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疎遠になっていた幼馴染(彼氏あり)をセフレにしてみた 【佐倉花恋&九条水紀編】 3

幕間 佐倉花恋①

 

「――花恋? おい、聞いてるか、花恋?」
「……え?」
 何もない空中をぼーっと見つめていた花恋は、不意に肩を揺さぶられて我に返る。声のしてきた方を向くと、そこには心配そうに花恋を見つめる九条真の姿があった。
 時刻は昼休み。二人はサッカー部の部室で密かな逢瀬を楽しんでいるところだった。
 一口に部室といっても、二人がいるのは扉に「男子禁制!」の張り紙が張られたマネージャー用の控え室である。現在、サッカー部に三年のマネージャーはおらず、部屋の鍵は唯一の二年生マネージャーである花恋が管理していた。
 花恋は今の状況を思い出すと、あわてて恋人に謝る。
「あ、真くん、ごめんなさい――えっと、なんだっけ?」
「今度の月曜日あいてるかって聞いたんだけど……大丈夫か? ここのところ調子が悪そうだし、朝練に来るのもけっこうぎりぎりだよな?」
 心配そうに尋ねてくる九条の顔を見て、花恋の顔がわずかに強張る。だが、九条がそれと気づくより早く、花恋はとりつくろった笑みを浮かべて本心を覆い隠した。
「心配かけてごめんなさい。このところ、朝すごい眠くてなかなか起きられないの。春眠あかつきをおぼえず、かな?」
「もう春って季節じゃないだろ」
 六月のカレンダーを指さして笑う九条に、花恋も愛想笑いを返す。
 九条は気を取り直したように言った。
「まあ体調が悪いってわけじゃないなら良かったよ。それで、月曜日の予定はどうなってる? 空いてるなら俺の家で遊ぼうぜ」
 サッカー部は土曜日、日曜日も練習試合や公式大会があって部活は休みにならない。
 そのかわり月曜日は完全オフになっている。平日なので共働きの両親も家にいない。そのため、九条はもっぱらこの日を花恋とのデートに当てていた。
 花恋も当然そのことを心得ている。映画やカラオケではなく「家で遊びたい」と九条が言い出したとき、それはセックスの誘いであることも、だ。
 以前はセックスするにしても、外でデートしてから九条の家へ行っていたのだが、最近ははじめから家に誘われることが増えている。
 それが意味することを考えつつ、花恋は申し訳なさそうにかぶりを振った。
「ごめんなさい。次の月曜日はお母さんと出かける予定があるの」
「うあ、マジかー。せっかくの休みなのに」
「ほんとにごめんね」
 花恋が再度謝ると、九条は何かを思いついたようにグッと花恋に顔を寄せてきた。
 伸ばされた右手が、制服越しに花恋の豊かな胸に押し当てられる。
 いきなりの刺激に花恋が「んっ」と声をあげると、九条は興奮したように鼻息を荒くしながら言った。
「用事があるなら仕方ないさ。ただ、そのかわりってわけじゃないけど、今から胸で……いいか?」
「……うん」
 パイズリを求められた花恋は、わずかにためらってからうなずいた。
 今しがた体調を気づかってくれたばかりなのに、すぐ奉仕を要求してくる恋人に少しだけ不満をおぼえたが、花恋は花恋で恋人に嘘をついている。
 月曜日の約束の相手は母親ではなく春日なのだ。そのことが罪悪感となり、花恋は素直に九条の欲望を受けいれた。
 ブレザーを脱ぎ、ワイシャツのボタンを外し、パステルグリーンのブラに包まれた双丘をあらわにする花恋。
 重量のある乳房を支えている下着が窮屈そうに揺れている。花恋は恥ずかしそうに頬を染めると、背中に手をまわしてブラのホックを外そうとした。
 だが、九条は待ちきれないとばかりに乱暴にブラを押し上げると、まろび出てきたおっぱいを両手でわしづかみにする。そして、そのまま力を込めて生乳を揉みはじめた。
 乱暴な愛撫を受けた花恋の口から小さなうめきが漏れる。
「く……っ」
「ブラ、邪魔だから早くはずしてくれよ」
「う、うん……」
 お気に入りの下着を邪魔呼ばわりされ、花恋はかすかに悲しそうな顔をする。九条はそれに気づかず、胸の谷間に顔を埋めて満足そうに息を吐いていた。
 そんな九条の後頭部をぼんやりと見下ろしながら、花恋はふと思う。
(春日くんはいつも下着の感想を言ってくれるんだよね……)
 二日前に花恋をクンニで派手に絶頂させてからというもの、春日はクンニに味を占めたらしく、昨日の朝も、今朝も、花恋のスカートの中に頭を突っ込んでは執拗に性器をなめてきた。
 その際、春日は必ずその日の下着の感想を口にする。リボンが可愛い、刺繍が綺麗、清楚で品がある、素晴らしい、最高だ、ディ・モールトベネなどなど。
 それは花恋を恥ずかしがらせるための手くだなのかもしれない。だが、何の関心も払われないよりは、そうして褒めてくれる方が花恋は嬉しかった――だからといって春日のしたこと、していることを許すつもりなんてなかったけれど。
 その後、花恋の胸にペニスを挟んで絶頂に達した九条は、満足して身支度を整えはじめた。
 花恋を満足させようとはせず、顔や胸にかけた精液をふき取ってもくれない。
 これまで花恋は恋人のそういうところを多少不満に思いつつも、男子はそういうものなのだろうと思って気にしないようにしていた。友人から聞く彼氏の話も似たり寄ったりだったからである。
 だが今、花恋は恋人に対していつもより強い不満を感じていた。自分が満足するだけでなく、花恋のこともきちんと満足させてくれる人、そして事後の後始末もちゃんとしてくれる男子を知ってしまったからであろう。
 隣家の幼馴染の顔を脳裏に思い浮かべた花恋は、自分でもよくわからない理由で大きなため息を吐いた。

