プライベートトレーナー・雫(上)

著者: 須賀万尋

電子版配信日:2025/04/11

電子版定価:880円(税込)

「あぁ、最高よ。全身で感じてしまっているあなたのいやらしい姿」
膨らんだ亀頭を細指で撫で回しつつ乳首を摘まみ、耳元で囁く魔性の女。
男の秘めた性癖を開発、調教する、パーソナルトレーナー・雫。
甘い香りを纏った彼女と出会い、社会人・祥太の日常は一変した。
射精管理で性感を高められ、淫語と視線でじらされた先に新世界が──
〈第31回フランス書院文庫官能大賞・最終選考ノミネート作品〉

目次

恥ずかしい下着を視られて

出会い ──花柄の刺繍の入った紫のパンティ──

詰問 ──祥太の変態性について──

鏡の中の痴態 ──乳首とアナルを弄られて──

女子たちの噂話 ──抗えぬ衝動──

再会 ──親密なふたり──

淫靡な罠 ──授乳されながら、しごかれて──

お仕置きでの絶頂 ──初めてのオーガズム──

帰り道 ──つかの間の幸せな時間──

自慰中のコール ──管理の始まり──

永い一週間 ――充満する淫欲――

雫さんの提案

美教師と女生徒 ――双頭ディルド――

雫さんの折檻 ――マゾヒストとしてのオーガズム――

初めてのご奉仕 ――逆ソープ泡洗体――

ペット以下 ――祥太の本当の欲望――

上巻書き下ろし トレーニング番外編

本編の一部を立読み

恥ずかしい下着を視られて



 都内の某ホテル。ベッドの枕元のデジタル時計は23:01を点滅させている。祥太《しょうた》は今か今かと雫《しずく》さんを待ち構えていた。彼女と会うのは約二週間ぶりである。
 二人が出会ってから半年が過ぎていた。現実離れした感覚がこの半年間続いていた。
 雫さんのことを思い出すだけで、祥太の頭は微睡《まどろ》みに包まれる。上品に肉付いた身体。そこからほのかに香る甘い匂い。こちらの欲望を見透かす大きな瞳。厚めの唇は、人を狂わせる淫靡な言葉を放つ。
 約束の時間はやや過ぎていた。祥太はシャワーを済ませ、ガウンを羽織っていた。逸《はや》る気持ちを抑えるために、スマートフォンを手に取り、何を見るでもなく、画面に指を滑らせた。しかし、これから始まることへの期待は抑えられず、おもむろにスマートフォンをベッドに投げ出し、部屋の入り口付近にある全身鏡の前へ移動し、ガウンを開《はだ》けた。
 ピンクの花柄のレースのブラジャー、それと同じ柄のパンティを身に付けている自分の姿が鏡に映る。祥太が身に付けているのは、ただの女性用の下着ではない。そのブラジャーはトップの部分が裂けていて、乳首が丸出しになっている。さらにパンティは、クロッチ部分の布が裂け、そこからペニスが丸出しになっている。ペニスの周りの毛は、丁寧に剃り上げられている。陰毛という一般的な成人男性が備えたそれを失ったペニスは、凡庸な日常感が取り除かれ、グロテスクな欲望と恥辱の塊となる。可愛らしい下着とのコントラストがそれの異常性をより一層引き立てている。
 祥太は、花柄のパンティからそそり立つ自分のペニスを改めて確認した。亀頭の先と開《はだ》けたガウンの間にいやらしい糸が引いてしまっていた。二週間分の欲汁を溜め込んだペニスから、淀みなく先走りの汁が流れ続けている。
(早く視てほしい。雫さんはこの姿を見てどんな表情をするのだろう。どんな言葉を僕に浴びせるのだろう)
 考えるだけでさらに祥太の股間は熱く固くなっていくのだった。
 祥太は堪えきれずに、人差し指の指先で自らの乳首を軽く愛撫した。甘い快感が脳を軽く溶かし、思わず腰が揺れる。腰を前に突き出し、花柄のパンティから突き出たペニスを自らに見せつけながら両乳首を弄《いじ》った。人差し指でその小さくも卑猥な突起を擦《こす》り、さらに、人差し指と親指でつまんでやる。弄《もてあそ》ばれたそれは、ぷっくりと柔らかく膨れ、その膨張とともに、快感が大きくなり、股間とアナルをむず痒《がゆ》くさせた。
 少々盛り上がりすぎた。逸る気持ちを抑えて、祥太は手を止めた。ガウンの紐を結び直し、ベッドの向かいにあるソファに腰掛けた。ソファの正面には低いガラスのテーブルがあり、その先にダブルベッドがあった。それを眺めながら、これからその上で始まることへ思いを馳せた。

