初恋の幼馴染が義姉になって同棲した【初夏】の寝取りラブストーリー

著者: 大萩燦

電子版配信日:2025/03/14

電子版定価:880円(税込)

ずっと好きだった、でもずっと言えなかった。
幼馴染の千歌が俺の兄と結婚すると聞いた時、初恋は終わった。
だが突如決まった兄の出張で、千歌とその娘・千星と同居生活をすることに。
一緒に過ごすうちに千歌の優しい笑顔に癒やされて、過去の気持ちが蘇る。
あの時より成熟した身体に魅せられ、燻らせていた初恋が再び燃え上がり……
時を超え、この夏、すれ違った想いが再び交差する。やり直し寝取り純愛ノベル、上下巻同時刊行!

目次

1.君といる夏の始まり

2.乳首責めでネトラブ

3.クリ責めでネトラブ

4.口内射精でネトラブ

5.買いモノでネトラブ

6.公衆便所でネトラブ

7.三角関係でネトラブ

8.結婚指輪でネトラブ

9.ポルチオでネトラブ

10.初ちゅうでネトラブ

11.量子力学でネトラブ

EX.オモチャでネトラブ

本編の一部を立読み

1.君といる夏の始まり



 始まりは突然だった。
 夏、学生はもうすぐ夏休みに突入しようという頃のことだ。
 珍しく兄貴から電話がかかってきた。
「友紀也《ゆきや》。僕の海外出張の間、家に泊まってくれないか? 女二人では留守が心配でね。お前でも番犬代わりくらいはできるだろう」
 プライドの高い兄貴が俺を頼るなんてめったにないことだった。
 だからだろう、気を良くした俺は二つ返事でOKしてしまった。
 期間は七月末の今から、八月末までの一ヶ月間。
 俺の職業はゲームライターだ、PCさえあれば職場は選ばない。在宅ワーク万歳だ。
 兄貴の家までは歩いていける距離だ、すぐさまノートPC持参で向かった。
 ジリジリと照りつける日差しの下でも、足取りは軽かった。
 三十代半ばにもなって年甲斐《としがい》もなく浮かれていたのだろう。
 俺みたいに不安定な仕事で日銭《ひぜに》を稼ぐ不出来な弟が、一流企業に勤める高給取りの兄に頼られたことが嬉しかったのだろう。
 だから忘れていたのだ。
 兄貴の家には誰がいるのか《・・・・・・》。
 俺とその人《・・・》が一つ屋根の下で暮らすということが何を意味するのか――まだ俺は、理解していなかったのだ。
「いらっしゃい、友紀也くん。久しぶりね」
「っ……!」
 玄関が開いた瞬間、時間が止まった。心臓が止まるかと思った。
 兄貴の家で俺を迎え入れたのは、三十代半ばの女性だった。
 栗色のふんわりしたセミロングの髪に、白くなめらかな肌。
 背は低いがむっちりとした柔らかそうな手足。エプロンを持ち上げる豊満な胸。
 柔和な雰囲気を醸し出す、垂れ目気味だが大きな目に長いまつ毛、その奥にしっとりと輝く紫苑色《しおんいろ》の瞳に俺は思わず目を奪われていた。
「まったく、夫のワガママにも困ったものね。友紀也くんは迷惑じゃなかった?」
