プライベートトレーナー・雫(下)

著者: 須賀万尋

電子版配信日:2025/04/11

電子版定価:880円(税込)

寸止めされたまま、目の前から消えてしまったトレーナー・雫。
数日後、不意に彼女に呼び出された先は、公衆女子トイレだった。
「肉便所」として雫さんの蜜壺も菊門も舐め回す新たな関係性。
脳イキ、ペニバン挿入……マゾ奴隷を思い出させる調教が始まった。
雫さんの知人で純真な綾さんも加わり、エスカレートしていく淫戯。
乳首もアナルもすべて開発され、祥太はマゾヒズムに耽溺し……
〈第31回フランス書院文庫官能大賞・最終選考ノミネート作品〉

目次

再会は公衆トイレで ――便器とウォシュレット――

告白 ――祥太の決意――

祥太の挑戦 ――擬似膣ピストンチャレンジ――

わからせ ――思わぬ来客――

わからせ ――綾の足の下で――

わからせ ――妄想の告白――

わからせ ――オブジェの妄想――

わからせ ――快楽に溺れる脳――

わからせ ――破壊――

満ち足りた朝 ――たどり着いた愛の巣――

わからせ ――快楽の底からの目覚め――

わからせ ――牝の臭い――

わからせ ――御主人様の敗北――

わからせ ――烙印――

月によって潮が満ちて引くように

下巻書き下ろし

本編の一部を立読み

再会は公衆トイレで ――便器とウォシュレット――



 住宅街の外れに、近隣の住人たちの憩いの場となる緑豊かな公園がある。日中、特に、休日ともなれば家族連れやカップルで大いに賑わう。
 しかし、多くの公園がそうであるように、日が暮れて、会社員の帰宅ラッシュが始まる時間帯になれば、その公園も、日中の様子からは想像もできないほどしんと静まり返り、一転して物悲しさと不気味さを漂わせる。
 そんな人の近寄らない夜の公園に、数分前、一人の男が入っていった。
 公園の入り口から木々に囲まれたアスファルトの遊歩道が奥へと延びている。道の両側にぼんやりと街路灯が道を照らしているが、その光は物悲しさを払拭するにはあまりにも心もとなかった。
 その道を進むと広場が見えるが、手前には公衆トイレがある。人出の多い公園だが決して新しくないこの公園は、設備の改修が間に合っていないらしく、トイレのあたりは饐《す》えた臭いが漂っている。
 女性用のトイレは洋式が三つ、和式が一つの合計四つの個室が設置されている。
 そして今、誰もが避ける和式トイレのドアだけが内側から鍵をかけられている。
(あぁ……雫《しずく》さん、早く……早く来てくださいッ……こんなところにいるのを誰かに見られたら……!)
 全裸姿の祥太《しょうた》が、指を咥えながら、主《あるじ》の到着を今か今かと待ち構えていた。女子トイレの陳腐な芳香剤と饐えた臭いに身体が感応し、肉棒が熱く強張っている。

 ※ ※ ※

「あなたはもう私にご奉仕すらできない、ただのお便所《・・・》ね。さようなら」
 雫さんは祥太にそう言い残してホテルを出ていった。射精後の激しい脱力と虚無感に支配されていた祥太は何も言い返せず、雫さんの後ろ姿をただ見送ることしかできなかった。
 繰り返された調教に加え、射精を禁じられ、女装プレイ、肉棒への折檻、剃毛、そして雫さんへの洗体奉仕。異常としか思えない行為が重なり、祥太の崩れかけていた貞操は完全に破壊され、雫さんからはついに人間以下の存在としてしか見られなくなってしまった。
 雫さんにも認められるような男性でありたいと思う気持ちとは裏腹に、彼女と会う度に、惨めな存在へと落とし込まれていった。
 その日から数日後、祥太は雫さんにもう一度会いたいというメッセージを送った。しかし、雫さんからの返信は来なかった。日をおいて何度かメッセージをしてみても、同じく雫さんからの反応はなかった。
 自分の不甲斐なさでいても立ってもいられず、仕事もろくに手がつかない日々が続いた。
 雫さんとはもう会えないのだろうか。そう思うと、心がえぐられるような思いだった。しかし、そんな虚しさにもかかわらず、相変わらず性欲だけは収めることができなかった。雫さんから以前もらった下着で、オナニーをした。射精後は毎回ひどい罪悪感に苛まれ、その度に雫さんの下着を捨てようかと思った。しかし、毎回踏ん切りがつかず、クローゼットの奥にしまった。下着たちに鼻を当てても、雫さんを感じることは難しくなっていた。唯一感じられた雫さんの痕跡も消えかけ、いよいよ雫さんとの繋がりは途絶えようとしていた。

