放課後インスタントセックス 4
第四話 磯の白砂
南川は小学五年生まで、青森の田舎で育ったという。そこには父方の祖父祖母が住んでいて、一緒に暮らしていた。
「小学六年生のときに、こっちに引っ越してきたんだけど……ここも東京に比べたら田舎だけどさ、でも、引っ越してきた当初は、うちにとっては大都会って感じで」
東方公園に到着していた。なんとなく二人で歩いて、事務所までやってきた。もちろん公園の事務所は閉まっている。
「方言もすごいあって……それで、ちょっとイジメみたいのもあったんだけど」
昨日、セックスをした外階段の途中で南川が腰をおろした。僕はすこしあいだをあけて南川の隣にすわる。買った飲み物を渡すと、ちいさな声であんがと、と言ってから南川が話をつづけた。
「必死で、標準語にしてさ……中学生になってからイジメはなくなったけど、まあ、なんていうか劣等感がすごくて、あんま友達もできなかった」
「……知らなかった」
「華麗なる学園デビューをしたわけ……恵万学園でうちのこと知ってるの小夜くらいだったから、できたことだけど」
二見小夜と南川は同じクラスだが学園で話したところを見たことがない。だが、二人のあいだには他人が知らない繋がりがあるわけだ。
「まあ、田舎出身っていうのがすごくイヤでさ……それで、おばあちゃんともなんとなく疎遠になっちゃって」
「南川はおばあちゃん子だったのか?」
「……生粋のね」
なにかを思い出したのか、南川は優しい笑顔をした。
「もう何年も会ってないんだよね……危ないっていうのは知ってたんだけど、昼間に親から電話があってさ。いよいよだって言うから」
それでいつもより覇気がなかったわけだ。
「うち、おばあちゃんとは喧嘩したままなんだよね……中学生のときにさ、青森に行ったんだけど、そのときおばあちゃんが手編みのセーター編んでくれてて、それがあまりにもダサくて」
「…………」
「こんなもの着られないよ! って、当時、いろいろうまくいってなかったし、怒っちゃって……いまになって、すっごい後悔している」
「…………」
僕は顔を上にむけた。
「本当に僕にまったく関係ない話だった……」
「でしょ? まあ、ちょっと感傷的になって、石野の家に来たのは謝るよ」
「謝る必要はまったくないけど……気軽に一人暮らししてるんだから、いつでも来ればいい」
「……どうせ、石野の場合は体が目的でしょ?」
それには僕は答えなかった。体は目的というよりも手段だと言ったほうがしっくりくる。南川のことは本当によく知らない。明るく元気で、クラスの人気者。僕のような日陰者とは青春を謳歌している度合いが違う。だからこそ、僕は南川を知りたい。
「行くか……」
僕は立ちあがった。
そうだね、とうなずいて南川も立ちあがる。
「ちょっと、寒くなってきたし……」
「青森はもっと寒いだろうな」
「ん?」
南川が首をかしげて、幼さを感じるきょとんとした目で僕を見つめていた。
鼻をすすると、僕は南川から視線を外して言った。
「行くんだよ……青森に……」
「ちょ、ちょっと、え? どういうこと?」
「明日の朝一、新幹線にのって、おばあちゃんのとこへ行くぞ」
「待って! え? そんなお金ないよ!」
南川を青森に連れていく。それが風香さんの言う青春になるかわからないが、このままどこか元気のない南川を放ってはおけない。
「僕が貸す……まあ、僕の金ではないけど」
「そんな、ダメだよ! できないって!」
きっといつか時間が解決してくれる。そのことを僕は身をもって知っていた。でも、ずっと心のどこかにしこりを残してしまうことも知っている。
「僕は……お父さんが病気で入院したとき一緒にいなかった」
「え?」
僕の両親が他界していることは、さっき風香さんのことを話すときに南川に伝えている。
歩き出す。今度は僕が話す番だった。
「……喧嘩したんだ。本当にくだらないことで」
「…………」