 上目遣いで俺の機嫌を窺うこの美女の名は千歌《ちか》。
 俺の初恋の幼馴染であり、今は俺の兄〝由多可《ゆたか》〟の妻――つまり義理の姉にあたる。
「い、いや。全然迷惑じゃないよ。俺の仕事ってどこでもできるし」
「話題のテレワークってヤツかしら?」
「そう、それ」
「ふふっ、安心したわ。お礼にこの一ヶ月、衣食住はちゃーんとお義姉《ねえ》ちゃんが保証しますからね! さあ、入って入って。自分の家だと思ってくつろいでいいのよ」
 少し心配そうだったが、俺が本気で迷惑がっていないことが表情からわかったのだろう。
 義姉さんはホッとした表情で俺を家に招き入れた。
 兄貴の家には何度も来ている。トイレの場所なんて今更聞く必要はないし、勝手知ったる、という感じだ。
 俺は手を洗ってからリビングのソファに座ると、キッチンからアイスティーを持ってきてくれた義姉さんに訊《き》いた。
「兄貴は?」
「あら、あの人言ってなかった? 今朝出発したのよ」
「え、もう!? 挨拶も無しかよ」
「不躾《ぶしつけ》でごめんなさいね、むしろ家族だからこそ気を許せるのよ。悪気はないの」
「わかってるよ、兄貴らしいな。千星《ちせ》は?」
「あの娘《こ》は今、部活よ。テニス部。夕方には帰ってくるんじゃないかしら」
「帰ってきたらゲームの相手になってやるかな」
「もぉ、そればっかり」
 義姉さんはくすりと笑った。
 俺の隣に座って、自身もアイスティーをストローですすり始める。
 ふわりと鼻をくすぐるのは紅茶の香りか、それとも彼女自身の色香か……。
「友紀也くんが千星を甘やかすからあの娘、夫より友紀也くんに懐いちゃってるのよ。いつもあなたの部屋にお邪魔しているけれど、迷惑はかけてない?」
「全然。ゲームの相手になってくれて嬉しいよ。俺、友達少ないし」
「もぉ、そういう自虐ばっかり。全然変わってない。ダメよ、そういうトコ。もっと自信持ちなさい」
 そう言って義姉さんはぷくーっと頬を膨らませた。
 三十代半ばというと「おばさん」と呼ばれても無理ない年齢《とし》だが、彼女の顔は今でも若々しくてほとんど十代の頃と変わっていない。
 素直に「可愛いな」と思った。思ってしまった《・・・・》。
「変わってないのはそっちもだろ……」
「え?」
「なんでもない」
 つい本音をぽろりと口に出してしまったのをごまかした。
 ああ、なんてこった。
 今になって俺は後悔し始めていた、兄貴の頼みを安請《やすう》け合いしたことを。
 義姉さんは……千歌は、俺の初恋の人なんだぞ。
 忘れようと努力したし、忘れたと思っていた。
 けれど、一つ屋根の下で二人きりのこの状況で俺は否応《いやおう》なく突きつけられていた。封印していたはずの自分自身の気持ちを。
 隣で無防備にアイスティーを飲む人妻を……よりによって、兄嫁である千歌を。俺は――異性《オンナ》として意識してしまっていることを。