 そんな迷子のような日々をいたずらに過ごしていたある日、唐突に雫さんからメッセージが届いた。
 メッセージはとてもシンプルで、日時と場所を指定したものだった。
 翌日の二〇時。場所は、祥太の家からそう遠くない公園で、祥太も時折休日に散歩をする普通の公園だった。
 慌てて長文のメッセージを返信した。もう雫さんと会えないと思ったこと。連絡も来なくて悲しかったこと。自分の情けなさについての反省。そして、雫さんに会いたいということ。メッセージが来て本当に嬉しかったこと。
 溢れる想いのままに指を動かしたが、送信されたそのメッセージに返信はなかった。

 翌日、会社からの帰り道。自宅の最寄りの駅まで着いたところで、自宅とは反対方向の道を進んだ。雫さん指定の公園へ向かうためである。
 公園での待ち合わせということで、雫さんから何らかの話があるのだろうと予想していた。もしかしたら、雫さんからあらためて、今後は一切会えないという話をされるのかもしれない。いや、もしかしたら、関係を修復するチャンスが――救いの手が、差し伸べられるのかもしれない。そんな不安と淡い期待が入り混じっていた。
 しかし、話がどのようなものになるにせよ、あの見慣れた公園のベンチに座って雫さんと話ができると思うと、心が躍るような気分で、向かう足取りが軽くなった。
 公園に近づくにつれて徐々に街灯も少なくなっていった。薄暗い住宅街を進むと、公園の入り口に雫さんが立っていた。見慣れた風景の中に雫さんが存在することに一瞬目を疑ったが、祥太は急いで雫さんに駆け寄った。
「あら、久しぶりね」
 雫さんが祥太に気づいて、にっこり笑っている。どことなく、惨めなものを見るような視線を雫さんの目から感じた。しかし、久しぶりに拝んだその美しい顔に見とれて、言葉がうまく出てこない。
「……あ……会えて、よかったです」
「うふふ、私も嬉しいわ。さぁ、こっちへいらっしゃい」
 祥太の動揺した様子は気にも留めずに微笑むと、再会の挨拶もそこそこに、雫さんは振り返って、公園の中へ入っていった。ヒールがアスファルトを叩いて、両脇の木々たちが作る暗闇の中に吸い込まれていった。
 通りに沿った街路灯の下にはところどころにベンチが設置されていた。しかし、雫さんはそれには目もくれず公園を奥へと進んでいく。祥太はなんとなく雫さんの横を歩くのが気が引けて、後ろから雫さんの背を、尻を見ながら追いかけた。
 ブラウスを模したベージュのロングワンピース。ハイウエストの位置で装飾としての細いベルトをしているせいで、スタイルの良さが強調されている。プリーツスカートがゆらゆらと揺れ、時折、雫さんの尻を撫でてその形状を浮き立たせた。
 雫さんの香りを辿りながら、祥太も歩を進めた。久しぶりに嗅いだその香りに、祥太の下腹部がもったりと疼いた。
 園内の小道を進むと公衆トイレが見えてきた。雫さんの進む先がトイレであることを察した祥太は足を止めた。しかし、雫さんはそれに気づいて振り返った。
「ほら、ついてきなさいよ」
 微かに釣り上がった雫さんの口角が祥太を誘い、吸い寄せられるように雫さんの後を追った。
 雫さんはトイレの中へと進んでいく。女子トイレの入り口正面は洗面台になっており、その裏に個室が設置されているようだった。さすがの祥太も入り口で立ち止まる。しかし、雫さんの誘惑の声がトイレの奥から響いた。
「ほら、こっちよ」
「でも……ここは、女子トイレですよ……」
 奥にいる雫さんにぎりぎり届くほどの声で祥太が言った。
「えぇ、そうよ。だからどうしたの?」
 表情は見えなかったが、雫さんが悪戯っぽく笑っているのを祥太は感じた。こう言われては雫さんに口答えするだけ無駄なことはよくわかっていた。
