡ あっ、激しッ、ンふぅ、はぁんッ♡」
腰を掴み、荒っぽく抽送を繰り返す。掻きだした蜜が、じゅぶッじゅぶッと白い泡を散らす。肉厚の陰唇が捲れるたび、真っ赤になった媚肉が顔を覗かせる。後ろに咲いた菊の華もまた、牡の欲望を煽るように皺をヒクつかせていた。
「出すぞ、メノウ」
堕ちた淫魔の姿を前に、福弥の興奮は最高潮へと達する。極限まで膨張しきった肉の杭を、痙攣する牝壺の中へ鋭く打ちこんだ。
「あッ、あん、いくっ! はぁはぁ、いくっ、いくぅン……ッ♡」
白いマグマを注がれた淫魔は歓喜に喘ぐ。汗みずくの背中が淫猥に波を打ち、魔性の艶をぬらぬらと散らした。