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今月の放言

Mの男は神様です 南智子

直筆短冊

「言葉責めのカリスマ」として、その名を知らしめる南智子。今でこそM男性を中心に絶大な人気を誇っているが、青春時代は自分の欲求をさらけ出す場を見つけられない悩み多き少女だった。そんな彼女は本当の快楽をいかにして得ることができたのか?今回は特別に2ヶ月に渡って南智子の欲望の本質を剥き出しにする。

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プロフィール 南智子

セックスワーカー、作家。風俗、AV、漫画原作などで『言葉責めのカリスマ』として知られる。主な作品として『ボディーシューティング』(作画森園みるく)『ふぅど~る』(作画きょん)、『FLUSH(水洗装置)』(『エロティシズム12幻想』中の一編)、『男を抱くということ』他多数。

第2章 私の妄想は売れない

現在、私の仕事は漫画の原作が一番多いんです。小説は短編だけでデビューさせていただいていて、今長編を書き下ろしてるところなんです。でも、それは純粋なポルノグラフィではなく、伝奇ホラー小説みたいなもの。伝奇も官能と非常に密接ですから当然そういう表現は出てくるんですが、私の本当の嗜好を出そうと思うとポルノグラフィ的な小説やマンガのどちらでも難しい部分があるんです。

マンガの原作の時はマンガ家さんの感性に頼って書ける部分がありますから、ある意味、ジョイントすることで助けられている部分があるんです。ですので、本当に自分の気持ちじゃなくても、こんな感じだと受けるかなぁって書くこともできるんですけど、自分自身の本当の感覚で表現したいと思った時、書かせていただけるメディアがないんですよ。

何年か前に「官能小説を書きませんか?」というお話をいただいたことがあるんですが、その時のテーマはどうしても書けなかったんです…。やっぱりお仕事ですから望まれたものを書くっていうのがすごく難しかった。私にとって最も好きな、男性が受け身の描写はとにかくNG、それが延々続くっていうのは論外である、と。しかも、特に大人の男性はダメ、熟年はもってのほか。受け身の男性のキャラクターを描くなら、かわいい少年、女性のような美少年でなければまずい。とにかく受け身で悶え狂わされる男性をずーっと書かれてしまうと困る、そうおっしゃられて…。

ゲイ小説ではないわけですから、責めていく女性や痴女的な女性を主に書いてもらわないと商品としては使えませんという風なお話だったんです。書けるかなぁと思ったのですが、私にはやっぱり出来ませんでしたね。マンガ家さんにも頼れませんし、ちょっと申し訳ないことにお話をいただきながら書くことができなかったんです。

書かせてくれるかどうかはともかく本当に自分で書きたいものは、そうですね…、大人の男性、たくましい大人の強い男性が女性に調教されるようなお話かしら。具体的に言えばアジア人の女性の工作員がですね、白人の男性をどんどん襲っていくとか(笑)。あと例えば、復讐をする為に女性が一族に入りこんで、そこのおやじから息子まで全部食っていくとか奴隷にしていくとかそういう話なんて書いてみたいんですけどね。

でも、多分どこも書かせてくれるところはないと思うんです(笑)。そんなのが私的には一番ヌケるものなんですけれど。多分かなりマニアックですので商品に全然ならないのも無理ないとは思います。笑ってもらえるかもしれませんが、ヌケる人は私の他にはかなり少ないんじゃないかしら。

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