   △   ▽   △

「おじさま! ゲームしよっ、ゲーム!」
 初恋の女性と二人きりで過ごす昼間はドキドキして気が休まらなかった。
 だから姪《めい》が部活から帰ってきた時にはホッとしたというのが本音だ。
「どーん!」
 ソファの上に座る俺の膝上に制服姿のままダイブ。
 ごろごろと喉を鳴らして懐いた犬や猫みたいに甘えてくる少女こそが、兄貴と千歌の間に生まれた一人娘の千星だ。
 若い頃の千歌にそっくりな端正な顔立ちに、キラキラと輝く星空のような瞳が特徴的な美少女。
 健康的な白い太ももに、制服の上からでもはっきりわかる上向きの双丘は、少女から女性へと今まさに変化を遂げようとしている思春期の肉体だ。
 そんな彼女に部活帰りの汗ばんだ肌で密着されると、幼い頃から可愛がってきた姪に対してヘンな気を起こしそうになって「いかんいかん」と必死で自制する。
 ただでさえ千歌のことを意識してヤバいのに、千歌そっくりな姪まで無防備に密着してくるこの状況。
 俺は耐えられるのか――?
「そ、そういえばあの話《・・・》はどうなったんだ?」
 俺は気を紛らわすため、露骨《ろこつ》に話題をそらした。
「あの話?」
「留学の話。千星、兄貴みたいにアメリカ留学するって言ってたろ」
「ああ、アレねー。なんかウイルスがパンデミック云々でお流れになっちゃった。お父さんがいきなりアメリカ出張になったのも、本社が大変なコトになってるからみたいだよ」
「あー……そうだよな、そりゃそうか」
 今年の春は大変だった。
 世界中に新型ウイルスの災禍《さいか》が降りかかり、様々な企業が打撃を被《こうむ》った。
 ずっと在宅ワークだった俺にはそこまで関係なかったが、世間は激変していたのだ。
「だからこの夏はおじさまとずぅーっと一緒だよ」
 千星は嬉しそうに俺にくっついて、ぐいっと顔を近づけてきた。
 か、可愛い……。
 好みど真ん中の美少女だった千歌にそっくりなその表情は、俺の心臓を否応なく高鳴らせる。
「ゲ、ゲームする前に!」
 俺は千星の抱きつき攻撃をふりほどき、立ち上がって言った。
「シャワー浴びてくるよ。ここまで歩いてきたから汗だくだったんだ、千星も汗臭いオッサンにくっついてると臭いだろ?」
「えー、わたしはおじさまの匂い好きだけどなー。一生嗅いでられるよ?」
「俺は加齢臭とかそろそろ気になるお年頃なのっ! 千星も部活帰りなんだからちゃんとシャワー浴びろよな、じゃあお先にっ」
「えー!」
 千星の「ゲームしたーい!」のダダっ子攻撃を振り切って俺は服を脱ぎ散らかして浴室へと飛び込んだ。さすがに都内の庭付き一戸建て、風呂場も広いな。
 今はお湯を張ってないから浴槽には入れないが、脚を伸ばして広々と入浴できそうだ。小さな頃は千星を風呂に入れてやったこともあったなぁ、なんて思いつつ俺は冷水を浴び始めた。
 水シャワーを頭からかぶるのは、単に汗を流したかったからってだけじゃない。煩悩《ぼんのう》を振り払うためだ。
 これから一ヶ月、俺の好みど真ん中な美女と、彼女の若い頃にそっくりな美少女の二人と一つ屋根の下で暮らすことになってしまったのだ。
 あのプライドの高い兄貴が俺を頼ってくれたんだ。信頼を裏切りたくない。
 初日からムラムラするなんて論外だ。精神修養、心頭滅却《しんとうめっきゃく》――!
「おじさまー!」
 その時だった。ガラリ、と音がして……。
 俺の必死の努力は一瞬にして打ち砕かれた。
 俺の煩悩の原因の一人――千星が安全地帯だと思っていた風呂場にまで侵略してきたのだった。
 立ったまま水シャワーを浴びていた俺の背中に何か《・・》が。柔らかな感触がむにゅぅ♡ と押し当てられた。
「来ちゃった♡」
「来ちゃった――じゃねえよ! なんで入ってきたの!?」
「だってはやくゲームしたいんだもーん。千星もおじさまと一緒にシャワー浴びちゃったほーが早いでしょぉ?」
「だからって……」
 仮にそういう目的だとしても水着くらいは着てこいよ、と思った。
 振り返って現役学生の若い肢体を舐め回すように確認する、なんてコトはしなかったが。背中に押し当てられた感触はつるつるとなめらかで温かい人肌の感触であり――なによりムニムニと柔らかな山の中心に二つほど感じるコリコリとした何か《・・》はまぎれもなく……。