 祥太は、意を決して、入り口を跨いだ。
 女子トイレの壁は腰の高さまでピンクのタイルがあしらわれており、その見慣れない色彩が祥太の目に強く焼きついた。そして、芳香剤とそれでは隠しきれない饐えた臭い。祥太は鼻孔を突いたその臭いの中にある、男子トイレのそれとは異なる官能を昂らせる特殊な臭いをあざとくも嗅ぎ分けていた。さらに今は、それらの臭いと雫さん独特の妖艶な甘い香りが絡まり合い、室温を上昇させている。
 自分の足音がやたらと大きく聞こえ、思わずつま先立ちのまま進んだ。膝が震えて、汗が滲んだ。その汗が、女子トイレに入るという禁忌を犯したことによるものなのか、これから始まるなにかに対しての期待なのか、祥太には判断がつかなくなっていた。
「……な……なんなんですか。急に連絡が来たと思ったらこんなところに来て……」
 雫さんは四つの個室の前で、腕を組んで待っていた。強調された大きな胸に一瞬目を奪われたが、その視線を悟られぬように、急いで目を逸らした。
「悪かったわね。なかなか時間が取れなくて。ずっと連絡しようと思っていたのよ」
 ずっと連絡しようと思っていた。その言葉を聞いて、今いる場所を忘れ、祥太の心は温もりに包まれた。
「そうだったんですね! よかったです。もう会えないかと思いましたよ」
「そんなことないわ。私だって会うのを楽しみにしてたんだから」
 祥太は高まった淫欲が後退したように照れ笑いを浮かべた。しかし、雫さんは不敵な笑みを浮かべながら、そんな祥太の様子をしばらく眺めていた。
「それじゃあ、始めましょう」
 そう言って雫さんは、四つの個室のドアを順々に開けて中を確認した。
「……そうね、ここがいいわ。ここに入ってちょうだい」
 雫さんが祥太に入るように促したのは、和式のトイレだった。
「えっ、えっ、ここで何をするんですか!」
 祥太は思わず声を大きくした。
「んふふ、わかってるくせに」
 にっこり笑った雫さんの表情を困惑の目で捉えつつも、祥太は言われた通り、個室の中へ入っていった。祥太の身体の奥底を蠢く淫欲はすでにこれから起こるであろうことを察知していたが、まだ理性がそれを包み隠していた。
「はい、では、そこで今着ているものを全部脱ぎなさい」
「えっ……! ちょっと……ここでですか」
 言い終わらぬうちに、雫さんは祥太が入った個室のドアを外側から締めた。
「ちょっと、何をするんですか。こんなところでまずいですよ」
 祥太は焦りで思わず声を荒らげて雫さんに訴えた。
「そうね、女子トイレに男性が入っているのを見られたらまずいわよね」
「そうですよ! まずいですよ。しかも、全裸だなんて!」
 雫さんの愉快そうな声と祥太の焦る声が室内に響いた。
「わかってるなら、急いで済まさないとね。……ほら、早く脱いじゃいなさいよ」
 雫さんが口答えを許さぬ口調でそう言うと、祥太は思わず口ごもってしまった。
 祥太は下を向いて、自分が身につけているものを確認した。
 ワイシャツにスラックス、革靴。ネクタイは事前に鞄にしまっていた。しばらく、自分の足元を見つめていた祥太は、諦めたように、ワイシャツを脱ぎ、ズボンを脱いだ。
「あっ、あの、全部脱ぐんですか?」
「全部って言ったでしょ?」
「はい! そうですよね……すいません……」
 祥太は観念してパンツを脱いだ。
 困惑しながらも、肉棒はこれから起こることへの期待感から、どうしようもなく腫れ上がり、脱いだパンツには染みを作っていた。
(はぁ、相変わらず、ひどく勃起してしまっている。もう、雫さんと会った瞬間からだけれど……。これを見たら雫さんはなんていうのだろう)
