俺の担任で女教師が性癖合いすぎだったので、従順メス犬にして孕ませデキ婚した話。

【水泳部顧問編】

著者: 孕間せん

電子版配信日:2024/09/13

電子版定価:880円(税込)

女性をメス犬に調教したい欲求を幼少期から抱えている学生・樫野逢樹。
厳しく指導しているが、実は躾けられたいドMな水泳部顧問・冬原里桜。
謎のキャンディで、身体の相性抜群の異性と運命&性癖マッチング!
欲望を100%叶えてくれるパートナーとの蜜戯はエスカレート!
野外で露出お散歩&生ハメしていると、更なる運命の巡り合わせが……
書き下ろし4万字含む大容量18万字! 最高の孕ませ純愛劇!

目次

プロローグ:引き継がれた飴玉

第1話:裏アカメス犬

第2話:門出の朝

第3話:仮入部

第4話:堕ちた理由

第5話:シャワー室のプロポーズ

第6話:林間学校と種付け遊び

最終話:幸せのメス犬

特別番外編:ふたりとふたりの繁殖交尾・前編

特別番外編:ふたりとふたりの繁殖交尾・後編

本編の一部を立読み

プロローグ:引き継がれた飴玉



 ──自分が、女の子を従わせることに異常な興奮を覚えるとわかったのは、いつだったか。
 おそらくは小さい頃、同級生の女の子が、俺に謝ってきた時。
 理由なんて些細なものだった。
 俺が貸してあげた消しゴムを、どこかに落として失くしてしまったという、たったそれだけのこと。
 俺はすぐに、別にいいよと、彼女を許してあげた。
 消しゴムなんていくつか予備があったし、特に困ることもなかったからだ。
 だが、根っからのおふざけ好きなその子は、急にその場に四つん這いになり、俺の足に抱きついてこう言ってきた。
 許して下さいご主人様わんわん、と。
 消しゴムもう失くしませんから、と。
 本当に、ただの、なんてことのないお遊戯。
 きっと犬を飼っている子だったのだろう、飼い犬を躾ける時に犬がしてくるような仕草を、その子は真似てきたのだ。
 俺はつい、悪い子は躾けてやらなくちゃね、と調子を合わせた。
 だがその時、俺は彼女と一緒にふざけながら、お腹の奥に異様な疼きを感じていた。

 ごめんなさいわん。
 だめだめもっとちゃんと謝って。
 くぅ~んもういいでしょご主人様。
 躾のなってない子だね教育しなくちゃ。
 きゃいんきゃいんやめて下さい。

 俺はそんな風に彼女とやり取りしながら、精通していた。
 特に好きというわけでもなかったその子の、俺に縋《すが》りついて許しを乞う姿に、パンツを汚していた。
 すぐに他の男子が何やってんだよと彼女をからかい、その子は謝ってただけだよと声を張り上げ、クラスの中は笑いに包まれた。
 俺はそんな騒ぎの中、ひとり、急いでトイレに駆け込んだ。
 真っ白に、糊のようにべっとりと付着した精液を見て、俺は保健の先生を頼るでもなく、ただ淡々とそれを拭き取り、ひたすらに興奮していた。
 その出来事は、以降の俺の性癖を決定的に形作ってしまった。
 オスのペニスの前に跪き、メス犬扱いされ、ご褒美を欲しがる女性。そんな淫らにねだる姿を想像しなければ、射精はもちろん勃起さえしないのだ。
 だが逆に、そんなドMで変態なメス犬の身体を、いい子だねとか、悪い子だからお仕置きだねと言いながら躾ける妄想をすれば、俺のペニスははち切れんばかりに膨れ上がり、どろどろの濃い精液を吐き出した。
 俺は自分の性癖を、絶対に表に出さないようにと努めた。
 最初から、これはアブノーマルだ、こんな妄想で興奮してはいけないことなんだと認識していたのだ。
 しかし一度火がついたものを消せるはずもない。
 むしろ、いけないことと思いつつ吐き出す精液は、あまりにも甘美で、とろけるようでさえあった。
 当然ながら好きな女の子はできたものの、俺は告白もせずに最初から諦めた。
 告白する勇気がなかったわけではない。こんな性癖の自分と相性など合うはずもないと、合わせてくれるわけもないと思ったからだ。
 むしろいざ事に及んだ時、拒絶され、噂が広まってしまうことの方が恐ろしかった。
 だから俺はスマホを使い、ありとあらゆる動画やイラスト、漫画を漁った。
 幸いなことに、ネットという広大な海原は、俺の有り余る性欲を満足させてくれる〝素材〟を提供してくれた。
 だがしかし、当然のようにそれだけでは物足りなかった。
 実際の、現実の女性と、俺は繋がりたかった。現実の女性をメス犬扱いして、俺専用に調教したかった。
 だがそんなこと、できるわけもない。
 これは誰にも、仲の良い友人にさえ言えない秘密だったのだ──