「録画予約しておいてもらうはずだったアニメを、お父さんがし忘れて……それで僕はお父さんと口をきかなかった。そのあとすぐに、お父さんが倒れて」
「……会いに行かなかったの?」
僕の横に並ぶと、南川が掠れた声できいてきた。
「会ったよ……数日後に。風香さんが一緒に行ってくれた」
だけど、僕は不機嫌だった。アニメの録画予約をしてくれなかったことに腹が立ったわけではない。言いようのない、なにか漠然とした不安を怒りでしか表現できなかった。
「お父さん、何日かぶりに会った僕の顔を見て言ったんだ……『ごめんな、楽しみにしてたのに』って」
「…………」
「あんときの、本当にすまなそうなお父さんの顔を忘れられない」
その後、会話はするようになった。しかし、僕はずっと不機嫌だった。父が死ぬことは、わかっていた。もうすこし時間があれば、笑って最後の会話もできたかもしれないけど、そのときはあまりにも早く訪れてしまった。僕は未熟で、男手ひとつで育ててくれた父に感謝も言えなかった。最後の最後に、手を握った状態で見送れたことが唯一の救いでもある。
「どうしたって、後悔はするもんだ……ああしておけばよかった、こうしておけばよかったって……だけど、それはあとでわかることだ」
「……うん」
僕が言わんとしていることを南川は理解してくれたらしい。
「でも、いますでに後悔するってわかっていることは……どうにかできるかもしれない」
目にいっぱいの涙を溜めて、南川が唇を強く閉じるとうなずいた。
「あんがと」
きこえるかきこえないか程度の声で南川が言った。
僕たちは、部屋まで手を繋いでもどった。
調べたら、南川のおばあちゃんの住む場所は、電車で六時間以上かかる場所だった。
まず新幹線が出ている駅まで、県をまたいで三〇分ほどかかる。そこから新幹線に乗り、新青森駅へ行く。新青森駅から二度乗り換えて、終点が南川のおばあちゃんの家からの最寄り駅だった。しかも、その後、バスに乗らなくてはいけない。バスでちかくまで行けるのはいいが、タイミングが合わないと、一時間以上待つことになる。
「……まあ、行ってみてだな。タクシーでもいいだろうし」
「タクシーもあんまないよ」
いま、僕と南川は新幹線に乗っていた。さすがにゴールデンウィークの二日目で、ほとんどの席が埋まっている。だが、幸いにも朝一の新幹線だったためか、僕と南川は隣同士にすわれた。
「到着は、早くて一時ごろだね……」
言いながら、南川が欠伸を噛み殺した。昨日、南川は僕の部屋に泊まったが、朝に一度自分の家に帰っている。荷物を準備し、僕とは駅で待ち合わせていた。
天気はよかった。窓の外を流れる景色が、さまざまな顔を見せてくれる。
こんなに遠出をするのはいつぶりだろうか。
会話は弾むはずがなかった。南川は、いまむかっている故郷を想っているに違いない。よい記憶も、悪い記憶も、思い出すには十分な時間がある。
僕は腕を組んで、目をつむった。まだ新青森駅までは二時間くらいかかる。寝不足なままでいる必要もない。
新青森駅についたあと、二度の乗り換えをし、やっと終点の駅についたときは太陽が中天をすぎていた。空は青々と透き通っているが、やはり肌寒かった。
「……バスは?」
「ああ、一五分くらいで来るっぽい」
僕の質問に、バス停へと走って時刻表を確認していた南川が言った。
「そうか」
「石野も一緒に来ればいいじゃん」
すでに何度も話し合っていたことだ。僕は、南川のおばあちゃんの家までは行かない。
「どっか観光して、帰るよ」
「観光なら、おばあちゃんと会ったあと、うちとすればいいじゃん……」
「何泊かするつもりなんだろ?」
「そうだけど……ここまで来てただ帰るなんて」
申し訳なさそうに南川が顔を伏せた。
僕は努めて明るく答えた。
「だから観光して帰るって」
「だから、それなら、うちとすればいいじゃん!」
「なぜだ?」
わざとらしく僕は首をかしげる。
「どうして、せっかくの旅を誰かとしなきゃいけないんだ? そんなの旅じゃない」