 しかし祥太の唯一の誇りは、雫さんによってなされた剃毛の状態を今もそのまま保持していることだった。これを見て雫さんが喜んでくれることを願った。
「どう、準備できた?」
 祥太にそう訊ねつつも回答する間もなくドアが開けられた。そして、スマートフォンのカメラのシャッター音が響いた。
「ちょっと、やめてくださいよ!」
 革靴と靴下だけを履いた祥太はかろうじて股間を手で隠しながら抗議した。
「あらあら、ピンクのタイルだから女子トイレってわかっちゃうわね。これじゃあ本当に変質者じゃない」
 雫さんは満足そうにスマートフォンを眺めている。
「お願いです、消してくださいよ!」
「いいじゃない。そもそも、出会った日の写真だって撮られちゃってるんだし」
 雫さんは祥太に初めて会った日の写真を見せつけた。コーヒーショップのトイレは精液まみれで、祥太はその中で下半身を丸出しにして虚ろな顔をして佇んでいた。
「やめてください! それも消してください!」
 そう言いながらも、祥太は雫さんと初めて会った日のことを思い返していた。
「あなた、本当にトイレが好きなのねぇ」
 そう言いながら、雫さんもどこか感慨深げに、目を細めてその写真を眺めていた。
 しかし、次の瞬間、ぎろりと祥太の方へ目をやって言った。
「まさかトイレが好きすぎて、自分がお便所になっちゃうなんてね」
 祥太は、雫さんの目の迫力と悪魔的な笑顔に怯んで、思わず尻餅をついて、足を広げて個室の奥の壁にもたれかかった。蛇に睨まれた蛙そのもののようにも思えるが、この蛙は蛇に弄ばれることを望み、性器を醜く膨張させていた。雫さんの一瞬の表情、視線、言葉、声色によって、理性はあっけなく崩落し、前回自分を狂わせた禁じられた淫欲が身体の奥から一気に吹きこぼれた。
 雫さんは、祥太ににじり寄り、祥太と同じ個室に身を入れると、後ろ手でドアをロックした。
「ねぇ、これはあなたが望んだんでしょ? 従順な下僕でもなく、ペットでもなく、自分は雫さんのお便所ですって。だからこうしてここに呼び出したのよ。私のお便所くん。だからさっそく使わせてもらうわね。今、たっぷり溜まってるから」
 雫さんは、自身の下腹部をもったいぶるように擦りながら、悪魔的な笑みを浮かべた。祥太は、その様子を見て、全身に鳥肌を立たせた。
 雫さんは、両手で少しずつ、ベージュのワンピースのスカートをたくし上げていった。ゆっくりと膝が露わになり、肉付きのいい太腿が姿を現す。祥太は、尻餅をついて足を開いたまま、不自然に口をパクパク開けながら、その様子をただただ眺めていた。喉がひどく渇いていた。
 やがて、雫さんのデルタまでスカートがまくられると、そこは薄桃色のレースの布によって隠されていた。しかし、その布は鼠径部よりも内側だけを隠しており、丘の膨らみのみをかろうじて覆っているだけだった。
「今日も暑かったからね。とっても蒸れてしまってるわ」
 雫さんはまくったスカートでその蒸れを乾かすようにそこを仰いだ。スカートが揺らめいて起こす風が祥太の頬をかすめると、男は豚のように鼻で荒く呼吸をしてみせた。
(あぁ、これは雫さんの……雫さんの……おま×この匂い……!)
「なによ、豚みたいに鼻を鳴らして。もっと嗅ぎたいのかしら?」
 雫さんは祥太ににじり寄り、祥太の鼻先まで股間を近づけた。祥太の鼻息は一層荒くなり、目を血走らせて、口角から涎を垂らし始めていた。
「し……雫さん、すごいです……あぁ、早く、早くください!」
 血走った目が上目遣いで雫さんを捉え、祥太のその狂った表情に雫さんは顔をしかめると、その醜い表情へ唾を吐きかけた。祥太の鼻頭と唇に雫さんの唾液がねっとりとへばりついた。
「お便所はお願いなんてしないでしょ」
「あっ! あぁ、そんな!」