 ノックが三回鳴る。心臓の鼓動が大きく早くなるのを感じながら、立ち上がり、ドアに向かった。
「こんばんは。待った?」
 雫さんがドアの前で妖艶な笑みを浮かべて立っていた。その笑みには上品さと気高さを感じさせる。
 白地に花柄のノースリーブのワンピースに薄手のカーディガンを羽織り、大胆に開いた胸元からは、谷間の始まりが見える。服に隠された胸元の大きな膨らみは、今、目の前にあるその谷間がまだ入り口にすぎず、その奥にはより深く柔らかい谷が存在することを約束していた。ワンピースは、胸から腹、腰にかけて程よく弧を描き、上品に肉付いた身体を型取り、尻を隠したところで終わっていた。そこから下は、白よりはやや褐色づいて程よく肉付いた太腿《ふともも》が現れる。太腿から始まるストッキングは、その始まりで太腿に食い込み、足全体によく張り付いていた。足元はパープルのピンヒールを履き、高いヒールのせいで、身長は一七〇センチメートル後半まで届いていた。
「こんばんは。いえ、全く」
 祥太は挨拶を返し、部屋へ雫さんを迎え入れた。自分の目の前を通り過ぎたとき、ほのかな甘味を帯びた雫さん特有の香りがした。
(あぁ、雫さんの匂い……)
 この香りが祥太に快楽をまとった記憶を想起させ、祥太の体内に、そしてこの部屋全体に甘ったるい靄《もや》をかけた。
 部屋の通路を歩いていく雫さんの後ろ姿を眺める。タイトなワンピースは大きな尻にピッタリ張り付き、歩を進める度に左右の尻肉が淫靡に捩《よじ》れる。
(あの柔らかい尻。大きく、そして重力を感じさせない丸く肉厚な尻。それを自分の顔の上に乗せられて圧迫してほしい……!)
 祥太の期待は高まり、鼓動の打つ音が強まるのを感じた。
「お風呂にはもう入ったのね」
 ベッドルームに入り、ガウンを着ている祥太を見て、雫さんが訊ねた。
「はい、入りました」
「やる気満々ね」
 勉強熱心な生徒を褒める教師のような笑みを浮かべる雫さん。
「ちょっと喉が渇いたから、まずはお茶を飲みたいわ」
 そう言って、雫さんは事前にオーダーしておいたルームサービスの紅茶をティーカップに注ぐと、ソファに腰掛けた。
 祥太は雫さんと向かい合うようにベッドに腰掛け、ホテル備え付けのミネラルウォーターのペットボトルを開けて、一口だけ口に含ませながら、眼の前の美女がティーカップに口をつける様子を眺めていた。
 紅茶の香りがほのかに部屋の中を漂い、室温がやや上がるのを感じた。そして、この香りもまた、祥太の快楽の記憶を呼び覚ますのであった。