「おーっす、おっはー」
「おっはー。今日の宿題やった?」
「まだでござるー。見せて欲しいでござるー」
「やっべ、体操着忘れた。どうしよ」
「パンツでやれよ。写真撮影は任せろー」
「お前! やだよお前!」
 ──朝。学校へと向かう道。
 多くの生徒たちの声を聞きながら、俺、樫野逢樹《かしのあき》も通学路を歩く。
 入学して二年目の春、とうに桜も散って、そろそろゴールデンウィークの足音が聞こえてくる頃だ。
「ねえねえ、ゴールデンウィークどこか行くの?」
「ああ、家族みんな客商売でさ、大忙しだから特に予定はないかな」
「……じゃあ私、彼氏くんとデートしたいんですけど、いいっすか」
「あ、うん。も、もちろん」
「やったー!」
 まさにそのゴールデンウィークの約束をする、仲睦まじいカップルの声が聞こえた。
 何気なく振り向くと、ふたりはクラスメイトだった。なるほど、そういえばクラス替え早々にカップルができたなどと、みんなが騒いでいた記憶がある。
 羨ましい、俺もそろそろ彼女が欲しいな。
 そう思ったところで、すぐに心の中を真っ黒な霧が覆い尽くして、自身の幸せなビジョンを見えなくしてしまう。
 性癖のせいだ。
 誰も悪くない、全くの偶然によって引き出された俺の性癖のせいで、俺は恋人を作ることができないでいた。
 女の子を従順に躾けてメス犬のように扱う、そんな動画やイラストを見なければ勃起すらしないこの俺が、どうやって女の子と付き合えるというのか。
 どこにそれを受け入れてくれる女の子が、いるというのか。
 こんな性癖では、結婚はおろか、そも付き合うことさえ難しい。
 それとも、実際に女の子を前にすれば俺も普通に勃起して、何の心配もなくセックスができるのだろうか?
 わからない。そういう自分が想像できない。
 イメージできないものを、自分の将来などと言えるわけもない。
 ──などと憂鬱《ゆううつ》なことを考え、ため息すら漏らしながら校門を通ろうとした、その時だった。
 俺のすぐ脇を、結構なスピードで、大きな音を立てて、一台のバイクが通り過ぎた。
 風が巻き起こり砂埃が舞う。排気ガスを吸い込んで、少し咳き込んだ。
 原付ではない、赤い大型のバイクだ。バイクはキキッとブレーキ音を鳴らし、学校の駐車場に停まった。
 乗っていた人物はエンジンを止め、ヘルメットを脱ぐ。
 そこから現れたのは、女性の顔。
 綺麗な黒髪、ウルフカットの美人。
 背は俺と同じくらい、170弱はあって高い。
 身に纏う黒いバイクウェアは、驚くほど大きな巨乳が収まりきらずジッパーが開けっ放しで、シャツに包まれた胸が飛び出していた。
 そのジッパーからはみ出た巨乳は、重たげにだぷんっと揺れている。相当な質量があるのだろう。
 シャツは汗のせいかうっすらと透けて、下の黒いブラが見えている。
 耳には赤い石が付いたピアスをしており、朝日に反射してキラっと光った。
 バイクのシートからはみ出る尻の肉はむちっとしており、そこから伸びる足は、綺麗ですらりと長い。
 目つきが鋭く、特に意識していないのであろうが、睨んでいるように見える。
 そんな口から覗き見える八重歯は、ちょっと可愛い。
 知った顔だった。毎日顔を合わせている女性。
 冬原里桜《ふゆはらりお》。体育教師であり水泳部顧問、そして俺のクラス担任である。
「うおお。やっぱ冬原先生かっけーなー……」
「まずバイクがかっけーよな」
「足なっっが。凱旋門級じゃん」
 周囲の生徒も、先生の姿に感嘆の声や吐息を漏らしている。
 わかるよ、本当にモデルみたいな人だから。
 すると冬原先生は、慌ててバイクから降り、ヘルメットをシートに置いたかと思うと、俺の方へと駆け寄ってくる。
 少し、心配そうな顔で。
「……すまん樫野! 大丈夫か!?」
「おはようございます冬原先生」
「おう、おはよう。……じゃなくて! ちょっと余所見してて、お前のすぐ傍を通っちまった。掠ったりしてねーか? 怪我とかは?」