 祥太は雫さんの仕打ちを受けながらも、雫さんから目を離さず、口周りについた唾液を舐め取った。
「あぁ、美味しいですぅ。もっとくださいぃ……」
「本当に汚らわしいわ」
 嫌悪感を露わにした表情を浮かべた雫さんは、祥太のだらしない顔に、二度三度涎を吐きかけた。祥太は、頬にねっとりと絡んだ唾液を手で拭うと、その手で肉棒を握り、激しくしごき始めた。
「うぅううぅ、雫さんの唾液オナニー、すぐイッちゃいますうぅぅ!」
「まったく。相変わらずトイレでその臭《くさ》いおち×ぽしごくのが大好きなのね、このお便所は」
 女子トイレで自身のペニスを慰める祥太を雫さんが冷たい視線で見下ろしている。その視線すらも快楽に変える祥太は、身体をくねらせながら、自身の唾液も加えて、オーガズムへ一気に駆け上がっていく。
「はぁん、そんなこと言わないでくださいぃ、もうイッちゃいますぅ」
「勝手にイキなさいよ。もうお便所は勝手にすればいいわ」
 雫さんは冷静にそう言うと、オーガズムを促すように、涎を祥太の肉棒に吐きかけた。
「あぁ、すごい雫さんの唾がいっぱい! あぁ、でも我慢しますうぅぅぅ」
 祥太はそう言って、早くも絶頂を迎えかけて赤黒く光り血管を浮き立たせた肉棒から手を離した。
「そう? まぁ勝手にしなさい。それじゃあ、私は我慢できないからするわね」
 雫さんはパンティのクロッチ部分をずらし、祥太の開いた口をめがけて、黄金の小便を勢いよく注いだ。
「ごぼぼぼぼ、げほっ! ごぼぼ」
 来る前に紅茶を飲んだのであろう。雫さんの尿は尿としての臭いを発しつつも、紅茶のフレグランスを感じさせた。
 口で受け止めきれなかった熱い小便が首を伝って身体へと流れた。そして、さらに雫さんの長い小便は、角度を変えて祥太の肉棒に当てられた。
「あぁ、雫さんのおしっこ、温かいですぅううううう」
 祥太は尿が注がれる肉棒を掴み、また激しくそれをしごき始めた。
「あっ、あっ、雫さん、イッていいですか? あっ、だめ、イキますっ! イグッ!」
 黄金のシャワーが降り注いだ肉棒からあっけなく、しかし、大量の精液が迸った。
「あぁあぁ、ほんとだらしない。何が我慢しますぅ、よ。もうイッちゃったじゃない」
 雫さんは眉間にシワを寄せて不快感を露わにしている。
 勢いが弱まった雫さんの小便は、祥太の腹や胸、床にへばりついた精液と混ざり合った。
「ご……ごめんなさい」
 射精後の虚脱感が押し寄せる祥太は、一転して申し訳なさそうに謝罪した。
(久しぶりに会ったのに、こんなにあっけなく……しかもこんなところで)
 祥太を後悔の念が支配していった。
「いいのよ、気にしないで。お便所に射精我慢は求めてないから」
 クールな表情でそう言うと、雫さんはトイレットペーパーで尿が途切れた自身の股間を拭い、祥太の目の前にそれを放った。
「じゃあ、あと、最後にウォッシュレット、お願いできるかしら。ただし、ビデじゃなくて、お尻の方をきれいにしてほしいのだけれど」
 祥太の状態など全く気にもとめず、雫さんは祥太に尻を向けると、パンティを少しずり下ろし、ふたつの桃肉の割れ目を両手で広げ、肛門を露わにした。陰部はしっかり、パンティによって隠されている。
「えっ、雫さんの……お尻を……えっ、えっ……!」
「ほら、きれいに舐めてちょうだいね。ただし、お尻の穴以外の部分を舐めたら……いいわね?」
 雫さんは、あくまで冷静に事務的に祥太に指示を下した。
「……はい、わかりました」
 祥太は、恐る恐る舌先を伸ばしながら、雫さんの尻に顔を近づけた。
(あぁ、すごい! 雫さんのケツ穴を舐めれるなんてッ! 便所も捨てたもんじゃないな!)
 射精後の虚無が訪れていた祥太だったが、雫さんの尻を目の前にした瞬間、再び淫欲が祥太の身体と心を支配した。