「一人旅だけが旅だと思っているなんて、なんかかわいそう……で、うちと別れたあとは、どうするの?」
「リアス式海岸でも見に行くよ」
「……それ、隣の県だけど?」
南川が眉根をよせた。どうやら気持ちはだいぶ吹っ切れたようで冗談も言い合える。
バスはほどなくしてやってきた。
南川を乗せて走っていくバスを見送ると、僕は踵を返す。リアス式海岸は見に行かないが、海には行くつもりだった。電車を乗り継ぎ、海が見える駅に降り立った。
運よく砂浜も見つけ、靴を脱ぐと、あてもなく歩いた。
潮風が気持ちよかった。
人もいない。雲が群れて、空を流れている。
ふと面白そうなお店を見つけて、扉をあけた。客はいなかったが、店員はいた。時間を潰すにはちょうどよさそうだった。
>無事に、謝ることできた
>これ、うちのおばあちゃん
と、南川から連絡が来たのは夕方だった。僕はすでに帰りの新幹線の中だった。一緒に送られてきた写真を見て、思わずつぶやいてしまった。
「本当に、ダサいセーターだな……」
満面の笑みでおばあちゃんと写っている南川は、美少女が台無しの、サツマイモ色のセーターを着ていた。
ゴールデンウィーク最終日に、南川から電話があった。
『でね、なんか元気っぽくて、まだまだ生きるっぽいんだよねぇ』
今日、家に帰ってきたらしい。僕は参考書を閉じながら、南川の話に耳を傾ける。おばあちゃんは、危機を乗り越えたらしい。家族や親せきが心配したような事態にはならず、回復の兆しすらあるという。急な孫の訪問で元気になったのかもしれなかった。
『石野の話をしたら、連れてくればよかったのにって言ってたよ。あ、そうだ、お土産があるんだった……ねえ、そっち行ってもいい』
「いまからか? 明日、学園で会えるんだからいいだろ」
『だからだよ、石野の家からのが学園、ちかいじゃん』
来たら、そのまま泊まる気らしい。南川の親はどんな親なのだろうか。今日も僕の部屋に泊まるとなると、ゴールデンウィーク中、南川はまったく家にいなかったことになる。途中の数日は祖母の家にいたのだが、それにしても放任主義がすぎないか。
僕は電話を切ると、南川を迎えに行くために着替えた。
「石野、久しぶり!」
駅に迎えに来ていた僕に走りよる南川は、すこし日に焼けていた。紺色のパーカーにホットパンツという、ちょっと近所のコンビニにといった感じの格好だ。
「これ、お土産……」
歩き出してすぐに、南川が渡してきたのはカップ麺のようなものが入ったビニール袋だった。袋の中を覗くと、「せんべい汁」と表記がある。麺じゃなかった。カップ汁だ。
「僕も、これ……」
言って、僕はポケットから用意していたものを渡した。白いちいさな巻貝に細い鎖を通したネックレス。砂浜のちかくにあったお店で手に入れたものだった。
「は? なにこれ?」
思わぬプレゼントに南川が怪訝な表情を見せる。
僕は淡々と答えた。
「海を見に行ったんだけど、そこでつくれるお店を見つけて……」
「へ、へえ」
おっかなびっくり、南川が僕からネックレスを受けとる。
「こ、これって、石野の手作りってことだよね……」
「重いとか思うなよ? せっかくつくったのに、あげる人がいないからあげるだけだ」
「そ、そう……」
戸惑いを隠せない面持ちでネックレスを見つめる南川。
「風香さんにあげれば?」
「あの人に、そんな安っぽいネックレスは似合わない」
「ちょ、それどういう意味!?」
声をあげると、南川が僕へと肩をぶつけてきた。怒ったかと思ったが違った。南川は僕に肩をぶつけると、そのまま腕を絡めてきた。
「……な、なんだよ?」
今度は僕が戸惑う番だった。
ネックレスをポケットにしまうと、すこし頬を赤らめた南川が言った。
「黙って歩いて……気まぐれでこうしてるだけだから……」
部屋につくと同時に、南川が飛びついてきた。僕はそれを素直に受け止め、唇を重ねた。目をつむった南川の口から甘い吐息が漏れる。
「ふ……んっ……ちゅっ、んちゅぅ」