「はい、大丈夫です。バイクの風で涼しかったですよ」
「そうか……、よかった」
 冬原先生は、ふーっと胸を撫で下ろす。
 だがすぐに、少し困ったかのような顔で笑って、俺の腕を軽く叩く。
「お前そういう時はよ、うっヤバい死ぬとこでした、くらい言っとけよ」
「いえ、別に何ともなかったので」
「ほんっと、お前ってお人好しだよなあ」
「そうでもないですよ」
「まあ無事なら良かった。何か問題あったら、すぐに言えよ」
「はい。大丈夫だとは思いますけど、もしあれば」
「……それはそれとして樫野、そろそろ水泳部、やる気になったか?」
「ああ……、それは」
 急に先生は、俺の首に腕を回して、ガシっと組んで引き寄せる。
 汗ばんだシャツ、そして重たそうな巨乳と透けたブラが、目の前に迫る。
 どこか甘く、いいにおいがした。
「去年は担任じゃないから体育しか見てなかったけど、お前他の種目はともかく、マジで泳ぎだけは上手かったからな。あたしが鍛えてやるから、水泳部に来いよ。ぜってー上位狙えるからよ」
「うーん……、考えておきます」
「お前そればっかじゃねーか。まあいいや、気が向いたら言ってくれ」
 冬原先生は俺の背中をぽんっと叩いて、俺から離れた。
 傍に感じていた体温が消えることに、どこかしら寂しさを覚える。
「おらお前らー! もう予鈴鳴んぞ! 早よ学校入れ!」
 校門を歩く生徒たちに、荒っぽく声をかける。
 慌てて駆け足になって学校に入ってく生徒たちを見ながら、先生は「まったくだらけてんなあ」とため息をついた。
「樫野、お前も早く入れよ」
「はい。わかりました」
「よし。……おらおら! ちんたら走ってんじゃねー! 遅刻すんぞ!」
 そしてまた、冬原先生は遅い生徒たちを急かし、尻を叩く。
 毎日のように聞く、先生の怒鳴り声。
 先生の声は透き通っているが、その言葉遣いは完全に不良のヤンキーというか、チンピラそのものだった。
 俺もすぐに玄関に入って、靴を履き替える。
 すると、そんな俺の背中を、誰かがぽんっと叩いた。
「よう樫野、おはよ」
「……ああ、駒沢《こまざわ》。おはよ」
 クラスメイトで友人の男子、駒沢だった。
 去年一緒のクラスで、そこからの縁である。
「さっきの見てたぞ。里桜ちゃん先生に絡まれてたな」
「はは……。また水泳部に誘われちゃってさ」
「おうおう、熱烈なアプローチ受けてて羨ましいよ。入ってやったらいいじゃん」
「でも今はそんなつもりないし……。なんなら駒沢が入ってあげたら? 運動得意だし、羨ましいんでしょ?」
「それはマジ勘弁だ。だって絶対に、入ったからには気合い入れろや駒沢ゴラァって、尻叩かれるもん。もうちょっと優しく、駒沢かっこいい泳ぎも素敵~とかってハートマーク付きで指導してくれるんだったら、そりゃあもうすぐにでも入部するけど」
「まあ無理だろうね。そういう性格の人じゃないし」
「だよなあ……。なんか昔、マジで走り屋っていうか、暴走族とかだったんだろ? 不良でヤンキーで誰彼構わず噛みついてたらしいけど、よく教師になったよな」
「え? そうなのか?」
「ああ、樫野は初耳か。そうなんだよ、どうもそうらしくてさ。まああの人ほら、オラつきMAXだし、体育会系と波長が合うからってんで教師になったのかもな」
「どうだろう。それだけで走り屋の不良が教師になるっていうのも、変な話だけど……」
「いや、世の中そんなもんだと思うぜ。……しかしほんと、黙ってたら里桜ちゃん先生、めっちゃ美人なのに。バイク乗る姿もかっけーのにさ」
「うん、あの容姿で口を開けばオラオラオラだから、初めて会う人はギャップに驚くだろうね」
「玉に瑕ってやつか。……いや待てよ? 意外と付き合ったら可愛くなんのか? まったくしょうがねーなとか言いながら、よしよし甘えさせてくれんのかも! おいヤベーぞ、俺ああいう人に優しく甘やかされたら悶絶するって!」
「……駒沢、声大きい。ここ玄関」