 舌先がシワの集まる中央に収まる。甘みととろみを舌先で感じた瞬間、祥太の脳がとろりと蕩けた。
 その甘みを求める舌先は、上下に蠢きながら奥へ奥へと尻穴をほじろうとする。雫さんのアヌスはその動きを時に受け入れて舌を奥へ進めさせてやり、また時に括約筋でもって舌を外へ強く押し出した。繰り返される舌の抽挿で、雫さんのアナルは祥太の涎でぐっしょりと滑《ぬめ》った。
 祥太は再び腫れ上がった肉棒を握りしごき、もう片方の手で自身のアヌスを、雫さんの尻を舐める自身の舌と同じように撫で回した。
「そうよ、意外と上手じゃない。やっぱり、あなたは便器がお似合いみたいね。ありがとう」
 雫さんはそう言って、祥太の顔から尻を離し、トイレットペーパーでアヌスを拭うと、パンツを穿き直して、スカートを元に戻した。そして、興奮状態のまま、行為を中断されて困惑する祥太を見下ろした。
「じゃあ、さようなら。とってもスッキリしたわ。またしたくなったら連絡するわね」
 最後ににっこり屈託のない笑顔を作ると、雫さんはドアを開けて、ヒールの音を響かせながら、トイレから出ていった。
「ちょっ……! ちょっと待ってくださいよ!」
 雫さんの後を追いたかったが、それを許されぬ格好をしている祥太は、そこを動くことができなかった。
 足音もやがて聞こえなくなり、静けさだけが残った。公園の入り口の方で派手なエンジン音とクラクションの音が響いて、やがてそれも遠ざかっていった。
(雫さんは帰ってしまった……。仕方ない。僕も帰ろう)
 そう思い、立ち上がり、服を着るために、ひとまず開け放たれたドアを閉じ、鍵を閉めた。鍵の音が、ガチャリとなった後で、個室を振り返ると、行き場を失った淫欲が体の中を激しく蠢いていることに気づいた。
(ここは、女子トイレか……)
 祥太はしばらく佇んだ後で、おもむろに和式の便器に跨ると、両乳首を両手の人差し指と親指で摘んだ。祥太の女子トイレでの淫行はまだ始まったばかりであった。
 その後祥太は、女子トイレで自慰行為に耽ってしまう女子高生になりきり、乳首とアナルを深く激しく慰めた。自室では感じたことのない深いアナルでのオーガズムに達した後で、今度は、生えてきてしまったペニスを友達にバレないように仕方なく(しかし、実はペニスの快楽に夢中になってる)オナニーをしてしまう女子高生になりきり、激しく射精した。

 ※ ※ ※

 祥太と雫さんとの新しい関係はこのようにして始まった。
 雫さんはほぼ週二回のペースで祥太を「便所」として扱った。最初こそ公園の入り口で待ち合わせをしたものの、その後は、祥太が鍵をかけずに、扉を閉めて全裸で待機するように命じられた。
 行われることは毎回変わらなかった。祥太は雫さんに小便をかけられ、アナルを舐めさせられた。変わったのは体勢だけだった。時に四つん這いで背中に受けたこともあれば、仰向けに寝転んだ顔の上からかけてもらえることもあった。
 祥太がそのときに射精するかどうかは特に決められてはいなかった。しかし、毎回射精し、そして、雫さんが去った後でもやはり、罪深い自慰を抑制することはできなかった。
 この夜の公園での禁じられた淫行を他方ではめいっぱい愉しんでいる祥太であったが、トイレを後にするときには、次こそは雫さんにこれ以上の関係を求めようと考えていた。その気持ちは回を重ねるごとに強くなったが、しかし、毎回、目の前の快楽に心を奪われて、ただただ「便所」を全うすることになった。
 夏が終わろうとしていた。夜の公園で全裸で待機するには、肌寒い季節になろうとしていた。

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