キスは唇が触れ合った瞬間から激しく、濃密なものになった。キスしたまま靴を脱いで、僕たちは部屋へと入った。
「やばっ、けっこう溜まってるんだ、うち……」
そんなことを言い、南川が先に洗面所へと入った。すぐに手を洗った南川が洗面所から出てきた。その首には先ほどあげたばかりのネックレスが装着されていた。
「……似合うよ」
「言わないでいい」
顔を真っ赤にした南川が僕の脇を通ってベッドに飛びこんだ。
僕もさっさと手を洗い、部屋へともどる。
「あのさ……」
「ん?」
すぐにでもセックスをすると思っていた僕は、ベッドのすぐ手前で足を止めた。ベッドで横になった南川が首にかかった貝殻をいじりながら僕を見あげた。
「……あんがとね、ほんと」
「ああ、いいよ。つくるの簡単だったし」
「違くて」
南川が貝殻をいじったまま言った。
「いや、これもありがとうだけど……そうじゃなくてさ、一緒に青森まで行ってくれて」
「……いい観光になったから」
「茶化さないできいてよぉ」
頬を膨らませると、南川が目に涙を溜めた。
僕はうなずいた。
「うち、あのままだったら、絶対に後悔してたと思う……だから、おばあちゃんに会いに行ってよかった。でも、一人だったら絶対に行けてなかった」
「…………」
「もちろん、おばあちゃんに長生きしてほしいけど……でも、いずれお別れがくるわけだから……それまでに後悔しそうなことはひとつずつなくしていきたい」
「…………」
僕はベッドの端にすわると、南川の手を握った。
軽く握り返して南川がさらに言う。
「……石野がいてよかったよ」
「そうか。じゃあ、僕からもいいか?」
「なに?」
眉をひそめると、南川が首をかしげた。
「もう茶化してもいいか?」
「え? あ……うん。真剣な話は、これでおしまい」
すこし照れたように南川が微笑んで、僕から手を離す。
「南川、僕たちこれで友達か?」
その質問に、すこし考えてから南川が首をふった。
「まだだね……うちの友達になるには、イケてなさすぎ」
「なかなか厳しい基準があるんだな……」
僕は、言いながらベッドにのった。南川へとちかづき、脇腹を手のひらで撫でた。くすぐったそうに南川が体をよじる。
「だって、友達って面倒だもん……石野とは、いまのまんまがいい」
どこか甘えた声音。
「でも、まあ、今日くらいは友達になってあげてもいいけど……」
南川が僕にむかって両手をひろげた。
「友達は、こんなことしないぞ?」
「いいから……うち、もう我慢できない」
僕は、両手をひろげる南川へと体を重ねた。唇を唇に押しつけ、舌を舌に絡めた。唾液を交換して、鼻で息をする。
「んっ、ちゅぅ……はぷぅ、んちゅぅぅ……」
長いキス。すぐに挿入をしてしまっていた最近のセックスとは違う、ひとつひとつステップを踏んでいくような交わり。数日会っていなかっただけだ。会いたいと思っていたわけではない。しかし、実際に会ってみると南川を求めている僕がいた。
「これ、脱ぐ……」
唇を離すと、南川が焦れたようにパーカーを脱いだ。黒いキャミソールも脱ぐと、ブラジャー姿になった。白いブラジャーが、ほどよい大きさの胸を包みこんでいる。
僕は黙って、自分の服を脱ぐと、南川を抱きしめた。肌と肌が触れて、体温を直接感じる。きめ細かい南川の肌に、全身が震える思いがした。
「挿れる? それとも舐める?」
耳元で南川が囁く。
どちらも魅力的な誘いだったが、僕は言った。
「僕が、舐める……」
「それは……」
南川は舐められるのが苦手だ。手でされるのは嫌いではないが、僕が舐めようとするといつも怒る。なんでも、感じすぎてすぐにイッてしまうからイヤだという。
「……まあ、いいか。ちょっと待ってね」
と、南川は露出した谷間へと手をやって、大きく息を吐く。そして僕を見つめて笑った。
「よし、いいよ」
「なんで、そんな覚悟がいるんだよ? 何度か舐めたことあるだろ」
「そうだけど……ほんと、すぐイっちゃうから……足腰立たなくなったらどうしようって」