 あまりに無防備。
 気を許した叔父に対してとはいえ、年頃の少女が生乳《ナマチチ》も乳首も押し当ててくるなんて――。
「昔はいっしょにお風呂入ったじゃん。ハダカくらいへーきだよぉ」
「昔って、そんときゃお前まだちんちくりんだったろうが。今は……」
 姪という存在は、自分の娘じゃないから立派になってほしいという親特有のプレッシャーがなくて楽だ。ただ甘やかしているだけでいい。
 そう思って今まで千星を叱ったりしたことはなかったが、さすがに嫁入り前の身体を身内とはいえ男にこんな風に無防備に晒すなんてよくないことだ。
 注意したほうが良いか?
 俺が迷っていると、背伸びしてきたらしい、千星が耳元でささやいてきた。
「今は――なぁに、おじさまぁ。もしかして千星にコーフンするのかにゃー? 姪にムラムラするヘンタイおじさまなのかにゃー?」
「っ……」
「ごめんね、ジョーダン! 男の人はおっぱい好きだもんねぇー。姪とかカンケーないよ、仕方ないんだもんね。でもわたしだってもぉコドモじゃないんだよ、お・じ・さ・ま♡」
 ま、まずい。
 むにむにと小柄なわりにボリュームのある双房を押し当てられるうちに俺の股間はムクムクと反応し始めていた。
 小さな頃から可愛がっていた姪とはいえ、おっぱいはおっぱいだ。
 男として生まれた以上、おっぱいの魔力には逆らえない。
 千星も自分の魅力を理解しているのか、俺をからかっているのか、「むふふ♡」と嬉しそうに笑みを漏らして、
「おじさまの身体、わたしが洗ってあげよっか♡」
 俺の股間にゆっくりと手を伸ばし始めた。
 まずい、それはさすがにヤバい――叔父と姪で一線を超えるのは……!
「こらっ、千星! やめなさい!」
 バーン! その時風呂場に乱入してきたのは千星の母、千歌だった。
 俺の義理の姉だとか初恋の人って表情ではなく、今はイタズラ好きな娘を叱る母の顔そのものだった。
「うわっ、おかーさん!?」
「なんてことシてるの、年頃の娘が! もうコドモじゃないのよ、友紀也くんに迷惑かけるのはやめなさい!」
「だっておじさまがうちに泊まってくれるの嬉しくて……」
「だってじゃありません! 出なさい!」
「ぴえん」
 あえなくイタズラ好きな姪、千星は風呂場から叩き出された。
「ごめんね友紀也くん、迷惑ばかりかけちゃって。あの子、あなたがうちに泊まるって聞いてからずっと浮かれてて……」
 申し訳なさそうに謝る義姉さん。しかし俺はそれどころじゃなかった。
 エプロン姿で浴室に乱入してきた彼女の胸元はシャワーがかかってしまい濡れていた。
 くっきりと豊満な乳房の形が透ける初恋の女性の姿を見てしまい、ただでさえ千星に興奮させられていた俺の股間は我慢できなくなって――全力勃起《フルボッキ》してしまっていたのだ。
 そして、
「ぁ――」
 いつの間にか、義姉さんの目がソコ《・・》に向いてしまっていることにも気づいた。
 一瞬、時が止まってしまったみたいに視線が交差した。
 俺は彼女の濡れた胸元を。
 そして彼女は俺の硬くそそり勃った股間を。
 確かに凝視していた。
 ゴクリ、とシャワーの音に混じって唾を飲み込む音が聞こえた。
 それは俺か、あるいは彼女のモノか。
「……っ!? ご、ごめんなさい!」
 やがて義姉さんは顔を真っ赤にして浴室から出ていった。
 ずいぶんと初々しい反応だった。
 まるで勃起を初めて見たかのような。
 ありえないよな、一児の母だってのに。
 でも少なくともその反応からは、かなり久々に男根《ペニス》を見たんじゃないかって推測がついた。
「千歌と兄貴――セックスレスなのかな」そんな思考が頭をよぎった。
 もしかしたら、俺なら……。
「い、いやいや、ダメだろ!」
 ぶるぶると頭を振って煩悩を振り払う。
 今俺は、何を考えた?
 セックスレスの兄嫁と一つ屋根の下、一ヶ月も過ごすんだ。
 だったら俺にもワンチャンあるかもしれない――だなんて。
 そんな邪《よこしま》なこと、ダメなのに、考えちゃいけないのに。
 理性はそう訴えるが、下半身は正直だ。
 彼女に見られたことで俺の股間は、期待でパンパンに膨らんでいたのだった。