「んおっと失礼」
 大声で話す友人、駒沢に向けられた、周囲の冷ややかな視線。
 口を閉じてももう遅いが、いつもこんな感じの奴なので、周囲も「またか」としか思わないだろう。
「あんまり夢見ない方が幸せだと思うよ。駒沢」
「自重しますゥ」
「絶対しなさそう……」
 と、ふと見れば、玄関の向こうの廊下で、とっくに校舎に入った冬原先生が、数人の女子生徒と会話していた。
 先生は、人懐っこそうな笑みを浮かべて、彼女らと話している。
「里桜先生、今度ダイエットのためのトレーニング法教えて下さい!」
「おっ、いい度胸だな。あたしの指導は厳しいぞー?」
「うぐっ……! で、でも頑張ります! 夏……、夏までに、冬の間にぽてっとなったお腹の脂肪を落としたいんですっ……!」
「あははっ。なるほどな、ぽてっちまったか。そりゃ一大事だ」
「里桜先生、すっっごいスタイルいいからっ! 秘訣を是非! つ、ついでに、先生みたいに立派な……その、バストアップもしてェっす……!」
「わかったわかった。そこまでお願いされたら、断るわけにはいかねーよな。放課後、部活に行く前に見てやるから、あたしのとこに来いよ」
「あざっす! 先生あざっっす!」
 冬原先生の言葉に、女子たちは自分も自分もと群がる。
 普段は「もっとシャキッとしろオラオラ」という感じだが、相談というか、本当に困っている相手には、姉御肌を発揮して協力してくれる良き理解者なのだ。
「はあ。面倒見はいい人なんだがな、里桜ちゃん先生」
「まあね。頼れる人ではあるんだけどね」
「あの先生に男の噂が立たないのも、だいたい性格のせいだよな。実際、今は彼氏いないみたいだし」
「たしか、二十五歳だっけ? 独身なのに、男の先生たちもおっかなくて誘えない、なんてボヤいてるって聞いたことあるよ」
「そうそう! しかも、なんかヤバくて怖い人たちと繋がりがあるっていう、まことしやかな噂もあるしよー……!」
「さすがにちょっと眉唾かな。それは」
「でもだからこそ、あの人を恋人にしてみてー、ってのはあるかもな」
「駒沢、また変な夢見てる?」
「違うって、俺が言ってるのはもっとこう……純愛だよ!」
「そっか……、うん。純愛ね」
「てか、そう言う樫野はどうよ、冬原先生とか。ああいう美人をさ、彼女にしてーって思ったりしないか? お前も彼女いないだろ」
「ん……、まあ……そうだね。美人だとは思うけど」
 確かに性格には多少難があるのかもしれないが、それでもあんな綺麗な人が彼女だったら、俺も嬉しいと思う。
 水泳部のためかもしれないけど、先生のフレンドリーな一面も見ているし。
 だが自分の性癖、相性のことを考えると、心がブレーキを掛けてしまう。
 仮にそのチャンスが目の前にあったとしても、俺の心の中を、黒い霧が覆い尽くしてしまうのだ。
 俺はふとその場に立ち尽くし、考える。
 このまま同じように過ごしていたら、俺は一生幸せになどなれないのではないか?
 性癖が合うどころか、女性そのものから縁が遠ざかってしまうのではないか?
 いっそ、出会い系アプリでも使ってみようか。
 そういう性癖の相手を、あらゆる手段でもって探してみようか。
 だが、たかが学生の俺がそんなものを使って、半グレが出てきたり、何かの間違いで警察のご厄介になってしまっては、冗談では済まされない。
 ああ、そうだな、そうだよな、世の中は残酷だ。俺のような悩みを抱えている奴は、あちこちいっぱいいるだろうに。
 どうして性癖を知ってから付き合うような、そんな仕組みじゃないのだろうか。
 そうなったら身体の相性のせいで別れた、なんて不幸なことも、少なくなるだろうに。
 さっきのカップルのように、俺も甘い青春を過ごせたのかもしれないのに。
「ん? ……おーい、どうした樫野。そろそろ教室行こうぜ」
「……ああ。ごめん」
 とっくに靴を履き替え、教室に向かおうとする駒沢が、俺を呼ぶ。
 俺はただ、重たい息を吐くだけだった。



