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今月の放言

Mの男は神様です 南智子

直筆短冊

「言葉責めのカリスマ」として、その名を知らしめる南智子。今でこそM男性を中心に絶大な人気を誇っているが、青春時代は自分の欲求をさらけ出す場を見つけられない悩み多き少女だった。そんな彼女は本当の快楽をいかにして得ることができたのか?今回は特別に2ヶ月に渡って南智子の欲望の本質を剥き出しにする。

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プロフィール 南智子

セックスワーカー、作家。風俗、AV、漫画原作などで『言葉責めのカリスマ』として知られる。主な作品として『ボディーシューティング』(作画森園みるく)『ふぅど~る』(作画きょん)、『FLUSH(水洗装置)』(『エロティシズム12幻想』中の一編)、『男を抱くということ』他多数。

第1章 Mの男が好き

私がいちばん最初にビデオに出たときは“痴女”っていう言葉もなかったんです。その時“言葉プレイ”っていう言葉ができたぐらいで「そんなものを撮って代々木(忠)の変な趣味が始まった」って言われたんですよ。でもフタを空けてみたらヒットしちゃった。今ではいろんなところが作ってくれて、ホントいい時代になりましたよね。

“M性感”“痴女”と言えば知られた単語になりましたので、10年前とはだいぶ様子が変わったと思います。官能小説でもそういうテーマをけっこう扱っていらして、トー・クンの『義母』(『トー・クン全書』'00刊)とかどれもレベルが高くて面白いと思うんです。これに出てくるのも誘惑する女性ですよね。このように“痴女”といっても様々な意味に展開してきているんじゃないかしら。でも、これは主にヤングマスターである男性の話ですよね。その部分が私とは根本的に違ってしまうんです。私はMの男性が好きですし、少年じゃ興奮しないんです。やっぱりアダルトまたはオールドスレイブの男性じゃないと。マスターズ文庫でMの熟年の男性がでてくると最高なんですけれどね(笑)。

Mの男性は私にとって究極の男性です。Mだけど普段はすごく男くさい、そんな方にとても男性的な魅力を感じるんです。成熟したオスらしいオスであるにもかかわらずマゾヒズムですごく淫らっていうその落差がいいんです。フランス書院でいえば、令嬢、女弁護士、地位の高い女性とかがMっていう設定とちょうど同じなんでしょうね。

私が少年にそそられない理由は、どうしても女性のバリエーションのように感じてしまうからです。AVでレズビアンのお仕事があるのですが、私自身はレズビアンではありません。やっぱりMの男性に欲情しますし、好きなんです。

ですから、美少年が出てくる“やおい”とかもだめなんです。すごく下世話な話で言うと、私がオカズを探すと、どうしてもゲイ系の本とかになってしまいますね。しかも、ハードゲイ。本当は男女のほうがいいんですけど、たくましい男性の淫らな様を見られるのはそれぐらいしかないんですよ。オカズはセックスしているところとか単刀直入な調教シーンじゃなくてもいいんです。例えば、戦争映画とかで捕まった男性が縛られて拷問されてるような…そんな汗くさく、たくましい方が悶えているシーンにたまらなく感じてしまいます。

異性愛者だから当然のようにも思うんですけれど、女性では興奮しないんですよ。悶えている女性を見て感じる女性がノーマルっていう風に言われるんですが、レズビアンの気が強いのか、あるいはなんと言いますか、ナルシズムがエロスと結びついているのか、どちらにしろ私にはあまり理解できないところです。

例えば、友人でMの女性も多いのですが、彼女達に聞くと、調教しているSの男性を見て興奮することはあまりないって言うんです。それよりは感じてる女性のほうに感情移入しているのか、すごく女性が女性を見て興奮するケースは多いみたい。私にしてみれば、それはある種レズビアン的な部分なのかしらって思ってしまいます。

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