『春日くんって何を考えているのかわからなくて、ちょっと怖くない?』
 子供の頃、花恋はまわりの女友達からときどきそんなことを言われた。
 そのつど「真くんは怖くなんてないよ!」と否定したのだが、正直なところ、春日を怖がる人たちの気持ちもわからないわけではなかった。
 春日は同学年の男子の中では背が大きい方で、身体つきもがっしりしていた。くわえて口数が少なくて無愛想だったので、近くに来られると女子は圧迫感をおぼえてしまうのである。
 もちろん、花恋は春日を怖いと感じたことはない。口数は少なくても周囲を気づかえる人だとわかっていたし、何かの拍子に笑ったときなどは、いつも無愛想な顔がけっこう可愛くなることも知っていた。
 十歳くらいまでは一緒に泥だらけになって遊んだものである。花恋の身体に女性としての特徴が出はじめてからは、段々と行動を共にすることが少なくなっていったが、それでも家が隣同士ということもあり、他の男子よりはずいぶん親しい関係だったと思う。
 ただ、花恋は「真くん」に恋愛感情をおぼえたことはない。花恋にとって春日は仲の良い友達であり、大げさに言えば家族のようなものだった。佐倉家と春日家は親同士の仲も良く、夏休みに両家でうちそろって旅行に出かけたのは一度や二度の話ではない。
 そういうこともあって、花恋は春日のことを家族のように感じていた。そして、春日も自分と同じ気持ちであると何の疑問もなく思っていたのである。
 三年前に九条から交際を申し込まれたとき、花恋は心から喜んだ。九条は学校の成績もよく、サッカー部でも活躍し、話術も巧みでいつも人の輪の中心にいた。顔はアイドル顔負けであり、ファッションセンスも優れている。九条に憧れていた女の子は十人や二十人ではきかなかっただろう。
 そんな相手から告白されたのだ、嬉しくないわけがない。喜んで交際を承知した。
 この時、春日に相談しなかったのは悪意があってのことではない。男の子に交際を申し込まれたとき、わざわざ自分の兄弟に申し込みを受けるべき否か相談する女の子は少数派だろう。その逆に、女の子に交際を申し込まれたとき、自分の姉妹に相談する男の子も少数派であるに違いない。
 花恋にとってはそれだけのことだった。
 ただ、一つだけ困ったのが相手の呼び名である。九条からは恋人らしく下の名前で呼んでほしいと言われたのだが、付き合ってすぐに「真」と呼び捨てるのは抵抗があった。
「真さん」と呼びかけるのも気恥ずかしい。というのも、花恋の母は夫のことを「さん」付けで呼ぶので、それを聞いて育った花恋にとって「さん」付けは夫婦の呼び方に感じられてしまうからである。
 あだ名で呼ぶことも考えたが、これは九条が良い顔をしなかった。結局、花恋は九条のことを「真くん」と呼ぶことに決める。
 これは九条の希望でもあった。花恋は同じ呼び名の幼馴染がいることを伝えたが、九条は「それなら向こうの呼び名を変えればいい」と意に介さない。
 花恋は少しためらったが、せっかくできた恋人と早々に揉めるのは避けたかった。どっしりと落ち着きのある幼馴染は、自分に「春日くん」と呼ばれようと「真くん」と呼ばれようとたいして気にしないだろう、という思いもあった。
 こうして花恋は春日への呼び方を変更するに至る。
 そのことを当人に告げたとき、春日は予想どおり気にした様子を見せなかった。少なくとも、花恋の目にはそのように映った。
 だが、この日を境に花恋を見る春日の目は冷えたものになっていく。初めての彼氏に浮かれていた花恋がそのことに気づいたとき、すでに二人の溝は埋めようもないほど深くなっていた……。