   △   ▽   △

 千星はイタズラの罰として今日一日俺との接触とゲームを禁じられた。
 夕食が終わると千星はつまらなさそうに「おじさまと遊べないとかつまんなーい! もぉふて寝してやるぅー!」と自室に引きこもった。
 懐いている叔父が家に一ヶ月泊まることになりはしゃいでいたのはわかるが、自業自得だろう。俺も正直ホッとしていた。
 今夜は安心して寝られるな。
 そう思い、仕事もせずに客間に敷かれた布団に潜り込んで就寝と決め込んだ。
 いろいろ大変そうな一ヶ月が始まってしまったが、とりあえず初日はなんとか平和に過ごせたかな――なんて。
 気楽なことを考えながら俺は眠りについた。
 そんな思考があまりにも楽観的すぎたことに気づかされたのは、全然後のことなんかじゃなくて。
 まさに事件が起こるのは今夜であることに――この時の俺はまだ、気づいていなかった。
「……早寝しすぎたか」
 夕食後少しネットサーフィンなんかをしただけで、就寝したのは夜二十一時だ。
 慣れない布団と枕を使ったのもあるだろう。
 さすがに目が覚めてしまい、深夜零時に俺は布団から出た。
 客間を出る。トイレで小便をして、キッチンで水を飲んで。
 軽くゲーム記事の仕事でも進めるかと客間に戻ろうとしたその時だった。
「……くん」
 どこかから声が聞こえた。
 しんと静まり返った夜の家で、落ち着いて耳を澄まさなければならないくらいの小さな声だったが、俺には確かに聞こえたんだ。
「ゅきゃ……くん……っ」
 これは、義姉さん……千歌の声だ。千星とそっくりだが俺には聞き分けられる。
 しかもどうやら「ゆきやくん」と俺の名前を呼んでいるようだった。
 なんだ、何が起こっている!?
 俺は焦った。
 急に体調が悪くなってうめき声を上げている?
 強盗に襲われて助けを求めている?
 悪い想像が頭の中で一気に噴出する。
 とにかく――彼女の部屋に駆けつけないと!
「千歌、どうした! 無事か!」
 勢いよくドアを開け義姉と兄貴、夫婦の寝室に飛び込んだ。
 すると俺の目に飛び込んできたのは――。
「ゆきや……くん――?」
 初恋の女性であり、義理の姉である美女の……千歌の、あられもない姿だった。
 スケスケの淫らなネグリジェ姿で下着はつけず、ベッドの上に座り込んでいる彼女。
 両脚をつま先までピンと伸ばし、片手はその中心に……つまり、股間に伸びてすりすりとまさぐっていた。
 もう片方の手は零れ落ちそうなほどの爆乳を自ら掴み、揉みしだいている。
 間違いない。
 俺は目撃してしまったのだ。
 義姉さんの自慰行為《オナニー》を。
「はぁ……はぁ……な、なんで……ゆきやくん、寝てたんじゃ……」
 上気した頬と濡れた瞳、情熱を帯びた吐息のまま。
 頭がうまく回っていないのだろう、彼女はただ困惑して俺を見つめていた。
「義姉さん……今なんで、俺の名前……」
「え、あ……うぅ……」
 彼女はうつむいて、顔を真っ赤にして弱々しい声を絞り出した。
「笑わない?」
「ああ」
「軽蔑しない?」
「オナニーくらい誰でもするよ」
「……実はね、私――よ、欲求不満……なの。でもあの人が……夫がいる日は一人でできないし……だから……」
 人妻の衝撃的告白を聞いてしまった俺だが、実のところそこまで意外ではなかった。
 兄貴は若い頃から性的なことに関しては淡白なほうだ。兄貴の部屋からエロ本を見つけたことはないし、千歌と結婚する前に彼女を作ったという話も聞いたことがない。
 推測通り、この家の夫婦はセックスレスだったということだろう。
 本来なら夫婦の関係に口を挟むのは失礼にあたるが、義姉さんの自慰を目撃して精神的優位にたった気がしてしまったらしい。
 俺はさらに彼女を問い詰めた。
「いつから?」
「えっ」
「いつから、シてないんだ?」
「そ、それって……」
「夫婦の営み《なかよし》ってヤツ」
「うぅ……それは……」
 彼女はもじもじと脚を擦り合わせ、
「千星が生まれてから……ほとんどないの」
「はぁ!?」
 俺は思わずすっとんきょうな声を出してしまった。
 マジか? マジか兄貴!?
 こんなムチムチの身体した美人、毎晩抱きまくっても飽きないだろ!
 俺は不意に兄貴に対しメラメラと炎のような感情が芽生えているのを感じた。
 それは以前のような〝嫉妬〟ではなく、〝義憤〟だった。
 義姉さんのような最高の女を手にしておきながら――何やってんだよ、兄貴!
 そういう怒りだったのだ。
「っ……そうか」
 その怒りが俺を狂わせた。
 本来なら扉を閉じ、部屋を出ていくべきだったのだ。
 他人の自慰を目撃しても、紳士ならば見なかったことにすべきだったのだ。
 だけど俺は後ろに下がらなかった。
 前に進んだ。
 ズカズカと夫婦用のダブルベッドの上にまで侵入し、大胆にも兄嫁《ひとづま》の肩を掴んだ。
「義姉さん――」
「は、はひっ」
「さっきの説明じゃ不十分だぞ。俺の質問に答えてない。俺の名前呼びながらオナニーしてたよな? なんでなんだ?」