「ふぅ、落ち着いた。やはり始める前にはこの紅茶ね」
 足を斜めに揃え、紅茶を一口すすり、人差し指と親指で持ったティーカップを丁寧にソーサーに置きながら雫さんは言った。
「会いたかったです」
 ベッドに座りながら、脈絡もない言葉が祥太の口をついて出る。
「そうね、私も会いたかったわ」
 しばらく会えなかった息子に再会する母親のように雫さんは優しく微笑んだ。
「さて、今日はどんなふうに楽しませてくれるのかしら」
 雫さんはおもむろに立ち上がり、羽織っていたカーディガンをハンガーにかけた。確かな肉付きの二の腕が露わになり、ノースリーブのワンピースの袖口から、胸とも腋とも言い難い部分が覗く。ブラジャーの締め付けから逃れたそれぞれの肉たちが艶めかしく混ざり合っている。
「えっ、あのぉ……」
 途端に入ったスイッチに祥太は戸惑った。
 雫さんは再び元いたソファに座り、祥太の様子を大きな瞳で見つめている。
「どうしたの、言えないの?」
 先程の優しい微笑みが後退し、こちらを嗜《たしな》めるような笑みと口調に変わった。
「雫さんに……見せたいものがあって」
「うふふ、なにかしら?」
 祥太はその場で立ち上がると、テーブルを挟んで向かいのソファに座る雫さんに向かってガウンを開け、異常な形状の下着を身にまとった姿を雫さんの前に晒した。
 花柄のパンティの裂け目から生えた肉棒は血管を浮き立たせながらそそり立ち、亀頭まで真っ赤に腫れ上がっている。亀頭の先からだらっと透明な蜜が垂れ、裏筋を光らせていた。雫さんの視線がまさにそこへ注がれているのを感じた。それはいわば視線による雫さんの愛撫で、視線が注がれている部位がいやらしく熱を帯びていった。
「あらぁ、とても素敵じゃない。花柄で。しかも、もう恥ずかしいところが全部むき出しになってるじゃない」
 雫さんの声はやや大きくなり、軽蔑と愉悦の笑みを浮かべている。
「さて、何が始まるのかしら」
 そう言った雫さんは、候補者を期待と確かな観察眼で見つめるオーディションの審査員のようだった。
「ああぁあ、ううぅっ……」
 祥太は言葉にならぬ声を上げて、雫さんの視線に悶えた。
 雫さんは、祥太の股間にある卑猥と羞恥の塊と彼の顔を見比べながら微笑んでいた。股間だけを眺められるよりも、自分の顔と交互に視られることで、祥太はよりはっきりと、自分が視られていることを感じた。股間のあたりが熱を帯びていく。それはまるで股間を石油ストーブの前で晒しているかのようだった。
(あぁ、すごい視られている。もっと……もっと、視てほしい……!)
「あぁ、そんなに……そんなに視ないでくださいぃ」
 思いとは裏腹な、情けない、しかし、恍惚とした声が祥太から漏れる。
「何言ってるのよ、視てほしくてそんな格好してるんじゃない」
 自分の欲望を言語化された祥太はさらに恍惚を深める。
「ねぇ、これでは公園にいる本物の変態みたいよ」
 本当に公園で見かけた変態を見るように、好奇心と汚いものを見る目が混じったような笑みを浮かべながら、雫さんは満足そうに祥太を視ていた。
「ああぁああ、そんなこと、言わないでください」
 変態という言葉と雫さんのその表情に身体が反応し、祥太は腰をよじらせた。
「しかもそんなにおち×ぽを勃起させて。お汁ももう溢れちゃってるじゃない。裏筋がベトベトよ」
 審査員の観察眼は鋭い。
「さあ、なにを恥ずかしがっているの。視せたくて着て来たんでしょ。それに、下着は異性に見せるモノよ。特にそういった形のものはね。ほら、私をたっぷり誘惑してみなさい」
 審査員からのリクエストに答えるため、祥太は肩に引っかかっていたガウンを足元に落とした。とうとう祥太は、卑猥と羞恥に溢れたその下着姿をすべてさらけ出してしまった。
 祥太は、腰をゆっくりグラインドさせた。ペニスの両脇に手を添え、雫さんの視線がすべて自分の淫肉棒へと向くようにアピールする。
「あらぁ、上手じゃない」
 幼稚園児のお遊戯会を見るような口調で雫さんが褒める。
「そう、腰を動かして。おち×ぽを私に見せつけてごらんなさい。はやくここを虐めてくださいぃってお願いするように動かすのよ」
「ううぅ、早く、僕のおち×ぽを虐めてくださいぃ……)
 祥太は雫さんに言われた通りにお願いしながら腰を動かした。雫さんの視線は祥太のペニスを捉えて離さない。先程から感じていた股間への熱はぬめりを帯び、熱湯ほどに温めたドロドロのローションが股間や腰、そして、尻にまでまとわりついている感覚にまで発展した。
「いいわねぇ。でも、最初に触るのはそっちじゃないでしょ」
「あぁ、ごめんなさい!」
 股間に充満した熱に耐えきれず、祥太はペニスを握ろうとしていたのだ。
 ペニスに向かった祥太の手は、そのまま上に向かい、その人差し指と親指で、花柄のブラジャーの裂けた部分からはみ出た真っ赤な乳首をつまみ始めた。
「ああぁん、あっ……。気持ちいいぃ」
 見られている興奮、女性が目の前にいるにもかかわらず、自分を自分で慰めることしかできないこと、しかもペニスではなく、乳首で感じている自分を視られていることに、祥太は興奮していた。
「あらら、乳首でそんなによがってしまって」
 祥太の反応に雫さんは満足そうな表情を浮かべる。
「最初からこんなだったかしらねぇ。まさかこんなに調教がうまくいくなんて思っていなかったわ。まだ、出会って半年くらいだったわよね」
 ――そう、半年前。こんなことになるなんてまるで想像していなかった。雫さんと出会って、祥太の身体は著しく変わってしまった。

「わたしはね。誰にでもあるその芽を育てるのに長けているの。その芽はどんな男性にもあるけれど、特定のきっかけやノウハウがないと、育たないものよ。私はその芽を成長させて、花を咲かせるお手伝いをするということね」

 初めての雫さんとの会話の中の言葉を祥太は思い出していた。どうやら、自分のその「芽」は、この半年の間に、確実に丁寧に雫さんに育てられ、すっかり花を咲かせてしまったようだ。この芽が成長したことが、祥太にとって良いことなのか悪いことなのかはわからなかったが、とにかく雫さんとの出会いが、祥太にこれまで体験してこなかった快楽を与え、もう元へは戻れない身体になってしまったことは確かだった。

「ご褒美よ」
 そう言いながら、ソファに座っていた雫さんは、斜めに揃えていた足を崩し、膝を大胆に開いた。その瞬間、少し暗めに落としておいた照明がやや明るくなったようだった。
 肉付いた両太腿の内側が露わになり、真っ赤なサテンのパンティが逆三角形のかたちをとって、雫さんの股間にぴったりと弛みなく張り付いていた。その逆三角形の布は、鼠径部の筋よりも鋭角に張り付いていた。その鋭角さは、その布が陰部に深く食い込み張り付いていることを祥太に想像させた。
「ああぁあ、すごい……。もっと見せてください」
 雫さんの股間に釘付けになりながら祥太は懇願した。
「初めて出会ったときにも、こうしてあなたは、私のスカートの中を覗いていたわよね。いやらしい視線が私の股間をドロっと舐め回していたのを覚えているわ」
 すべての始まりはそこからだ。まだ雫さんの名前も知らない頃。あのときは、紫のパンティだった。祥太はそれに捕らえられ、雫さんの領域へと引きずりこまれたのだった。

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