「そこまでか?」
僕は南川のホットパンツを脱がし、ショーツも脱がすと、足と足のあいだに顔を埋めた。すでに濡れまくっている秘部を、とりあえず舐めてみる。
「んんんんんあぁッッ、あッッ、んんんッ」
足を閉じて、僕の顔を挟むと南川は体を震わせた。顔を天井にむけ目を大きく見開いている。
「マジ?」
僕がきくと、苦笑いする南川。
「マジ」
「すごいな、ここまでだったか……」
「いや、久しぶりだからだよ? だから、ほんと優しくッッ――んんんあッ、ああッッ」
南川が話している途中で、僕はふたたび股へとうずめていた。膣口の周りを舐め、刺激を与えすぎないように工夫する。たらたらと垂れてくる愛液を舌ですくいながら徐々に攻めを強くしていった。
「くふッ……んんあッ、やばい、やばいッ、マジでッ。んんんッ、またイクッッ――」
あまり激しくしていないのに、南川は何度も果てた。
だんだん体がイクことに慣れていき、体を震わせながらも南川の足が大きくひらいていく。だらしなく僕を受け入れ、ぺろぺろと股を舐められる。
「あああッッ、んんッ、ああッ。すごッッ、んんあッ、気持ちッッ」
腰をベッドの上で跳ねさせながら、南川は快感に溺れていった。僕の頭を掴み、自分の股へと押しつける。呼吸もままならないが、僕は夢中で南川の芯を舐めた。
「あああああッ、んんッ、マジッッ、ああんッ。気持ちいぃ、あああんッ、んッッ――」
狂ったように声をあげ、南川が自分でブラジャーをめくりあげた。張りのあるふたつの毬が露出した。桃色の乳首が完全に勃起してピンと尖った状態で鎮座している。
「挿れるなら、もう挿れよう? じゃないと、うち、気、失う」
南川が僕の頭を手で押した。まばたきを繰り返し、焦点をどうにか僕へと合わせた南川は、胸元まで真っ赤で、うっすら汗をかいている。
「石野、口がびしょびしょだよ……」
荒い呼吸をしながら、南川が手を伸ばしてティッシュをとってくれた。ありがたく頂戴すると、僕は口を拭った。そして、ベッドで膝立ちになってズボンを脱ぐ。
「……何回、する?」
挿入する前に確認するあたり、南川に余裕がない証拠だ。僕はパンツも脱ぎ、勃起した肉棒を露出させた。
「気が済むまで」
「こりゃ、明日は欠席だな……」
そんな弱音を吐く南川の足をひらかせると、僕は腰を進めた。挿入する直前に言う。
「そしたら、明日も一日中セックスをすればいい……」
「石野って、頭がいいんだか悪いんだかわかんないよね……んんあぁッッ、ちょっと、いきなりッッ――」
僕は南川の膣へと肉棒を挿入すると同時に腰を激しくうごかしていた。
いま何時だろうか。
交代でシャワーを浴びたあと電気を消してしまった。そのため、壁にかけた時計の針は見えない。スマホもベッドから離れた机に二台とも置かれ、時間の感覚は消え失せた。カーテンのすき間から入る夜の外光が、僕と南川の輪郭をわずかに浮びあがらせる。
「はッ、あッ……んぁ。あんッ、んあッ、石野ッ」
ベッドの上で、すわったままむかい合い、結合してからけっこうな時間が経っている。ぎしぎし、とベッドが軋む音と、南川の喘ぎ声、そして結合部からきこえる潮騒。一度の射精を経ている僕は、長いこと南川の膣を楽しむことができた。
「んんんんあッ、あッ、イクッッ、すごいッ、また、イクッッ――」
南川が何度目かの気をやった。定期的にやってくる絶頂に、いちいち新鮮に体が反応しているようで、都度、狂おしいほどに膣壁が肉棒を締めつける。
「はぁッ、ぐッ……ん、あッ、やッあッ、あッ」
防音の部屋をいいことに、こんな夜中でも南川の喘ぎ声は遠慮がない。僕が下から押しあげているのか、南川が上から打ちつけているのか。ぴたりと重なった二人の体が、ベッドの上でひとつの塊となって弾む。
僕は上に重なった南川を押し倒し、ベッドに仰向けにさせた。
「ああんッッ……」
肉棒が膣から抜けて、いまがまだ初夏であることを思い出す。日が落ち、涼しくなった空気が、露出した肉棒を冷やし、すこし心細くさせた。早く、南川とひとつにならないといけない。焦がれる気持ちを素直に声にのせて言う。