「あん♡ あっ♡ は、ひ♡ う、く……ひんっ♡」
 その夜、花恋は窓際に立って全裸でオナニーをしていた。向かいの部屋には、こちらも全裸になってペニスをしごいている春日の姿が見える。
 すでに朝クンニと夜オナニーは日課となっていた。
「ん♡ ん♡ はあ、はうっ♡ あん、あん♡」
 花恋は身を乗り出さんばかりに窓に近づくと、ガニ股になって腰を突き出した。自分の股間が少しでも春日によく見えるように、と考えてのことである。クリトリスを盛んにこすりたてては腰を左右に振り、懸命に春日の目を楽しませる。
 そうしろ、と春日に命令されたからである。
 言われたとおりにすれば春日が喜ぶ。春日が喜べば、それだけこの羞恥に満ちた時間が終わるのが早くなる。
 だから、花恋は傍から見れば目を覆いたくなるような痴態をさらし続けていた。仕方ないことなのだと自分に言い聞かせ、春日に見られることで湧きあがる快感を押し殺しながら。
 すると。
『いいぞ、花恋。すごく綺麗だ』
「――っ♡」
 スマホの向こうから春日の嬉しそうな声が聞こえてきて、花恋はぞくりと背筋を震わせた。
 花恋は今、春日を喜ばせるために羞恥を押し殺して淫らに腰を振っている。春日はそんな花恋の努力を正確にくみとって褒めてくれているのだ。
 これは今だけの話ではない。春日は花恋が自主的に動くと、必ずと言っていいほどそれを見抜き、声に出して褒めてくれた。そうして褒められるたび、花恋は身体だけでなく心まで裸にさせられている感覚におちいる。
 背筋を震わせるその感覚が、花恋は決して嫌いではなかった。
「見ていて、ください……♡」
 スマホに向けてそう言った花恋は、クリトリスへの刺激を中断すると、両手を自分の胸にまわして下からぐいっと持ち上げる。
 自分の豊満なバストをアピールしているように見えたが、花恋の行動には続きがあった。
 自分のおっぱいをぎゅっと絞るように握りしめた花恋は、そのまま先端の桃色の突起を上へと向ける。
 同時に、花恋は顔をうつむかせて口をひらき、自分で持ち上げた胸の先端めがけて舌を伸ばした。
『おお、すげえ!』
 花恋が自分で自分の乳首をなめた瞬間、スマホの向こうの春日が思わずという感じで声を高めた。その理由は、この乳首なめが今日までの春日の命令になかった内容だからであろう。
 正直なところ、花恋自身もここまでやるつもりはなかった。毎晩のように窓越しにオナニーを見せ合うという淫らな行為を積み重ねたことが、花恋に常ならぬ高ぶりと大胆さを与えたものらしい。
(これも、早くオナニーを終わらせるためだから……っ)
 内心で自分に言い聞かせつつ、花恋はそのままぺろぺろと左右の乳首をなめ出した。なめるだけでなく、両手で大胆に乳房を揉みしだくことも忘れない。形の良いバストがつきたての餅のように柔らかく形を変えていった。
「ん♡ ふ♡ ちゅ、ちゅ♡ んちゅ、ちゅぅぅぅぅ♡♡」
 花恋は窓向こうの春日に見せつけるように、自分の乳首をなめ、乳房を揉みしだき、さらには音を立てて乳首を吸いたてる。
 その光景はこれ以上ないくらい春日の情感を刺激したようで、スマホの向こうから――いや、窓を通して肉声で春日の興奮した声が聞こえてきた。
「花恋、もっとだ! もっと自分のおっぱいを吸え!」
「んっ♡ ちゅ♡ ちゅ♡ ちゅううううッ♡♡」