「うぅ……そ、それはね。見ちゃったから……お風呂場で、友紀也くんの……」
「俺の、ナニ?」
 容赦なく、少し高圧的に。
 兄貴の妻に対して、初恋の女性に対して俺は迫った。
 押しが強いタイプでは決してない俺のかつてない剣幕に気圧され、彼女もどこかしおらしかった。
 学生の頃はどちらかというと千歌のほうが俺を翻弄《ほんろう》していたのに、今は立場が逆転していた。
「うぅ……」
 彼女は口をもごもごさせていたが、やがて意を決したかのように薄桃色でぷるりとした肉厚の唇を開いた。
「お……おちん×ん……」
「え?」
「だからね、友紀也くんのたくましいおちん×ん見ちゃって。ダメだと思ってたんだけど、ムラムラしちゃって……だから……ごめんなさい、こんなこと。気持ち悪いわよね」
「いや、そんなことない」
 冷静を装いながら俺は内心、ニヤリとほくそえんでいた。
 つまりそれは――千歌は俺の身体に興味がある、というコトじゃないか?
 一つ屋根の下、かつての幼馴染と暮らすことになって意識していたのは俺だけじゃなかったのだ。彼女もそう思っていたのだ。
 行くしかない。
 ここしかない。
 ここで押し切れなかったら、もう二度とチャンスは巡ってこないかもしれない。
 あの日失った青春の日々を、もう一度――。
「義姉さん――いや……千歌」
 俺は耳元で、あえて彼女を名前で呼んだ。
 男と女。ただの幼馴染だったあの頃に戻ったかのように。
 千歌のほうは、俺の名前を呼んでオナニーしたという行為に負い目があるのだろう。
 こうして強引に迫っても抵抗する気配はなかった。
「つまり、俺のチ×コ想像してオナってたってことだよな?」
「……はい」
「どんな風に想像してたんだ? 教えてくれよ」
「それは……夫がいなくて一人寂しい夜に……この寝室に友紀也くんが入ってきて……おっきなおちん×んで私のことイジメるの……」
「強引にか?」
「……う、ん」
 こくり、と無言で頷く。
 ヤバい、楽しい。
 かつての幼馴染に。人妻にオナネタを告白させるなんて。
 俺はかつてない全能感にどんどん調子に乗ってしまう。
「ねぇ友紀也くん、もぉゆるして……」
「俺は怒ってるワケじゃない。むしろ……」
 不意に彼女のむき出しの太ももをなで上げた。
「ひぅ――」
 ぴくん、ぴくんと足先が震える。
 オナニーを中断されて敏感になっていた肉体への不意打ちに耐えかね、千歌は甘い吐息を漏らした。
「手伝ってやるよ、千歌」
「はぁ……はぁ……、それって……」
「想像なんてしなくても、目の前に実物がいるんだ。俺でオナニーしていいんだぞ」
「で、でもそんなの……ダメよ、私には……」
「兄貴はセックスもオナニーの手伝いもしてくれない、だろ?」
「うぅ……」
 千歌は目を泳がせて迷っていた。
 強い拒否感があるわけではないだろう。
 だが、自分が人妻であるという自覚が彼女の最後の一線となっているようだった。
 もうひと押しだ。
「大丈夫、オナニーを手伝うだけだ。浮気にはならない。それに、得するのは千歌だけじゃないんだぞ。交換条件として、俺のオナニーも手伝ってもらう」
「え……?」
 千歌の手をとり、俺の股間へと導く。
 バキバキに勃起《エレクト》した陰茎を細く白い指が撫でた。
「ゆきやくんの……すごい……硬い」
「千星に風呂場でイタズラされたせいでさ、俺……すげぇムラムラしてるんだよ。こんなことが毎日続いたらどうなるんだろうな。こっから一ヶ月この家に泊まってるうちに、我慢できなくなってもしかしたら大事な姪と間違いが起こっちまうかも」
「だ、ダメよ! 千星はまだ学生よ! いくらあの娘があなたに懐いてるからって……そんなこと……っ!」
「だったら、千歌がイイ母親《・・・・》として、家庭を護るためにしなきゃならないよな――俺の性欲処理。俺が千歌のオナニーを手伝う代わりに、千歌も俺のオナニーを手伝ってくれよ。そうすればお互い様だし、Win-win《ウィン・ウィン》の関係じゃないか?」
「そんな、そんなの……」
 千歌は迷っていた。
 いや、迷っているそぶりを見せているだけだ。
 たぶん、既に腹は決まっていた。俺の名前を読んで自慰行為を始めたその時から。
 俺は真剣に千歌のコトを想っているフリをしながら、あとはただ彼女が答えるのを待つだけだった。
 しばしの静寂の後、
「一回だけ……だったら」
 千歌はゆっくりと頷いた。
 勝った。俺は彼女から見えないよう口角を吊り上げた。
「ああ、一回だけだ」
「あっ――♡」
 俺は彼女の小さな身体を、ベッドの上に押し倒した。
 その表情は困惑だけじゃない。明らかに、期待の色が混じっていたのだった。
 かつての幼馴染であり、初恋の女性。そして俺の兄貴の妻であり、義理の姉。
 俺が長年片想いしていた魔性の女、千歌との最初の夜が始まった――。

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