「南川」
「ん……きて」
意図は通じ、南川が足を大きくひろげる。そのあいだに僕は体を滑りこませた。手を使うことなく、肉棒がしっかり南川の入り口を見つけ、潜りこんだ。
「んなッ……あッッ」
挿入しただけで、南川が体を震わせる。イキ癖がついてしまった同級生の体を前に、僕は自分の性を爆発させていた。
「もっと、石野のッ、石野ッ。石野がしたいように、んんんんんッ。好きにしてッッ」
南川も本能に逆らわず、雄を求めていた。
ゆれる南川の双丘を、僕は両手で押さえこむ。人差し指で乳首を弾きながら、腰を激しく打ちつけた。支配欲が満たされていく。いま僕の背中に爪を立てて感じているのは、学園一の美少女と言って差し支えない南川、南川雫だ。学園で会話をすることはなくとも、こうして部屋で二人きりになれば、僕の下敷きになり、僕だけの女になる。
「あッ、あッ……気持ちいぃ……んあッ、ああッ。んぅんッ、あッ」
結合部から液体がとめどなく流れ出る。じんわりと汗をかいた肌と肌をできるだけ密着させて、ひとつの生き物となり律動する。
「ふッ、あ……石野ッ、ん、うしろから、して……」
甘えたような声を発しながら、南川がベッドの上で体を反転させた。膝を立て、四つん這いになると、尻を僕のほうへと突き出す。暗い中でも、南川の秘部は光を放っているようだった。
膣口はひらき、肉棒の再訪を心待ちにしている。大好物を前にした獣の口元のように、透明な液体が膣口の周りで照っていた。左右に割れた肉びらは、まさに唇。鮮やかな桃色の口紅をひいたように艶めかしい。
肉棒を秘部にあてがうと、ぱくりと咥えるようにして、肉びらが吸いついてくる。
「んッ……奥まで……突いて」
ぐぐぐ、と肉棒を押しこむと、亀頭がざらざらとした膣壁に包まれる。男を快感の坩堝に追いやるためだけの器官となり、容赦なく、射精を誘ってくる。
「あッ、あぁッ」
腰をふると、南川が待ってましたとばかりに嬌声をあげた。探し求めてきた欠けた部位を、僕の肉棒が満たしているかのようだ。
南川の腰を掴むと、僕は一所懸命に腰をふった。ふっくらとした南川の尻と、僕の太ももがぶつかり、手拍子のような音が響く。ぱん、ぱん、ぱん。乱暴とも思えるピストンにも、南川はひるむことなく、それどころか、さらに興奮を高めている。
「はぁぁッッ、あッんッ……いッ、うんッ……激しいッ、すごッ、頭までくるッ、んんッ、もっといいよ、激しくしてッ」
規則正しいリズムで腰を打ちつけ、射精感を高めていった。
「んッ、南川、いきそうッ……」
「中にする? 口にする? ああッ……うち、どっちでもいいッッ――」
「あ……出るッ」
僕が肉棒を引き抜くと、南川が素早くしゃがみこんだ。くるりとベッドの上で体を回転させて、僕のほうをむく。口を大きくひらくと、舌をわずかに出して、肉棒の前へと差し出した。どびゅっりゅ、どびゅ。濃厚な白濁液が、放出され、南川の口内へと飛びこんだ。それを機に、南川は肉棒を咥え、頬を窄めて空気を吸いこんだ。
「ちゅぅ」
一滴も逃すつもりのない吸引。南川の頬が凹む。射精が終わったあとも、尿道を空にするまで、南川の吸引はつづいた。ちゅぽん、とやっと口から肉棒を出したときには、白い液体はすべて南川の口の中だった。
「……苦い」
一言、そう告げてから、南川が喉を鳴らして精液を飲みこんだ。躊躇いのないその挙動に興奮もさることながら、なにか白い光に包まれるような幸福感に満たされる。もっとしたい、南川と。そう思ったときには、すでに南川を押し倒していた。
「え、休憩とかなし?」
「なし」
「……先生、南川雫は、明日の授業を欠席することが決定しました」
その後も、南川は何度も果てた。僕も二度は射精した。気絶するように眠る直前に見たカーテンのすき間から見える外の世界は、白くなりはじめていた。
(次回更新 12月31日(火))