 春日に求められるまま、花恋は頬を上気させて必死に自分の乳首にむしゃぶりつく。
 自分で自分の胸を揉み、乳首をしゃぶり、へこへこと腰を前後に振り、その姿を同級生の男子に見せつける。
 脳髄を焼くような快楽に犯されながら、花恋はぼんやりと思う。
(……わたし、どうしてこんなことをしてるんだろう)
 その答えは簡単だった。
 パイズリ動画を撮られて春日にセフレになれと脅迫されたからである。従わなければ、花恋も九条も、二人の家族だってただではすまない。だから、花恋は春日に命令されたとおりに動くしかないのである。
 では、どうして命令されてもいない淫らな振る舞いをしているのか?
 この答えも簡単だった。
 春日に従うと決めた以上、相手の機嫌をとることも必要だからだ。目の前で全裸になることも、オナニーしながら腰を振ることも、自分で自分のおっぱいにむしゃぶりつくことも、すべて春日の歓心を買うための行為。ひいては動画を世に出さないための行動である。
 必要だから、やむをえずにそうしている。そこには何の問題もない。
 問題があるとすれば、それは、やむをえずにおこなっている行為から信じられないほどの快感を得ている花恋の変化にあった。
 自分が淫乱になった、とは花恋は思わない。
 事実、昼間部室で九条の相手をしたときは今の百分の一も興奮しなかった。九条に胸を見られたときも、胸を揉まれたときも、パイズリをしたときだって花恋のショーツはほとんど濡れなかったのである。
 それなのに、夜になって春日の前でオナニーを始めた途端、花恋のおマ×コは堤防が決壊したように大量の愛液を吐き出しはじめた。
 淫乱になったのなら、九条と春日、どちらを相手にしたときも同じくらい濡れるはずである。そうでない以上、淫乱になったわけではない。
 では、自分の身体に何が起きているのか。
『春日くんって何を考えているのかわからなくて、ちょっと怖くない?』
 不意にかつての友達の言葉が脳裏をよぎる。
 窓の向こうに立っている春日は、今日まで花恋の身体をもてあそんで興奮していたが、同時に、どこかで冷静さを保っているように見えた。
 その証拠に、春日はセックスをさせろとは一度も言っていない。機会はいくらでもあった。それなのに春日が行動に出なかった理由を花恋ははかりかねていたのだが、今このとき、不意に正解がわかった気がした。
 春日は今日まで花恋を調教していたのだ。ただセックスをするためではなく、セックスで感じさせるために。これまで手を出さなかったのは、花恋がセックスで感じる状態ではないと判断していたから。
 その春日が月曜日に花恋の時間を求めてきたのは、もう花恋の身体は十分に調教できたと判断したからだろう。
 その事実に花恋はおびえたように全身を震わせる。
(私、きっと月曜日に春日くんとセックスする)
 それは予感。何の根拠もなかったが、それでも花恋は自分の予感があたることを確信した。
 そして、その確信に突き動かされるように――
「~~~~~~!!♡♡♡♡」
 自らの乳首をしゃぶったまま、花恋は声なき声をあげて絶頂した。

【Web連載はここまで。続きは本編でお楽しみください】

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