 ──そんな、ある日。
 ぽつぽつと雨が降る帰り道、俺はなんとなく遠回りをしてみた。
 こんな日に散歩もないだろうが、何故か俺はまだ冷たい春の雨を感じながら、歩いてみたかったのだ。
 そして、とある公園に何気なく足を踏み入れた時、俺は一人の男に出会った。

「学生さん、この飴を買ってくれよ」

 それはまだ若い、青年と言えるような男だった。
 スーツを着て鞄を手にしているが、サラリーマンなのだろうか。
 彼は俺の前に、透明な小袋に詰められた、三個の黄色い飴玉を差し出した。
 飴はごく普通のそれに見えたが、その梱包している袋から、スーパーやコンビニといった、店舗で流通している物とは違うことがわかる。
 危険な薬、ではないだろうか。
 こうやって若者に近づき、まるでお菓子配りのように、非合法なドラッグを渡す反社会組織というのは、よく聞く話だ。
「……すいません、いらないです」
 俺は足早に、そこから離れようとした。
 だが、サラリーマンの彼が口にした言葉が、俺の足を止める。
「性癖が知りたいんだろ?」
「え……」
「相手の性癖を覗き見て、中身を知ることができれば、自分の性癖とぴったりの女を見つけられるのに、って」
「な……っ!」
「なんでわかるんだよ、って顔だな? まあ、そんなことどうでもいいだろ。学生さん、あんたは女を従順に従わせたい、犬のように命令したい、鳴き声を上げさせながら交尾したい……。そういう性癖に合致する女を見つけたいんだ」
「ま、待って下さい。ど、どうして、そんな……っ」
「これ。この飴玉が解決してくれる。〝マッチングキャンディ〟っていうんだ」
「……マッチング……キャンディ……?」
「この飴玉は、性癖を覗き見れるものじゃあない。……だが、自分の性癖とぴったりの相手と、〝運命をマッチングしてくれる〟飴だ」
「運命をマッチング……? それは、どういう……」
「まあまあ、試しに食べてみればいい。百聞は一見にしかず、ってな。……三個セットで税込百八円。どうだい学生さん?」
 馬鹿みたいだ。
 何の冗談だ。
 小説やゲームじゃあるまいし、そんな都合のいい話。
 俺を罠に掛けて、薬漬けにしようとしているに違いない。
 だが、なのに。
 そう思うのに、俺はポケットから財布を取り出し、小銭を数えていた。
 何故かちょうど、ぴったりあった百八円を、まるでそれが俺のするべきこと、ここに来たこともここで飴を受け取ることも運命であったかのように、差し出していた。
「……ぴったり。あります」
「毎度あり」
 先ほどまであった彼に対する不審さは、既に俺の中から消えていた。
 理由は簡単だった。この人は、俺の心を見透かしたからだ。
 得体の知れない恐ろしさ、超常的な恐ろしさを感じたからこそ、逆に信じるに値する人間だと思った。
「キャンディの効果は、一個で二十四時間。重ね掛けはできない。食べた人間は効果時間の間、自分の性癖ぴったりの相手と〝運命マッチング〟しやすくなる。……昔のよりちょっと性能が良くなってな、即効性がある。それがどんな形で現れるかはわからないが、まあそこを含めて楽しんでくれよ」
「……わかりました」
「追加が必要なら、またここに来ればいい。値段は一緒、三個で百八円だ」
「はい、ここに、ですね。……でもどうして、俺にこれを……?」
「ほら最近よく聞くだろ? 流行りのさ、SDGsってやつのためさ」
「はあ……、SDGs……ですか」
 言っている意味がわからない。
 この飴が、持続可能な何とやらに貢献している、とでも言いたいのだろうか。
「……ただ学生さん、あんた、思いきりが足りないな」
「思いきり……?」
「本当に女を手に入れたい、メス犬を従わせたいと思ってるなら、もっと勢いが必要ってことさ。おとなしく見てるだけじゃない、喰らいつくところは喰らいつくっていう、貪欲さがいるんだよ。尻込みしてちゃ、幸せは掴めない」
「っ……!」
「……だが、まあ、今まで自分の性癖を理解してくれない、くれるわけもないって人生歩んできたんだろうから、及び腰になるのもしょうがないか」
「俺のこと……、そこまでわかるんですね」
「わかるよ。ああ、わかるさ。〝似たもの同士〟だからな」
「あの、あなたはいったい……」
「申し遅れました。こういう者です」
 そう言って、彼は名刺を一枚取り出した。
 名刺には、某有名お菓子企業の営業部の名前、そして『SDGs営業チーム主任』と書かれていた。
 その横には、彼の名前がある。
「そめ……じま」
「染島景《そめじまけい》といいます。以後よろしくお願いいたします、お客様」
 それが、俺と彼の出会いだった。
 俺の運命を、あり得ないほどに好転させてくれた、染島景との出会い──

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